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Part 3
В.б ようこそ、コトレアへ - 04
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また新たな単語が出て来て、ワクワクとした興奮を押さえきれない様子のオスミンが口を開く。
「こうやさい? それはなんですか?」
「メインのお祭りを終えた、あとからするシメ――夜のお祭りですわ」
「よるも、おまつりですか?」
「ええ、そうです。その時は、領地のほとんどの民が勢揃いしますのよ。全員が晩御飯を一品ずつ提供するので、たくさんのご馳走もでてきます。そこで、領民全員が、一緒に晩御飯を食べるのです」
「うわあぁ……、すごいっ……! そんなにたくさんのごはんですか?」
「ええ、そうです。最後に豊穣祭の閉会式がございます。一日がかりで、たくさん徒歩もなさることになりますし、お疲れになった時は、無理をなさらず、すぐに休んでくださいね」
「ああ、今からでも、本当に楽しみですよ」
かなりご満悦のレイフとは違い、その場で口を挟まないが、これから押し寄せてくるストレス過多の場面を想像して、すでに、疲れ切ってしまっているギルバートだった。
明日の説明も無事に終わり、夕食までは時間が空いているので、セシルはオスミンに、邸の案内をするのでどうかしら、とオスミンを誘ってみた。
知らない土地で、両親もいず、見慣れた自分の侍従や世話係もいない。
だから、邸の構造を知らないオスミンが迷ってしまったり、一人で部屋から出かけられなくなっては、オスミンも心細く心配だろうとの、セシルの気配りだった。
もちろん、オスミンは平凡なセシルの邸でも新しい場所に行けることが嬉しくて、一も二もなく大賛成していた。
セシルの予期していなかったことと言えば、オスミンと一緒に、あのレイフまで付き添ってきた、ということだった(余計なお荷物ね……)。
それで、リドウィナ一人だけ残すことも可哀そうで、結局、全員を連れて、邸巡りをすることとなってしまったのだ。
付き添いのメイド達がゾロゾロと一緒になってついてくるのも面倒で、仕方なく、ギルバートを含めた数人の騎士達だけの護衛を同行させて、いざ、セシルの(至極普通な) 邸巡り!
昔、父のリチャードソンが亡くなった母と結婚した時に、コトレア領を受け継いだのだが、その時に、邸の改築はされて、部屋数も増えたし、ある程度の貴族らしい邸にはなっている。
その後、幼いセシルが「領主名代」 として、コトレア領にやってきて以来、セシルの趣味で邸の(大) 改造を行ってしまったので、今は――悲しいことかな……。貴族の邸とは全くかけ離れた、機能性・実用性だけを重視した邸となってしまった。
そんな邸を、アトレシア大王国の王子殿下達に紹介するのも、少々、恥ずかしいものがあるが(それは、ヘルバート伯爵家全員の一致した意見)、一応、セシルはゲスト全員に邸内を案内してみせた。
「この部屋は、今の所、会議室として使用しています」
この頃ではお馴染みとなりつつあるセシルの会議室の扉を開け、セシルが部屋の中を紹介した。
扉が開いただけで、中から――視界の目の前に広がる、紙・紙・紙の山に、幼いオスミンの目が真ん丸である。
「う、うわぁぁっ……!?」
まだ部屋にも入っていないのに、視界の前を埋め尽くす紙の山。
あたり一面に紙ばかりがそろっていて、なにか台に掛けられているのも紙。
こんな紙ばかりが揃った部屋など見るのは初めてで、幼いオスミンだって素直に圧倒されていた。
「ほうっ……!」
ギルバートの話で聞いていたかの有名な“会議室”にやってきて、レイフの興味も最高潮に達している。
きらきらと目を輝かせて、許可も取らずに、一人で勝手に部屋の中に足を進めて行ってしまう。
「なるほど、これが会議室……」
そして、この声音からも、随分、レイフが満足している様子が伺える。
「それで、夜には定例報告会?」
「はい、そうです」
くるり、とレイフが後ろのセシルを振り返った。
「参加しても?」
もちろんいいだろう? ――なんて、暗黙の圧力でセシルを脅さなくてもいいだろうに……。
「もちろんです……。普通の定例報告会ですので、興味の引かれることは、ないと思いますけれど……」
「さあ、それはどうかな」
もちろん、意気揚々として会議に参加する気満々のレイフの瞳が、意味深に細められていく。
まさか……、アトレシア大王国でも有名な敏腕宰相サマが、セシル達の定例報告会に口を出してくる――なんてことはないだろうに……。
なぜ、その懸念が拭いきれないセシルなのだろうか。
「セシルじょうっ! どうして、こんなにかみがいっぱいあるのですか? ぼくは、こんなにかみのやまを、みたことがありませんっ!」
「必要なものを記録したり、紙に書き写していたら、こんな風にたくさんの紙が集まってしまったのですよ」
「このぜんぶのかみを、セシルじょうが、つかうのですか?」
「ええ、そうです。仕事をする時に必要になるものなのです」
「すごいですっ……!!」
「時間が空きましたら、この中の紙がどのようなものか、オスミン様に説明できると思いますが、それでは退屈なさってしまいますか?」
「そんなことありませんっ。ぼくは、こんなにいっぱいのかみを、みたことがありません。セシルじょうのしごとも、みてみたいです」
実は、オスミンは、自分の父親が国王陛下という最高位の偉い立場にいる人物だとは理解し始めていたが、まだ、一度も、父親の仕事の場所を見たことがないのだ。仕事をしている父親の姿というものも、見たことがなかったのだ。
「豊穣祭が終わりましたら、時間を見つけて、私の仕事場をオスミン様にご紹介いたしますね」
「やくそくですか?」
「はい、約束します」
それで、嬉しさが隠し切れず、オスミンの柔らかそうな頬が盛り上がり、満面の笑みが浮かんだ。
子供らしい、素直な笑みだ。
そのオスミンを見下ろしながら、セシルも優しく瞳を細めて、オスミンに微笑んだ。
レイフのせいで余計な仕事とストレスを押し付けられたが、コトレアにいる間は、王子殿下であるオスミンだって、子供らしい体験ができることだろう。
窮屈な王宮内で制限ばかりを押し付けられて育ってきたオスミンにとっても、コトレア領訪問が大切な時間と思い出になりますように。
「こうやさい? それはなんですか?」
「メインのお祭りを終えた、あとからするシメ――夜のお祭りですわ」
「よるも、おまつりですか?」
「ええ、そうです。その時は、領地のほとんどの民が勢揃いしますのよ。全員が晩御飯を一品ずつ提供するので、たくさんのご馳走もでてきます。そこで、領民全員が、一緒に晩御飯を食べるのです」
「うわあぁ……、すごいっ……! そんなにたくさんのごはんですか?」
「ええ、そうです。最後に豊穣祭の閉会式がございます。一日がかりで、たくさん徒歩もなさることになりますし、お疲れになった時は、無理をなさらず、すぐに休んでくださいね」
「ああ、今からでも、本当に楽しみですよ」
かなりご満悦のレイフとは違い、その場で口を挟まないが、これから押し寄せてくるストレス過多の場面を想像して、すでに、疲れ切ってしまっているギルバートだった。
明日の説明も無事に終わり、夕食までは時間が空いているので、セシルはオスミンに、邸の案内をするのでどうかしら、とオスミンを誘ってみた。
知らない土地で、両親もいず、見慣れた自分の侍従や世話係もいない。
だから、邸の構造を知らないオスミンが迷ってしまったり、一人で部屋から出かけられなくなっては、オスミンも心細く心配だろうとの、セシルの気配りだった。
もちろん、オスミンは平凡なセシルの邸でも新しい場所に行けることが嬉しくて、一も二もなく大賛成していた。
セシルの予期していなかったことと言えば、オスミンと一緒に、あのレイフまで付き添ってきた、ということだった(余計なお荷物ね……)。
それで、リドウィナ一人だけ残すことも可哀そうで、結局、全員を連れて、邸巡りをすることとなってしまったのだ。
付き添いのメイド達がゾロゾロと一緒になってついてくるのも面倒で、仕方なく、ギルバートを含めた数人の騎士達だけの護衛を同行させて、いざ、セシルの(至極普通な) 邸巡り!
昔、父のリチャードソンが亡くなった母と結婚した時に、コトレア領を受け継いだのだが、その時に、邸の改築はされて、部屋数も増えたし、ある程度の貴族らしい邸にはなっている。
その後、幼いセシルが「領主名代」 として、コトレア領にやってきて以来、セシルの趣味で邸の(大) 改造を行ってしまったので、今は――悲しいことかな……。貴族の邸とは全くかけ離れた、機能性・実用性だけを重視した邸となってしまった。
そんな邸を、アトレシア大王国の王子殿下達に紹介するのも、少々、恥ずかしいものがあるが(それは、ヘルバート伯爵家全員の一致した意見)、一応、セシルはゲスト全員に邸内を案内してみせた。
「この部屋は、今の所、会議室として使用しています」
この頃ではお馴染みとなりつつあるセシルの会議室の扉を開け、セシルが部屋の中を紹介した。
扉が開いただけで、中から――視界の目の前に広がる、紙・紙・紙の山に、幼いオスミンの目が真ん丸である。
「う、うわぁぁっ……!?」
まだ部屋にも入っていないのに、視界の前を埋め尽くす紙の山。
あたり一面に紙ばかりがそろっていて、なにか台に掛けられているのも紙。
こんな紙ばかりが揃った部屋など見るのは初めてで、幼いオスミンだって素直に圧倒されていた。
「ほうっ……!」
ギルバートの話で聞いていたかの有名な“会議室”にやってきて、レイフの興味も最高潮に達している。
きらきらと目を輝かせて、許可も取らずに、一人で勝手に部屋の中に足を進めて行ってしまう。
「なるほど、これが会議室……」
そして、この声音からも、随分、レイフが満足している様子が伺える。
「それで、夜には定例報告会?」
「はい、そうです」
くるり、とレイフが後ろのセシルを振り返った。
「参加しても?」
もちろんいいだろう? ――なんて、暗黙の圧力でセシルを脅さなくてもいいだろうに……。
「もちろんです……。普通の定例報告会ですので、興味の引かれることは、ないと思いますけれど……」
「さあ、それはどうかな」
もちろん、意気揚々として会議に参加する気満々のレイフの瞳が、意味深に細められていく。
まさか……、アトレシア大王国でも有名な敏腕宰相サマが、セシル達の定例報告会に口を出してくる――なんてことはないだろうに……。
なぜ、その懸念が拭いきれないセシルなのだろうか。
「セシルじょうっ! どうして、こんなにかみがいっぱいあるのですか? ぼくは、こんなにかみのやまを、みたことがありませんっ!」
「必要なものを記録したり、紙に書き写していたら、こんな風にたくさんの紙が集まってしまったのですよ」
「このぜんぶのかみを、セシルじょうが、つかうのですか?」
「ええ、そうです。仕事をする時に必要になるものなのです」
「すごいですっ……!!」
「時間が空きましたら、この中の紙がどのようなものか、オスミン様に説明できると思いますが、それでは退屈なさってしまいますか?」
「そんなことありませんっ。ぼくは、こんなにいっぱいのかみを、みたことがありません。セシルじょうのしごとも、みてみたいです」
実は、オスミンは、自分の父親が国王陛下という最高位の偉い立場にいる人物だとは理解し始めていたが、まだ、一度も、父親の仕事の場所を見たことがないのだ。仕事をしている父親の姿というものも、見たことがなかったのだ。
「豊穣祭が終わりましたら、時間を見つけて、私の仕事場をオスミン様にご紹介いたしますね」
「やくそくですか?」
「はい、約束します」
それで、嬉しさが隠し切れず、オスミンの柔らかそうな頬が盛り上がり、満面の笑みが浮かんだ。
子供らしい、素直な笑みだ。
そのオスミンを見下ろしながら、セシルも優しく瞳を細めて、オスミンに微笑んだ。
レイフのせいで余計な仕事とストレスを押し付けられたが、コトレアにいる間は、王子殿下であるオスミンだって、子供らしい体験ができることだろう。
窮屈な王宮内で制限ばかりを押し付けられて育ってきたオスミンにとっても、コトレア領訪問が大切な時間と思い出になりますように。
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