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Part2
* В.б ゲリラ戦 *
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山と言えば?
散策。山歩き。登山。トランピング(トレッキングのこと)。
アウトドアの大自然に囲まれて、できることはたくさん。
もちろん、今日は楽しいゲリラ戦。
外は快晴。朝からでも、澄み渡るような青空が広がり、気温も暖かくなり始めている。
歩くくらいなら、ジャケットはもう必要ないほどだ。
最高のゲリラ戦日和!
「ゲリラ戦には山が必要なのですが」
合同訓練の調整をする上で、セシルの手紙の一つに書かれていた要望だった。
もちろんのこと、ギルバート達と言えば、“山”と言うのは、一体、どんな山で、どのくらいの高さで広さが必要なのか理解に苦しみ、セシルに返答する前に、騎士団長、ギルバートとクリストフは、かなり頭をひねってしまった状態だった。
おまけに、山で何をするのかも想像できず、どんな訓練になるのかも分からず、かなり理解に苦しんでいたなど、提案したセシルは露にも思わなかったことだろう。
セシルの基準からしたら、コトレア領の周囲には山々が連なり、森もたくさんある。
だから、ゲリラ戦をするにあたり、騎士達が隠れる場所、動き回れる場所、普段の訓練所とは全く違う場所であれば何でも良かったのだが、領地でのゲリラ戦は、いつも山の中で行われていたので、それをお願いしてみたのだ。
まさか、その一言で、アトレシア大王国側の騎士団に、ものすごいプレッシャーをかけていたなど思いもよらず。
それで、セシルの説明から、森があって、邪魔が入らずに、かなりの広範囲で動き回れる場所であれば、平地でも山でも丘でもどちらでも良いということを理解したギルバート達だった。
今日のゲリラ戦は初日ということで、訓練所とは違う場所での模擬戦闘に近い。
王宮から一時間ほど離れた場所にある、小高い山と森がある場所に全員がやって来ていた。
ここ数日、セシルが連れて来た騎士見習いの子供達は、王国騎士団の訓練に慣れる為に、朝と夕の二度、騎士達の訓練に参加していた。
朝と夕方で合わせる王国騎士団の顔は違っていたが、それでも、小隊という組での二十人ほどの騎士達で、二度ほど顔を合わせた隊はいる。
王国騎士団の構成や、第三騎士団の仕組みを知らないセシルは、ギルバートがセシル達の為に、何個かの小隊を選んで訓練を一緒にさせているのではないかしら? ――との憶測が上がったが、まだまだ初日。
王国騎士団で知らないことがたくさんある。これから、徐々に学んで行くのだろう。
全員が今日の訓練場所に騎馬で移動する際も、もちろん、セシルは騎馬だ。馬車などではない。
じーっと、騎士達からの無言の視線が送られているのは気付いたが、王国騎士団の騎士達も合同訓練ではまだまだ初日。
これからすぐに、令嬢らしからぬセシルの行動に慣れることだろう(ふふふ)。
手始めに、今日の合同訓練には、王国騎士団から二組の小隊が揃っていた。四十人程の騎士達である。
そして、一番初めのゲリラ戦とあって、第三騎士団からはギルバートやクリストフだけではなく、団長であるヘインズも一緒にやって来ていた。
「おい、フィロ。足手まといになるようなら、置いてくぞ」
ピクッと、フィロの眉が揺れる。
「確かに。動き回ってる時に、ゼーゼー言って、吐き出しても知らないぜ」
「そうそう。役立たずはいらないって、フィロがいつも言ってた言葉だろ?」
悪気はなくても、よく、そこまで言ってくれるものだ。
確かに、フィロはセシルの補佐役をしているから、他の四人のように、毎日の鍛錬や訓練に時間を割くことはできない。
それで、四人よりは体力が落ちてしまったかもしれないが、だからと言って、“足手まとい”、果ては、“無能扱い”されるなど、フィロも落ちぶれたものだ。
「冗談も甚だにしてもらいたいね」
「冗談じゃないぜ。お前、山中を走り回れんのか?」
「昔から、肉体労働しなくても、一体、誰が、チームのヘマを庇ってやっていたと思ってるんだよ」
いや、昔から、ジャンの引き連れていたチームや孤児達の“頭脳犯”は、フィロの役割である。
悪事から、いたずらから、その作戦を全部立てていたのは、フィロ一人だけである。
「まあ……、そうだけど」
そして、フィロを怒らせることが何より恐ろしいことも、その場の全員が承知していることである。
なにしろ、“悪の親玉”、“悪巧み大王”と異名を取るほどに、かなり苛烈な制裁を考え出すフィロだ。
四人はそんなフィロに慣れているから、悪巧みがかなり苛烈に走っても、「またか」 程度で、驚くこともなくなったが、さてさて、ある意味、躾がきちんとされている王国騎士団の騎士達は、理解不能で尋常ならないフィロの攻撃方法に耐えられるのだろうか。
「集合」
掛け声がかかり、全員が中央に寄って来て整列した。
全員の前で、ギルバートとセシル、その後ろにクリストフが並んでいる。団長であるヘインズは側に控え、今日の合同訓練を見学するだけのようだった。
「これから、ゲリラ戦の合同訓練を始める。ゲリラ戦のルールや方法を、今からご令嬢に説明していただく」
お願いします、とギルバートから振られ、セシルが全員を見渡していく。
「皆さん。今日は、ゲリラ戦の初めての挑戦ということで、ほぼ、ルール、または制限なしの方法で始めたいと思います」
それを聞いた子供達が、なぜかは知らないが、全員嬉しそうな顔を見せ、よしっ、と拳を握りしめている。
制限なし――などと言われてしまったら、子供達にとって、ハチャメチャし放題である(セシルは、いつも、そんなことを一言として言った覚えはないのだが……)。
ギルバートからは、一応、騎士達にはゲリラ戦の定義は伝えておいたが、誰一人として、実際に、それが意味する内容を理解していないと、聞いている。
まあ、ゲリラ戦は、ある意味、正攻法とは全く違った戦い方であるから、剣技や剣闘を主とする騎士達の戦いには当てはまらず、見知りもしない戦法であるのは、セシルも承知している。
散策。山歩き。登山。トランピング(トレッキングのこと)。
アウトドアの大自然に囲まれて、できることはたくさん。
もちろん、今日は楽しいゲリラ戦。
外は快晴。朝からでも、澄み渡るような青空が広がり、気温も暖かくなり始めている。
歩くくらいなら、ジャケットはもう必要ないほどだ。
最高のゲリラ戦日和!
「ゲリラ戦には山が必要なのですが」
合同訓練の調整をする上で、セシルの手紙の一つに書かれていた要望だった。
もちろんのこと、ギルバート達と言えば、“山”と言うのは、一体、どんな山で、どのくらいの高さで広さが必要なのか理解に苦しみ、セシルに返答する前に、騎士団長、ギルバートとクリストフは、かなり頭をひねってしまった状態だった。
おまけに、山で何をするのかも想像できず、どんな訓練になるのかも分からず、かなり理解に苦しんでいたなど、提案したセシルは露にも思わなかったことだろう。
セシルの基準からしたら、コトレア領の周囲には山々が連なり、森もたくさんある。
だから、ゲリラ戦をするにあたり、騎士達が隠れる場所、動き回れる場所、普段の訓練所とは全く違う場所であれば何でも良かったのだが、領地でのゲリラ戦は、いつも山の中で行われていたので、それをお願いしてみたのだ。
まさか、その一言で、アトレシア大王国側の騎士団に、ものすごいプレッシャーをかけていたなど思いもよらず。
それで、セシルの説明から、森があって、邪魔が入らずに、かなりの広範囲で動き回れる場所であれば、平地でも山でも丘でもどちらでも良いということを理解したギルバート達だった。
今日のゲリラ戦は初日ということで、訓練所とは違う場所での模擬戦闘に近い。
王宮から一時間ほど離れた場所にある、小高い山と森がある場所に全員がやって来ていた。
ここ数日、セシルが連れて来た騎士見習いの子供達は、王国騎士団の訓練に慣れる為に、朝と夕の二度、騎士達の訓練に参加していた。
朝と夕方で合わせる王国騎士団の顔は違っていたが、それでも、小隊という組での二十人ほどの騎士達で、二度ほど顔を合わせた隊はいる。
王国騎士団の構成や、第三騎士団の仕組みを知らないセシルは、ギルバートがセシル達の為に、何個かの小隊を選んで訓練を一緒にさせているのではないかしら? ――との憶測が上がったが、まだまだ初日。
王国騎士団で知らないことがたくさんある。これから、徐々に学んで行くのだろう。
全員が今日の訓練場所に騎馬で移動する際も、もちろん、セシルは騎馬だ。馬車などではない。
じーっと、騎士達からの無言の視線が送られているのは気付いたが、王国騎士団の騎士達も合同訓練ではまだまだ初日。
これからすぐに、令嬢らしからぬセシルの行動に慣れることだろう(ふふふ)。
手始めに、今日の合同訓練には、王国騎士団から二組の小隊が揃っていた。四十人程の騎士達である。
そして、一番初めのゲリラ戦とあって、第三騎士団からはギルバートやクリストフだけではなく、団長であるヘインズも一緒にやって来ていた。
「おい、フィロ。足手まといになるようなら、置いてくぞ」
ピクッと、フィロの眉が揺れる。
「確かに。動き回ってる時に、ゼーゼー言って、吐き出しても知らないぜ」
「そうそう。役立たずはいらないって、フィロがいつも言ってた言葉だろ?」
悪気はなくても、よく、そこまで言ってくれるものだ。
確かに、フィロはセシルの補佐役をしているから、他の四人のように、毎日の鍛錬や訓練に時間を割くことはできない。
それで、四人よりは体力が落ちてしまったかもしれないが、だからと言って、“足手まとい”、果ては、“無能扱い”されるなど、フィロも落ちぶれたものだ。
「冗談も甚だにしてもらいたいね」
「冗談じゃないぜ。お前、山中を走り回れんのか?」
「昔から、肉体労働しなくても、一体、誰が、チームのヘマを庇ってやっていたと思ってるんだよ」
いや、昔から、ジャンの引き連れていたチームや孤児達の“頭脳犯”は、フィロの役割である。
悪事から、いたずらから、その作戦を全部立てていたのは、フィロ一人だけである。
「まあ……、そうだけど」
そして、フィロを怒らせることが何より恐ろしいことも、その場の全員が承知していることである。
なにしろ、“悪の親玉”、“悪巧み大王”と異名を取るほどに、かなり苛烈な制裁を考え出すフィロだ。
四人はそんなフィロに慣れているから、悪巧みがかなり苛烈に走っても、「またか」 程度で、驚くこともなくなったが、さてさて、ある意味、躾がきちんとされている王国騎士団の騎士達は、理解不能で尋常ならないフィロの攻撃方法に耐えられるのだろうか。
「集合」
掛け声がかかり、全員が中央に寄って来て整列した。
全員の前で、ギルバートとセシル、その後ろにクリストフが並んでいる。団長であるヘインズは側に控え、今日の合同訓練を見学するだけのようだった。
「これから、ゲリラ戦の合同訓練を始める。ゲリラ戦のルールや方法を、今からご令嬢に説明していただく」
お願いします、とギルバートから振られ、セシルが全員を見渡していく。
「皆さん。今日は、ゲリラ戦の初めての挑戦ということで、ほぼ、ルール、または制限なしの方法で始めたいと思います」
それを聞いた子供達が、なぜかは知らないが、全員嬉しそうな顔を見せ、よしっ、と拳を握りしめている。
制限なし――などと言われてしまったら、子供達にとって、ハチャメチャし放題である(セシルは、いつも、そんなことを一言として言った覚えはないのだが……)。
ギルバートからは、一応、騎士達にはゲリラ戦の定義は伝えておいたが、誰一人として、実際に、それが意味する内容を理解していないと、聞いている。
まあ、ゲリラ戦は、ある意味、正攻法とは全く違った戦い方であるから、剣技や剣闘を主とする騎士達の戦いには当てはまらず、見知りもしない戦法であるのは、セシルも承知している。
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