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Part2
В.д 囮に? - 13
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「あぁ……! なんて、勿体ないことを……!!」
その状態を見て、セシルなど、失神しそうになってしまったほどだ。
わざわざ遠方まで買い出しに行く必要もなく、セシルの目の前で、大量の酒石英が採れるのだ。取り放題なのだ。
それも、全部タダで!
それからというもの、ヘルバート伯爵家で使用済みのワイン樽から取れる酒石英をごっそりと分けてもらい、セシルの領地に運んで来てもらっているのだ。
ベーキングパウダーの完成と共に、ホットケーキも作ってみた。
メイプルシロップはなかったが、たっぷりのバターとハチミツが混ざったホットケーキを食べた瞬間、感動で、涙がこぼれそうだった。
懐かしい味だ……とは、あの時、思わなかった。
ただ、おいしぃぃぃっ……と、食が満たされて、大満足していたのだ。
領地ではパンケーキも紹介した。“ホットケーキ”とは呼んでいない。
でも、フワフワにするのに、ベーキングパウダーも、少々、使用する。メレンゲを使って、もう少し、フワフワにする。
そのパンケーキは、子供達にも食べさせてあげたのだ。
初めてフワフワとしたパンケーキを食べた子供達の顔と言ったら。形容しがたいほどの歓喜と、興奮と、未知の食感に、興奮しまくりだった。
「メレンゲを作るんでしたら、私が協力します」
「もちろん、私も」
ボランティアの助っ人がたくさんいるので、面倒なメレンゲ作りは、セシルもしなくて済むらしい。
「それなら、今夜はスナックディナーにしましょう。パンケーキで」
「「やったぁっ!」」
謎の会話を進めている全員の前で、会話についていけないギルバートは困惑顔だ。
「あの……、ご令嬢が、お作りになられるのですか?」
「ええ、そうです。皆様もいかがです? 子供達が、張り切ってお手伝いを買って出てくれましたので、たくさんの量を作っても、問題ありませんのよ」
「いえ……」
丁重に断ろうとしたギルバートも、そこで、ふと、考えてしまった。
最初にセシルに出会った時、セシルはギルバート達に“トースティー”なるものを作ってくれた。
貴族のご令嬢なのに、厨房で料理をして度肝を抜かされたが、あの料理も、大層おいしいものだった。
今回の“パンケーキ”なるものだって、きっと、おいしいものだろう。
それも、セシル自らが作ってくれる。
“ザ・手作り!”だ。
「あの……ご迷惑では、ないでしょうか?」
「いいえ、そんなことありませんわ」
「ご令嬢は、お疲れでは、ありませんか……」
「大丈夫です。よろしかったら、どうぞ?」
「では……、もしよろしければ、お願いいたします」
ついつい、ギルバートも誘惑には勝てないのだ。
その夜は、全員で、宿舎の近くの食堂に行き、そこの厨房を借りて、パンケーキを食していた。
子供達は張り切ってメレンゲを作ってくれたので、時間の収縮ができた。
ギルバートの好意で、惜しみなく出されたバターとハチミチをたっぷりと乗せ、全員がフワフワのパンケーキを満喫できたのだった。
「とても……おいしいです。このような、ふわふわとした――ケーキ、なのですか?」
「「パンケーキ」とは呼ばれていますけれど、ケーキとは、少々、違いますわね」
「それでも、とても、おいしいものです。本当にありがとうございました」
じーんと感動して、ほんわかと喜びを噛み締めているようなギルバートを見て、パンケーキ効果で、ギルバートの心配も少しだけ薄まったようだった。
大成功である(ふふ)。
ただ、その夜は、パンケーキだけでは終わらなかったのだ。
セシルが作ってくれたパンケーキのお礼がしたいと、ギルバートに勧められ、お礼はいらないと断ったセシルの前で、ギルバートも引かず。
「実は、今からお風呂に入ろうと考えていましたので。ですから、お礼など、お気になさらないでくださいませ」
「えっ……? お、風呂、ですか? ――それは、失礼いたしました……」
ご令嬢の湯浴みの時間だったなどとは思わず、ギルバートの失態である。
「いえ、そのようにお気になさらないで。ただ、今日は――そうですね。あまりに小汚い眼差しを向けられたので、汚らわしいのを落そうと考えていただけですので」
「え゛っ……?!」
驚いているギルバートを前に、セシルはお風呂の準備をする為に部屋に戻っていった。
オルガとアーシュリンがお湯の準備を始めようとした頃、セシルはいきなり現れた王宮の侍女達に囲まれて――ある部屋に連れて来られてしまったのだ。
以前にも滞在させてもらった、かの有名な最高貴賓用の特別室である。
「え……、あの……?」
困惑しているセシルを無視して、侍女達がさっさと準備に取り掛かる。
気が付いたら、セシルは用意されたお風呂に浸かっていた。それも、王族専用のあのローズの花弁が大量に浮かべられた、優雅で大きなバスタブの中で。
呆気に取られているセシルは、お風呂を終えて、特別室の大きくてフカフカのベッドで、その夜を過ごしたことになる。
ギルバートのお礼も、心配も、事件に巻き込んだ謝罪も、全部、一気に返されたような気分である。
本当に、ギルバートのセシルに対しての扱いは、下にも置かない最上級のものだった。
「副団長様……。いつものことながら、この有り余るほどのもてなし……」
すごいですわぁぁ…………。
その状態を見て、セシルなど、失神しそうになってしまったほどだ。
わざわざ遠方まで買い出しに行く必要もなく、セシルの目の前で、大量の酒石英が採れるのだ。取り放題なのだ。
それも、全部タダで!
それからというもの、ヘルバート伯爵家で使用済みのワイン樽から取れる酒石英をごっそりと分けてもらい、セシルの領地に運んで来てもらっているのだ。
ベーキングパウダーの完成と共に、ホットケーキも作ってみた。
メイプルシロップはなかったが、たっぷりのバターとハチミツが混ざったホットケーキを食べた瞬間、感動で、涙がこぼれそうだった。
懐かしい味だ……とは、あの時、思わなかった。
ただ、おいしぃぃぃっ……と、食が満たされて、大満足していたのだ。
領地ではパンケーキも紹介した。“ホットケーキ”とは呼んでいない。
でも、フワフワにするのに、ベーキングパウダーも、少々、使用する。メレンゲを使って、もう少し、フワフワにする。
そのパンケーキは、子供達にも食べさせてあげたのだ。
初めてフワフワとしたパンケーキを食べた子供達の顔と言ったら。形容しがたいほどの歓喜と、興奮と、未知の食感に、興奮しまくりだった。
「メレンゲを作るんでしたら、私が協力します」
「もちろん、私も」
ボランティアの助っ人がたくさんいるので、面倒なメレンゲ作りは、セシルもしなくて済むらしい。
「それなら、今夜はスナックディナーにしましょう。パンケーキで」
「「やったぁっ!」」
謎の会話を進めている全員の前で、会話についていけないギルバートは困惑顔だ。
「あの……、ご令嬢が、お作りになられるのですか?」
「ええ、そうです。皆様もいかがです? 子供達が、張り切ってお手伝いを買って出てくれましたので、たくさんの量を作っても、問題ありませんのよ」
「いえ……」
丁重に断ろうとしたギルバートも、そこで、ふと、考えてしまった。
最初にセシルに出会った時、セシルはギルバート達に“トースティー”なるものを作ってくれた。
貴族のご令嬢なのに、厨房で料理をして度肝を抜かされたが、あの料理も、大層おいしいものだった。
今回の“パンケーキ”なるものだって、きっと、おいしいものだろう。
それも、セシル自らが作ってくれる。
“ザ・手作り!”だ。
「あの……ご迷惑では、ないでしょうか?」
「いいえ、そんなことありませんわ」
「ご令嬢は、お疲れでは、ありませんか……」
「大丈夫です。よろしかったら、どうぞ?」
「では……、もしよろしければ、お願いいたします」
ついつい、ギルバートも誘惑には勝てないのだ。
その夜は、全員で、宿舎の近くの食堂に行き、そこの厨房を借りて、パンケーキを食していた。
子供達は張り切ってメレンゲを作ってくれたので、時間の収縮ができた。
ギルバートの好意で、惜しみなく出されたバターとハチミチをたっぷりと乗せ、全員がフワフワのパンケーキを満喫できたのだった。
「とても……おいしいです。このような、ふわふわとした――ケーキ、なのですか?」
「「パンケーキ」とは呼ばれていますけれど、ケーキとは、少々、違いますわね」
「それでも、とても、おいしいものです。本当にありがとうございました」
じーんと感動して、ほんわかと喜びを噛み締めているようなギルバートを見て、パンケーキ効果で、ギルバートの心配も少しだけ薄まったようだった。
大成功である(ふふ)。
ただ、その夜は、パンケーキだけでは終わらなかったのだ。
セシルが作ってくれたパンケーキのお礼がしたいと、ギルバートに勧められ、お礼はいらないと断ったセシルの前で、ギルバートも引かず。
「実は、今からお風呂に入ろうと考えていましたので。ですから、お礼など、お気になさらないでくださいませ」
「えっ……? お、風呂、ですか? ――それは、失礼いたしました……」
ご令嬢の湯浴みの時間だったなどとは思わず、ギルバートの失態である。
「いえ、そのようにお気になさらないで。ただ、今日は――そうですね。あまりに小汚い眼差しを向けられたので、汚らわしいのを落そうと考えていただけですので」
「え゛っ……?!」
驚いているギルバートを前に、セシルはお風呂の準備をする為に部屋に戻っていった。
オルガとアーシュリンがお湯の準備を始めようとした頃、セシルはいきなり現れた王宮の侍女達に囲まれて――ある部屋に連れて来られてしまったのだ。
以前にも滞在させてもらった、かの有名な最高貴賓用の特別室である。
「え……、あの……?」
困惑しているセシルを無視して、侍女達がさっさと準備に取り掛かる。
気が付いたら、セシルは用意されたお風呂に浸かっていた。それも、王族専用のあのローズの花弁が大量に浮かべられた、優雅で大きなバスタブの中で。
呆気に取られているセシルは、お風呂を終えて、特別室の大きくてフカフカのベッドで、その夜を過ごしたことになる。
ギルバートのお礼も、心配も、事件に巻き込んだ謝罪も、全部、一気に返されたような気分である。
本当に、ギルバートのセシルに対しての扱いは、下にも置かない最上級のものだった。
「副団長様……。いつものことながら、この有り余るほどのもてなし……」
すごいですわぁぁ…………。
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