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Part 3
А.а 始まり - 02
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「まずは、私の本気と本音を、あなたに聞いていただきたかったのです。ですが、お互いに、ただ結婚しましょう、という状況でも立場でもないことは、私も、重々、承知しております」
お互いの国が違う。立場も責任も違う。
これから、ギルバートが提示する――誓いをセシルに承諾してもらえたとしても、ギルバートは王族の一員で、そして、アトレシア大王国の王家からは、直接的でも、間接的でも、その関係を断ち切ることは不可能なのだから。
「そして、私に関わること、アトレシア大王国の王家に関わることで、あなたに不利な状況が訪れてしまうかもしれません。私はそれを望んでいません。あなたの自由を奪い、あなたを苦しめてしまうことも、したくありません。ですので、もし、あなたが私との結婚に同意して下さる場合、私は、あなたに婚姻契約を提示したいと考えています」
「――婚姻、契約……ですか?」
「はい。まず、私はあなたの領主としてのお立場を、心から尊敬しています」
この領地は、セシルの血と汗を注ぎ込んだ、セシルの努力の結晶の地であり、セシルが最も愛する土地だ。
「ですから、あなたの心の拠り所ともなる、大切な場所を奪うつもりはありませんし、この領地を取り上げるようなことは、したくありません。婚姻後でも、あなたには、ここの領主でいていただきたい。その件につきましては、私は、ノーウッド王国での領地譲渡など、その知識がございませんので、宰相にお任せしております」
「――えっ……? 宰相、閣下に……?!」
「はい、そうです。ですから、領地問題、または領主問題は、心配なさる必要はないと思います。私と婚姻を結んだ後でも、年に三回、繁忙期である時期に、せめて、一月ほどは、あなたが領地に戻れることを約束します。ただ、年末近くでは、我が王国の方でも、年始の催しなどの準備がございまして、もしかしたら、一月は少々無理になってしまうかもしれませんが、それでも、二週間程度なら、あなたも領地に戻り、領地の仕事を終わらせることができるのではないかと」
それから、ギルバートがほんの微かにだけ困ったような表情を見せ、
「それは――その時期になってみないと分からないことですので、正確な日数は、今は提示できません。申し訳ありません」
「いえ、そんな……」
セシルは、まだ、ギルバートと結婚したわけではない。
だから、ギルバートが、そんな風に、済まなそうに謝罪をする義理だってないはずなのだ。
「それから、必要とあれば、その状況次第で、領地に戻られることも可能です。私は、あなたを拘束する為に、あなたを望んでいるのではありませんから」
「は、あ……」
「私に関わることは、あなたにも身の危険が迫ってしまう可能性があります。ですから、あなたの信頼する護衛が王国内、または、王宮内であなたに付き添うことも、問題はありません。ただ――我々の騎士団からも、護衛はつくことになるでしょうから、それは申し訳ありませんが、あなたの身の安全を護る為だと、許していただきたい」
この点は、クリストフともよく話し合った。
セシルの自由を奪わないことは、なにも領主だけの問題ではない、と。
セシルには、セシル自身が信頼を置く、付き人も護衛もいる。セシルの為だけに動く人間が、揃っている。
そのような関係を取り上げてしまったら、それこそ、セシルの“自由”を奪ってしまうも同じ行動になってしまうだろう、と。
「ですが、あなたに干渉するようなことはないと、護衛として就く騎士達にも、厳しく言いつけておきます。私は騎士団を抜けることができませんので、婚姻後には、あなたの生活を、アトレシア大王国に移動してもらう形になりますが、王宮に住む必要はございません」
「――それは、どういう意味ですか……?」
「私は、臣籍降下を考えています」
「えっ……? 臣籍、降下……?!」
「はい。私が臣籍降下した場合、私は王宮で暮らす必要がありませんし、臣下が王宮で暮らすこともできません。ですから、王宮ではない場で、居住することになるでしょう」
ギルバートが――ここまでの覚悟を決めていたなど信じられなくて……、さすがに、セシルも驚いて、その顔が、微かに心配げにギルバートを見返していく。
「――――国王陛下は、なんと……?」
「陛下からは、全て私の意向を支持する、とのお言葉をいただきました」
「そう、ですか……」
信じられない……。
あの国王陛下が、セシルを嫁にする為に、実の弟である王子殿下が臣籍降下することを、そんな簡単に許すなど……。
もう、これは、どう考えても、どう見ても、王家から、文句もなしに、セシルの結婚が認められている証拠ではないか――!
「婚姻後、あなたは私の妻という形になりますが、あなたの今まで築いてきた知識、経験、そして、領主としての手腕と能力。そのどれも全て、王国にとっての助けとなるでしょう。ですから、その時々により、必要とあらば、あなたのお力を貸していただきたいのです」
それは――他国からの嫁いできただけのセシルに、王国内の国政に口を出してもいい、などと、セシルの政治介入に太鼓判を押されている状態も同じだ。
~*~*~*~* 後書き ~*~*~*~*
早いもので、もう、クリスマスイブ! 皆さん、クリスマスパーティーの予定など忙しいですか?
Merry Christmas! Be calm and truly relaxed this Christmas ❄︎𖡺𐂂𖡺❅*.
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
お互いの国が違う。立場も責任も違う。
これから、ギルバートが提示する――誓いをセシルに承諾してもらえたとしても、ギルバートは王族の一員で、そして、アトレシア大王国の王家からは、直接的でも、間接的でも、その関係を断ち切ることは不可能なのだから。
「そして、私に関わること、アトレシア大王国の王家に関わることで、あなたに不利な状況が訪れてしまうかもしれません。私はそれを望んでいません。あなたの自由を奪い、あなたを苦しめてしまうことも、したくありません。ですので、もし、あなたが私との結婚に同意して下さる場合、私は、あなたに婚姻契約を提示したいと考えています」
「――婚姻、契約……ですか?」
「はい。まず、私はあなたの領主としてのお立場を、心から尊敬しています」
この領地は、セシルの血と汗を注ぎ込んだ、セシルの努力の結晶の地であり、セシルが最も愛する土地だ。
「ですから、あなたの心の拠り所ともなる、大切な場所を奪うつもりはありませんし、この領地を取り上げるようなことは、したくありません。婚姻後でも、あなたには、ここの領主でいていただきたい。その件につきましては、私は、ノーウッド王国での領地譲渡など、その知識がございませんので、宰相にお任せしております」
「――えっ……? 宰相、閣下に……?!」
「はい、そうです。ですから、領地問題、または領主問題は、心配なさる必要はないと思います。私と婚姻を結んだ後でも、年に三回、繁忙期である時期に、せめて、一月ほどは、あなたが領地に戻れることを約束します。ただ、年末近くでは、我が王国の方でも、年始の催しなどの準備がございまして、もしかしたら、一月は少々無理になってしまうかもしれませんが、それでも、二週間程度なら、あなたも領地に戻り、領地の仕事を終わらせることができるのではないかと」
それから、ギルバートがほんの微かにだけ困ったような表情を見せ、
「それは――その時期になってみないと分からないことですので、正確な日数は、今は提示できません。申し訳ありません」
「いえ、そんな……」
セシルは、まだ、ギルバートと結婚したわけではない。
だから、ギルバートが、そんな風に、済まなそうに謝罪をする義理だってないはずなのだ。
「それから、必要とあれば、その状況次第で、領地に戻られることも可能です。私は、あなたを拘束する為に、あなたを望んでいるのではありませんから」
「は、あ……」
「私に関わることは、あなたにも身の危険が迫ってしまう可能性があります。ですから、あなたの信頼する護衛が王国内、または、王宮内であなたに付き添うことも、問題はありません。ただ――我々の騎士団からも、護衛はつくことになるでしょうから、それは申し訳ありませんが、あなたの身の安全を護る為だと、許していただきたい」
この点は、クリストフともよく話し合った。
セシルの自由を奪わないことは、なにも領主だけの問題ではない、と。
セシルには、セシル自身が信頼を置く、付き人も護衛もいる。セシルの為だけに動く人間が、揃っている。
そのような関係を取り上げてしまったら、それこそ、セシルの“自由”を奪ってしまうも同じ行動になってしまうだろう、と。
「ですが、あなたに干渉するようなことはないと、護衛として就く騎士達にも、厳しく言いつけておきます。私は騎士団を抜けることができませんので、婚姻後には、あなたの生活を、アトレシア大王国に移動してもらう形になりますが、王宮に住む必要はございません」
「――それは、どういう意味ですか……?」
「私は、臣籍降下を考えています」
「えっ……? 臣籍、降下……?!」
「はい。私が臣籍降下した場合、私は王宮で暮らす必要がありませんし、臣下が王宮で暮らすこともできません。ですから、王宮ではない場で、居住することになるでしょう」
ギルバートが――ここまでの覚悟を決めていたなど信じられなくて……、さすがに、セシルも驚いて、その顔が、微かに心配げにギルバートを見返していく。
「――――国王陛下は、なんと……?」
「陛下からは、全て私の意向を支持する、とのお言葉をいただきました」
「そう、ですか……」
信じられない……。
あの国王陛下が、セシルを嫁にする為に、実の弟である王子殿下が臣籍降下することを、そんな簡単に許すなど……。
もう、これは、どう考えても、どう見ても、王家から、文句もなしに、セシルの結婚が認められている証拠ではないか――!
「婚姻後、あなたは私の妻という形になりますが、あなたの今まで築いてきた知識、経験、そして、領主としての手腕と能力。そのどれも全て、王国にとっての助けとなるでしょう。ですから、その時々により、必要とあらば、あなたのお力を貸していただきたいのです」
それは――他国からの嫁いできただけのセシルに、王国内の国政に口を出してもいい、などと、セシルの政治介入に太鼓判を押されている状態も同じだ。
~*~*~*~* 後書き ~*~*~*~*
早いもので、もう、クリスマスイブ! 皆さん、クリスマスパーティーの予定など忙しいですか?
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