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Part 3
В.б ようこそ、コトレアへ - 06
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「ここの、肘をかける場所に手を置きますと、身体が安定しますわよ」
「はい、わかりました」
言われる通りのまま、オスミンはどこまでも素直に従っていく。
二段目の段にも足を乗せて、ひじ掛けに掴まった。
椅子に座ってください、と言われたので、座るには立ったまま、クルリと向きを変えなければならない。
段の上は狭くもないが、広くもない。
それで、慎重に、慎重に、そろり、そろりと、オスミンが向きを変えてみた。そして、ストンと、木の椅子に腰を下ろす。
「あっ!」
「どうしました? どこか痛いですか?」
「いいえ。ちゃんと、ぼくはすわれました!」
「ええ、そうですわね。座り心地は、どうでしょう?」
「ちゃんとすわれました!」
「痛くありませんか? クッションなどは?」
「いらないですっ!」
子供の体重はそれほど重いものではないから、この組み立て式の子供用の椅子は、全部、木でできている。
椅子の部分も平らな板で、クッションは置いていない。
長時間でなければ、それほど痛いものではないはずだからと、セシルも、まだ、クッションは置いていなかったのだ。
「この体勢で、食事ができそうですか?」
「はいっ!」
「そうですか。では、ピッタリだったようですね」
これで、オスミンの椅子の問題は解決である。これから、邸で食事を済ませる時は、いつも、この組み立て式の椅子が使える。
「便利ですねえ」
「本当に」
ワヤワヤと、椅子の周りに集まっている全員が、物珍し気に、興味深げに、感嘆している。
「今回は、オスミン様がいらっしゃるということで、急遽、試作品を作ってみたのです。オスミン様で、実験させてもらっていることになりますわね」
一国の王子殿下を使って、新製品の実験もどきを実行するセシルも、肝っ玉が据わっている。
それから全員が席につくと、今夜の夕食が運ばれてくる。
今夜はダイニングホールでの夕食だから、邸の当主であるセシルが端側に。
その隣にギルバート、ギルバートとは反対側にヘルバート伯爵のリチャードソンと家族が。
セシルの対局の端には、レイフ殿下。その横に、オスミン殿下が座っている。
リドウィナは、オスミン殿下に向き合う反対側の席だ。
ダイニングホールの隅には、ギルバートの護衛として付き添ってきたクリストフが、起立したまま控えている。
そして、残り二人の王子殿下の護衛として付き添ってきた騎士達が五人程、ただ静かに控えている。
食事の配膳をしている使用人達の顔は、ものすごい緊張が走っていた。
ここ二週間ほど、セシルの母親であるレイナから、しっかりと再教育を受けた使用人達である。
それでも、さすがに、一国の王子殿下達をもてなすなどという経験がないだけに、粗相をしないように、ヘマを見せないように、間違わないように――と、ものすごい緊張した形相が伺える。
ギルバートも第三王子殿下という立場なのだが、今までは、セシルが気に入っている、こぢんまりとした部屋でテーブルを囲って食事をしている形だった為、こんな風に、正式な場で、貴賓を迎えるのは初めてなのだ。
まあ、これも経験の一つでしょう。
慣れなきゃね。
少々、可哀想かな、とは同情しているセシルだが、これから一週間ほど、毎日、使用人達は、王族の給仕の仕事を任されるのだから、仕方がない。
「おや? これは何ですか?」
食事の配膳が終わりにかけて、オスミンのテーブルには、大人と違った食器が並べられて、テーブル越しから、レイフが興味深そうに問いてくる。
「それは、子供用の食器なのです。子供用のカトラリーも、用意しました」
「全てが子供用! それはすごい」
なぜかは知らないが、そんな些細な違いを、レイフは、大層、気に入ったらしい。
「なぜです?」
「なぜ? それは――子供用だけ、食器やカトラリーが違う、という質問でしょうか?」
「ええ、そうです」
「この位の年齢の子供というのは、毎日、たくさんのことを学んでいっているんです。見ること、聞くこと、経験すること、その全てを、ものすごい早さで吸収し、身に着けていっているんですのよ。ですが、知識を身に着けて行っているからといって、すぐに応用できるような能力が発達するわけではありません」
「反復も必要ですね。繰り返しの練習が」
「ええ、そうです」
だから、そうやって、繰り返し学んで行く間、わざわざ、無理に大人用の方法を強制する必要はないのだ。
子供の手は、とても小さなものだ。大人の手とは、全く違う。
大人用のカトラリーは、少々、重さもあり、長さもあるものだから、子供の手では、かなり無理をしてしまうことになる。
「無理をさせて子供に教えるのではなく、使い方をきちんと学ばせることに意義がありますから、大きさや重さが違うことは、問題ではありませんの」
「なるほど。それで、子供用の食器にカトラリー」
「ええ、そうです。きちんと、フォークやナイフが使えるようになれば、自然と、成長していくうちに、大人用の重いカトラリーも使えるようになります。本来の目的は、カトラリーに慣れ、それを使って食事ができること。大人用を使いこなすのが、目的ではありませんわ」
「なるほど」
「はい、わかりました」
言われる通りのまま、オスミンはどこまでも素直に従っていく。
二段目の段にも足を乗せて、ひじ掛けに掴まった。
椅子に座ってください、と言われたので、座るには立ったまま、クルリと向きを変えなければならない。
段の上は狭くもないが、広くもない。
それで、慎重に、慎重に、そろり、そろりと、オスミンが向きを変えてみた。そして、ストンと、木の椅子に腰を下ろす。
「あっ!」
「どうしました? どこか痛いですか?」
「いいえ。ちゃんと、ぼくはすわれました!」
「ええ、そうですわね。座り心地は、どうでしょう?」
「ちゃんとすわれました!」
「痛くありませんか? クッションなどは?」
「いらないですっ!」
子供の体重はそれほど重いものではないから、この組み立て式の子供用の椅子は、全部、木でできている。
椅子の部分も平らな板で、クッションは置いていない。
長時間でなければ、それほど痛いものではないはずだからと、セシルも、まだ、クッションは置いていなかったのだ。
「この体勢で、食事ができそうですか?」
「はいっ!」
「そうですか。では、ピッタリだったようですね」
これで、オスミンの椅子の問題は解決である。これから、邸で食事を済ませる時は、いつも、この組み立て式の椅子が使える。
「便利ですねえ」
「本当に」
ワヤワヤと、椅子の周りに集まっている全員が、物珍し気に、興味深げに、感嘆している。
「今回は、オスミン様がいらっしゃるということで、急遽、試作品を作ってみたのです。オスミン様で、実験させてもらっていることになりますわね」
一国の王子殿下を使って、新製品の実験もどきを実行するセシルも、肝っ玉が据わっている。
それから全員が席につくと、今夜の夕食が運ばれてくる。
今夜はダイニングホールでの夕食だから、邸の当主であるセシルが端側に。
その隣にギルバート、ギルバートとは反対側にヘルバート伯爵のリチャードソンと家族が。
セシルの対局の端には、レイフ殿下。その横に、オスミン殿下が座っている。
リドウィナは、オスミン殿下に向き合う反対側の席だ。
ダイニングホールの隅には、ギルバートの護衛として付き添ってきたクリストフが、起立したまま控えている。
そして、残り二人の王子殿下の護衛として付き添ってきた騎士達が五人程、ただ静かに控えている。
食事の配膳をしている使用人達の顔は、ものすごい緊張が走っていた。
ここ二週間ほど、セシルの母親であるレイナから、しっかりと再教育を受けた使用人達である。
それでも、さすがに、一国の王子殿下達をもてなすなどという経験がないだけに、粗相をしないように、ヘマを見せないように、間違わないように――と、ものすごい緊張した形相が伺える。
ギルバートも第三王子殿下という立場なのだが、今までは、セシルが気に入っている、こぢんまりとした部屋でテーブルを囲って食事をしている形だった為、こんな風に、正式な場で、貴賓を迎えるのは初めてなのだ。
まあ、これも経験の一つでしょう。
慣れなきゃね。
少々、可哀想かな、とは同情しているセシルだが、これから一週間ほど、毎日、使用人達は、王族の給仕の仕事を任されるのだから、仕方がない。
「おや? これは何ですか?」
食事の配膳が終わりにかけて、オスミンのテーブルには、大人と違った食器が並べられて、テーブル越しから、レイフが興味深そうに問いてくる。
「それは、子供用の食器なのです。子供用のカトラリーも、用意しました」
「全てが子供用! それはすごい」
なぜかは知らないが、そんな些細な違いを、レイフは、大層、気に入ったらしい。
「なぜです?」
「なぜ? それは――子供用だけ、食器やカトラリーが違う、という質問でしょうか?」
「ええ、そうです」
「この位の年齢の子供というのは、毎日、たくさんのことを学んでいっているんです。見ること、聞くこと、経験すること、その全てを、ものすごい早さで吸収し、身に着けていっているんですのよ。ですが、知識を身に着けて行っているからといって、すぐに応用できるような能力が発達するわけではありません」
「反復も必要ですね。繰り返しの練習が」
「ええ、そうです」
だから、そうやって、繰り返し学んで行く間、わざわざ、無理に大人用の方法を強制する必要はないのだ。
子供の手は、とても小さなものだ。大人の手とは、全く違う。
大人用のカトラリーは、少々、重さもあり、長さもあるものだから、子供の手では、かなり無理をしてしまうことになる。
「無理をさせて子供に教えるのではなく、使い方をきちんと学ばせることに意義がありますから、大きさや重さが違うことは、問題ではありませんの」
「なるほど。それで、子供用の食器にカトラリー」
「ええ、そうです。きちんと、フォークやナイフが使えるようになれば、自然と、成長していくうちに、大人用の重いカトラリーも使えるようになります。本来の目的は、カトラリーに慣れ、それを使って食事ができること。大人用を使いこなすのが、目的ではありませんわ」
「なるほど」
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