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Part 3
Е. б やっと、ただいま - 05
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アルデーラは、元々、自分が理解できないことを放っておけるほど、我慢の強い男ではない。だから、明日は、レイフとギルバートからの報告をしっかりと聞かなければ、気が済まないのだ。
定例の“夫婦の時間”を済ませ、就寝に着く頃、思ってもみない出来事が起きてしまった。
「オスミンの容態が急変した?」
就寝前の二人の前に、アルデーラ付きの執事が、わざわざ寝室に顔を出したのだ。
「どういうことです?」
ガウンをかけ直し、すぐにアデラがベッドから起き上がっていた。
その報せを受け、二人はすぐにオスミンの寝室へと向かう。
オスミンの寝室に国王と王妃がやって来たので、その場にいた侍女達が一斉に頭を下げた。
「どういうことだ?」
「王子殿下の確認にやってきた侍女が、王子殿下の様子がおかしいと報告してきましてので、確認させていただきましたところ……、どうやら、王子殿下は高熱を出されているようでして……」
「病気なのか?」
「いえ……。今、医師を呼び出しております」
思ってもみないオスミンの容態急変に、アデラが心配そうにオスミンの寝台のすぐ隣にやってきた。
そっと、幼い息子の額に手を置いてみると、ものすごい熱さが手の平に伝ってくる。
「オスミン……。――アルデーラ様……、オスミンの額が、ものすごく熱く……」
「医師はまだかっ」
「ただいま……」
国王に急かされ、その場にいた侍女達が大慌てで医師を呼びにいく。
「オスミン……。一体、なぜ……?」
王宮に戻ってきたオスミンは元気で、興奮が収まりきらないまま、たくさんの説明をしてくれて、お土産をみせてくれて、イングラムと大はしゃぎしていたのに……。
* * *
「オスミンの容態が急変した?」
「そうだ」
まず、朝一番で、国王陛下の挨拶に伺ったギルバートの前で、曇り顔の消えないアルデーラの厳しい表情を見返し、ギルバートも驚いていた。
「あの……そのことで、実は、昨日、助言されていたことをお話しすることを忘れていましたので、今朝は、まず先に、陛下の元に挨拶に伺わせていただきました」
「助言? なんのだ?」
「実は――」
ギルバートはコトレアを発つ時に、セシルから一つの助言をされていた。
昨日は、オスミンが王宮に戻ってきたことで、はしゃいでいるオスミンに急かされて王妃も忙しそうだったので、ギルバートも挨拶だけを済まし、その場を立ち去っていた。
それから、騎士団に戻り、団長に報告を済ませ、溜まりに……溜まっていた書類の山を見て溜息を吐き出しながら、仕方なく、上に乗っている数枚だけの書類を確認し、騎士の仕事を終わらせ、王宮の自分の館に戻ってきた。
その時に、あっ……と、セシルから教えてもらった助言を、王妃に説明し忘れていたことを思い出したギルバートだった。
「あの頃の年頃は、興奮しすぎたり、はしゃぎ過ぎると、夜中に悪夢を見ることがよくあるらしいんです。日中の反動が反対に夢に出てくる、という説らしいのですが、それでも、コトレアの邸にいる時は、その傾向がなかったようですから、王宮に戻られた数日は、少し様子を見てみてくださいね」
そう、忠告ももらっていた。そして、次の助言も一緒に。
「それから、まだあんなに小さな体で長旅を続け、移動を続け、そして、領地内でも動き回っていらっしゃいましたから、王宮に戻られたら一安心して、体調を崩してしまうかもしれませんね」
例えば、とセシルが少し考える素振りをみせ、
「数日、熱が出てしまったり、など」
「熱ですか? 病気になるということですか?」
「いいえ。それは、安心してしまうことで、今まで緊張状態や興奮状態で発散されていたアドレナリンの急激な減少により、体内の抗体能力が落ちてしまうことから、一気に疲労が出てしまうのでしょう」
そして、この頃では定例になってきている難しい医学用語が混ざって、ギルバートの理解も半分半分、といったところだろうか。
「心配なされるかもしれませんが、数日安静にし、戻られた一週間は、せめて何もせず、リラックスさせてあげてくださいね。長距離の移動というは、自身で自覚している以上に、体に負担をかけるものですから」
「そうなのですか?」
「ええ、そうです」
全く知らない単語やら、理解し難い医学的な説明ではあったが、しっかりと説明と忠告を受けて、はあ……と、納得したのかしないかは分からないギルバートはコトレアの領地を去っていた。
そして、セシルの予想通り――ではないが、王宮に到着して、両親であるアルデーラとアデラに迎えられ、意気揚々と初めての“遠出”の話を語るオスミンは、その晩、熱を出した。
そして、熱でうなされていたのかは知らないが、眠りながら泣き出してしまい、苦しんでいる息子を心配したアデラが、一晩中付き添うことになった。
それで、朝一番で挨拶にやって来たギルバートは、セシルからの説明のような忠告のような助言を、アルデーラにも伝えてはみたが、その微かに強張った表情から判断するに、きっとアルデーラもギルバートの話を理解し難く、そのまま助言を真に受けていいのかどうか……判断しかねているようだった。
幸運なことに、セシルが懸念した数日かもしれない――はなかったようで、丸一日熱でうなされていたオスミンは、次の日には熱もなく完治していて、旅の疲れもなんのその。
いつもの倍以上の元気さで起き上がっていたのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります!
இந்தப் புத்தகத்தைப் படித்ததற்கு நன்றி
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定例の“夫婦の時間”を済ませ、就寝に着く頃、思ってもみない出来事が起きてしまった。
「オスミンの容態が急変した?」
就寝前の二人の前に、アルデーラ付きの執事が、わざわざ寝室に顔を出したのだ。
「どういうことです?」
ガウンをかけ直し、すぐにアデラがベッドから起き上がっていた。
その報せを受け、二人はすぐにオスミンの寝室へと向かう。
オスミンの寝室に国王と王妃がやって来たので、その場にいた侍女達が一斉に頭を下げた。
「どういうことだ?」
「王子殿下の確認にやってきた侍女が、王子殿下の様子がおかしいと報告してきましてので、確認させていただきましたところ……、どうやら、王子殿下は高熱を出されているようでして……」
「病気なのか?」
「いえ……。今、医師を呼び出しております」
思ってもみないオスミンの容態急変に、アデラが心配そうにオスミンの寝台のすぐ隣にやってきた。
そっと、幼い息子の額に手を置いてみると、ものすごい熱さが手の平に伝ってくる。
「オスミン……。――アルデーラ様……、オスミンの額が、ものすごく熱く……」
「医師はまだかっ」
「ただいま……」
国王に急かされ、その場にいた侍女達が大慌てで医師を呼びにいく。
「オスミン……。一体、なぜ……?」
王宮に戻ってきたオスミンは元気で、興奮が収まりきらないまま、たくさんの説明をしてくれて、お土産をみせてくれて、イングラムと大はしゃぎしていたのに……。
* * *
「オスミンの容態が急変した?」
「そうだ」
まず、朝一番で、国王陛下の挨拶に伺ったギルバートの前で、曇り顔の消えないアルデーラの厳しい表情を見返し、ギルバートも驚いていた。
「あの……そのことで、実は、昨日、助言されていたことをお話しすることを忘れていましたので、今朝は、まず先に、陛下の元に挨拶に伺わせていただきました」
「助言? なんのだ?」
「実は――」
ギルバートはコトレアを発つ時に、セシルから一つの助言をされていた。
昨日は、オスミンが王宮に戻ってきたことで、はしゃいでいるオスミンに急かされて王妃も忙しそうだったので、ギルバートも挨拶だけを済まし、その場を立ち去っていた。
それから、騎士団に戻り、団長に報告を済ませ、溜まりに……溜まっていた書類の山を見て溜息を吐き出しながら、仕方なく、上に乗っている数枚だけの書類を確認し、騎士の仕事を終わらせ、王宮の自分の館に戻ってきた。
その時に、あっ……と、セシルから教えてもらった助言を、王妃に説明し忘れていたことを思い出したギルバートだった。
「あの頃の年頃は、興奮しすぎたり、はしゃぎ過ぎると、夜中に悪夢を見ることがよくあるらしいんです。日中の反動が反対に夢に出てくる、という説らしいのですが、それでも、コトレアの邸にいる時は、その傾向がなかったようですから、王宮に戻られた数日は、少し様子を見てみてくださいね」
そう、忠告ももらっていた。そして、次の助言も一緒に。
「それから、まだあんなに小さな体で長旅を続け、移動を続け、そして、領地内でも動き回っていらっしゃいましたから、王宮に戻られたら一安心して、体調を崩してしまうかもしれませんね」
例えば、とセシルが少し考える素振りをみせ、
「数日、熱が出てしまったり、など」
「熱ですか? 病気になるということですか?」
「いいえ。それは、安心してしまうことで、今まで緊張状態や興奮状態で発散されていたアドレナリンの急激な減少により、体内の抗体能力が落ちてしまうことから、一気に疲労が出てしまうのでしょう」
そして、この頃では定例になってきている難しい医学用語が混ざって、ギルバートの理解も半分半分、といったところだろうか。
「心配なされるかもしれませんが、数日安静にし、戻られた一週間は、せめて何もせず、リラックスさせてあげてくださいね。長距離の移動というは、自身で自覚している以上に、体に負担をかけるものですから」
「そうなのですか?」
「ええ、そうです」
全く知らない単語やら、理解し難い医学的な説明ではあったが、しっかりと説明と忠告を受けて、はあ……と、納得したのかしないかは分からないギルバートはコトレアの領地を去っていた。
そして、セシルの予想通り――ではないが、王宮に到着して、両親であるアルデーラとアデラに迎えられ、意気揚々と初めての“遠出”の話を語るオスミンは、その晩、熱を出した。
そして、熱でうなされていたのかは知らないが、眠りながら泣き出してしまい、苦しんでいる息子を心配したアデラが、一晩中付き添うことになった。
それで、朝一番で挨拶にやって来たギルバートは、セシルからの説明のような忠告のような助言を、アルデーラにも伝えてはみたが、その微かに強張った表情から判断するに、きっとアルデーラもギルバートの話を理解し難く、そのまま助言を真に受けていいのかどうか……判断しかねているようだった。
幸運なことに、セシルが懸念した数日かもしれない――はなかったようで、丸一日熱でうなされていたオスミンは、次の日には熱もなく完治していて、旅の疲れもなんのその。
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