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Part2

* Д.а 回顧 *

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 パチリ、と目を覚ましていた。

 なぜ、そんな風に、朝からはっきりと目を覚まし、おまけに、意識まではっきりとしているのかは、分からなかった。

 でも、自分のすぐ上の視界に、天井が見える。
 全く見慣れない天井。

 ベッドの上に、天井?

 借りていた自室のアパート(Apartment、この場合、日本のマンションのようなもの)の天井は、白地のクリーム系の天井だ。どこにでもある、ありきたりで、メインテナンスのしやすいペンキが塗られた天井だ。

 そして、天井にはめ込まれたライトが数個。
 それがない。

 そして、なぜ、茶色の天井が目につくのだろうか?

 それで、顔を動かさず、視線だけを動かした先で、ベッドのかどにある柱が視界に入って来た。
 その柱を見ただけで、すでに謎である。


(――えっ……? なに、その柱……)


 毎日、使用しているベッドなど、あまりに見慣れ過ぎていて、今更、注意を払って見直すようなものでもない。
 だから、ベッドのかどに柱などないことは、重々、承知している。

 あまりに見慣れている、日常として脳に蓄積されている記憶からしても、ベッドの真上の天井、ベッドのかどの柱、どれもの記憶とは重なりもしない。

 当てはまりもしない。

 すでに、自分が――いつもと同じ場所にいないことだけは、なぜか、すぐに、認識してしまっていた。

 ガバッ――

 起き上がった反動で、自分のいる場所が――すでに、一体、どこなのかも分からない!

「――なに、ここ……!? えっ……、どこ、ここ……?!」

 ベッドの柱は、もちろんのこと、若い少女達がよく憧れる、Four-posted(四柱式の)天蓋てんがい付きのベッドだ。

 でも、ブリブリの少女趣味らしく、レースカーテンがついていたり、ピンクのフリルのカーテンがかかっていたりはしていない。

 そんな些末な事実に、実は、ホっとしてしまっている自分がいる。

 サイドにベッドカーテンはかかっているが、柱側できちんと縛って止められている。

 ベッドだけではなく、柱と柱の間から見える部屋の様子も、全く自分の部屋ではない。

 昨日、いや、ここ最近、仕事のし過ぎで疲れている為に、寝ぼけたまま、夢でも見ているのだろうか?

 見下ろしたら、丁寧に刺繍されたベッドカバーに、清潔なベッドリネンが目に入る。――入ったはいいが、違和感があり過ぎる。

 バッと、両手を出してみたら――どう見ても、小さな手にしか見えない。
 子供の手にしか、見えない。

「えっ……?! まだ、寝ぼけてるのかしら……?」

 パタパタと、瞬きを繰り返すが、目の前の視界は全く変わらない。

 頭を振ってみたが、今は意識がはっきりしていて、とてもではないが、寝ぼけている状態でもなんでもない。

 そこで、一瞬、完全自失していた。

 それから数秒。


(なに……、どうなってるの……?!)


 まずは、状況把握が最重要案件だ!

 パニックしかかっていても、冷静さは普段から変わらなかった。

 大きな呼吸を何度かして、まず、自分を落ち着かせなければ。
 パニックしている場合ではない。

 ドクドクと、勝手に上がりだしそうな脈動が耳に届き、すでにパニックしかかっている状態だ。

 ふー、ふーと、深い呼吸を繰り返し、まずは、落ち着こう。
 落ち着こう……。

 何度目かの深呼吸を終えて、ベッドの上に置き上がったまま、まずは、状況把握を試みる。

 四柱式天蓋付きの大きなベッド。
 いつ、そのベッドに潜り込んだのか、そのベッドに寝たのかさえも記憶にない……。

「OK……」

 自分に言い聞かせているのか、ただ、無意識に認識した態度がポロっと出てしまったのか、はっきり言って、今の時点では定かではない。

 ベッドから動かずに、周囲の状況把握の為に視線を動かしてみると、視界の先には、西洋風の家具が見えて来る。


(あれって、洒落た長椅子よね)


 横に視線を向けて見ると、ふかふかそうなカーペットも見え、そして、またも西洋風の家具が目に入って来る。


(誰の家具……?!)


 もちろん、自分のアパートの家具は、西洋風やヴィクリアン風の洒落た家具ではない。
 モダン的な洒落た内容ではなかったが、快適で、使いやすく、気に入っている家具が置いてあった。

 それが、今は全部なくなっている。

 第二弾で、完全自失しかけてしまう。

 このまま、パニックせずに、意識を保っていられるなんて、有り得ないだろう……。


(――なくなってるというより、この部屋自体が、全く違う部屋よね……)


 それで、またしても、同じ疑問に陥ってしまう。

(なんで……?! ここは、一体、どこ……?!)

 夢を見ているのかもしれない。

 パチっと、少々、力を入れて、両頬を叩いてみた。
 痛い……。

 でも、視界に入って来る光景は、さっきと全く変わっていなかった。

 ぎゅぅっと、ものすごい力を入れて、目を閉じてみた。
 パっと、目を開くと、あまりに力を入れ過ぎた為、一瞬、視界がぼやけ、それから、周囲の形が色と形を成してくる。

 視界に入って来る景色は、さっきと全く変わっていなかった。


(なんなの、ここ……。一体、どうなってるのよ……?!)


 状況が変わらないままなので、仕方なく、ベッドから降りてみることにした。

 ベッドカバーから足を外し、床に降りてみると、足のサイズも――違っていた。
 どう見ても、小さな子供も足にしか見えず、その場で……あまりに信じられない出来事に、失神しそうになっていた。

 クラクラと、目眩めまいがしてきそうである。

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