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Part2
В.б ゲリラ戦 - 03
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今日は旗取り合戦なので、それぞれのチームだって、移動せずに、ずっと同じ場所に待機しているわけにはいかない。
移動しなければ、ほぼ、他のチームに出会う機会はないと言っても過言ではない。
だから、王国騎士団の騎士達が(無闇矢鱈に) 移動するならば、そこら中に罠を仕掛けて、戦闘不能、または、不可能な状態を作ってやればいい。
セシルの騎士見習いである子供達は、体格的にも、正規の騎士達に負けている。力技では、到底、勝ち目はない。
1対1の剣での接戦だったら、即座に、子供達の方が全滅していることだろう。
だから、今回は、落とし穴に、吊るし網、鳥籠の罠を作る要領で木の枝封じ。まあ、こんなところだろう。
情報収集から戻って来たジャンとトムソーヤからの報告で、ある程度、ここら一体の地形を把握したフィロは、そこから行動に移っていた。
まず初めに、一組の王国騎士団のチームを狙い撃ちし、相手側の攻撃方法と対処方法を確認する。
煽ったら、子供達を追いかけて来るのか、来ないのか。
全員で必ず行動しているのか、どうか。
団体で攻撃する戦法は何か。
たぶん、フィロの見解では、一組の騎士達を確認すれば、残りの七組のチームも、ほぼ同じ動きをするだろうと、予測を立てている。
騎士団としては最強かもしれないが、規則にはまった、ルールに縛られた動きしかできない騎士達が、子供達のように自由に動き回れるとは、到底、考え難かったのだ。
ゲリラ戦開始から二時間ほどした頃、最初の警笛が森の中で慣らされていた。
それから、次の一時間ほどで二度、警笛が鳴った。
山の入り口地点で待機しているセシル達の耳にも、その警笛の音は聞こえていた。
「随分、張り切っていますわねえ……」
「やはり……ご令嬢の精鋭部隊ですか?」
きっと、その答えを予想しているギルバートだったが、一応、そんなことをセシルに聞いてみた。
セシルは何も言わないが、その顔が全てを物語っている。
ギルバートも、つい、溜息をこぼさずにはいられない。
「……ここは、少し、迎えに行った方がいいかもしれませんね……」
「迎えに行く? ――それは、助けに行く、という意味ですか?」
ええ、まあ……そういう同意語にもなるでしょう。
セシルの予想では、王国騎士団の騎士達は、旗を取られる以前に、すでに動けなくなっている可能性の方が大なので、まさか、騎士達をその状態のまま放っておくわけにもいかないだろう。
「警笛が鳴った方角に、一応、確認に行ってみます?」
変な一拍が降りて、
「――我々が出向いて、安全なのですか?」
そして、セシルからも一拍間が降りて、
「たぶん……その正反対の状況ではないかと」
ギルバートが、更に深い溜息をこぼしていた。
「では、やはり、ゲリラ戦が終了するまで、待機しているしかありませんね……」
一体、何人の部下が、今日は、生き延びていられるのだろうか……などと、さすがの副団長サマも、かなり弱気な発言が頭に浮かんでしまっていたのだった。
昼頃には、セシル達も、用意されていた軽食のサンドイッチなどをもらい、かなり暇な時間が過ぎていた。
そして、午後二時頃に入る前には、八回の警笛が慣らされていた。
「終了したようですね」
予定していた時間よりも、二時間も早く――全滅したようである。
たぶん、確認しなくても、全滅したのは王国騎士団の方であるのは間違いなく、ギルバートもクリストフも、唸り声を上げずにはいられなかった状態だ。
セシルが警笛を二度ならし、ゲリラ戦終了を告げていた。
それからしばらくして、集合場所に戻って来たのは、やはり、セシルの領地の騎士見習いだけだ。
「では、迎えに行きましょうか……」
子供達が、一体、どんな罠を仕掛けたのか不確かで(不安で)、セシル達は、子供達をの案内で(一番) 安全な道を通り、残してきた王国騎士団の救出に向かう。
ある場所では、信じられないほど深い落とし穴に騎士達が落とされ、その上に、山のような葉っぱの嵐が降り落ちている。
ある場所では、蔓でグルグル巻きにされた騎士達が、木に縛り付けられている。
動ける騎士達も残っていたが、負けとなった時点でその場に待機を指示されていたので、仕方なく、地面に座って待っていた騎士達もいる。
理由を問いてみれば、木の枝で作られた罠にはまり、その間、弓矢(先っぽは丸くしてある)などで総攻撃を受けたので、その時点で即死だ、とフィロに淡々と言いつけられ、それで、敗北となっていたのだ。
一人一人、騎士達を救出して行く過程で、ギルバートもクリストフも溜息ばかりこぼしている。
「予想通りなのでしょうが、予想を遥に超えて、ハチャメチャになっていますねえ……」
自分の隊の騎士達が全滅で、クリストフもかける言葉が見たらない。
集合場所に戻って来て、また整列し直した騎士達だったが、今日の――不完全燃焼の戦いに、あまりに信じられない戦法で負けた事実に、沸々と上がって来る苛立ちが隠せない。
「皆さん、今日のゲリラ戦はどうでしたか?」
セシルの問いにも、完全な沈黙だけが上がっていた。
だが、王国騎士団の騎士達からの、少なからずの憤りや怒気が上がり出しているのは、セシルも簡単に気が付いている。
「領地では、ゲリラ戦の後、反省会をしていますが、どうなさいますか?」
「では、お願いします」
反省会は、いつも、“良い点”、“気付いた点”、“改善策”を話し合う場となっている。
個人個人で、ゲリラ戦を客観的に振り返り、それぞれに意見を言い合う場なのだ。
大抵なら、“悪い点”やら、“負けた理由”など、すぐに、ネガティブで簡単に指摘できる事実に焦点を置きがちだ。
だが、その方法では、ただ単に、問題点ばかりを強調し合って、その先が進まない。
だから、セシルの領地では、“悪い点”や“負けた理由”は、“改善策”の方に入れられる。
問題だった事実を認識したのなら、次の時にどう改善すべきか、という話題に焦点を置き、愚痴って文句をこぼしてばかりいられないようにしているのだ。
移動しなければ、ほぼ、他のチームに出会う機会はないと言っても過言ではない。
だから、王国騎士団の騎士達が(無闇矢鱈に) 移動するならば、そこら中に罠を仕掛けて、戦闘不能、または、不可能な状態を作ってやればいい。
セシルの騎士見習いである子供達は、体格的にも、正規の騎士達に負けている。力技では、到底、勝ち目はない。
1対1の剣での接戦だったら、即座に、子供達の方が全滅していることだろう。
だから、今回は、落とし穴に、吊るし網、鳥籠の罠を作る要領で木の枝封じ。まあ、こんなところだろう。
情報収集から戻って来たジャンとトムソーヤからの報告で、ある程度、ここら一体の地形を把握したフィロは、そこから行動に移っていた。
まず初めに、一組の王国騎士団のチームを狙い撃ちし、相手側の攻撃方法と対処方法を確認する。
煽ったら、子供達を追いかけて来るのか、来ないのか。
全員で必ず行動しているのか、どうか。
団体で攻撃する戦法は何か。
たぶん、フィロの見解では、一組の騎士達を確認すれば、残りの七組のチームも、ほぼ同じ動きをするだろうと、予測を立てている。
騎士団としては最強かもしれないが、規則にはまった、ルールに縛られた動きしかできない騎士達が、子供達のように自由に動き回れるとは、到底、考え難かったのだ。
ゲリラ戦開始から二時間ほどした頃、最初の警笛が森の中で慣らされていた。
それから、次の一時間ほどで二度、警笛が鳴った。
山の入り口地点で待機しているセシル達の耳にも、その警笛の音は聞こえていた。
「随分、張り切っていますわねえ……」
「やはり……ご令嬢の精鋭部隊ですか?」
きっと、その答えを予想しているギルバートだったが、一応、そんなことをセシルに聞いてみた。
セシルは何も言わないが、その顔が全てを物語っている。
ギルバートも、つい、溜息をこぼさずにはいられない。
「……ここは、少し、迎えに行った方がいいかもしれませんね……」
「迎えに行く? ――それは、助けに行く、という意味ですか?」
ええ、まあ……そういう同意語にもなるでしょう。
セシルの予想では、王国騎士団の騎士達は、旗を取られる以前に、すでに動けなくなっている可能性の方が大なので、まさか、騎士達をその状態のまま放っておくわけにもいかないだろう。
「警笛が鳴った方角に、一応、確認に行ってみます?」
変な一拍が降りて、
「――我々が出向いて、安全なのですか?」
そして、セシルからも一拍間が降りて、
「たぶん……その正反対の状況ではないかと」
ギルバートが、更に深い溜息をこぼしていた。
「では、やはり、ゲリラ戦が終了するまで、待機しているしかありませんね……」
一体、何人の部下が、今日は、生き延びていられるのだろうか……などと、さすがの副団長サマも、かなり弱気な発言が頭に浮かんでしまっていたのだった。
昼頃には、セシル達も、用意されていた軽食のサンドイッチなどをもらい、かなり暇な時間が過ぎていた。
そして、午後二時頃に入る前には、八回の警笛が慣らされていた。
「終了したようですね」
予定していた時間よりも、二時間も早く――全滅したようである。
たぶん、確認しなくても、全滅したのは王国騎士団の方であるのは間違いなく、ギルバートもクリストフも、唸り声を上げずにはいられなかった状態だ。
セシルが警笛を二度ならし、ゲリラ戦終了を告げていた。
それからしばらくして、集合場所に戻って来たのは、やはり、セシルの領地の騎士見習いだけだ。
「では、迎えに行きましょうか……」
子供達が、一体、どんな罠を仕掛けたのか不確かで(不安で)、セシル達は、子供達をの案内で(一番) 安全な道を通り、残してきた王国騎士団の救出に向かう。
ある場所では、信じられないほど深い落とし穴に騎士達が落とされ、その上に、山のような葉っぱの嵐が降り落ちている。
ある場所では、蔓でグルグル巻きにされた騎士達が、木に縛り付けられている。
動ける騎士達も残っていたが、負けとなった時点でその場に待機を指示されていたので、仕方なく、地面に座って待っていた騎士達もいる。
理由を問いてみれば、木の枝で作られた罠にはまり、その間、弓矢(先っぽは丸くしてある)などで総攻撃を受けたので、その時点で即死だ、とフィロに淡々と言いつけられ、それで、敗北となっていたのだ。
一人一人、騎士達を救出して行く過程で、ギルバートもクリストフも溜息ばかりこぼしている。
「予想通りなのでしょうが、予想を遥に超えて、ハチャメチャになっていますねえ……」
自分の隊の騎士達が全滅で、クリストフもかける言葉が見たらない。
集合場所に戻って来て、また整列し直した騎士達だったが、今日の――不完全燃焼の戦いに、あまりに信じられない戦法で負けた事実に、沸々と上がって来る苛立ちが隠せない。
「皆さん、今日のゲリラ戦はどうでしたか?」
セシルの問いにも、完全な沈黙だけが上がっていた。
だが、王国騎士団の騎士達からの、少なからずの憤りや怒気が上がり出しているのは、セシルも簡単に気が付いている。
「領地では、ゲリラ戦の後、反省会をしていますが、どうなさいますか?」
「では、お願いします」
反省会は、いつも、“良い点”、“気付いた点”、“改善策”を話し合う場となっている。
個人個人で、ゲリラ戦を客観的に振り返り、それぞれに意見を言い合う場なのだ。
大抵なら、“悪い点”やら、“負けた理由”など、すぐに、ネガティブで簡単に指摘できる事実に焦点を置きがちだ。
だが、その方法では、ただ単に、問題点ばかりを強調し合って、その先が進まない。
だから、セシルの領地では、“悪い点”や“負けた理由”は、“改善策”の方に入れられる。
問題だった事実を認識したのなら、次の時にどう改善すべきか、という話題に焦点を置き、愚痴って文句をこぼしてばかりいられないようにしているのだ。
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