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Part 3
В.б ようこそ、コトレアへ - 03
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* * *
それぞれにあてがわれたゲスト部屋で一息をついた一行は、邸の談話室に集まっていた。
まだ幼いオスミンは、メイド達に付き添われてやってきた新たな部屋でも、興味深そうにきょろきょろと周囲を見渡し、心浮きだって、興奮しているその様相が明らかなほどである。
今まで、一度として王宮から出たこともない幼い王子殿下は、初の長距離移動、長距離の旅行となるだけに、コトレア領に到着してからも、ずっと浮かれて興奮している様子は、セシルも気が付いている。
これは――本人が気づかないうちに、はしゃぎすぎてぶっ倒れないようにしなくては……と、そこら辺の懸念を(しっかりと) 注意しておくセシルだった。
「今年の豊穣祭は、十周年記念をお祝いしまして、行事が目白押しとなっております。ですから、明日の開会式も少し時間を早めまして、朝八時からを予定しております。皆様は、開会式に参加なさる必要はございませんから、頃合いのよい時間帯に、豊穣祭に参加なさってくださいね」
談話室には、セシルの両親とシリルが一画のソファーに。
セシルの隣にギルバートが。その向かいに、レイフとオスミンが座り、リドウィナは隣にあるソファーに腰を下ろしていた。
もちろん、全員の付き添いであるメイド達も談話室に揃っていて、壁側で一切口を開かず、静々と控えている。
そして、入り口側と、メイドとは反対側には、王国騎士団の騎士達が数名。クリストフも直立したまま、静かに起立している。
なんだか、真ん中で座っているメンバーよりも、使用人達の数の方が多く、緊張している圧がひしひしと伝わってくるほどである……。
「開会式に参加しても、よろしいのですか?」
「もちろんです。開会式は宿場町の方で行いますので、少々、行列や人込みでごった返してしまいますが」
「そこは、護衛達にがんばってもらいましょう」
人混みがごった返す中で護衛――など、本当に、無理難題を押し付けてくるものだ。
「そう、ですね……。一応、皆様が開会式に参加されるのでありましたら、一か所で集まっていらっしゃった方が、護衛の騎士達にも護衛がしやすいのではないでしょうか?」
それで、その視線がギルバートに向けられる。
「そうですね。一か所に固まると狙われやすいことは確かですが、人混みが多い中では、無理に人込みを避けるよりは、人混みと一緒に、全員が移動した方が護衛はしやすくなりますね」
「では、私と一緒に移動なさるのでしたら、開会式の広場で、皆様の場所程度は確保できますが?」
「できるのですか? ――そうしていただいたら、とても助かるのですが……」
本当に、余計な手間と仕事を持ち込んでくれたものだ。
だが、レイフは知らん顔。
「ええ、構いません。邸を七時半には発ちますので、皆様、それでよろしいですか?」
「わかりました。そのように調整しておきましょう。――兄上、オスミンの世話は、よろしくお願いしますね」
「ああ、わかっている」
「リドウィナ様は、どうなさいますか?」
「わたくしも、よろしければ、ご一緒させていただきます。――宰相閣下、豊穣祭をご訪問なさる間、申し訳ございませんが、わたくしも――ご一緒させていただけたらと……。お邪魔にならないようにいたしますので……」
もちろん、護衛の問題があるので、リドウィナは全員と一緒に行動をしなければならない。それを指摘しないリドウィナの気遣いであることは、その場の全員が承知している。
「もちろんですよ。全員、揃って行動するのが最善でしょう」
「ありがとうございます……」
セシルが、大人しく座っているオスミンにも優しく微笑んだ。
「オスミン様、開会式には、小さなパレードも用意してあります」
「パレード? それはなんですか?」
「何人かのグループになって、行進をするお祝いなのです。ここ数年で、やっと、音楽隊――と言っても小さなものなのですが、それもできましたし、音楽隊の行進と、飾り付けをした馬車から花びらを飛ばします。パレード自体大きなものではございませんが、この領地の領民にとっては、パレードも初めてでしてね」
「うわあぁ……」
その光景を想像しただけで、オスミンが興奮したように目を輝かせている。
「少し、早くに起きなければならなくなってしまいますが、大丈夫ですか?」
「だいじょうぶですっ。ぼくも、パレードをみたいです」
「そうですか。明日は、たくさん見るものがございますからね」
それで、また全員に向き直り、
「開会式を終えますと、九時からは“初めてのお買い物”で、孤児院の子供達のお買い物がございます」
「興味深いですねえ」
「それが、一時間ほどになりまして、その後、十時からは、皆様は、まず、観光情報館で、豊穣祭に関する注意事項などの説明を聞いていただきます。それは十五分ほどですが、“観光マップ”及び、“豊穣祭案内のしおり”が渡されますので、その確認で、少し時間を取られるかもしれませんね」
「益々、興味深いですねえ」
セシルの説明を聞いているだけで、オスミン以上に、レイフの目が輝き出している。
「それから一時間少しほど観光を楽しんでいただいたら、また、観光情報館の方に戻っていただきます。正午には、豊穣祭のメインの催しがございますから」
「それは何ですか?」
「見てのお楽しみです」
うふふと、セシルから意味深な微笑みだけが返される。
「期待は裏切りませんので、ご安心くださいね」
「ええ、今からでも、とても楽しみです」
「正午のメインイベント終えまして、昼食と休憩を取られるのがよろしいかと。豊穣祭ではたくさんの露店も出ておりますので、皆様、たくさんのものを召し上がっていってくださいね」
「ああ、本当に興味深いですねえ」
「ええ、とても賑やかですし、退屈はなさらないことを保証いたしますわ」
なにしろ、今年は、十周年記念の盛大なお祭りを催す予定なのだ。
「食事後、午後からは、皆様、どうかご自由に観光なさってください。皆様には、私の領地から案内役をつけますので、質問などもございましたら、どうぞ、お気軽にお聞きなさってくださいね。一応、五時を過ぎて、宿場町の豊穣祭を閉める予定ですので、その前に、少し早めに邸に戻られて、休息なさることをお勧めいたしますわ。六時からは、領地内で、後夜祭を予定しております」
それぞれにあてがわれたゲスト部屋で一息をついた一行は、邸の談話室に集まっていた。
まだ幼いオスミンは、メイド達に付き添われてやってきた新たな部屋でも、興味深そうにきょろきょろと周囲を見渡し、心浮きだって、興奮しているその様相が明らかなほどである。
今まで、一度として王宮から出たこともない幼い王子殿下は、初の長距離移動、長距離の旅行となるだけに、コトレア領に到着してからも、ずっと浮かれて興奮している様子は、セシルも気が付いている。
これは――本人が気づかないうちに、はしゃぎすぎてぶっ倒れないようにしなくては……と、そこら辺の懸念を(しっかりと) 注意しておくセシルだった。
「今年の豊穣祭は、十周年記念をお祝いしまして、行事が目白押しとなっております。ですから、明日の開会式も少し時間を早めまして、朝八時からを予定しております。皆様は、開会式に参加なさる必要はございませんから、頃合いのよい時間帯に、豊穣祭に参加なさってくださいね」
談話室には、セシルの両親とシリルが一画のソファーに。
セシルの隣にギルバートが。その向かいに、レイフとオスミンが座り、リドウィナは隣にあるソファーに腰を下ろしていた。
もちろん、全員の付き添いであるメイド達も談話室に揃っていて、壁側で一切口を開かず、静々と控えている。
そして、入り口側と、メイドとは反対側には、王国騎士団の騎士達が数名。クリストフも直立したまま、静かに起立している。
なんだか、真ん中で座っているメンバーよりも、使用人達の数の方が多く、緊張している圧がひしひしと伝わってくるほどである……。
「開会式に参加しても、よろしいのですか?」
「もちろんです。開会式は宿場町の方で行いますので、少々、行列や人込みでごった返してしまいますが」
「そこは、護衛達にがんばってもらいましょう」
人混みがごった返す中で護衛――など、本当に、無理難題を押し付けてくるものだ。
「そう、ですね……。一応、皆様が開会式に参加されるのでありましたら、一か所で集まっていらっしゃった方が、護衛の騎士達にも護衛がしやすいのではないでしょうか?」
それで、その視線がギルバートに向けられる。
「そうですね。一か所に固まると狙われやすいことは確かですが、人混みが多い中では、無理に人込みを避けるよりは、人混みと一緒に、全員が移動した方が護衛はしやすくなりますね」
「では、私と一緒に移動なさるのでしたら、開会式の広場で、皆様の場所程度は確保できますが?」
「できるのですか? ――そうしていただいたら、とても助かるのですが……」
本当に、余計な手間と仕事を持ち込んでくれたものだ。
だが、レイフは知らん顔。
「ええ、構いません。邸を七時半には発ちますので、皆様、それでよろしいですか?」
「わかりました。そのように調整しておきましょう。――兄上、オスミンの世話は、よろしくお願いしますね」
「ああ、わかっている」
「リドウィナ様は、どうなさいますか?」
「わたくしも、よろしければ、ご一緒させていただきます。――宰相閣下、豊穣祭をご訪問なさる間、申し訳ございませんが、わたくしも――ご一緒させていただけたらと……。お邪魔にならないようにいたしますので……」
もちろん、護衛の問題があるので、リドウィナは全員と一緒に行動をしなければならない。それを指摘しないリドウィナの気遣いであることは、その場の全員が承知している。
「もちろんですよ。全員、揃って行動するのが最善でしょう」
「ありがとうございます……」
セシルが、大人しく座っているオスミンにも優しく微笑んだ。
「オスミン様、開会式には、小さなパレードも用意してあります」
「パレード? それはなんですか?」
「何人かのグループになって、行進をするお祝いなのです。ここ数年で、やっと、音楽隊――と言っても小さなものなのですが、それもできましたし、音楽隊の行進と、飾り付けをした馬車から花びらを飛ばします。パレード自体大きなものではございませんが、この領地の領民にとっては、パレードも初めてでしてね」
「うわあぁ……」
その光景を想像しただけで、オスミンが興奮したように目を輝かせている。
「少し、早くに起きなければならなくなってしまいますが、大丈夫ですか?」
「だいじょうぶですっ。ぼくも、パレードをみたいです」
「そうですか。明日は、たくさん見るものがございますからね」
それで、また全員に向き直り、
「開会式を終えますと、九時からは“初めてのお買い物”で、孤児院の子供達のお買い物がございます」
「興味深いですねえ」
「それが、一時間ほどになりまして、その後、十時からは、皆様は、まず、観光情報館で、豊穣祭に関する注意事項などの説明を聞いていただきます。それは十五分ほどですが、“観光マップ”及び、“豊穣祭案内のしおり”が渡されますので、その確認で、少し時間を取られるかもしれませんね」
「益々、興味深いですねえ」
セシルの説明を聞いているだけで、オスミン以上に、レイフの目が輝き出している。
「それから一時間少しほど観光を楽しんでいただいたら、また、観光情報館の方に戻っていただきます。正午には、豊穣祭のメインの催しがございますから」
「それは何ですか?」
「見てのお楽しみです」
うふふと、セシルから意味深な微笑みだけが返される。
「期待は裏切りませんので、ご安心くださいね」
「ええ、今からでも、とても楽しみです」
「正午のメインイベント終えまして、昼食と休憩を取られるのがよろしいかと。豊穣祭ではたくさんの露店も出ておりますので、皆様、たくさんのものを召し上がっていってくださいね」
「ああ、本当に興味深いですねえ」
「ええ、とても賑やかですし、退屈はなさらないことを保証いたしますわ」
なにしろ、今年は、十周年記念の盛大なお祭りを催す予定なのだ。
「食事後、午後からは、皆様、どうかご自由に観光なさってください。皆様には、私の領地から案内役をつけますので、質問などもございましたら、どうぞ、お気軽にお聞きなさってくださいね。一応、五時を過ぎて、宿場町の豊穣祭を閉める予定ですので、その前に、少し早めに邸に戻られて、休息なさることをお勧めいたしますわ。六時からは、領地内で、後夜祭を予定しております」
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