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Part2
Е.г 恒例の - 03
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「少し気になっていることがありましてね」
「なんだ……?」
ゆっくりと馬を歩かせている場で、隣に並ぶクリストフは、なぜか知らないが、きょろきょろと周囲を見渡している。
「なんだ?」
ギルバートもクリストフに真似てみて周囲を確認してみるが、特別、怪しげな動きは見られない。
怪しげな人間もいない。
「どうした?」
「ああ、あそこですね。あそこに馬を停めましょう」
「え……?」
訳の分からないクリストフの行動なのに、クリストフはさっさと馬の足を進めて通りの端に寄って行く。
「買い物をしている間、馬をみてくれると聞いたのですが?」
「はい、そうです。観光の方ですか?」
「いえ。ただ、食事の買い出しです」
「そうですか」
騎乗したまま、通りの端にある馬車駐留所に寄って行ったクリストフを見上げる年配の男性が、丁寧にお辞儀をする。
セシルの領地には、表通りから一本外れて馬車道ができている。この領地では、通行人用の通りと、馬車用の通りを一緒に混ぜ合わせていないのだ。
だから、一本裏道の馬車道には、少し離れた区画に、馬車停留所がある。馬車を停めて観光を済ませたり、買い物を済ませるお客用に、その間、馬車や馬の管理をしてくれる場所があるのだ。
今年、豊穣祭中にシリルからその説明をされて、ギルバートもクリストフも、またまた素直に感心してしまった。
通りが混雑しても、馬車や人込みでごった返さないように、馬車で事故が起きないようにとの配慮で、通りが分かれているという話なのだ。
そして、観光客がスムーズに買い物ができるように、馬車駐留所を設けて、短時間だけ、馬車や馬の面倒をみてくれるという。
不便なことが上がると、セシルはすぐにその解決策を見つけ、すぐに実行しているように思える。
だから、この領地は、どこに行っても、なにもかもが無駄がなく、能率的で、効率的で、領地の運営が行き届いている。
些細な問題でも無視をせず、面倒だから、お金がかかるから、なんていう理由で、セシルは問題点を引き伸ばしたりしない。
その場で、すぐに解決してしまう方だ。
クリストフは簡単に馬から下りると、すぐ傍に駆けられている立札(たてふだ)をチェックする。
時間毎での料金表が記載されていて、さすが、セシルの領地。どうやって馬の世話を頼むのかなど、質問する必要もない。
「では、1時間以内で」
「かしこまりました」
小銭を男性に手渡し、クリストフがまだ騎乗しているギルバートを見上げる。
「どうしたのですか? お一人だけ、騎乗したまま待っていらっしゃるのですか?」
「え……? なにを……?」
「“ロトベーカーリー”ですよ。気になりませんか?」
「ロト、ベーカーリー?」
「そうですよ。今年できたというパン屋ですよ」
「そう、だが……」
なぜ、そのパン屋に行く必要があるのだろうか、ギルバートもさっぱりクリストフの意図が分からない。
「次にお会いする時に、新しくできたお店のことも知らなくては、失礼になってしまうでしょう?」
「え……?」
次に……会えることなどできるのだろうか……。
いやいや、否定的に考えてはいけない。ギルバートは、次にも、セシルに会うのだ。会わなければいけないのだ。
そうでなければ、ギルバートの恋は、この場で一生終わってしまう……。
「ああ、そうだったな……」
クリストフの気遣いに感謝して、ギルバートも馬の背から簡単に降りていた。
「お前達もどうだ?」
「ご一緒します」
もちろん、残りの二人だってギルバートの護衛なのだ。一緒に付き添っていかなくて、どうする。
パン屋に行くのなら、二人だって、ギルバートにピッタリと付き添って行く(おいしいものへの意気込みは、100%だ)。
全員が男性に小銭を渡し、馬を預かってもらう。
「あの……みなさまは、ロトベーカリーに行かれるのですか?」
「そうです。パン屋というのは初めてでね」
「そうでしたか。でしたら、そこの次の通りを右手に曲がり、大通りの観光情報館に向かって歩かれますと、すぐに見えてきます」
「ああ、それはありがたい。“ロトベーカリー”というのは、賑わっているだろうか?」
「はいっ。毎日、お客が絶えないと聞いています。おいしい焼きスイーツもたくさん揃っております」
「ああ、それはいい」
会話が弾んでいるクリストフの横で、ギルバートも (ほんの少しだけ) 気分が浮上していた。
ここで落ち込んだままでは、今度、いつセシルに会えるか分かったものではない。王国に戻ったのなら、次の機会に向けて、ギルバートはせっせと計画を練らなければならないのだ。
次の機会に会える為に――ロトベーカリーのパンの話もしてみたいものだ。
急ぐ必要もない全員は、のんびりと宿場町の大通りを歩いて行き、すぐに“ロトベーカリー”を見つけていた。
ガラス張りの壁で店内が見合わせ、お店の壁には、お店の名前の入ったまだ真新しいロゴがぶら下がっている。
「おぉ……、さすがパン屋というだけはありますねえ」
ドアを開ける前に、ガラス窓から店内を覗き見ると、壁側にも、店の真ん中にも、たくさんのパンが並べられている。
「朝早くでも、もう、あんなにたくさんのパンが出来上がっているのですね」
そうなんです。パン屋の朝は、とても早いのです。
パン作りも、パン焼きも、ものすごい朝早くから始められて、朝早くに出勤する領民の為に、パン屋も早くから開いている。
それで、この頃では、自宅で朝食を済ませず、パン屋に直接寄ってきて、朝ご飯を買い、仕事に向かう途中でパンを食べていく、なんていう新しい習慣もできてきている。
お昼も混雑していて、四時にはお店が閉まってしまうが、その間まで、客足が絶えたことがないほど繁盛をみせている。
「いらっしゃいませっ~!」
ギルバート達が店内に入るだけで、お店の従業員から全員、丁寧な挨拶が投げられた。
店内も明るく、小綺麗で、焼き立てのパンの匂いが鼻に届き、先程、朝食を済ませたばかりなのに、少しばかりお腹が空いてきそうな雰囲気だ。
「このお店も、きっと、ご令嬢のアドバイスがされているのでしょうね。このような小綺麗で、明るく、さっぱりとした店内というのは、入っても気分がいいものです」
「確かに、そうだな。“ラ・パスタ”もそうだった。雰囲気がいいと、気分がいいものなのだな」
「ええ、私もそう思いますよ」
まだ、数歩しかお店の中に足を進めていないのに、壁側に設置されている何段もの棚に目移りしてしまって、ギルバートもクリストフ達も、全員が物珍しそうに、一つ一つのパンを確認してしまう。
木のトレーの上に異なった種類のパンが並び、どれも、一人用サイズで作られているようで、そんなパンを見るのも初めてで、見ているだけで、ギルバート達も嬉しくなってしまう。
そして、それぞれのパンの前には、ちゃんとパンの名前が載った札が立っていて、簡単な中身の説明もされている。
やはり、セシルの領地だ。他のお店に違わず、このお店だって、お客様サービス抜群である!
「これは、チーズパン。チーズと豚肉を混ぜたもの。チーズとマヨネーズ? 確か……マヨネーズは、卵で作ると、シリル殿が話していたはず?」
「ソースの一種ではなかったか? 豊穣祭でも、マヨネーズの入ったサンドイッチがでてきたような……?」
「ああ、ああ、そうでしたね。あれもおいしかったですね。では、サンドイッチも探してみましょう」
次の棚に移ると、また違うパンの種類が置いてあった。
「ここは、甘目のパンでしょうか? どれも、おいしそうですねえ」
くるみパン。アップルのロール巻き。ちょっとだけお値段が張って、カスタードパンやチョコレートロールが少しだけ。
反対側の壁側には、大きなパンがズラリと並べられている。
見ているだけで、壮観な気分になってくる。
「ああ、どれもおいしそうですねえ……。迷ってしまいますねえ」
それは、ギルバートも同感だった。
「なんだ……?」
ゆっくりと馬を歩かせている場で、隣に並ぶクリストフは、なぜか知らないが、きょろきょろと周囲を見渡している。
「なんだ?」
ギルバートもクリストフに真似てみて周囲を確認してみるが、特別、怪しげな動きは見られない。
怪しげな人間もいない。
「どうした?」
「ああ、あそこですね。あそこに馬を停めましょう」
「え……?」
訳の分からないクリストフの行動なのに、クリストフはさっさと馬の足を進めて通りの端に寄って行く。
「買い物をしている間、馬をみてくれると聞いたのですが?」
「はい、そうです。観光の方ですか?」
「いえ。ただ、食事の買い出しです」
「そうですか」
騎乗したまま、通りの端にある馬車駐留所に寄って行ったクリストフを見上げる年配の男性が、丁寧にお辞儀をする。
セシルの領地には、表通りから一本外れて馬車道ができている。この領地では、通行人用の通りと、馬車用の通りを一緒に混ぜ合わせていないのだ。
だから、一本裏道の馬車道には、少し離れた区画に、馬車停留所がある。馬車を停めて観光を済ませたり、買い物を済ませるお客用に、その間、馬車や馬の管理をしてくれる場所があるのだ。
今年、豊穣祭中にシリルからその説明をされて、ギルバートもクリストフも、またまた素直に感心してしまった。
通りが混雑しても、馬車や人込みでごった返さないように、馬車で事故が起きないようにとの配慮で、通りが分かれているという話なのだ。
そして、観光客がスムーズに買い物ができるように、馬車駐留所を設けて、短時間だけ、馬車や馬の面倒をみてくれるという。
不便なことが上がると、セシルはすぐにその解決策を見つけ、すぐに実行しているように思える。
だから、この領地は、どこに行っても、なにもかもが無駄がなく、能率的で、効率的で、領地の運営が行き届いている。
些細な問題でも無視をせず、面倒だから、お金がかかるから、なんていう理由で、セシルは問題点を引き伸ばしたりしない。
その場で、すぐに解決してしまう方だ。
クリストフは簡単に馬から下りると、すぐ傍に駆けられている立札(たてふだ)をチェックする。
時間毎での料金表が記載されていて、さすが、セシルの領地。どうやって馬の世話を頼むのかなど、質問する必要もない。
「では、1時間以内で」
「かしこまりました」
小銭を男性に手渡し、クリストフがまだ騎乗しているギルバートを見上げる。
「どうしたのですか? お一人だけ、騎乗したまま待っていらっしゃるのですか?」
「え……? なにを……?」
「“ロトベーカーリー”ですよ。気になりませんか?」
「ロト、ベーカーリー?」
「そうですよ。今年できたというパン屋ですよ」
「そう、だが……」
なぜ、そのパン屋に行く必要があるのだろうか、ギルバートもさっぱりクリストフの意図が分からない。
「次にお会いする時に、新しくできたお店のことも知らなくては、失礼になってしまうでしょう?」
「え……?」
次に……会えることなどできるのだろうか……。
いやいや、否定的に考えてはいけない。ギルバートは、次にも、セシルに会うのだ。会わなければいけないのだ。
そうでなければ、ギルバートの恋は、この場で一生終わってしまう……。
「ああ、そうだったな……」
クリストフの気遣いに感謝して、ギルバートも馬の背から簡単に降りていた。
「お前達もどうだ?」
「ご一緒します」
もちろん、残りの二人だってギルバートの護衛なのだ。一緒に付き添っていかなくて、どうする。
パン屋に行くのなら、二人だって、ギルバートにピッタリと付き添って行く(おいしいものへの意気込みは、100%だ)。
全員が男性に小銭を渡し、馬を預かってもらう。
「あの……みなさまは、ロトベーカリーに行かれるのですか?」
「そうです。パン屋というのは初めてでね」
「そうでしたか。でしたら、そこの次の通りを右手に曲がり、大通りの観光情報館に向かって歩かれますと、すぐに見えてきます」
「ああ、それはありがたい。“ロトベーカリー”というのは、賑わっているだろうか?」
「はいっ。毎日、お客が絶えないと聞いています。おいしい焼きスイーツもたくさん揃っております」
「ああ、それはいい」
会話が弾んでいるクリストフの横で、ギルバートも (ほんの少しだけ) 気分が浮上していた。
ここで落ち込んだままでは、今度、いつセシルに会えるか分かったものではない。王国に戻ったのなら、次の機会に向けて、ギルバートはせっせと計画を練らなければならないのだ。
次の機会に会える為に――ロトベーカリーのパンの話もしてみたいものだ。
急ぐ必要もない全員は、のんびりと宿場町の大通りを歩いて行き、すぐに“ロトベーカリー”を見つけていた。
ガラス張りの壁で店内が見合わせ、お店の壁には、お店の名前の入ったまだ真新しいロゴがぶら下がっている。
「おぉ……、さすがパン屋というだけはありますねえ」
ドアを開ける前に、ガラス窓から店内を覗き見ると、壁側にも、店の真ん中にも、たくさんのパンが並べられている。
「朝早くでも、もう、あんなにたくさんのパンが出来上がっているのですね」
そうなんです。パン屋の朝は、とても早いのです。
パン作りも、パン焼きも、ものすごい朝早くから始められて、朝早くに出勤する領民の為に、パン屋も早くから開いている。
それで、この頃では、自宅で朝食を済ませず、パン屋に直接寄ってきて、朝ご飯を買い、仕事に向かう途中でパンを食べていく、なんていう新しい習慣もできてきている。
お昼も混雑していて、四時にはお店が閉まってしまうが、その間まで、客足が絶えたことがないほど繁盛をみせている。
「いらっしゃいませっ~!」
ギルバート達が店内に入るだけで、お店の従業員から全員、丁寧な挨拶が投げられた。
店内も明るく、小綺麗で、焼き立てのパンの匂いが鼻に届き、先程、朝食を済ませたばかりなのに、少しばかりお腹が空いてきそうな雰囲気だ。
「このお店も、きっと、ご令嬢のアドバイスがされているのでしょうね。このような小綺麗で、明るく、さっぱりとした店内というのは、入っても気分がいいものです」
「確かに、そうだな。“ラ・パスタ”もそうだった。雰囲気がいいと、気分がいいものなのだな」
「ええ、私もそう思いますよ」
まだ、数歩しかお店の中に足を進めていないのに、壁側に設置されている何段もの棚に目移りしてしまって、ギルバートもクリストフ達も、全員が物珍しそうに、一つ一つのパンを確認してしまう。
木のトレーの上に異なった種類のパンが並び、どれも、一人用サイズで作られているようで、そんなパンを見るのも初めてで、見ているだけで、ギルバート達も嬉しくなってしまう。
そして、それぞれのパンの前には、ちゃんとパンの名前が載った札が立っていて、簡単な中身の説明もされている。
やはり、セシルの領地だ。他のお店に違わず、このお店だって、お客様サービス抜群である!
「これは、チーズパン。チーズと豚肉を混ぜたもの。チーズとマヨネーズ? 確か……マヨネーズは、卵で作ると、シリル殿が話していたはず?」
「ソースの一種ではなかったか? 豊穣祭でも、マヨネーズの入ったサンドイッチがでてきたような……?」
「ああ、ああ、そうでしたね。あれもおいしかったですね。では、サンドイッチも探してみましょう」
次の棚に移ると、また違うパンの種類が置いてあった。
「ここは、甘目のパンでしょうか? どれも、おいしそうですねえ」
くるみパン。アップルのロール巻き。ちょっとだけお値段が張って、カスタードパンやチョコレートロールが少しだけ。
反対側の壁側には、大きなパンがズラリと並べられている。
見ているだけで、壮観な気分になってくる。
「ああ、どれもおいしそうですねえ……。迷ってしまいますねえ」
それは、ギルバートも同感だった。
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