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Part 3
* Д.в 災害救済 *
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ボイマレを発ったセシル達一行は、快調なスピードで、コトレアに戻って来ていた。
夕食の時間位に戻って来ることができた一向だったが、もう、中秋に入り、すでに日は落ち、辺りは、灰色がかった暗がりが広がり始めていた。
「皆様、申し訳ありませんが、全員、洗浄作業に協力してください」
「洗浄、作業?」
またしても、聞き慣れない、新たな単語が登場した。
「ええ、そうです。この領地では、災害地などに向かった者は、全員、洗浄作業を済ませる義務があります。「洗浄」 と言っても、全身に水をかけて洗い流すわけではありませんので、それは心配なさらないでくださいね」
「災害地が、問題だからですか?」
「災害地では、どのような病気や病原菌が広がっているか、確認が困難です。そういった場所、地域、または区域に出向いた場合、私達の洋服や、靴の底の泥などにも、災害地の問題が一緒にくっついてくる可能性があります。ですから、領地内に入る前に、それを洗浄し、最低限でも、病原菌や病気となる元を持ち込ませないようにしているのです」
へえぇ、とギルバート達が素直に感心してしまう。
ギルバート達だって、いつも、コトレアの領地の衛生管理はとても優れているな、と感心しているものだ。
常備の医師がいなくても、自分達でできる限りの衛生管理、病気対策、感染対策など、そういった政策が、この領地には根付いているのだ。
セシルに先導され、コトレアの領門に到着すると、セシルを待っていた騎士達が数人出て来て、一般用の領門から離れた横の門を開けた。
「どうぞ、こちらへ」
領地専用の門を通り抜けるとすぐに煉瓦の壁ができていて、一般用の領門を通過した通行者からは、完全に、中の様子が隠されているようだった。
全員が馬から降りると、騎士達が馬を引いていく。
「マスター、お帰りなさいませ」
「ええ、今、戻りました。今夜は私達だけですから、洗浄作業を終えたら、業務用門を閉じておいてください」
「わかりました」
「皆様、どうぞこちらへ」
セシルの後を追っていくと、すぐ近場に、大きな丸い鉄が敷かれている場所があった。
その上に立ち、足元を覗いて見ると、どうやら穴が開けられていて、その端には、どこかに続く溝が見えた。
「これは何ですか?」
「一応、簡易の下水道です」
「げすい、どう? それは、何でしょう?」
「汚れた水や下水を流すように作られた、排水用の水路です」
「はあ……」
全く未知の話を聞いて、ギルバート達は何に相槌を返せばよいのか分からない。
「汚染した水を、飲料水として使用している水路と一緒に混ぜてしまっては、体内に、危険物や病原菌が簡単に混ざってしまいますからね。感染や伝染を防ぐ為の予防策ですの」
「ああ……、なるほど。それで、清潔な水場から離れて、汚れてしまった水場を繋いでいるのですね」
「そうです」
「そうですか……。本当に、あなたの領地は、すごいですね……」
「まだまだ原始的で、排水や下水の機能も、ほとんどないのですが……」
いやいや、そんなことはないだろう。
そんなコンセプトだって、ギルバート達は聞いたことがない。
新たな発見に驚かされてしまったギルバートだったが、この話は兄のレイフにしっかりと説明しておくべきだろうと、ギルバートも頭に入れておく。
アトレシア大王国だって、衛生管理を強化し、医師がいない土地や領地でも、病気を減らしていく政策は大切な課題だ。
先程の馬達は、長い葉っぱで作られたような箒で、体の泥やほこりなどを落してもらい、そして、足も水で洗い流されていた。
「失礼致します」
寄って来た騎士の前で、セシルが両腕を上げたのを見て、ギルバート達も真似をする。
騎士達が箒を使い、丁寧に洋服を払ってくれる。ブーツの上の泥や埃も落としてくれた。
「申し訳ありませんが、片足ずつ、後ろに上げていただけませんか?」
「わかった」
片足立ちで、クイッと後ろに足を曲げてみせると、桶を抱えた騎士が小さめのブラシで、ブーツの底についている泥を洗い流す。
その全部の作業を終えると、おしぼりを渡された。
「まず、顔全体と、首の当たりを拭いてください。最後に手を」
「わかりました」
ほんわかと、まだ温かいおしぼりで顔を拭くと、乾いていた肌には、濡れた水分が心地よかった。
言われた通り、騎士団の制服の上から首回りも拭いて、そして手も拭き終わる。
茶色くなっていたことから、災害地で立って動き回っていただけなのに、かなり汚れていたんだなと、そこでギルバート達も気が付いた。
「皆様、ご協力ありがとうございました。では、戻りましょう」
全員が馬に乗り上げ、セシルの邸を目指す。
大通りから一本外れた馬車道には、所々に、設置されているかがり火の外灯が照らされ始めていた。
「皆様、まず、今、着ている洋服を着替えてくださいね? すぐに洗濯に出しますが、明日は、制服がまだ乾いていないと思いますので、私服になってしまいますが……」
「いえ、それは問題ありません」
「ありがとうございます」
ギルバート達には、邸に泊まらせてもらっている間、客人用の洗濯袋が渡されている。
「オスマンド、全員を召集してください」
「かしこまりました」
「皆様、着替えを終えましたら、どうぞ、会議室の方へお越しになってください。夕食をそこに運ばせますので。慌ただしく、申し訳ありません……」
「いえ、お気になさらないでください」
「ありがとうございます。では、また」
それで、全員が、まずは、自室に戻って行く。
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。
អរគុណដែលបានអានសៀវភៅនេះ
~・~・~・~・~・~・~・~・
夕食の時間位に戻って来ることができた一向だったが、もう、中秋に入り、すでに日は落ち、辺りは、灰色がかった暗がりが広がり始めていた。
「皆様、申し訳ありませんが、全員、洗浄作業に協力してください」
「洗浄、作業?」
またしても、聞き慣れない、新たな単語が登場した。
「ええ、そうです。この領地では、災害地などに向かった者は、全員、洗浄作業を済ませる義務があります。「洗浄」 と言っても、全身に水をかけて洗い流すわけではありませんので、それは心配なさらないでくださいね」
「災害地が、問題だからですか?」
「災害地では、どのような病気や病原菌が広がっているか、確認が困難です。そういった場所、地域、または区域に出向いた場合、私達の洋服や、靴の底の泥などにも、災害地の問題が一緒にくっついてくる可能性があります。ですから、領地内に入る前に、それを洗浄し、最低限でも、病原菌や病気となる元を持ち込ませないようにしているのです」
へえぇ、とギルバート達が素直に感心してしまう。
ギルバート達だって、いつも、コトレアの領地の衛生管理はとても優れているな、と感心しているものだ。
常備の医師がいなくても、自分達でできる限りの衛生管理、病気対策、感染対策など、そういった政策が、この領地には根付いているのだ。
セシルに先導され、コトレアの領門に到着すると、セシルを待っていた騎士達が数人出て来て、一般用の領門から離れた横の門を開けた。
「どうぞ、こちらへ」
領地専用の門を通り抜けるとすぐに煉瓦の壁ができていて、一般用の領門を通過した通行者からは、完全に、中の様子が隠されているようだった。
全員が馬から降りると、騎士達が馬を引いていく。
「マスター、お帰りなさいませ」
「ええ、今、戻りました。今夜は私達だけですから、洗浄作業を終えたら、業務用門を閉じておいてください」
「わかりました」
「皆様、どうぞこちらへ」
セシルの後を追っていくと、すぐ近場に、大きな丸い鉄が敷かれている場所があった。
その上に立ち、足元を覗いて見ると、どうやら穴が開けられていて、その端には、どこかに続く溝が見えた。
「これは何ですか?」
「一応、簡易の下水道です」
「げすい、どう? それは、何でしょう?」
「汚れた水や下水を流すように作られた、排水用の水路です」
「はあ……」
全く未知の話を聞いて、ギルバート達は何に相槌を返せばよいのか分からない。
「汚染した水を、飲料水として使用している水路と一緒に混ぜてしまっては、体内に、危険物や病原菌が簡単に混ざってしまいますからね。感染や伝染を防ぐ為の予防策ですの」
「ああ……、なるほど。それで、清潔な水場から離れて、汚れてしまった水場を繋いでいるのですね」
「そうです」
「そうですか……。本当に、あなたの領地は、すごいですね……」
「まだまだ原始的で、排水や下水の機能も、ほとんどないのですが……」
いやいや、そんなことはないだろう。
そんなコンセプトだって、ギルバート達は聞いたことがない。
新たな発見に驚かされてしまったギルバートだったが、この話は兄のレイフにしっかりと説明しておくべきだろうと、ギルバートも頭に入れておく。
アトレシア大王国だって、衛生管理を強化し、医師がいない土地や領地でも、病気を減らしていく政策は大切な課題だ。
先程の馬達は、長い葉っぱで作られたような箒で、体の泥やほこりなどを落してもらい、そして、足も水で洗い流されていた。
「失礼致します」
寄って来た騎士の前で、セシルが両腕を上げたのを見て、ギルバート達も真似をする。
騎士達が箒を使い、丁寧に洋服を払ってくれる。ブーツの上の泥や埃も落としてくれた。
「申し訳ありませんが、片足ずつ、後ろに上げていただけませんか?」
「わかった」
片足立ちで、クイッと後ろに足を曲げてみせると、桶を抱えた騎士が小さめのブラシで、ブーツの底についている泥を洗い流す。
その全部の作業を終えると、おしぼりを渡された。
「まず、顔全体と、首の当たりを拭いてください。最後に手を」
「わかりました」
ほんわかと、まだ温かいおしぼりで顔を拭くと、乾いていた肌には、濡れた水分が心地よかった。
言われた通り、騎士団の制服の上から首回りも拭いて、そして手も拭き終わる。
茶色くなっていたことから、災害地で立って動き回っていただけなのに、かなり汚れていたんだなと、そこでギルバート達も気が付いた。
「皆様、ご協力ありがとうございました。では、戻りましょう」
全員が馬に乗り上げ、セシルの邸を目指す。
大通りから一本外れた馬車道には、所々に、設置されているかがり火の外灯が照らされ始めていた。
「皆様、まず、今、着ている洋服を着替えてくださいね? すぐに洗濯に出しますが、明日は、制服がまだ乾いていないと思いますので、私服になってしまいますが……」
「いえ、それは問題ありません」
「ありがとうございます」
ギルバート達には、邸に泊まらせてもらっている間、客人用の洗濯袋が渡されている。
「オスマンド、全員を召集してください」
「かしこまりました」
「皆様、着替えを終えましたら、どうぞ、会議室の方へお越しになってください。夕食をそこに運ばせますので。慌ただしく、申し訳ありません……」
「いえ、お気になさらないでください」
「ありがとうございます。では、また」
それで、全員が、まずは、自室に戻って行く。
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