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Part 3
Д.в 災害救済 - 07
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「無理をなさらなくてよろしいのですよ。長旅で、すぐに豊穣祭やらなんやらと、忙しかったですからね。無理のない程度に、明日は、視察の合間にでも、休息なされたらいいかもしれませんわね」
「お気遣いありがとうございます。ですが――視察は、とても……、興味深く……。わたくしも……、たくさんのことを、学ばせていただいております……」
それで、リドウィナは、自分がエンジョイしていることが恥ずかしいのか、最後の方は、ポソポソと、小声になって、微かにだけ頬が赤らんでいた。
「それは良かったです。今は、少々、立て込んでおりまして、皆様の接客ができませんが、どうぞ、楽しんでいらしてくださいね」
「ありがとうございます……」
「ご令嬢、お話からしても、災害地の状況確認は、ほぼ、終えていらっしゃるようですが、あとどのくらい、ボイマレに滞在なさるおつもりですか?」
「一応、数日程度なのですが――オラフソン伯爵の返答次第にもよるでしょう。王都から駆け付けてきたとしても、軽く、五日はかかってしまいますから」
「ふむ。では、その間、騎士団の護衛を外すことは、好ましくありませんね。最悪で、もう一週間の滞在を、延長してもいいですよ」
「それは――無理ではございませんか?」
「明日、私からも事情の説明で、早馬を飛ばしておきます。この状況で、ギルバートも、あなたの元から去るのは、心穏やかではないでしょうからね」
ギルバートは何も言わないが、今はまだ、セシルから離れる気はなかったのだ。
あまりに見事に、あまりに卒なく、あまりに――なにもかもを一人でやり遂げてしまうセシルを目前にして、唖然として、呆然として言葉もないのはギルバートもクリストフも同じだ。
だが、そんなセシルを一人きりで残していくのは、心配なのである。
オラフソン伯爵家の対応だって確認しておきたいし、せめて、あと一週間は、この状況が落ち着くとは思えないから、レイフの提案には、ギルバートも賛成だったのだ。
最初の予定は、コトレア領に到着した日から、一週間の滞在予定だった。だから、あと数日で、アトレシア大王国に戻る予定ではあるのだ。
「事情を説明しておけば、それほど問題にはならないでしょう」
「そう……ですか?」
王国の宰相閣下が、そんなに長く休暇を取って、本当に問題にならないのだろうか?
絶対に、国王陛下に怒られること間違いなしだと、セシルは思うのだが……。
「その間、視察を続けても?」
「ええ、もちろんです。――お母様、皆様の接客を、お願いしてもよろしいです?」
「ええ、もちろんですわ。オスミンさまとは、明日、一緒に、工房で体験コースをするお約束をしましたのよ」
「そうですか。では、お願いしますね」
「ええ、任せてくださいませ」
ふいっと、セシルの視線がレイフに戻され、
「どうしました?」
「体験コースでは、木工パズルに色を塗って、パズルを完成させるのですが、その工程で、オスミン様なら――少し、洋服が汚れてしまうかもしれません」
「ああ、それもいい勉強になるでしょう」
レイフには全く問題ないようで、気にもしていないようだった。
「うちでは、そういったことで、厳しく躾されませんが……」
王国、特に、王族では違うのでは?――と、口に出されぬ問いにも、レイフの態度は変わらない。
「郷に入っては郷に従え、ですよ。いい経験になるでしょう」
「そうですか。それなら、オスミン様も楽しまれますね」
「ええ、楽しみです」
いや……、レイフが一番に楽しんでいるであろう事実は、セシルにも伝わって来た。
「ご令嬢も、今日は、お疲れになったことだと思いますが、一つ、質問をしてもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「先程の、“お泊り会”というものは、一体、なんなんでしょう?」
「孤児院で年に一度、お泊り会を開くんです。その日は、朝の掃除を終えたら、一日が全員で遊ぶ日になるんです。全員でゲームをしたり、全員で夕食の作る準備をしたり。そして、最後は、ホールに集まって、全員で一緒に寝るんですのよ」
「なるほど」
「ワイワイと賑やかな場で、全員で寝る機会などないでしょう? そうやって集まることは、子供達にとっても、とても楽しい経験なのですよ。それで、ホールを片づけ、全員でマットを並べて、そこでお泊り会をするんです。世話をする保育係や手伝いの人にとっては、大変な一日ですけれどね」
ふふ、とその光景を思い出してセシルもおかしそうに笑う。
「面白そうな体験ですね」
「ええ、子供の時にしかできませんから。この頃では、領地の小さな子供も、たまに招待しているんですよ。友達や知り合いの家に泊まりに行く、ということはなかなかありませんもの。それで、自分の家ではない場所に泊まりに行くことも、楽しいでしょう?」
「楽しそうだ」
「それで、たくさんの人数は呼べませんけれど、5~6歳程度の子供で、ある程度、問題がなさそうな子供を、招待しているんです」
「問題とは?」
「その年頃の子供は、一人きりで寝られない子供もいますから。親元を離れてしまうと、大泣きしてしまったり」
「ああ、なるほど」
「でも、結構、平気な子供達もいましてね」
「ああ、それは楽しそうだ」
本当に、レイフも全く知りもしないような体験談である。
「あなたの領地は、本当に興味深いですね」
「ふふ。ありがとうございます。その言葉が、最高の誉め言葉になりますわ」
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります!
Spas ji bo xwendina vê romanê
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「お気遣いありがとうございます。ですが――視察は、とても……、興味深く……。わたくしも……、たくさんのことを、学ばせていただいております……」
それで、リドウィナは、自分がエンジョイしていることが恥ずかしいのか、最後の方は、ポソポソと、小声になって、微かにだけ頬が赤らんでいた。
「それは良かったです。今は、少々、立て込んでおりまして、皆様の接客ができませんが、どうぞ、楽しんでいらしてくださいね」
「ありがとうございます……」
「ご令嬢、お話からしても、災害地の状況確認は、ほぼ、終えていらっしゃるようですが、あとどのくらい、ボイマレに滞在なさるおつもりですか?」
「一応、数日程度なのですが――オラフソン伯爵の返答次第にもよるでしょう。王都から駆け付けてきたとしても、軽く、五日はかかってしまいますから」
「ふむ。では、その間、騎士団の護衛を外すことは、好ましくありませんね。最悪で、もう一週間の滞在を、延長してもいいですよ」
「それは――無理ではございませんか?」
「明日、私からも事情の説明で、早馬を飛ばしておきます。この状況で、ギルバートも、あなたの元から去るのは、心穏やかではないでしょうからね」
ギルバートは何も言わないが、今はまだ、セシルから離れる気はなかったのだ。
あまりに見事に、あまりに卒なく、あまりに――なにもかもを一人でやり遂げてしまうセシルを目前にして、唖然として、呆然として言葉もないのはギルバートもクリストフも同じだ。
だが、そんなセシルを一人きりで残していくのは、心配なのである。
オラフソン伯爵家の対応だって確認しておきたいし、せめて、あと一週間は、この状況が落ち着くとは思えないから、レイフの提案には、ギルバートも賛成だったのだ。
最初の予定は、コトレア領に到着した日から、一週間の滞在予定だった。だから、あと数日で、アトレシア大王国に戻る予定ではあるのだ。
「事情を説明しておけば、それほど問題にはならないでしょう」
「そう……ですか?」
王国の宰相閣下が、そんなに長く休暇を取って、本当に問題にならないのだろうか?
絶対に、国王陛下に怒られること間違いなしだと、セシルは思うのだが……。
「その間、視察を続けても?」
「ええ、もちろんです。――お母様、皆様の接客を、お願いしてもよろしいです?」
「ええ、もちろんですわ。オスミンさまとは、明日、一緒に、工房で体験コースをするお約束をしましたのよ」
「そうですか。では、お願いしますね」
「ええ、任せてくださいませ」
ふいっと、セシルの視線がレイフに戻され、
「どうしました?」
「体験コースでは、木工パズルに色を塗って、パズルを完成させるのですが、その工程で、オスミン様なら――少し、洋服が汚れてしまうかもしれません」
「ああ、それもいい勉強になるでしょう」
レイフには全く問題ないようで、気にもしていないようだった。
「うちでは、そういったことで、厳しく躾されませんが……」
王国、特に、王族では違うのでは?――と、口に出されぬ問いにも、レイフの態度は変わらない。
「郷に入っては郷に従え、ですよ。いい経験になるでしょう」
「そうですか。それなら、オスミン様も楽しまれますね」
「ええ、楽しみです」
いや……、レイフが一番に楽しんでいるであろう事実は、セシルにも伝わって来た。
「ご令嬢も、今日は、お疲れになったことだと思いますが、一つ、質問をしてもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「先程の、“お泊り会”というものは、一体、なんなんでしょう?」
「孤児院で年に一度、お泊り会を開くんです。その日は、朝の掃除を終えたら、一日が全員で遊ぶ日になるんです。全員でゲームをしたり、全員で夕食の作る準備をしたり。そして、最後は、ホールに集まって、全員で一緒に寝るんですのよ」
「なるほど」
「ワイワイと賑やかな場で、全員で寝る機会などないでしょう? そうやって集まることは、子供達にとっても、とても楽しい経験なのですよ。それで、ホールを片づけ、全員でマットを並べて、そこでお泊り会をするんです。世話をする保育係や手伝いの人にとっては、大変な一日ですけれどね」
ふふ、とその光景を思い出してセシルもおかしそうに笑う。
「面白そうな体験ですね」
「ええ、子供の時にしかできませんから。この頃では、領地の小さな子供も、たまに招待しているんですよ。友達や知り合いの家に泊まりに行く、ということはなかなかありませんもの。それで、自分の家ではない場所に泊まりに行くことも、楽しいでしょう?」
「楽しそうだ」
「それで、たくさんの人数は呼べませんけれど、5~6歳程度の子供で、ある程度、問題がなさそうな子供を、招待しているんです」
「問題とは?」
「その年頃の子供は、一人きりで寝られない子供もいますから。親元を離れてしまうと、大泣きしてしまったり」
「ああ、なるほど」
「でも、結構、平気な子供達もいましてね」
「ああ、それは楽しそうだ」
本当に、レイフも全く知りもしないような体験談である。
「あなたの領地は、本当に興味深いですね」
「ふふ。ありがとうございます。その言葉が、最高の誉め言葉になりますわ」
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