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Part 3
Д.г 恥を知れ - 07
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「フィロの? なぜですか?」
オスマンドは、微かに笑みを乗せた瞳を細めるようにして、
「領民を見殺しにするような情けない領主が、偉そうにふんぞり返っているなど、恥を知れ――というように、叱り飛ばしておりましたから」
「あらあら」
ふふふ、とセシルの口からも笑いが漏れていた。
その光景を想像して、くすくすと、セシルが笑っている。
「いやあ、あのフィロは、子供の時から容赦のない子供だとは思っておりましたが、本当に、ご令嬢とは違った意味で、容赦がありませんねえ」
フィロは領地の執務官という立場を与えられても、それでも、平民だ。
爵位を継いでいないとはいえ、対する相手は、伯爵家の嫡男で、れっきとした貴族だ。
その貴族に非礼を働いたのなら、侮辱罪などで、フィロの首が飛んでいてもおかしくはない状況だ。
幸い、オラフソン伯爵家嫡男は、そこまで横柄な男ではなかったから、フィロの行動も見逃されたものの、そうでなければ、一体、どうなっていたことか。
「それなら、フィロに叱り飛ばされて、オラフソン伯爵嫡男の態度も改まったのかしら?」
「その場面を見逃してしまって、なんだか残念ですね」
あのフィロなら、徹底して、手抜きもせず、冷たく、オラフソン伯爵嫡男を叱り飛ばしていたことだろう。
その光景を見逃してしまって、ギルバートも、ついつい、残念に思ってしまう。
ふふと、セシルもギルバートに同意しているのか、笑いを堪えているようだった。
ボイマレの救済活動で多忙な中、コトレアに戻ってきたセシルは、その日のうちに、今まで溜まっていた仕事を片す為に、更なる多忙な時間を過ごしていた。
ギルバートとクリストフの二人は、セシルから、ゆっくりと休んでくださいね、と気遣われ、勧められたが、ギルバートはセシルの元から離れるのも嫌で、邪魔にならないように、セシルの傍にいさせてもらうことにしたのだ。
ギルバートが(個人的な理由で) セシルの傍に待機しているので、そのギルバートの護衛役としては、自分一人だけ怠けることもできず、結局、クリストフもギルバートの横で待機する羽目になっていた。
セシルに付き合わされて、二人も疲れているだろうに、文句の一つも言わず、ずっとセシルに付き合ってくれている二人に、セシルも大感謝である。それで、二人には、領地内のお店で買い出ししてもらった、たくさんの料理やスナックを提供したセシルだ。
この間、領地内の“ショッピングモール”で食べた、最近売り出したばかりの料理やスナックも混ざっていて、二人は大満足でそれをいただいていた。
その間、領地内の報告会も済ませ、オラフソン伯爵嫡男が訪ねて来たことで家族会談も済ませ、今までほったらかしにしていた王子殿下二人とリドウィナとも会話も済まし、視察の報告を聞いていたセシルだ。
「領地に戻って来るとすぐに、ご令嬢はまた多忙になっていらっしゃいますねえ」
「本当に」
ギルバートとクリストフが、出された料理やスナックをおいしくいただいている間、セシルは小さな皿の上に乗ったお菓子を一つ摘まむ程度である。
二人は、特別、護衛の仕事をしているのでもないから、椅子に座ってのんびりだ。対するセシルは、邸に帰って来てからというもの、書類と睨めっこ。報告会の集まりで指揮を取り、(余計な) お荷物である王子殿下達やゲストのリドウィナ達のお茶会でも気を遣い、休まる暇もないほどだ。
「では、今週末までには報告書をまとめておきますので」
「そう、ありがとう、フィロ。今日はここまでいいわ。ご苦労様」
「はい、わかりました。それでは、失礼させていただきます」
今日最後の仕事の締めが終わったのか、長い一日である。
ああ、それから、とセシルがフィロを呼び止めた。
「はい」
「フィロは、とても頼りになり、本当に有能な執務官ですね。フィロがいるから、私が領地を空けても、私は全く心配していませんのよ」
ふふふと、親愛を込めたセシルの瞳が優し気に緩み、そして、優しい微笑みも口元に浮かんでいた。
一拍、間が降りて、フィロが深々と頭を下げる。
「ありがとうございます」
ふふと、セシルはまだ嬉しそうだ。
それから、失礼しますと、もう一度、一礼し直したフィロが執務室を去って、その後ろ姿を見送っていたクリストフが顔を戻す。
「今のは、絶対に照れていましたね」
珍しいこともあるものだ、とクリストフの口調は感心しているようだった。
ギルバートもおかしそうに笑いながら、
「まあま、そんな風にからかうなよ。絶対服従を誓い、絶対の尊敬を向けている主から、あんな風に褒められたら、誰だって照れてしまうものだろう?」
親愛を込めて、あんな風に優しく微笑まれたら――普通なら、舞い上がって、踊り出していてもおかしくはない状況だ。
「ですが、フィロがとても優秀な執務官という事実は、本当ですもの。領地にやって来てから、フィロは、誰よりも努力を重ね、いつもいつも、勉強に励んでいましたからね」
「なるほど」
スラム街の孤児で、誰にも相手になどされない世界で、セシル一人だけが、フィロ達に、「人」 として生きていける世界を見せてくれた。
そのあまりに貴重過ぎるほどの機会を、与えてくれた。
だから、フィロ達はまだあんな子供で、まだあまりに若い年頃の青年達と成長しても、いつも、死に物狂いの努力を惜しまなかったのだろう。
セシルだけがくれた「機会」 を無駄にしない為に。そのセシルに報いられるように、恩が返せるようにと。
一世一代のチャンスを与えられたのだ。
それを無駄にするような、バカな子供達ではなかったのだ。
「あなたは、本当に、部下達に恵まれていますね」
「ええ、本当に。そのことには、いつも、私もとても感謝しておりますのよ」
だが、セシルがそんな人柄だから、セシルの元には、たくさんの貴重な人材が集まってくるのだ。惹き寄せられてしまうのだ。
きっと、そんな重要な事実を、セシルは理解していないだろうな、とはギルバートもちょっと思ってしまったことだった。
~・~・~・~・~・~・~・~・
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Хвала вам што сте прочитали овај роман
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オスマンドは、微かに笑みを乗せた瞳を細めるようにして、
「領民を見殺しにするような情けない領主が、偉そうにふんぞり返っているなど、恥を知れ――というように、叱り飛ばしておりましたから」
「あらあら」
ふふふ、とセシルの口からも笑いが漏れていた。
その光景を想像して、くすくすと、セシルが笑っている。
「いやあ、あのフィロは、子供の時から容赦のない子供だとは思っておりましたが、本当に、ご令嬢とは違った意味で、容赦がありませんねえ」
フィロは領地の執務官という立場を与えられても、それでも、平民だ。
爵位を継いでいないとはいえ、対する相手は、伯爵家の嫡男で、れっきとした貴族だ。
その貴族に非礼を働いたのなら、侮辱罪などで、フィロの首が飛んでいてもおかしくはない状況だ。
幸い、オラフソン伯爵家嫡男は、そこまで横柄な男ではなかったから、フィロの行動も見逃されたものの、そうでなければ、一体、どうなっていたことか。
「それなら、フィロに叱り飛ばされて、オラフソン伯爵嫡男の態度も改まったのかしら?」
「その場面を見逃してしまって、なんだか残念ですね」
あのフィロなら、徹底して、手抜きもせず、冷たく、オラフソン伯爵嫡男を叱り飛ばしていたことだろう。
その光景を見逃してしまって、ギルバートも、ついつい、残念に思ってしまう。
ふふと、セシルもギルバートに同意しているのか、笑いを堪えているようだった。
ボイマレの救済活動で多忙な中、コトレアに戻ってきたセシルは、その日のうちに、今まで溜まっていた仕事を片す為に、更なる多忙な時間を過ごしていた。
ギルバートとクリストフの二人は、セシルから、ゆっくりと休んでくださいね、と気遣われ、勧められたが、ギルバートはセシルの元から離れるのも嫌で、邪魔にならないように、セシルの傍にいさせてもらうことにしたのだ。
ギルバートが(個人的な理由で) セシルの傍に待機しているので、そのギルバートの護衛役としては、自分一人だけ怠けることもできず、結局、クリストフもギルバートの横で待機する羽目になっていた。
セシルに付き合わされて、二人も疲れているだろうに、文句の一つも言わず、ずっとセシルに付き合ってくれている二人に、セシルも大感謝である。それで、二人には、領地内のお店で買い出ししてもらった、たくさんの料理やスナックを提供したセシルだ。
この間、領地内の“ショッピングモール”で食べた、最近売り出したばかりの料理やスナックも混ざっていて、二人は大満足でそれをいただいていた。
その間、領地内の報告会も済ませ、オラフソン伯爵嫡男が訪ねて来たことで家族会談も済ませ、今までほったらかしにしていた王子殿下二人とリドウィナとも会話も済まし、視察の報告を聞いていたセシルだ。
「領地に戻って来るとすぐに、ご令嬢はまた多忙になっていらっしゃいますねえ」
「本当に」
ギルバートとクリストフが、出された料理やスナックをおいしくいただいている間、セシルは小さな皿の上に乗ったお菓子を一つ摘まむ程度である。
二人は、特別、護衛の仕事をしているのでもないから、椅子に座ってのんびりだ。対するセシルは、邸に帰って来てからというもの、書類と睨めっこ。報告会の集まりで指揮を取り、(余計な) お荷物である王子殿下達やゲストのリドウィナ達のお茶会でも気を遣い、休まる暇もないほどだ。
「では、今週末までには報告書をまとめておきますので」
「そう、ありがとう、フィロ。今日はここまでいいわ。ご苦労様」
「はい、わかりました。それでは、失礼させていただきます」
今日最後の仕事の締めが終わったのか、長い一日である。
ああ、それから、とセシルがフィロを呼び止めた。
「はい」
「フィロは、とても頼りになり、本当に有能な執務官ですね。フィロがいるから、私が領地を空けても、私は全く心配していませんのよ」
ふふふと、親愛を込めたセシルの瞳が優し気に緩み、そして、優しい微笑みも口元に浮かんでいた。
一拍、間が降りて、フィロが深々と頭を下げる。
「ありがとうございます」
ふふと、セシルはまだ嬉しそうだ。
それから、失礼しますと、もう一度、一礼し直したフィロが執務室を去って、その後ろ姿を見送っていたクリストフが顔を戻す。
「今のは、絶対に照れていましたね」
珍しいこともあるものだ、とクリストフの口調は感心しているようだった。
ギルバートもおかしそうに笑いながら、
「まあま、そんな風にからかうなよ。絶対服従を誓い、絶対の尊敬を向けている主から、あんな風に褒められたら、誰だって照れてしまうものだろう?」
親愛を込めて、あんな風に優しく微笑まれたら――普通なら、舞い上がって、踊り出していてもおかしくはない状況だ。
「ですが、フィロがとても優秀な執務官という事実は、本当ですもの。領地にやって来てから、フィロは、誰よりも努力を重ね、いつもいつも、勉強に励んでいましたからね」
「なるほど」
スラム街の孤児で、誰にも相手になどされない世界で、セシル一人だけが、フィロ達に、「人」 として生きていける世界を見せてくれた。
そのあまりに貴重過ぎるほどの機会を、与えてくれた。
だから、フィロ達はまだあんな子供で、まだあまりに若い年頃の青年達と成長しても、いつも、死に物狂いの努力を惜しまなかったのだろう。
セシルだけがくれた「機会」 を無駄にしない為に。そのセシルに報いられるように、恩が返せるようにと。
一世一代のチャンスを与えられたのだ。
それを無駄にするような、バカな子供達ではなかったのだ。
「あなたは、本当に、部下達に恵まれていますね」
「ええ、本当に。そのことには、いつも、私もとても感謝しておりますのよ」
だが、セシルがそんな人柄だから、セシルの元には、たくさんの貴重な人材が集まってくるのだ。惹き寄せられてしまうのだ。
きっと、そんな重要な事実を、セシルは理解していないだろうな、とはギルバートもちょっと思ってしまったことだった。
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