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Part 3

Е. б やっと、ただいま - 06

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 それに安堵したアルデーラとアデラは、セシルからの助言の通り、その一週間は、オスミンの授業などを無理にはさせなかったのだ。

 そして、熱から回復した小さな王子殿下は、今日もまた、初の“遠出”の話を両親に元気に聞かせていく。

「父うえっ、ぼくは、セシルじょうのように、たみからあいされ、それから、つよく、まえにすすめるような王になります」

 意気揚々と、そして、幼いながらにも強い決意をみせて、オスミンが宣言した。

「――そうか――」

 息子の成長は、父親として喜ばしいものである。王族の、そして、次期後継者として自覚を芽生えさせている王子の成長も、国王として喜ばしいものだ。

 だが、多少の――我儘わがままを言うのなら、


「父上のような立派な国王になりたいです」


などと、自分の父親を目標にしてくれるような言葉を期待してしまうのだが、その前に、思わぬ強敵の名が挙がってしまった。

 オスミンはまだ幼いだけに、父親が国王陛下であること、王族で、その立場や責任があることを理解しているだろうが、その重責が一体どんなものであるのか、仕事がどんなものであるのかは、はっきりと理解しているわけではない。

 だから、アルデーラの重責や立場、その仕事内容を把握する前に――ものすごいお手本が目の前に現れて、それで、オスミンは一気にセシルに感化されてしまったようだった。

 アルデーラの隣で座っているアデラは、オスミンが父親ではなくセシルをお手本に選んだその事実に、アルデーラが残念がっているその珍しい表情を見て、笑ってはいけない……と、口元が緩んでしまっていた。

 本当に、珍しいこともあるものだ。

 普段、誰よりも厳しく、威厳があり、滅多なことでその姿勢を変えないアルデーラが、息子の前で、強敵――とも呼べる相手の話題に、残念がっているのだから。

「それで、ぼくは、『しゅくふく』 をはじめてもらいました。レイフおじうえも、ギルバートおじうえも、しゅくふくをもらったんです」

 ここ数日、オスミンがコトレアの領地で体験した、経験した話題を必死で両親に説明する間、それ以上に話すことがあるかのように話題が尽きないオスミンは、次から次にたくさんのことを話している。

「それから、とけいとう、もみましたっ! おにんぎょうが、くるくるとまわって、とてもすごいのですっ」

 オスミンの話はとても興味深いものなのだが、さすがに、話題が飛んで、前後関係が繋がらず、それからまた同じ話題に戻ったりと、その話を追っているアルデーラとアデラ達も大変だ。

 それで、王宮に戻って来たオスミンの話題が尽きないので、その説明がてら、ここ数日、夜はレイフを交えての談話が設けられている感じだった。

 なににせよ、オスミン初の“遠出”は、本人が期待していた以上の素晴らしい経験になって、小さな王子サマは王宮に帰って来たのでした。

 アデラなど……、まだ幼いオスミン一人だけで(付き添いの叔父二人がいても) 遠方の領地に旅をすることになって、オスミンがいない一カ月程、毎日、(密かに) オスミンの心配をしていたものだ。

 だが、どうやら、それはアデラの杞憂きゆうだったようである。


* * *


「救助は全て済んだのか?」

 (やっと) 王宮に戻って来たその場で、机の上に溜まっている書類の数々。

 積もりに積もっている山を確認はしたが、少々、レイフも長旅の疲れが出てきていたので、帰った次の日はその書類の山を無視することにして、それから、早速、仕事に戻って来た。

 長距離の移動はそれほど問題にすることでもなかったのだが、まだ幼いオスミンを一緒に連れていたので、その責任も世話も、全部レイフが(当然のこと) 任されていたのだ。

 ギルバートは騎士団の護衛としての任務と、セシルに招待された客人ということもあって、(レイフが自分で招いた) 問題は全てレイフの責任、と必要以上にレイフの手助けはしない。

 それで、こんなに長く小さな子供の面倒を見たのは初めてで、その精神的な疲労の方が、身体的疲労より多く出てしまっていたのだった。

 根を詰めても年末を乗り切れないな、とさっさと判断したレイフは、国王陛下のアルデーラの無言の非難を無視して、次の一日はしっかりと休養を取った。


「無理をしても、集中できなければ時間の無駄でしょうねえ」


と、アルデーラに言い返した言葉である。

「大方の問題は、ある程度解決しました。ですが、まだあの地に残っている領民の保護をどうするかなど、未解決の問題はあるのですが、これ以上の介入は、ご令嬢もなさらないでしょう」
「なぜ?」

「これ以上の介入は、領地への負担が大きくなり過ぎるからですよ。なにしろ、隣の領地を治めるオラフソン伯爵家が、災害の救済を派遣もせず、どうやら領民を見殺しにしたようでして」
「なにっ――!?」

 信じられない話を聞いて、アルデーラも顔をしかめる。

「ヘルバート伯爵家からは急使を飛ばし、王都にいるオラフソン伯爵に緊急状態の旨を説明したのですが、それから数日、全く返答がありませんでした」

 あの領地から王都への行き来は、五日ほどかかるらしい。

 だからと言って、緊急事態なら、早馬でも飛ばし、セシルに礼の一つでも言うのが、まず、礼儀と言うものだろう。
 そんな気配がゼロだった。





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祝500エピソード! このシリーズも、こんなに長くなってしまいました。皆さんに飽きられないよう、これからも刺激があり、面白いお話を書く為に頑張っていきますので、応援よろしくお願いいたします。

Бу китапны укыган өчен рәхмәт
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