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Part 3

Д.в 災害救済 - 03

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 次にセシルの視線が向けられた先に、ちゃんとした背広を着て、ネクタイをとめている紳士がいた。

「問題は、災害救済でかかる資金ですが」
「ええ、そうですねえ……」

 それを予想していたのか、その紳士は驚いている様子はなかった。

「今回は、仕方がありません。手伝いにでる領民達が仕事を抜ける場合、その分は、領地でカバーすることにします。予定していない出費、及び、経費も同じです。今回は緊急ですから、特別に、領地預金を解放することを許可します」

 ふう……と、紳士が軽く息を吐き出し、

「仕方がありませんね……。今回は――特別ですから」
「ええ、本当に」

 なにか含みのある声音だったが、セシルと紳士の会話は、それ以上、詳しいことを話さなかった。

「災害地区での怪我人収容所と、当座の簡易宿舎の建設に、男手が必要です」
「何人ほどですか?」

「せめて、二十人程は必要なんですけれど?」
「うーむ……、わかりました。すぐに呼び集めてみます。この際、見習いも連れていくのはどうですか? それとも、危険でしょうか?」

「それほど危険ではありませんから、そうですね――ええ、見習いも、数に入れて構いません」
「わかりました。それなら、たぶん問題ないと思います。一緒の移動ですか?」

「ええ、全員で移動した方が、手間がはぶけますから」
「わかりました。大急ぎで準備させます」

「よろしくお願いしますね。一応、今の所、日帰りで通うことを考えていますが――泊まり込みの方が、いいかしら?」
「それは――まだ、なんとも……。一応、泊まり込みができるよう、数日の着替えなどは、用意させてみましょう」

「そうね。そうしてもらえると、動きやすいわ」
「はい、わかりました」

「皆さんも、豊穣祭の後片付けで大変な時に無理をかけてしまいますが、天災など、人の手に及ぶものではありません。ですから、この領地でも、できる限りの手伝いをするつもりです。その間は、みなさんの協力を頼りにしています」

「はい、まかせてください」
「お任せください」

「私が領地を不在している間、問題があれば、すぐにオスマンドに」
「はい。今の所、なにも問題はありませんから、大丈夫です」
「うちもですよ」
「そうですか。それを聞いて安心しました。――では、皆さん、今日もご苦労様でした」

 それが解散の合図だったのか、全員が椅子から立ち上がり、セシルにお辞儀をして、会議室を後にしていった。

「では――次は、こちらの報告会を済ませましょう。皆様、どうか、こちらへいらしてくださいね」

 どうやら、次は、部屋の隅で控えていた残りの全員との報告会があるようだった。

 ヘルバート伯爵に促されて、レイフやリドウィナが大きな丸いテーブルの方に寄ってくる。その後ろにギルバート達、シリルやトムソーヤ達も。

 さっき会議室を後にした領地の代表者と入れ替わるように、セシルの母親も、会議室に顔を出していた。

 全員がテーブルを囲んで落ち着くと、セシルが全員を見渡していく。

「まずは、領地の報告から済ませましょう。その後に、ボイマレの災害状況の報告をしますので。――シリル?」

「はい。領地内及び、宿場町での豊穣祭の後片付けは、ほぼ終了しています。後は、使用された食器類の洗浄と片づけ、小物の片づけ程度です。食器の洗浄は、日干しもしなければなりませんから、まだ数日はかかると思います」

「そうね。でも、それは予定通りだから、問題はないわね」
「はい」
「ありがとう。では、ラソム」

 返事をした男性は領地の騎士団の制服を着ていて、領地の警備と護衛を任されている騎士団の団長だ。

「領地内での問題はありません。宿場町での警備も、今はそれほど問題があがっておりません。観光客が一気に引きましたので、宿場町の警護は、通常シフトに戻しても、左程、問題はみられないと思います」

「そう。でも、明日から、領地内の正騎士全員、宿場町の巡回と警備に回すことを考えています」

 それは初耳で、一拍の間があってから、ラソムが口を開いた。

「――なにか問題でも?」

「いいえ。ただ、今年の豊穣祭は大盛況を遂げましたからね。「時計塔」 の噂も、近隣に一気に広められ、これからもまだ、観光客上昇が予想されるでしょう。そして、そんな中で、ボイマレの天災。領地内外での移動が激しく、人の動きも激しくなっています。私が不在することも多い中、外部の者にうろつかれるのは迷惑です」
「なるほど」

 要は、セシルがいない場で――セシルの領地の調査や偵察に忍び込んでくる外部の人間に警戒を強めたい、と言っているのだろう。

 なにしろ、セシルの領地では、とかく、新しいことが開発されたり、実行されている為、この頃では、その注目度が上がりだしている。

 「時計塔」 の完成をもって、その知名度が一気に上がったようなものである。

 だから、未だにセシルの内情を探ろうとしている王宮の偵察者だったり、他領から(セシルを妬む) ライバル視され、その為に忍び込んだ密偵など、表面化ではそういった動きは見られなかったが、それでも、セシルは警戒を強めている。

「これからしばらく、宿場町は、全正騎士の巡回と警備で。見習い組は、領地内の警護と護衛を」
「わかりました」




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