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Part 3
В.а 余計な - 08
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夕食の時間になると、ギルバート達はダイニングホールに招待され、部下達も一緒に、その場にやって来ていた。
朝食の時とは違い、テーブルなどは壁側に移動したらしく、そこに並んだ長いテーブルの上には、燦然と輝く食事やデザートがずらりと並べられていた。
「豊穣祭並みの食事の量ですねえ」
ずらりと並んだ料理を眺めているクリストフも、素直に感心している。
「さすが、セシル嬢だ」
そして、この場でも、普段と変わらず、セシルの人気度に感心して、喜んでいるギルバートだ。
「領民全員からの贈り物ですからねえ」
「確かに」
アトレシア大王国でも、そのような話など、一度だって聞いたことはない。
「さすが、セシル嬢だ」
「いやいや、そこで褒め殺さなくても、ギルバート様がご令嬢にベタ惚れしている事実は、存じています」
「わざわざ強調しなくてもいいだろうが」
「ただの事実です」
ダイニングホールには使用人達も全員が揃い、今夜の主役を待ちわびている。
そうやってセシルを待っている間も、ギルバートはセシルの贈り物はどんなものがいいか、ついつい、考えてしまっている。
今日の移動中だって、領民達が贈り物を手渡している場面を見やりながら、何度も、なにがいいのかなぁ……と、その考えばかりが頭を支配していたくらいだ。
「マイレディー」
使用人達が一斉に深く頭を下げ、一礼をした。
それで、ギルバートもダイニングホールの入り口に目を向ける。――が、その視線の先の人物を見て、ギルバートがその場で固まってしまっていた。
入口から姿を出したセシルの今夜の整いは、深いワインレッド色のドレスだった。ドレスは、オフショルダーの形で、少し、体の線を強調するようなピッタリとしたデザインだ。
ドレスのスカート部分にはプリーツを入れ込み、流れるようなラインを見せながら、少しふんわりとしたスカートの形を見せるように工夫しているドレスだ。
今夜は、セシルの誕生日を祝う夕食会であるから、プライベートのお祝いごとになる。
それで、少々、体の線が協調されるような煽情的なドレスなのだったが、侍女達全員に勧められて、そのドレスを着ることにしたのだ。
「絶対に、このドレスがいいですっ! このドレスを着たマイレディーを見た副団長様が、マイレディーのあまりの美しさとセクシーさに目を奪われて、悶絶されるんですっ!」
いや……。セシルは、全くそんなことを望んでなどいない……。
だが、侍女達全員の迫力に押されて、仕方なく、このドレスを着ることになったセシルだ。
肩と腕を隠すために、トップは短いボレロを着込んでいる。それは、鈍い金色の糸を使用したレースで、繊細で豪奢な模様が編み込まれたボレロに出来上がっている。
近年、セシルの領地でも、大分、レース編みが普及し出してきて、お針子達だけではなく、家に残っている主婦や、まだ若い少女達などもレース編みを始めている。
ドレスのスカート部分には、ボレロと同じ色の長いレースをスカートの上に囲み、セシルが歩くたびに、サラサラとそのレースが波打って、とても美しい光景に仕上がっていた。
そこに集まっている使用人達、全員から、嘆息めいた息が吐き出される。
今夜のセシルの仕上がりに、全員が溜息をこぼしそうなほど見惚れて、大満足しているのだ。
ギルバートも、そのうちの一人だった。全く、除外されていない。
トップとスカートのレースが豪奢なのに、繊細な模様が美しく、儚げなイメージのあるセシルの印象を、更に強調しているかのようだった。
セシルは細身の体躯なのに、緩やかな身体のラインが協調されて、艶めかしいほどの色気を放っている。
ゆっくりと部屋の中を進んで、ギルバートの方に寄ってきたセシルを前に、ギルバートも完全に我を忘れて、セシルに見惚れてしまっている。
「ギルバート様」
「セシル嬢……」
「お待たせしてしまいましたか?」
「いいえ、そのようなことはありません」
少し、ギルバートを見上げてくるセシルの藍の瞳に捉えられて、ギルバートは胸が詰まって、溜息が漏れてしまいそうだった。
「……申し訳ありません。正式な場であるとは知らず、このような出で立ちで……」
「そのように、お気になさらないでくださいませ。今日のパーティーは、正式なものでもありませんの。それに、ギルバート様は、騎士団の制服を着ていらっしゃるのですから、全く問題もありませんわ」
騎士団の制服と言っても、普段の常務用の制服のほうだ。正礼装の制服ではない。
対するセシルは、きちんとしたドレスに身を包み、パーティーにだって参加できるように美しく着飾って、正装をしてきたのだ。
「それに、これは――その……」
珍しく口を濁らせているようなセシルに、ギルバートも不思議そうな顔をする。
「いえ、これは……今日は、ギルバート様がいらっしゃっていますので」
「私ですか?」
「ええ、そうです。普段は、仕事着のままで食事会に参加しているのですが、今日は――隣国から、わざわざ、婚約者である王子殿下がいらしていて、王国騎士団の騎士の方も付き添っていらっしゃるのに、伯爵家の令嬢らしい格好一つもできないとは、伯爵家の恥だ、と諫められまして……」
「そうなのですか?」
ギルバートは、その程度のことなど、全く問題にはしていないのに。
朝食の時とは違い、テーブルなどは壁側に移動したらしく、そこに並んだ長いテーブルの上には、燦然と輝く食事やデザートがずらりと並べられていた。
「豊穣祭並みの食事の量ですねえ」
ずらりと並んだ料理を眺めているクリストフも、素直に感心している。
「さすが、セシル嬢だ」
そして、この場でも、普段と変わらず、セシルの人気度に感心して、喜んでいるギルバートだ。
「領民全員からの贈り物ですからねえ」
「確かに」
アトレシア大王国でも、そのような話など、一度だって聞いたことはない。
「さすが、セシル嬢だ」
「いやいや、そこで褒め殺さなくても、ギルバート様がご令嬢にベタ惚れしている事実は、存じています」
「わざわざ強調しなくてもいいだろうが」
「ただの事実です」
ダイニングホールには使用人達も全員が揃い、今夜の主役を待ちわびている。
そうやってセシルを待っている間も、ギルバートはセシルの贈り物はどんなものがいいか、ついつい、考えてしまっている。
今日の移動中だって、領民達が贈り物を手渡している場面を見やりながら、何度も、なにがいいのかなぁ……と、その考えばかりが頭を支配していたくらいだ。
「マイレディー」
使用人達が一斉に深く頭を下げ、一礼をした。
それで、ギルバートもダイニングホールの入り口に目を向ける。――が、その視線の先の人物を見て、ギルバートがその場で固まってしまっていた。
入口から姿を出したセシルの今夜の整いは、深いワインレッド色のドレスだった。ドレスは、オフショルダーの形で、少し、体の線を強調するようなピッタリとしたデザインだ。
ドレスのスカート部分にはプリーツを入れ込み、流れるようなラインを見せながら、少しふんわりとしたスカートの形を見せるように工夫しているドレスだ。
今夜は、セシルの誕生日を祝う夕食会であるから、プライベートのお祝いごとになる。
それで、少々、体の線が協調されるような煽情的なドレスなのだったが、侍女達全員に勧められて、そのドレスを着ることにしたのだ。
「絶対に、このドレスがいいですっ! このドレスを着たマイレディーを見た副団長様が、マイレディーのあまりの美しさとセクシーさに目を奪われて、悶絶されるんですっ!」
いや……。セシルは、全くそんなことを望んでなどいない……。
だが、侍女達全員の迫力に押されて、仕方なく、このドレスを着ることになったセシルだ。
肩と腕を隠すために、トップは短いボレロを着込んでいる。それは、鈍い金色の糸を使用したレースで、繊細で豪奢な模様が編み込まれたボレロに出来上がっている。
近年、セシルの領地でも、大分、レース編みが普及し出してきて、お針子達だけではなく、家に残っている主婦や、まだ若い少女達などもレース編みを始めている。
ドレスのスカート部分には、ボレロと同じ色の長いレースをスカートの上に囲み、セシルが歩くたびに、サラサラとそのレースが波打って、とても美しい光景に仕上がっていた。
そこに集まっている使用人達、全員から、嘆息めいた息が吐き出される。
今夜のセシルの仕上がりに、全員が溜息をこぼしそうなほど見惚れて、大満足しているのだ。
ギルバートも、そのうちの一人だった。全く、除外されていない。
トップとスカートのレースが豪奢なのに、繊細な模様が美しく、儚げなイメージのあるセシルの印象を、更に強調しているかのようだった。
セシルは細身の体躯なのに、緩やかな身体のラインが協調されて、艶めかしいほどの色気を放っている。
ゆっくりと部屋の中を進んで、ギルバートの方に寄ってきたセシルを前に、ギルバートも完全に我を忘れて、セシルに見惚れてしまっている。
「ギルバート様」
「セシル嬢……」
「お待たせしてしまいましたか?」
「いいえ、そのようなことはありません」
少し、ギルバートを見上げてくるセシルの藍の瞳に捉えられて、ギルバートは胸が詰まって、溜息が漏れてしまいそうだった。
「……申し訳ありません。正式な場であるとは知らず、このような出で立ちで……」
「そのように、お気になさらないでくださいませ。今日のパーティーは、正式なものでもありませんの。それに、ギルバート様は、騎士団の制服を着ていらっしゃるのですから、全く問題もありませんわ」
騎士団の制服と言っても、普段の常務用の制服のほうだ。正礼装の制服ではない。
対するセシルは、きちんとしたドレスに身を包み、パーティーにだって参加できるように美しく着飾って、正装をしてきたのだ。
「それに、これは――その……」
珍しく口を濁らせているようなセシルに、ギルバートも不思議そうな顔をする。
「いえ、これは……今日は、ギルバート様がいらっしゃっていますので」
「私ですか?」
「ええ、そうです。普段は、仕事着のままで食事会に参加しているのですが、今日は――隣国から、わざわざ、婚約者である王子殿下がいらしていて、王国騎士団の騎士の方も付き添っていらっしゃるのに、伯爵家の令嬢らしい格好一つもできないとは、伯爵家の恥だ、と諫められまして……」
「そうなのですか?」
ギルバートは、その程度のことなど、全く問題にはしていないのに。
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