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Part 3
Д.а 予期せぬ - 05
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「煮沸消毒をしていますの。煮沸消毒は、沸騰させたお湯でカトラリーや食器器具、布巾などを煮て消毒させる方法です。5分ほど熱した場合、ほとんどの雑菌を除去できると言われていますが、おしぼりは10分ほど、煮沸消毒をさせています」
「乾かすにも時間がかかるはずだ」
「そうですね。それで、手漕ぎ式の熱風扇風機を使って、おしぼりを早く乾かせるようにしています」
もちろんのこと、全く理解できない単語がでてきて、レイフだけではなく、ギルバート達もセシルを見返す。
「なるほど。では、是非、それを見せてもらいたい」
「わかりました。そのように手配いたしますね」
領地の衛生管理の一環で、おしぼりの使用は強制されている。それで、食事処やレストランのおしぼりの数が半端ないものになってしまう。
一日中、おしぼりを干していても、乾かない時もあれば、時間も限られている。
それで、手漕ぎではあるのだが、セシルは扇風機に似せたプロペラを作ってもらって、その前に熱した炭を置き、熱風を出す器械を作ってみたのだ。
手漕ぎ式扇風機が第一号である。
次に、手漕ぎの部分を取り換えて、コマのように紐や縄でプロペラを回転させることができないか試してみて、第二号が完成した。
一応、熱風らしき熱さは出ているから、自然乾燥よりは、少し早くおしぼりを乾かすことができるようになった。
ああ、一体、いつになったら電気の発明が出てくるのだろうか?
電気の発明がされれば、産業革命へと一気に飛躍できるのに……。
「ギルバートの話では、観光情報館に提示されている領地の歴史の史料には、領地で開発された情報がかなり載っているという話ですが?」
「ええ、そうです」
「それなら、タダで貴重な情報を提供しているも同じでは?」
「ええ、そうですわね」
この領地で開発されるものは、そのどれも“未知なる”知識が詰め込まれたものばかりだ。なにしろ、前世(なのか、現世) のセシルが覚えている膨大な知識を取り入れているものばかりだから。
その情報を公開することは、あまりに進化し過ぎた知識が存在することを明かしてしまうリスクにもなるし、公開されている情報を使って、セシルの了承なしに、勝手に商品の開発を取り組む者が出てきしまうリスクもある。
“未知なる”知識や、あまりに発達し過ぎる技術は、周囲からの警戒を呼ぶものだと、セシルも理解している。
それでも……
「この世界は――あまりに窮屈ですからね……。「人」として生きて行く為、生き延びて、最後まで生き残る為には、知識は必須です。開発と発展は避けられないものです。そして、人口の増加、及び、通貨の流れがなければ、経済発展は遂げられません。それなら、人が流れてこなければ、通貨も流れてきません」
人を呼び込む為には、それだけの魅力を見せなければ、ただの田舎町で、一体、誰が足を止めて、お金を落としていくチャンスがあると言うのだろうか。
「情報をある程度制限しても、それでも、かなりの宣伝にはなるでしょう?」
「ええ、なると思いますわ。そうなると、今度は、一体、公開していない情報で、どんな秘密があるのか。どれだけのことを隠しているのかと、違った意味での興味を引くことになるでしょう。ですから、この領地の情報を公開することで、その情報を悪用されるかもしれませんし、警戒を呼ぶかもしれませんが、事実だけを公開することで、領地内に向けられる監視の目を、少しは押さえることができるのではないかと考えています」
ギルバートが少し警戒を見せて、セシルに向く。
「領地に侵入してきた輩がいるのですか?」
「今の所は、まだありません。ですが、「時計塔」 の開発により、これから領地にやって来る観光客がもっと増えていくことでしょう。その全員が全員、興味が引かれてやって来る者ばかりではありませんわ」
素直な興味心を持った観光客を相手にしているのなら、どんなに簡単なことだろうか。
だが、全員が全員、善人だとは限らない。かならず、裏の意図を持ち、何かを画策している人間だって、領地にやって来るはずなのだ。
じーっと、その大きな瞳でセシルを凝視しているかのようなオスミンの視線に気づき、セシルが声をかける。
「オスミン様、どうかなさいましたか?」
「セシルじょう、てきがいるのですか?」
まさか、オスミンの口からそんな単語が出てくるとは思いもよらず、一瞬、セシルも言葉に詰まっていた。
おまけに、まだ5歳の小さな子供の口から、「敵」 などという概念が上がってくるとも思わず、オスミンの王子としての立場も、その重責も、そこで理解してしまったセシルだった。
「そんなことはありませんわ」
「では、てきがいないのですか?」
「――そう、ですね」
「でも、てきがいたら、ギルバートおじうえが、まもってくれるでしょう?」
「それは……」
「もちろんだよ。私の命を懸けても絶対に護るから、心配する必要はない」
パッと、セシルがギルバートを振り返った。
ギルバートはセシルの視線を受け取って、ただ、にこり、と笑みをみせるだけだ。
「ぜったいですか、おじうえ?」
「ああ、そうだよ。だから、心配する必要はない」
それを聞いて安堵したのか、オスミンが嬉しそうに頬を盛り上げる。
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。
Bu romanı okuduğunuz için teşekkür ederiz
~・~・~・~・~・~・~・~・
「乾かすにも時間がかかるはずだ」
「そうですね。それで、手漕ぎ式の熱風扇風機を使って、おしぼりを早く乾かせるようにしています」
もちろんのこと、全く理解できない単語がでてきて、レイフだけではなく、ギルバート達もセシルを見返す。
「なるほど。では、是非、それを見せてもらいたい」
「わかりました。そのように手配いたしますね」
領地の衛生管理の一環で、おしぼりの使用は強制されている。それで、食事処やレストランのおしぼりの数が半端ないものになってしまう。
一日中、おしぼりを干していても、乾かない時もあれば、時間も限られている。
それで、手漕ぎではあるのだが、セシルは扇風機に似せたプロペラを作ってもらって、その前に熱した炭を置き、熱風を出す器械を作ってみたのだ。
手漕ぎ式扇風機が第一号である。
次に、手漕ぎの部分を取り換えて、コマのように紐や縄でプロペラを回転させることができないか試してみて、第二号が完成した。
一応、熱風らしき熱さは出ているから、自然乾燥よりは、少し早くおしぼりを乾かすことができるようになった。
ああ、一体、いつになったら電気の発明が出てくるのだろうか?
電気の発明がされれば、産業革命へと一気に飛躍できるのに……。
「ギルバートの話では、観光情報館に提示されている領地の歴史の史料には、領地で開発された情報がかなり載っているという話ですが?」
「ええ、そうです」
「それなら、タダで貴重な情報を提供しているも同じでは?」
「ええ、そうですわね」
この領地で開発されるものは、そのどれも“未知なる”知識が詰め込まれたものばかりだ。なにしろ、前世(なのか、現世) のセシルが覚えている膨大な知識を取り入れているものばかりだから。
その情報を公開することは、あまりに進化し過ぎた知識が存在することを明かしてしまうリスクにもなるし、公開されている情報を使って、セシルの了承なしに、勝手に商品の開発を取り組む者が出てきしまうリスクもある。
“未知なる”知識や、あまりに発達し過ぎる技術は、周囲からの警戒を呼ぶものだと、セシルも理解している。
それでも……
「この世界は――あまりに窮屈ですからね……。「人」として生きて行く為、生き延びて、最後まで生き残る為には、知識は必須です。開発と発展は避けられないものです。そして、人口の増加、及び、通貨の流れがなければ、経済発展は遂げられません。それなら、人が流れてこなければ、通貨も流れてきません」
人を呼び込む為には、それだけの魅力を見せなければ、ただの田舎町で、一体、誰が足を止めて、お金を落としていくチャンスがあると言うのだろうか。
「情報をある程度制限しても、それでも、かなりの宣伝にはなるでしょう?」
「ええ、なると思いますわ。そうなると、今度は、一体、公開していない情報で、どんな秘密があるのか。どれだけのことを隠しているのかと、違った意味での興味を引くことになるでしょう。ですから、この領地の情報を公開することで、その情報を悪用されるかもしれませんし、警戒を呼ぶかもしれませんが、事実だけを公開することで、領地内に向けられる監視の目を、少しは押さえることができるのではないかと考えています」
ギルバートが少し警戒を見せて、セシルに向く。
「領地に侵入してきた輩がいるのですか?」
「今の所は、まだありません。ですが、「時計塔」 の開発により、これから領地にやって来る観光客がもっと増えていくことでしょう。その全員が全員、興味が引かれてやって来る者ばかりではありませんわ」
素直な興味心を持った観光客を相手にしているのなら、どんなに簡単なことだろうか。
だが、全員が全員、善人だとは限らない。かならず、裏の意図を持ち、何かを画策している人間だって、領地にやって来るはずなのだ。
じーっと、その大きな瞳でセシルを凝視しているかのようなオスミンの視線に気づき、セシルが声をかける。
「オスミン様、どうかなさいましたか?」
「セシルじょう、てきがいるのですか?」
まさか、オスミンの口からそんな単語が出てくるとは思いもよらず、一瞬、セシルも言葉に詰まっていた。
おまけに、まだ5歳の小さな子供の口から、「敵」 などという概念が上がってくるとも思わず、オスミンの王子としての立場も、その重責も、そこで理解してしまったセシルだった。
「そんなことはありませんわ」
「では、てきがいないのですか?」
「――そう、ですね」
「でも、てきがいたら、ギルバートおじうえが、まもってくれるでしょう?」
「それは……」
「もちろんだよ。私の命を懸けても絶対に護るから、心配する必要はない」
パッと、セシルがギルバートを振り返った。
ギルバートはセシルの視線を受け取って、ただ、にこり、と笑みをみせるだけだ。
「ぜったいですか、おじうえ?」
「ああ、そうだよ。だから、心配する必要はない」
それを聞いて安堵したのか、オスミンが嬉しそうに頬を盛り上げる。
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