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Part2

В.а 合同訓練 - 05

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 シーンと、ハラルドからは無言の返答が返される。

 毎日、多忙のハラルドを掴まえて、今日この頃の話題は――いつもこの話題で始まることが常だった。

「時間の無駄です。次の話を進めてください」

 スッパリ、切り落とされたのに、レイフは全く気にしていなくて、それで、自分の紅茶をすすりながら、また文句を口にする。

「なぜだ? ギルバートばかり。夜会の時も一度きり。話があると言っているのに」
「あなたの話など、話にもなりませんでしょう」

「いや、重要な話だ」
「そんなはずがある訳もないでしょう」

 子供の時から第二王子殿下のレイフを見知っているハラルドも、その口は容赦がない。

 今のハラルドには、ギルバートと他国の伯爵令嬢と言う問題だけがあるのではない。

 その問題の筆頭を行くが、ハラルドの目の前にいる。

 なぜかは知らないが、この――偏屈で知られている第二王子殿下のレイフまでも、ギルバートのを、全く気にも留めていないのだ。

 新国王陛下からは、


「ギルバートの我儘わがままを許している」


 状況の説明を要求したハラルドへの返答は、それだった。

 困ったことに――王家の全員から、あの他国の伯爵令嬢は、認められている状態になってしまっているのである。

 前代未聞だ。

 このレイフなら、頭脳明晰、切れ者で隙がなく、王家に害する者、害を為すような者は、誰でも冷酷に切り捨てるような性格の持ち主だ。

 それなのに、一切の文句も挙がらず(違った意味での文句は、ここ毎日だが……)、ギルバートのに関して、全面的に賛成しているなど――このレイフを長年知っているハラルドにしてみたら、絶対に有り得ない状況である。

 ハラルド自身でも、あの伯爵令嬢の調査は続けているが、(ギルバート経由で) レイフから話された内容も、津々浦々知れ渡っている。

 信じられない話もあれば、興味深い話も――山盛りだ。

 それでも、その話が尽きることなく、(ギルバート経由で) レイフの話は延々と続く。

 その状況もあまりに信じられない状況で、ここ最近のハラルドの仕事は、一人でさっさと飛び出して、他国の領地にでもしに行きそうなレイフを諫めることが、仕事と化している。

 ハラルドには、多忙を極める仕事があるのに。

「本気で、合同練習などと、そんな理由で呼び寄せるとは――」
「ゲリラ戦だ」

「ゲリラ戦?」
「そうだ。かの令嬢の精鋭部隊は、ゲリラ戦に長けているらしい。それで、王国騎士団にも、その戦法を教えるのが目的だ」

 一応、ちゃんとした理由はあったようだ。

 精鋭部隊――といっても、まだ子供。

 それなのに、王国内ではすでに、精鋭部隊――とまで認識される末恐ろしい子供。

 おまけに、全員、スラム街出身の孤児。

「ゲリラ戦とは?」

「ギルバートの話だと、臨機応変に対応し、行動し、状況次第で攻撃方法、戦闘方法、戦法を変えていく戦術を持ちいり、敵を揺さぶり下ろし、敵側の戦隊や戦列などをかき乱すのが目的の戦法だ。予想もしていない場所から、突如、現れ攻撃を仕掛ける、隙を狙った奇襲や夜襲など」

「奇襲――」

 ふーむと、ハラルドも考えながら、そこで唸る。

「騎士団というのは、どこでも正攻法が多いものだ。敵を揺さぶり、奇襲など、滅多にないことだろう。だが、臨機応変に応じて戦えないのでは、本末転倒だ」
「まあ、確かにそうですね」

 その点は、異論はないらしい。

「というのが、かの令嬢の見解だ」
「左様で」

 全く――一体、どこの世界に、令嬢が、戦法やら戦術にまで口を出してくると言うのか。

 あの令嬢の周囲では、信じられない話ばかりである。

 ブレッカにまで顔を出していた事実だって、ハラルドは知っている。それは、アルデーラから説明されている。

「一体、何者なのですか?」

「だから、晩餐会ばんさんかいをすべきだろう? その時は、ハラルド、お前を呼んでやってもいいぞ」
「左様で。ギルバート殿下が、お許しになったのですか?」

「許すもなにも、ドレスを持ってきていないと、(丁重に) 断られたのだ。ドレスなど、買ってやればいいものを」
「なるほど」

 どうやら、ギルバートではなく――あの伯爵令嬢の方から、牽制してきたようである。

 王宮にまで呼ばれていて、貴族の令嬢の癖にドレスの一つも持ち込んでいないなど、普通では、ただの“恥さらし”と思われてもおかしくはないのに。

 恥さらし、と思われても、王宮には近づきたくないらしい。

 これも、アルデーラとレイフの報告通りである。

 最初は、そんなことを考える令嬢など、ハラルドだって、見かけだましで王族の気を引く気なのだろう、程度の関心しか払っていなかった。

 どんな貴族の令嬢だろうと、王族に近づけるチャンスは滅多にない。

 その機会が少しでもあるのなら、どんなことをしてでも、そのチャンスを手に入れようと躍起になる。

 だが、(あまりに珍しく) アルデーラだけではなく、このレイフからまでも、かの令嬢に完全に避けられている、などと話されて、(多少) 驚いていたのはハラルドの方だ。

 本気で――王家を、王族を避ける令嬢。

 今まで、一度として、聞いたこともない。

 だが、あの伯爵令嬢は、自国の領地で「準伯爵」。

 それも――あまりに未知で、前衛的、画期的な改革を行使して、の領地を発展させたほどの、手腕の持ち主らしい。

 領主の仕事が多忙で、王族とは関わり合いにもなりたくないし、関わっている暇もない、というところだった。

 やはり――一度は、ハラルド自身が、この目で確かめてみるべきだろうか。

 だが、そんな裏があるハラルドの真意など、このレイフには、絶対に教えてやらない。

 それでなくても、今すぐに仕事をサボって、飛び出していきそうなのに。
 これ以上、仕事の邪魔をされては(大)迷惑なのだ。

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