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Part 3
Д.б 状況確認 - 06
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手渡された紙を持ったまま、セシルが少し考え込んで、それからすぐに、トムソーヤが押さえている画板の上に紙を置いて、ペンを取る。
スー、スーっと、手早く、紙の上にセシルが線を書き込みだした。
「まず初めに、ここの欄が“名前”を記入するところ。一列ごとに、一緒に住んでいる家族を、全員、ひとまとめにして記入しましょう。そして、次の欄から、“ボイマレ”、“コトレア”、“生存者”、“行方不明”、“死亡”、それから“家屋”、“その他”――まず初めは、これくらいかしら?」
その紙の中には何本かの縦の線が描かれていて、現代版で言えば、統計用のテーブルができていた。
「“名前”の欄には全員の名前、性別、年齢を。“ボイマレ”と“コトレア”は、現在の所在地。〇と×で区別を付けましょう? もし、コトレアの領地に移動することになったら、その日にちも、隣に記入しておいてくれたら助かるわ」
「わかりました」
「次の欄は、私達自身が確認した状況で、〇と×ね。もし、行方が分からなかったり、生存確認ができていない場合は、全部“行方不明”の欄に。私達が、きちんと、最終的に確認を終えるまでは、“死亡”欄を更新しないでね。もし――その確認ができた場合、日付けも、一応、記入しておいてね」
「はい」
「“家屋”は、家屋破損で家があるかないのかの確認。それで、“その他”の部分には、職業やできる仕事など。あとは、家の場所がどの辺だった,のかとか、そういう気づいたことを、何でも記入してね。――こういったのでどうかしら?」
「わかりました、問題ありません」
昔から、セシルは、こうやって、組織的や合理的な作成が、ものすごい得意な女性だった。
シフトの体制や組み込みなども簡単に、アッと言う間に終わらせてしまうし、こういった情報集めになると、セシルにとって何が必要なのか、どんな情報が必要なのかと、それがあまりに整然と整頓され、構成されて作られる。
トムソーヤ達が領地にやって来てからも、いつもセシルからは、情報のまとめ方、分析の仕方、統計の取り方などなど、要は、現代での情報管理やデーター管理のやり方を、直に教わって来たのだ。
「これ、番号を入れてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ。使いやすいように、自分達で工夫してね?」
それで、トムソーヤはもう一本のペンを取り上げ、一番左側に線を加え、1番を最初の列に記入した。
「なあ? これ、他の人数で分担するなら、誰が情報集めたか、記録しておいた方がいいんじゃないか?」
「あっ、確かに」
ケルトの指摘で、右端上に、トムソーヤが“TF”のイニシャルと、ページナンバーも記録する。
「じゃあ、それをうちの騎士達と、王国騎士団の騎士の方で、分配しましょう」
「わかりました」
「きっと、生存確認をしている間、みんなから、他の名前が挙がってくる可能性が大きいと思います。「うちの兄は、妹は、母は?」 っていう感じで。もしかすると、友達の名前とかも、上がってくるかもしれませんね。その時は、もう、全部、記録してください。後々、全員を回っている間に、家族構成などがはっきりしてくるでしょうから。今は、できる限りの情報を集めることが重要です。漏らさず、全部、記録してね?」
「わかりました」
「今、現在、集まってもらった生存者達は、それぞれに家族が揃っている組と、はぐれたり、行方不明が分かっている組、それから怪我人の3グループに分かれています。うちの騎士達と、王国騎士団の騎士達で分担して、生存確認を急がせましょう」
「はい。ですが、画板は、四つしか持ってきていません」
「それなら、あなた達ともう一組がうちの騎士から、残りの二つを、王国騎士団にお任せしましょう? その指揮は、ケルト、あなたが」
「わかりました」
「では、取り掛かってください」
それで、二人はすぐに動き出す。
「クリストフ」
「わかりました」
セシルの指示を伝えに、クリストフもすぐに動いていた。
全員が動き出した中、ギルバートも、つい、手を顎に押し当てながら唸ってしまう。
「どうかなさいましたか、ギルバート様?」
「いえね――あなたの領地の騎士達は、一から十まで説明しなくても、あなたの簡単な指示だけで、何をすべきなのかすぐに理解していますし、納得しているように見えましたもので」
「そのように訓練していますので」
どのような訓練なんですか?
ついつい、ギルバートの頭にもそんな質問が浮かんできてしまう。
王国騎士団とは全く違った訓練方法をする、コトレア領の騎士達。おまけに、ゲリラ戦などという未知なる戦法を得意とする、騎士団だ。
災害地にやって来ても、指示が簡潔で、あまりに端的だ。長々と全部を説明する必要がないのが明らかなほど、指示が早くて、それを受けている騎士隊の行動が早い。
一体、それはどんな訓練を受けたら、そんな風な成果がでるのか、ギルバートも確認してみたいものである。
クリストフの指示を受けて、四組の騎士達は馬でその場を離れて行った。ケルトの説明を聞いて、「画板」を持たされた組は、トムソーヤの持っている紙を真似て、今は必至でテーブルの枠を書き込んでいる。
イシュトールとユーリカは、ケルトとトムソーヤと同じように、村人達の確認に向かわせる。
セシルの隣にはいつもギルバートとクリストフが付き添っているので、今は、セシルから別行動するように、二人は言い遣ったのだ。
最初の村人達が、セシル達が待機している場所にやって来るのに、それほど時間はかからなかった。
子供連れの親子らしく、一体、村に何が起きたから判らず、混乱して、子供達は怯えた様子があらわなほど、村人達は憔悴していた。
どうやら、土砂崩れを間近で目撃してしまったような家族である。
セシルに促され、草むらに腰を下ろし座ったようだが、ショック状態でセシル達の存在も目に入っていないようだった。
それでも、どこまでも落ち着いたセシルの静かな声が紡がれ、どこまでも落ち着いた態度が変わらず、なにか静穏――を思い浮かべるようなセシルを前に、ひどいショックは受けていても、村人達はセシルの状況説明に耳を貸しているようだった。
その間も、ゾロゾロと、ショックを受けた家族や、憔悴も露わな村人たちが、騎士達に呼びかけられて、この集合場所に集まってきている。
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。
Go raibh maith agat as an leabhar seo a léamh
~・~・~・~・~・~・~・~・
スー、スーっと、手早く、紙の上にセシルが線を書き込みだした。
「まず初めに、ここの欄が“名前”を記入するところ。一列ごとに、一緒に住んでいる家族を、全員、ひとまとめにして記入しましょう。そして、次の欄から、“ボイマレ”、“コトレア”、“生存者”、“行方不明”、“死亡”、それから“家屋”、“その他”――まず初めは、これくらいかしら?」
その紙の中には何本かの縦の線が描かれていて、現代版で言えば、統計用のテーブルができていた。
「“名前”の欄には全員の名前、性別、年齢を。“ボイマレ”と“コトレア”は、現在の所在地。〇と×で区別を付けましょう? もし、コトレアの領地に移動することになったら、その日にちも、隣に記入しておいてくれたら助かるわ」
「わかりました」
「次の欄は、私達自身が確認した状況で、〇と×ね。もし、行方が分からなかったり、生存確認ができていない場合は、全部“行方不明”の欄に。私達が、きちんと、最終的に確認を終えるまでは、“死亡”欄を更新しないでね。もし――その確認ができた場合、日付けも、一応、記入しておいてね」
「はい」
「“家屋”は、家屋破損で家があるかないのかの確認。それで、“その他”の部分には、職業やできる仕事など。あとは、家の場所がどの辺だった,のかとか、そういう気づいたことを、何でも記入してね。――こういったのでどうかしら?」
「わかりました、問題ありません」
昔から、セシルは、こうやって、組織的や合理的な作成が、ものすごい得意な女性だった。
シフトの体制や組み込みなども簡単に、アッと言う間に終わらせてしまうし、こういった情報集めになると、セシルにとって何が必要なのか、どんな情報が必要なのかと、それがあまりに整然と整頓され、構成されて作られる。
トムソーヤ達が領地にやって来てからも、いつもセシルからは、情報のまとめ方、分析の仕方、統計の取り方などなど、要は、現代での情報管理やデーター管理のやり方を、直に教わって来たのだ。
「これ、番号を入れてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ。使いやすいように、自分達で工夫してね?」
それで、トムソーヤはもう一本のペンを取り上げ、一番左側に線を加え、1番を最初の列に記入した。
「なあ? これ、他の人数で分担するなら、誰が情報集めたか、記録しておいた方がいいんじゃないか?」
「あっ、確かに」
ケルトの指摘で、右端上に、トムソーヤが“TF”のイニシャルと、ページナンバーも記録する。
「じゃあ、それをうちの騎士達と、王国騎士団の騎士の方で、分配しましょう」
「わかりました」
「きっと、生存確認をしている間、みんなから、他の名前が挙がってくる可能性が大きいと思います。「うちの兄は、妹は、母は?」 っていう感じで。もしかすると、友達の名前とかも、上がってくるかもしれませんね。その時は、もう、全部、記録してください。後々、全員を回っている間に、家族構成などがはっきりしてくるでしょうから。今は、できる限りの情報を集めることが重要です。漏らさず、全部、記録してね?」
「わかりました」
「今、現在、集まってもらった生存者達は、それぞれに家族が揃っている組と、はぐれたり、行方不明が分かっている組、それから怪我人の3グループに分かれています。うちの騎士達と、王国騎士団の騎士達で分担して、生存確認を急がせましょう」
「はい。ですが、画板は、四つしか持ってきていません」
「それなら、あなた達ともう一組がうちの騎士から、残りの二つを、王国騎士団にお任せしましょう? その指揮は、ケルト、あなたが」
「わかりました」
「では、取り掛かってください」
それで、二人はすぐに動き出す。
「クリストフ」
「わかりました」
セシルの指示を伝えに、クリストフもすぐに動いていた。
全員が動き出した中、ギルバートも、つい、手を顎に押し当てながら唸ってしまう。
「どうかなさいましたか、ギルバート様?」
「いえね――あなたの領地の騎士達は、一から十まで説明しなくても、あなたの簡単な指示だけで、何をすべきなのかすぐに理解していますし、納得しているように見えましたもので」
「そのように訓練していますので」
どのような訓練なんですか?
ついつい、ギルバートの頭にもそんな質問が浮かんできてしまう。
王国騎士団とは全く違った訓練方法をする、コトレア領の騎士達。おまけに、ゲリラ戦などという未知なる戦法を得意とする、騎士団だ。
災害地にやって来ても、指示が簡潔で、あまりに端的だ。長々と全部を説明する必要がないのが明らかなほど、指示が早くて、それを受けている騎士隊の行動が早い。
一体、それはどんな訓練を受けたら、そんな風な成果がでるのか、ギルバートも確認してみたいものである。
クリストフの指示を受けて、四組の騎士達は馬でその場を離れて行った。ケルトの説明を聞いて、「画板」を持たされた組は、トムソーヤの持っている紙を真似て、今は必至でテーブルの枠を書き込んでいる。
イシュトールとユーリカは、ケルトとトムソーヤと同じように、村人達の確認に向かわせる。
セシルの隣にはいつもギルバートとクリストフが付き添っているので、今は、セシルから別行動するように、二人は言い遣ったのだ。
最初の村人達が、セシル達が待機している場所にやって来るのに、それほど時間はかからなかった。
子供連れの親子らしく、一体、村に何が起きたから判らず、混乱して、子供達は怯えた様子があらわなほど、村人達は憔悴していた。
どうやら、土砂崩れを間近で目撃してしまったような家族である。
セシルに促され、草むらに腰を下ろし座ったようだが、ショック状態でセシル達の存在も目に入っていないようだった。
それでも、どこまでも落ち着いたセシルの静かな声が紡がれ、どこまでも落ち着いた態度が変わらず、なにか静穏――を思い浮かべるようなセシルを前に、ひどいショックは受けていても、村人達はセシルの状況説明に耳を貸しているようだった。
その間も、ゾロゾロと、ショックを受けた家族や、憔悴も露わな村人たちが、騎士達に呼びかけられて、この集合場所に集まってきている。
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読んでいただき、ありがとうございます。
Go raibh maith agat as an leabhar seo a léamh
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