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Part 3
В.а 余計な - 02
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嫌そうに、アルデーラが冷たくレイフを睨んでいるが、その程度の反対など、全く気にも留めていないレイフだ。
「それから、私達は特別な世話はいりませんよ。ご令嬢も、突然やって来た客人の世話をするなど、難しいでしょうから」
そうなる状況が分かっていながら、自分の我儘をにこやかに押し通しているレイフに、全員が無言。
世話がいらない?
そんな訳があるか!
生まれたその瞬間から、仕えている使用人全員にかしずかれ、あれやこれやと世話されて育ってきた王子が、世話無しに生活などできるものか。
おまけに、まだ世話を必要としている小さな王子など、更に手がかかるではないか……。
シーンと、完全に、嫌な沈黙だけが降りていた。
「ちちうえ、いってもいいですか?」
そして、オスミンだけ、この場の最悪の空気を読まず、素直に、その期待の目をアルデーラに向けている。
はあああぁぁ……と、あまりに嫌そうに、あまりに腹立たし気に、アルデーラが長い溜息を吐き出していた。
「――お前は……なんて卑怯な手を使うんだ。大人しく仕事をしていなさい」
「ですから、仕事をしますよ。あの領地では、学ぶことがたくさんあるでしょうから。オスミンにとっても、あの領地の統治方法、運営方法を学ぶことは、間違いなく、将来の為になることでしょうしね」
「お前に、子供の世話などできるものか」
「私一人ではありませんよ」
「なに?」
「ガルブランソン侯爵令嬢も一緒です」
「!!」
アルデーラとギルバートは、最高潮に引きつった顔をして、それで頭痛がひどすぎるといった様相で、頭を抱え込む。
まさか、自分で面倒みきれない子供の世話を、ガルブランソン侯爵令嬢に押し付けることまで考えていたなど、なんて男だ!
「箱入り令嬢ですからねえ。それでは、私の補佐役の手伝いとて務まりませんよ。もっと見聞を広め、新しいことを学ばなければ役にも立ちません」
そんな、あたかも仕事に影響が出てくるなどと示唆して、ガルブランソン侯爵令嬢を自分に押し付けて来たセシルに対しての、あてつけでもあるまいに。
「お前は、そこまでして、領地に行きたいのか?」
「ええ、もちろんです。ずーっと、そう言っているじゃないですか」
いや、初めの時から、ずーっと、文句を言い続けてきたレイフである。
だが、いい加減、無理があるから諦めるだろう、と考えていたアルデーラが甘かった。
この男が、諦める、などという概念があるはずもない。それも、自分が好きなことは、興味の引かれたものは、絶対に梃子でも動かない。
何度目かは分からない溜息が吐き出される。
「――――わかった」
「陛下っ!?」
責めるようなギルバートの口調でも、もう、アルデーラは、完全に、疲れ切っていたのだ。
レイフを相手にするだけで、普段の十倍は疲れてしまう……。
なにしろ、最強の偏屈な弟なのだから。
「そういうことだから、ギルバートは、ご令嬢に知らせてくれないか?」
「冗談はやめてください」
「うん? 冗談ではないぞ。たった今、承諾をもらったではないか」
それで、口を開けたまま、唖然とするギルバートだった。
信じられないレイフである……!
その話を聞いていたセシルは、途中から手を額に押し付け、それから、俯いて何も言わない。
シーンと、嫌な沈黙が降りていた。
ギルバートのすぐ後ろで控えているクリストフも、さすがに、今回だけは、顔を引きつらせたままだ。
まさか、緊急の用事がある――で、急遽、コトレアに戻って来たギルバートの要件が、こんな予想を外れた大問題だったなど、一体、誰が想像できようか。
ギルバートは事情の説明をせず、領地に着いてから説明する……と、それだけだった。
王国を揺るがすような――大問題を持ち込んでしまう為、情報漏洩を懸念して、ギルバートも、セシルに会う前では、下手なことは口に出せなかったのだろう。
「――――一体……、何人の護衛ですか? 五十人? 百人……?」
「百人は、軽いだろうと……」
「ご冗談はおやめになって……。そんな大人数、私の場所で受け入れられるはずもありません」
「――外で、簡易宿泊設備――など……?」
無理をお願いしているのは百も承知している。
だが、事態は、もう、ギルバートの手に負えない状態にまで、なってしまっているのだ。
だが、セシルは手で顔を隠したまま、顔を上げない。
シーンと、更に、嫌な沈黙が降りてしまった。
「申し訳、ありません……」
こんな仕打ちを受けるなど、一体、セシルは何をしたと言うのだ。
それでなくても、今年は十周年記念の豊穣祭で、今までの豊穣祭の中で一番と言っていいほどの盛大な祭りになる。
催しものも、行事も盛り沢山で、領地全土で、領民全員が、今からでも、その準備でてんやわんやである。
そんな中、なぜ、セシルの元に――隣国の王族が揃ってやって来るなどと……、そんな(超) 悲惨な状況を押し付けられなければならないのか。
特別な世話は必要ありません?
そんな呑気なことを言えるのは、あのレイフだけである!
「それから、私達は特別な世話はいりませんよ。ご令嬢も、突然やって来た客人の世話をするなど、難しいでしょうから」
そうなる状況が分かっていながら、自分の我儘をにこやかに押し通しているレイフに、全員が無言。
世話がいらない?
そんな訳があるか!
生まれたその瞬間から、仕えている使用人全員にかしずかれ、あれやこれやと世話されて育ってきた王子が、世話無しに生活などできるものか。
おまけに、まだ世話を必要としている小さな王子など、更に手がかかるではないか……。
シーンと、完全に、嫌な沈黙だけが降りていた。
「ちちうえ、いってもいいですか?」
そして、オスミンだけ、この場の最悪の空気を読まず、素直に、その期待の目をアルデーラに向けている。
はあああぁぁ……と、あまりに嫌そうに、あまりに腹立たし気に、アルデーラが長い溜息を吐き出していた。
「――お前は……なんて卑怯な手を使うんだ。大人しく仕事をしていなさい」
「ですから、仕事をしますよ。あの領地では、学ぶことがたくさんあるでしょうから。オスミンにとっても、あの領地の統治方法、運営方法を学ぶことは、間違いなく、将来の為になることでしょうしね」
「お前に、子供の世話などできるものか」
「私一人ではありませんよ」
「なに?」
「ガルブランソン侯爵令嬢も一緒です」
「!!」
アルデーラとギルバートは、最高潮に引きつった顔をして、それで頭痛がひどすぎるといった様相で、頭を抱え込む。
まさか、自分で面倒みきれない子供の世話を、ガルブランソン侯爵令嬢に押し付けることまで考えていたなど、なんて男だ!
「箱入り令嬢ですからねえ。それでは、私の補佐役の手伝いとて務まりませんよ。もっと見聞を広め、新しいことを学ばなければ役にも立ちません」
そんな、あたかも仕事に影響が出てくるなどと示唆して、ガルブランソン侯爵令嬢を自分に押し付けて来たセシルに対しての、あてつけでもあるまいに。
「お前は、そこまでして、領地に行きたいのか?」
「ええ、もちろんです。ずーっと、そう言っているじゃないですか」
いや、初めの時から、ずーっと、文句を言い続けてきたレイフである。
だが、いい加減、無理があるから諦めるだろう、と考えていたアルデーラが甘かった。
この男が、諦める、などという概念があるはずもない。それも、自分が好きなことは、興味の引かれたものは、絶対に梃子でも動かない。
何度目かは分からない溜息が吐き出される。
「――――わかった」
「陛下っ!?」
責めるようなギルバートの口調でも、もう、アルデーラは、完全に、疲れ切っていたのだ。
レイフを相手にするだけで、普段の十倍は疲れてしまう……。
なにしろ、最強の偏屈な弟なのだから。
「そういうことだから、ギルバートは、ご令嬢に知らせてくれないか?」
「冗談はやめてください」
「うん? 冗談ではないぞ。たった今、承諾をもらったではないか」
それで、口を開けたまま、唖然とするギルバートだった。
信じられないレイフである……!
その話を聞いていたセシルは、途中から手を額に押し付け、それから、俯いて何も言わない。
シーンと、嫌な沈黙が降りていた。
ギルバートのすぐ後ろで控えているクリストフも、さすがに、今回だけは、顔を引きつらせたままだ。
まさか、緊急の用事がある――で、急遽、コトレアに戻って来たギルバートの要件が、こんな予想を外れた大問題だったなど、一体、誰が想像できようか。
ギルバートは事情の説明をせず、領地に着いてから説明する……と、それだけだった。
王国を揺るがすような――大問題を持ち込んでしまう為、情報漏洩を懸念して、ギルバートも、セシルに会う前では、下手なことは口に出せなかったのだろう。
「――――一体……、何人の護衛ですか? 五十人? 百人……?」
「百人は、軽いだろうと……」
「ご冗談はおやめになって……。そんな大人数、私の場所で受け入れられるはずもありません」
「――外で、簡易宿泊設備――など……?」
無理をお願いしているのは百も承知している。
だが、事態は、もう、ギルバートの手に負えない状態にまで、なってしまっているのだ。
だが、セシルは手で顔を隠したまま、顔を上げない。
シーンと、更に、嫌な沈黙が降りてしまった。
「申し訳、ありません……」
こんな仕打ちを受けるなど、一体、セシルは何をしたと言うのだ。
それでなくても、今年は十周年記念の豊穣祭で、今までの豊穣祭の中で一番と言っていいほどの盛大な祭りになる。
催しものも、行事も盛り沢山で、領地全土で、領民全員が、今からでも、その準備でてんやわんやである。
そんな中、なぜ、セシルの元に――隣国の王族が揃ってやって来るなどと……、そんな(超) 悲惨な状況を押し付けられなければならないのか。
特別な世話は必要ありません?
そんな呑気なことを言えるのは、あのレイフだけである!
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