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Part 3
Е.в 婚儀の準備と言うのは - 05
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お礼にどうぞ――どころではないでしょう、さすがに……。
(信じられない……)
今更ながらにショックを受けるセシルは、ギルバートに、もう一度、きちんとお礼を言わなくては失礼だろう。
密かに、ものすごいショックを受けているセシルだったが、ネックレスを購入したギルバートと言えば、実は、そこまで深く考えていなかったのだ。
本人は、豊穣祭で見たセシルのドレス姿に、そして、額から落ちるサファイヤのついたフロントレットが目に焼き付いて、それで、贈り物をしたいなぁ……などと考えていた。
それで、特別な形のネックレスを作ってくれる宝石彫刻師はいないだろうか、とクリストフに相談していたのである。
だから、王国一とも名を馳せる宝石彫刻師を紹介してきたのは、実は、クリストフの方である。
それで、ギルバートはカー・サルヴァソンに会って、豊穣祭で見た、セシルの頭に乗っていた髪飾りとしてのサファイヤの形を説明して、それに合ったネックレスを作って欲しい、と頼んでいたのだ。
カー・サルヴァソンは、結構、気難しい男で、ギルバートに、髪飾りとして頭に乗っていたアクセサリーの形だけではなく、その時のセシルの様子、ドレス、色、容姿、髪の色まで、色々と問いただしてきて、
(そこまで聞かないといけないものなのか?)
と心内では、少々、不満げなギルバートでもあった。
セシルのネックレスについて質問されるのは問題なかったが、なんだか、ギルバート個人が話すセシルの容姿やら容貌やら含めて、他の男に、セシルの美しさを知られるのが、少々、不満でもあったのだ。
だが、出来上がりのネックレスを見て、ギルバートも満足していたので、あの時の――多少の不満が出てきていたことは帳消しにしていた。
「もし、ご迷惑でなければ、こちらのドレスを着ていただけませんでしょうか?」
「ええ、構いません」
きっとこうなる状況だろうな、とセシルは初めから予想していたので、驚くこともない。
椅子から立ち上がり、衝立の方に戻っていく。
「では、失礼いたしますね」
他の侍女達が、ささっと、上に乗っているドレスを取り払い、オルガが藍のドレスを丁寧に取り上げていく。
「ああ、そこのあなた達、少し手伝ってくださいな」
反対側の部屋の隅っこで控えていたお針子達を呼ぶと、はいっ、と元気な返事が返ってきて、全員が軽やかにセシルの元に集まって来た。
セシルはガウンを脱いで、ドレスに着替えていく。オルガや手伝いのお針子達がドレスの留め金をとめたり、裾を直したり、それで、セシルの髪の毛も整えていく。
「マイレディー、こちらもお付けになりましょう?」
「わかったわ」
そして、以前と同じように、サファイヤが埋め込まれた銀の髪飾りを、額の上に垂らす。
二人係でセシルの首元が空けられ、オルガが、丁寧に、丁寧に、ネックレスを取り上げた。
その全部の工程が終わり、手伝いのお針子達も最後の調整を済ます。
「ああぁ、おきれいです、マイレディー……!」
「やっぱり、何度見てもおきれいですっ、マイレディー……!」
うわぁ! ――と、仕切りの向こうから聞こえる侍女達やお針子達の歓声が飛び込んできて、隣で待っているアトレシア大王国からの仕立屋一行は、うずうずと、待ちきれない。
仕切りが避けられて、セシルが一歩前に出てきた。
「うわぁ……っ……!!」
「わぁっ……!?」
「まあぁ……っ……!」
今日はお化粧をしていなくても、仕切りから出てきて、ゆっくりと歩いていくセシルは、それだけで威厳高く、神々しくて、それなのに、その儚げな容貌がしっとりした色気を映し艶めかしい。
「――――まあぁ……!! とても……おきれいでございますわ……。――第三王子殿下が、是非にと、ご希望なさったお気持ちがよくわかります……!」
いえ、ギルバートは、一言も、そんなことをお願いしたことはありません。
「ありがとう」
「ご婚儀でなければ、このドレスのまま式典に参加なされても、全く問題はありませんわね」
セシルはドレスにこだわっていないから、今あるドレスを何度着たとしても、全くの問題はない。
節約にもなるし、せっかく綺麗に仕上がったドレスを一度きりだけで使いもしないのは、勿体ないではないか。
だが、貴族社会では、話が違う。
同じドレスを何度も着てしまったのなら、すぐに、令嬢を貶すような悪口雑言が飛び交う状態になってしまう。
ドレス一つ買えない貧乏貴族なのか?
トレンディなドレスもないのか? 貧相な令嬢だ。
同じドレスを着るなんて、なんて野暮ったい。なんて恥さらしなんだ。
色々だ。
そして、セシルの結婚相手は、なにしろ、“No1婿候補”としても有名な王子殿下である。若く、凛々しく、美麗な貴公子サマである。
王族に嫁いでくる令嬢がみすぼらしく、ドレス一つも変えないような貧相な令嬢など、許されるはずもない。
どんな格好をしようが、どれだけ着飾ろうが、口うるさい輩は、必ず、いつでもどこでも文句を言ってくるものなのだ。他人の粗探しをして、他人を貶し、蹴り落とすことだけに専念するのだ。
だから、セシルだって、セシルのせいでギルバートに恥をかかせたくなどない。文句を言ってくる輩には、文句を言わせておけばいいが、それ以外で、更なる悪口雑言や中傷ができるような隙を作ってしまっては、ギルバートに顔向けもできない。
だから、婚儀を終えた後の祝宴でのパーティードレスだって、きっと豪奢なものになるだろう。
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります!
Bu romanı okuduğunuz için teşekkür ederiz
~・~・~・~・~・~・~・~・
(信じられない……)
今更ながらにショックを受けるセシルは、ギルバートに、もう一度、きちんとお礼を言わなくては失礼だろう。
密かに、ものすごいショックを受けているセシルだったが、ネックレスを購入したギルバートと言えば、実は、そこまで深く考えていなかったのだ。
本人は、豊穣祭で見たセシルのドレス姿に、そして、額から落ちるサファイヤのついたフロントレットが目に焼き付いて、それで、贈り物をしたいなぁ……などと考えていた。
それで、特別な形のネックレスを作ってくれる宝石彫刻師はいないだろうか、とクリストフに相談していたのである。
だから、王国一とも名を馳せる宝石彫刻師を紹介してきたのは、実は、クリストフの方である。
それで、ギルバートはカー・サルヴァソンに会って、豊穣祭で見た、セシルの頭に乗っていた髪飾りとしてのサファイヤの形を説明して、それに合ったネックレスを作って欲しい、と頼んでいたのだ。
カー・サルヴァソンは、結構、気難しい男で、ギルバートに、髪飾りとして頭に乗っていたアクセサリーの形だけではなく、その時のセシルの様子、ドレス、色、容姿、髪の色まで、色々と問いただしてきて、
(そこまで聞かないといけないものなのか?)
と心内では、少々、不満げなギルバートでもあった。
セシルのネックレスについて質問されるのは問題なかったが、なんだか、ギルバート個人が話すセシルの容姿やら容貌やら含めて、他の男に、セシルの美しさを知られるのが、少々、不満でもあったのだ。
だが、出来上がりのネックレスを見て、ギルバートも満足していたので、あの時の――多少の不満が出てきていたことは帳消しにしていた。
「もし、ご迷惑でなければ、こちらのドレスを着ていただけませんでしょうか?」
「ええ、構いません」
きっとこうなる状況だろうな、とセシルは初めから予想していたので、驚くこともない。
椅子から立ち上がり、衝立の方に戻っていく。
「では、失礼いたしますね」
他の侍女達が、ささっと、上に乗っているドレスを取り払い、オルガが藍のドレスを丁寧に取り上げていく。
「ああ、そこのあなた達、少し手伝ってくださいな」
反対側の部屋の隅っこで控えていたお針子達を呼ぶと、はいっ、と元気な返事が返ってきて、全員が軽やかにセシルの元に集まって来た。
セシルはガウンを脱いで、ドレスに着替えていく。オルガや手伝いのお針子達がドレスの留め金をとめたり、裾を直したり、それで、セシルの髪の毛も整えていく。
「マイレディー、こちらもお付けになりましょう?」
「わかったわ」
そして、以前と同じように、サファイヤが埋め込まれた銀の髪飾りを、額の上に垂らす。
二人係でセシルの首元が空けられ、オルガが、丁寧に、丁寧に、ネックレスを取り上げた。
その全部の工程が終わり、手伝いのお針子達も最後の調整を済ます。
「ああぁ、おきれいです、マイレディー……!」
「やっぱり、何度見てもおきれいですっ、マイレディー……!」
うわぁ! ――と、仕切りの向こうから聞こえる侍女達やお針子達の歓声が飛び込んできて、隣で待っているアトレシア大王国からの仕立屋一行は、うずうずと、待ちきれない。
仕切りが避けられて、セシルが一歩前に出てきた。
「うわぁ……っ……!!」
「わぁっ……!?」
「まあぁ……っ……!」
今日はお化粧をしていなくても、仕切りから出てきて、ゆっくりと歩いていくセシルは、それだけで威厳高く、神々しくて、それなのに、その儚げな容貌がしっとりした色気を映し艶めかしい。
「――――まあぁ……!! とても……おきれいでございますわ……。――第三王子殿下が、是非にと、ご希望なさったお気持ちがよくわかります……!」
いえ、ギルバートは、一言も、そんなことをお願いしたことはありません。
「ありがとう」
「ご婚儀でなければ、このドレスのまま式典に参加なされても、全く問題はありませんわね」
セシルはドレスにこだわっていないから、今あるドレスを何度着たとしても、全くの問題はない。
節約にもなるし、せっかく綺麗に仕上がったドレスを一度きりだけで使いもしないのは、勿体ないではないか。
だが、貴族社会では、話が違う。
同じドレスを何度も着てしまったのなら、すぐに、令嬢を貶すような悪口雑言が飛び交う状態になってしまう。
ドレス一つ買えない貧乏貴族なのか?
トレンディなドレスもないのか? 貧相な令嬢だ。
同じドレスを着るなんて、なんて野暮ったい。なんて恥さらしなんだ。
色々だ。
そして、セシルの結婚相手は、なにしろ、“No1婿候補”としても有名な王子殿下である。若く、凛々しく、美麗な貴公子サマである。
王族に嫁いでくる令嬢がみすぼらしく、ドレス一つも変えないような貧相な令嬢など、許されるはずもない。
どんな格好をしようが、どれだけ着飾ろうが、口うるさい輩は、必ず、いつでもどこでも文句を言ってくるものなのだ。他人の粗探しをして、他人を貶し、蹴り落とすことだけに専念するのだ。
だから、セシルだって、セシルのせいでギルバートに恥をかかせたくなどない。文句を言ってくる輩には、文句を言わせておけばいいが、それ以外で、更なる悪口雑言や中傷ができるような隙を作ってしまっては、ギルバートに顔向けもできない。
だから、婚儀を終えた後の祝宴でのパーティードレスだって、きっと豪奢なものになるだろう。
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