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Part 3
Е.а ごろ寝 - 04
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「そのようにおっしゃっていただいて、私もとても嬉しく思います」
「いえ……。わたくしの、感想など……」
「どのような感想や意見でも、私にはとってはとても重要なことなのです。ですから、リドウィナ様からそのような感想をいただけて、私もとても嬉しく思います」
「そう、ですか……」
「何か他にお気づきになったことはございませんか?」
「他に? あの……、他に、とはなんでしょうか?」
「気づいた点や、興味が惹かれたこと、または、なにか不思議に感じられたことなど、色々です。他には、変だなと思われたことや、嫌だなと思われたこともです」
「気づいた……点と申しますか、視察させていただいた施設やものは、わたくしにとって全て初めてお聞きするものでしたので、それで、忘れないようにと、少々、視察の記録を書き残しておいたのですが、もしかして……それは、してはいけない行為だったのでしょうか……?」
「視察の記録ですか? 視察をしている間に記録していらっしゃったのなら、書くことも大変だったのではないですか?」
「いえ、記録を書き残したのは、こちらのお邸に戻った時ですので」
あてがわれた客室には、机も椅子もあり、羽ペンや紙などもきちんと用意されていたから全く問題なかった、と示唆ししてるのだろう。
それでも、視察を終えて邸に戻って来る時間帯は夕食近くになっていてもおかしくはない。夕食後、一息ついているのではなく、毎日、一日の視察記録を書き残していたなんて、なんて真面目なご令嬢だろう。
宿題を忘れずに、ちゃんと毎日終わらせている模範生のようだ。
「問題ではありませんわ。ただ、他の貴族の方にはあまり話さないでいただけますと、よろしいのですが」
「もちろんです。そのようなことはしませんので、ご安心くださいませ」
「ありがとうございます。一応、内部事情と言いますか、領地内のことは、公開している情報もございますが、公開していない情報もあるものですから」
「わかりました。わたくしが書き残した情報は、絶対に共有いたしませんので」
そこまで、堅苦しく情報漏洩を心配しているセシルではないのだが、リドウィナの真剣で真面目な様子を見ていたら、ついつい笑みが漏れてしまいそうになる。
実は――セシルとリドウィナの会話を静かに聞きながら、ギルバートも多少驚いていたのは、セシルも知らないことである。
ギルバートの知る限りでも、リドウィナがこんなに話している場面や光景を見たことがなかったのだ。
リドウィナは、いつも大人しく、自分から積極的に話しかけてくるタイプでもなく、誰かがリドウィナに話の先を向ければ、それに受け答えすることはあっても、ほとんどいつもただ静かに控えているような場面しか、ギルバートは見たことがなかったのだ。
それで、実は――リドウィナはこんなにお喋りするご令嬢だったのか、と改めて驚いていたのだ。
これも、セシルの影響だろうか。すごいものである。
セシルは誰よりも聞き上手であるし、質問も的を得ていて明確だ。曖昧だったり、嫌みや皮肉もなく、そして、なによりも悪意も敵意もない、本心からの言葉で質問をするだけだ。
だから、質問された方も、セシルにつられて、自分の本心や答えを、つい、話してしまうのかもしれなかった。
「オスミン様、視察はいかがでしょうか?」
ちょこんと椅子の上に座って、大人達の会話を黙って来ているオスミンが、パッと顔を輝かせた。
「すばらしいですっ!」
「そうですか?」
「はいっ。おじうえが、「これはしらないものだなあ」 と、いつもいっていました!」
「オスミン様は、どうですか?」
「ぼくは、ぜんぶのことがはじめてですっ! セシルじょうのりょうちは、たくさんしらないことで、いっぱいです!」
「喜んでいただけたようで、私もとても嬉しく思います。オスミン様のお世話ができなくて、申し訳ございませんでした」
その謝罪を聞いて、オスミンは大真面目な顔をみせる。
「おじうえが、さいがいがあったから、とてもたいへんなんだ、といっていました。セシルじょうのおかあさまが、セシルじょうは、となりのむらで、ひとだすけをしている、といっていました。セシルじょうは、たいへんなしごとをして、たみをすくっているのです。ぼくのしさつは、おじうえがいっしょにいるから、いいんです」
「オスミン様……」
まだ、こんな幼い子供なのに、王子としての責任を躾されて、そして、それを疑うこともなく、自分の考えとして受け入れているオスミンが立派で、その立場の重さというものが、セシルの前でも浮き彫りになってくる。
「救済活動は、もう終えました」
「おわったのですか?」
「はい。ですから、もう向こうの村に戻ることはありませんの」
「でも、セシルじょうは、ごろね……している、といっていました」
「今日だけです。ゴロゴロと寝転がって、だらけているのですよ。仕事をする前に、少しだけ気を抜いているのです」
「きを、ぬいている? どうやってぬくのですか?」
「こうやって、なまけている状態のことを言います。仕事のことを考えずに、楽しいことを考えたり、話したり、おいしいものを食べたりして、自分の好きなことをして、気分転換しているのです」
その適当な説明もよく理解していないオスミンは、ふうん、とセシルの話を聞いている。
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります!
Hatur nuhun pikeun maca buku ieu.
~・~・~・~・~・~・~・~・
「いえ……。わたくしの、感想など……」
「どのような感想や意見でも、私にはとってはとても重要なことなのです。ですから、リドウィナ様からそのような感想をいただけて、私もとても嬉しく思います」
「そう、ですか……」
「何か他にお気づきになったことはございませんか?」
「他に? あの……、他に、とはなんでしょうか?」
「気づいた点や、興味が惹かれたこと、または、なにか不思議に感じられたことなど、色々です。他には、変だなと思われたことや、嫌だなと思われたこともです」
「気づいた……点と申しますか、視察させていただいた施設やものは、わたくしにとって全て初めてお聞きするものでしたので、それで、忘れないようにと、少々、視察の記録を書き残しておいたのですが、もしかして……それは、してはいけない行為だったのでしょうか……?」
「視察の記録ですか? 視察をしている間に記録していらっしゃったのなら、書くことも大変だったのではないですか?」
「いえ、記録を書き残したのは、こちらのお邸に戻った時ですので」
あてがわれた客室には、机も椅子もあり、羽ペンや紙などもきちんと用意されていたから全く問題なかった、と示唆ししてるのだろう。
それでも、視察を終えて邸に戻って来る時間帯は夕食近くになっていてもおかしくはない。夕食後、一息ついているのではなく、毎日、一日の視察記録を書き残していたなんて、なんて真面目なご令嬢だろう。
宿題を忘れずに、ちゃんと毎日終わらせている模範生のようだ。
「問題ではありませんわ。ただ、他の貴族の方にはあまり話さないでいただけますと、よろしいのですが」
「もちろんです。そのようなことはしませんので、ご安心くださいませ」
「ありがとうございます。一応、内部事情と言いますか、領地内のことは、公開している情報もございますが、公開していない情報もあるものですから」
「わかりました。わたくしが書き残した情報は、絶対に共有いたしませんので」
そこまで、堅苦しく情報漏洩を心配しているセシルではないのだが、リドウィナの真剣で真面目な様子を見ていたら、ついつい笑みが漏れてしまいそうになる。
実は――セシルとリドウィナの会話を静かに聞きながら、ギルバートも多少驚いていたのは、セシルも知らないことである。
ギルバートの知る限りでも、リドウィナがこんなに話している場面や光景を見たことがなかったのだ。
リドウィナは、いつも大人しく、自分から積極的に話しかけてくるタイプでもなく、誰かがリドウィナに話の先を向ければ、それに受け答えすることはあっても、ほとんどいつもただ静かに控えているような場面しか、ギルバートは見たことがなかったのだ。
それで、実は――リドウィナはこんなにお喋りするご令嬢だったのか、と改めて驚いていたのだ。
これも、セシルの影響だろうか。すごいものである。
セシルは誰よりも聞き上手であるし、質問も的を得ていて明確だ。曖昧だったり、嫌みや皮肉もなく、そして、なによりも悪意も敵意もない、本心からの言葉で質問をするだけだ。
だから、質問された方も、セシルにつられて、自分の本心や答えを、つい、話してしまうのかもしれなかった。
「オスミン様、視察はいかがでしょうか?」
ちょこんと椅子の上に座って、大人達の会話を黙って来ているオスミンが、パッと顔を輝かせた。
「すばらしいですっ!」
「そうですか?」
「はいっ。おじうえが、「これはしらないものだなあ」 と、いつもいっていました!」
「オスミン様は、どうですか?」
「ぼくは、ぜんぶのことがはじめてですっ! セシルじょうのりょうちは、たくさんしらないことで、いっぱいです!」
「喜んでいただけたようで、私もとても嬉しく思います。オスミン様のお世話ができなくて、申し訳ございませんでした」
その謝罪を聞いて、オスミンは大真面目な顔をみせる。
「おじうえが、さいがいがあったから、とてもたいへんなんだ、といっていました。セシルじょうのおかあさまが、セシルじょうは、となりのむらで、ひとだすけをしている、といっていました。セシルじょうは、たいへんなしごとをして、たみをすくっているのです。ぼくのしさつは、おじうえがいっしょにいるから、いいんです」
「オスミン様……」
まだ、こんな幼い子供なのに、王子としての責任を躾されて、そして、それを疑うこともなく、自分の考えとして受け入れているオスミンが立派で、その立場の重さというものが、セシルの前でも浮き彫りになってくる。
「救済活動は、もう終えました」
「おわったのですか?」
「はい。ですから、もう向こうの村に戻ることはありませんの」
「でも、セシルじょうは、ごろね……している、といっていました」
「今日だけです。ゴロゴロと寝転がって、だらけているのですよ。仕事をする前に、少しだけ気を抜いているのです」
「きを、ぬいている? どうやってぬくのですか?」
「こうやって、なまけている状態のことを言います。仕事のことを考えずに、楽しいことを考えたり、話したり、おいしいものを食べたりして、自分の好きなことをして、気分転換しているのです」
その適当な説明もよく理解していないオスミンは、ふうん、とセシルの話を聞いている。
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