奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)

Anastasia

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Part 3

В.в 豊穣祭 - 02

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「では、セシルじょうは、あとからくるのですか?」
「そうだね。心配しなくても、大丈夫だよ。なにしろ、セシル嬢は、この豊穣祭のメインなのだから、そのメインが欠けていたら、豊穣祭も始まるに始まらない」

「メイン? それは、なんですか?」
「主役、という意味だ」

 へぇぇ……と、興味津々で丸い瞳をクリクリとさせるオスミンの顔は、期待で満ち溢れている。

「では、皆様、後程、会場にて」

 セシルに見送られて、満員になっているほろ馬車が出発していた。

 邸に続いている一本道を、ゆっくりと、のんびりと、快調なスピードでほろ馬車が下りていく。

「マイレディー、では、我々も行きましょう」
「そうですね。では、行きましょうか」

 イシュトールとユーリカに促され、セシルは別に用意された馬車に乗り込んでいく。

「いってらっしゃいませ」

 もちろん、豊穣祭のメインとなる領主様に、邸の使用人全員が丁重な一礼をしてセシルを見送っていた。




 セシルは別に用意した馬車に乗っていたが、だからと言って、その移動が長いものではない。

 ほろ馬車ではないだけで、邸から宿場町に続く一本道を下りてくるだけだから。
 そして、馬車は通行門を通り抜け、大通りから一本外れの街路へと向かう。

 馬車が向かった先には、きらきらと輝く制服を着た子供達で賑わっている。そして、騎士団の正装である正式の制服を着た騎士達も揃って。

「マイレディー、おはようございます」

 セシルが馬車から下りてくると、その場に揃っていた団体が、一斉にお辞儀をした。

「皆、おはよう。準備はできていますか?」
「はい、できています」

 顔を上げた全員は、心なしか緊張しているような雰囲気も伺えるが、全員が全員、これから始まるイベントに向けて、かなり気分が高揚している様子も隠せない。

 今年は、領地の十周年を祝う盛大な記念祭。イベントが目白押めじろおし。
 そして、今日の豊穣祭で第一のイベントは、パレードである!

 セシルの視界の前には、豪華に飾り付けられた屋根なしの四頭四輪車の馬車が控えていた。

 イシュトールにエスコートされながら、セシルはゆっくりと馬車に乗り込んでいく。

 セシルが席に着き、ドレスを直し、そして、顔を上げると、その光景を見ていた全員が嬉しそうに破顔し、そして、観劇したように瞳をキラキラさせていた。

「マイレディー……!」

 豊穣祭の開会式の為に、きちんと正装も済まし、お化粧も済まし、着飾ったセシルが豪華な馬車に乗っていると、それだけで、高貴なお貴族サマのご令嬢に見える。

 そして、その様相は儚げであってもうるわしく、領主としての貫禄もあり、威厳もあり、どこから見ても惚れ惚れするほどの様相だった。

 その光景を見やって、全員が素直に感激している。

「素晴らしいです、マイレディー……!」
「ありがとう」

 まだ、パレードも始まっていなく、セシルは馬車に乗り込んだだけなのに……。

 でも、気分が上がって大喜びしている全員を前に、その場の雰囲気をぶち壊すなど以ての外。

「今日も晴天に恵まれました。最高の豊穣祭日和びよりとなるでしょう。このパレードは、豊穣祭での第一のイベントですものね。皆、練習した時のように緊張せず、がんばっていきましょう」

「「はいっ、マイレディー!」」

 セシルの励ましを受けて、全員が返事をした。

 騎馬で前列を進む騎士達が出発した。
 次は、セシルの出番である。

 パレード前に待機場所は、大通りから一本外れた道なだけに、前列の騎馬隊はすでに大通りに姿を出していた。

 馬が顔を出しただけで、その場から、地面がとどろくほどの大歓声が上がった。
 大通りに陣取っていた領民達や観光客から、熱狂的な大歓声と共に、拍手喝采までの出迎えだ。

 そして――

「うわぁっ、マイレディー!」
「マイレディー!!」

 セシルの馬車が通りに姿を見せただけで、その場ではさっき以上の熱気で、さっき以上の大歓声で、その場が沸き上がる。

 昔、テレビで見た(故) 英国女王のパレードを思い出し、国王陛下や女王陛下が馬車に乗って、国民の前でパレードなどするようなものね――などと口にしたセシルの一番の誤りである。

 ふと、思い出したから、それを口にしただけなのに、


「それはいいですねっ!」


と豊穣祭実行委員の代表者達が大乗り気で、それで、パレードには、セシルのお披露目も組み込まれてしまったのだ。

 ワアアッ――――!!

 初めてのパレードという行事に興奮している領民達が、区分けされた大通りの両脇を囲み、馬車に乗っているセシルを見て歓声を上げている。


(まさか……、この私が、女王もどきのパレードをするなんて……)


 ここは領地であって、“王国”と名乗れるほどのサイズでもない。格でもない。

 なのに、セシルは、色とりどりの花々に飾れた屋根なしの四頭四輪馬車に乗って、パレードの中央で、領民達に迎えられている。

 一番先頭に騎士が四騎。そのすぐ後ろに、音楽隊の子供達が、太鼓とトランペットを鳴らし進んでいる。

 そして、セシルの馬車が通り、セシルのすぐ後ろには、きれいに飾られた大きな荷馬車に乗っている子供達が、籠に詰められたたくさんの花びらを飛ばしていく。

 そして、最後にまた、四騎の騎士が騎馬で並んでいた。

 今日のこの日の為に、音楽隊の子供達も、半年以上も行進を練習してきた。
 騎士達も、パレードでの行進順序を練習してきた。

 会場になる大通りの裏にある公園内の敷地での行進も、みんな、必死で練習してきたのだ。

 十周年という大イベントなだけに、護衛に回されている騎士達は、全員、騎士の礼服を着ているし、その胸には飾りの花が飾られている。

 音楽隊の子供達にも、お揃いの衣装が与えられ、ピカピカのお祝いにふさわしい衣装を着ていた。




~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでいただき、ありがとうございます。
ধন্যবাদ এই উপন্যাসটি পড়ার জন্য (dhonnobad ei uponyashti padar jonno)
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