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Part 3
В.в 豊穣祭 - 09
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やはり、ギルバートとセシルが予想した通り、リドウィナは言葉を失って固まっていた。
まあ、郷に入ればなんとやら。
「セシルじょうっ! これはなんですか? これもです。あっちはなんですか?」
「ふふ。たくさんありますでしょう? こちらから、チキングラタン、ラザニア、フライドチキンとチップス、それはジャガイモを油で揚げたものですよ。こちらはミンチパイとビーフステーキパイ、ミートボールに、チーズがたっぷり挟められてあるミート詰めチーズパン、これは、あっさりめに、キュウリのサンドイッチ」
そうやって説明しながらも、食事を並べる手を止めないセシルだ。
「これはミックスベリーのジャムパン。これは、ポテトウェッジです。そこのチップスと似ていますけれど、ウェッジの方は、皮つきのおいもで、串形に切ってありますでしょう? ホクホクしておいしいですわよ。今年はね、一応、バーガーもできましたけれど、この人数で切り刻んでしまうと食べ応えがないので、それは保留にしました」
「すごいですっ!」
「あら、ユーリカ。ありがとう」
「こちらをどうぞ」
トレーにたくさん乗ったおしぼりを差し出し、ユーリカが、テーブルの端にコップを重ねていく。
「お水は、ジャグ(水差し) でもらってきましょうか?」
「ええ、よろしく。露店には、この領地で取れた果実ジュースも販売していますから、皆様も、後で試してみてくださいね? 採れたての果実でおいしいですから」
「はいっ!」
「おしぼりの拭き方は、覚えていますか?」
「おぼえていますっ! てには、バイキンがついているから、きれいにするんです」
「その通りです。では、食べる前に、しっかり、汚れを落としましょうね?」
「はい」
朝から元気いっぱいのオスミンは、興奮したままだ。
回されてきたおしぼりを取り上げ、真剣に、そして、教わった通りに、自分の小さな手を一生懸命こすっている。
「先程の続きですけれど、これはホットドックもどきです。デザートの方も、たくさん買いましたのよ。こちらはシナモンドーナッツ、オールドファッションドドーナッツ、チュロス。全部、ドーナッツ系のスイーツです。こちらは、スイートポテト。ほっこり甘くておいしいですよ。こちらは、べっこう飴とりんご飴。アップルパイにアプリコットのペーストリー」
「アップルパイが、そんな小さいのですか?」
「ええ。器で焼くのではなく、薄型の生地にして、四角く挟んだ焼き方にしましたの。これで、露店でも簡単に売ることができますし、手で食べやすいですものね」
「なるほど」
「これは、具沢山クッキーで、こちらはイチゴクレープです。今日は、皆で食べますから、一つずつ切り分けてしまいますけれど、大丈夫ですか?」
「私は問題ありませんよ」
「オスミン様とリドウィナ様は、どうですか?」
「ぼくはだいじょうぶですっ!」
「わたくしは……どうか、お気になさらないで、くださいませ……」
すでに、テーブルの上にある食事の皿を見ただけで圧倒されているリドウィナなど、もう、反応などできないほどに驚いてしまっている。
「では、皆様の皿に取り分けますね」
そして、これも手慣れた様子で、用意されたナイフを取り上げ、セシルは簡単に料理を切り分けていく。
それから、更に一つ一つの料理を小分けにし、それを回し、ギルバートがレイフやらオスミンやらと回していく。
その反対では、クリストフも皿を回していく。
ユーリカが戻ってきて、コップにお水を注ぎ分け終わってもいた。
「では、皆様いただきましょう?」
「はいっ」
「オスミン、今日だけは、手で掴んで食べてもいいんだよ」
「いいんですか?」
「ああ、今日だけなんだ。内緒だぞ」
「はいっ!」
自分の手でご飯を食べるなど、王宮にいた時なら、すぐに叱り飛ばされてしまうことだろう。
だが、今日は、初めての内緒で、オスミンは行儀悪くしてもいいと言うのだ。
その言葉の通り、ギルバートが皿の上に乗っているチップスを一つ手で掴み、簡単に口に入れていった。
「塩加減がおいしいですね」
「ええ、そうでしょう? 今年から、かなり油物が多くなってしまいましたけれど、お祭りの時くらいは、特別ですわよね」
「そうですね。癖になりますね」
「ふふ、そうですわね」
ギルバートが手でご飯を食べたのを見て、オスミンの決意が決まったようである。
実は、手で食べることは初めてで、ドキドキと、興奮していて、その嬉しさも収まらなくて、オスミンがチップスの一本を手で掴み、叔父のように口の中に持って行った。
「どうですか?」
「おいしいですっ。ぼくは、こんなごはんを、はじめてたべました」
「それは良かったです。たくさんありますから、好きなものを食べてくださいね」
「はいっ」
「オスミン、私はデザートのスイーツだって、最初に食べてしまったことがある」
「おじうえが?」
「ああ、そうだ。でも、色々食べられるから、順番はどうでもいいんだよ」
そんな規則もあるなんて、なんて、この領地は素晴らしいのだろうか。
オスミンの瞳が、嬉しさで、キラキラと輝いている。
その気持ちが痛いほど理解できるギルバートも、オスミンの興奮した様子を、微笑まし気に見ている。
「どうでしょうか? お口に合いますかしら?」
「いやあ、おいしいものですねえ。見たことも、食べたこともありませんよ」
「ええ、そうでしょうね」
ふふと、セシルは笑っているだけだ。
レイフも手掴みで食事をして、随分、満足げだ。
リドウィナは、さすがにご令嬢だけあって、小さく切り分けられた食事でも、きちんとフォークとナイフを使って食べている。
だが、全員が全員、物珍しそうに、それでも、喜んで食事を済ませていたのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。
感君读此小说
~・~・~・~・~・~・~・~・
まあ、郷に入ればなんとやら。
「セシルじょうっ! これはなんですか? これもです。あっちはなんですか?」
「ふふ。たくさんありますでしょう? こちらから、チキングラタン、ラザニア、フライドチキンとチップス、それはジャガイモを油で揚げたものですよ。こちらはミンチパイとビーフステーキパイ、ミートボールに、チーズがたっぷり挟められてあるミート詰めチーズパン、これは、あっさりめに、キュウリのサンドイッチ」
そうやって説明しながらも、食事を並べる手を止めないセシルだ。
「これはミックスベリーのジャムパン。これは、ポテトウェッジです。そこのチップスと似ていますけれど、ウェッジの方は、皮つきのおいもで、串形に切ってありますでしょう? ホクホクしておいしいですわよ。今年はね、一応、バーガーもできましたけれど、この人数で切り刻んでしまうと食べ応えがないので、それは保留にしました」
「すごいですっ!」
「あら、ユーリカ。ありがとう」
「こちらをどうぞ」
トレーにたくさん乗ったおしぼりを差し出し、ユーリカが、テーブルの端にコップを重ねていく。
「お水は、ジャグ(水差し) でもらってきましょうか?」
「ええ、よろしく。露店には、この領地で取れた果実ジュースも販売していますから、皆様も、後で試してみてくださいね? 採れたての果実でおいしいですから」
「はいっ!」
「おしぼりの拭き方は、覚えていますか?」
「おぼえていますっ! てには、バイキンがついているから、きれいにするんです」
「その通りです。では、食べる前に、しっかり、汚れを落としましょうね?」
「はい」
朝から元気いっぱいのオスミンは、興奮したままだ。
回されてきたおしぼりを取り上げ、真剣に、そして、教わった通りに、自分の小さな手を一生懸命こすっている。
「先程の続きですけれど、これはホットドックもどきです。デザートの方も、たくさん買いましたのよ。こちらはシナモンドーナッツ、オールドファッションドドーナッツ、チュロス。全部、ドーナッツ系のスイーツです。こちらは、スイートポテト。ほっこり甘くておいしいですよ。こちらは、べっこう飴とりんご飴。アップルパイにアプリコットのペーストリー」
「アップルパイが、そんな小さいのですか?」
「ええ。器で焼くのではなく、薄型の生地にして、四角く挟んだ焼き方にしましたの。これで、露店でも簡単に売ることができますし、手で食べやすいですものね」
「なるほど」
「これは、具沢山クッキーで、こちらはイチゴクレープです。今日は、皆で食べますから、一つずつ切り分けてしまいますけれど、大丈夫ですか?」
「私は問題ありませんよ」
「オスミン様とリドウィナ様は、どうですか?」
「ぼくはだいじょうぶですっ!」
「わたくしは……どうか、お気になさらないで、くださいませ……」
すでに、テーブルの上にある食事の皿を見ただけで圧倒されているリドウィナなど、もう、反応などできないほどに驚いてしまっている。
「では、皆様の皿に取り分けますね」
そして、これも手慣れた様子で、用意されたナイフを取り上げ、セシルは簡単に料理を切り分けていく。
それから、更に一つ一つの料理を小分けにし、それを回し、ギルバートがレイフやらオスミンやらと回していく。
その反対では、クリストフも皿を回していく。
ユーリカが戻ってきて、コップにお水を注ぎ分け終わってもいた。
「では、皆様いただきましょう?」
「はいっ」
「オスミン、今日だけは、手で掴んで食べてもいいんだよ」
「いいんですか?」
「ああ、今日だけなんだ。内緒だぞ」
「はいっ!」
自分の手でご飯を食べるなど、王宮にいた時なら、すぐに叱り飛ばされてしまうことだろう。
だが、今日は、初めての内緒で、オスミンは行儀悪くしてもいいと言うのだ。
その言葉の通り、ギルバートが皿の上に乗っているチップスを一つ手で掴み、簡単に口に入れていった。
「塩加減がおいしいですね」
「ええ、そうでしょう? 今年から、かなり油物が多くなってしまいましたけれど、お祭りの時くらいは、特別ですわよね」
「そうですね。癖になりますね」
「ふふ、そうですわね」
ギルバートが手でご飯を食べたのを見て、オスミンの決意が決まったようである。
実は、手で食べることは初めてで、ドキドキと、興奮していて、その嬉しさも収まらなくて、オスミンがチップスの一本を手で掴み、叔父のように口の中に持って行った。
「どうですか?」
「おいしいですっ。ぼくは、こんなごはんを、はじめてたべました」
「それは良かったです。たくさんありますから、好きなものを食べてくださいね」
「はいっ」
「オスミン、私はデザートのスイーツだって、最初に食べてしまったことがある」
「おじうえが?」
「ああ、そうだ。でも、色々食べられるから、順番はどうでもいいんだよ」
そんな規則もあるなんて、なんて、この領地は素晴らしいのだろうか。
オスミンの瞳が、嬉しさで、キラキラと輝いている。
その気持ちが痛いほど理解できるギルバートも、オスミンの興奮した様子を、微笑まし気に見ている。
「どうでしょうか? お口に合いますかしら?」
「いやあ、おいしいものですねえ。見たことも、食べたこともありませんよ」
「ええ、そうでしょうね」
ふふと、セシルは笑っているだけだ。
レイフも手掴みで食事をして、随分、満足げだ。
リドウィナは、さすがにご令嬢だけあって、小さく切り分けられた食事でも、きちんとフォークとナイフを使って食べている。
だが、全員が全員、物珍しそうに、それでも、喜んで食事を済ませていたのだった。
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読んでいただき、ありがとうございます。
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