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Part2

А.в 慰労会と称して - 05

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 一連の動作がわざとらしくもなく、いかにも、二人で会話をしている延長上の動きとしか見えなくて――セシルも感嘆してしまう。


(さすが、大王国の王子殿下サマ……! 所作も、動作も、その全てが洗練されていますわぁ……)


 これだけ会場中からの(攻撃的な) 視線を集め、あまりに目立ち過ぎている二人なのに、今のギルバートの動きは、全く他人からの注意を引くものではなかった。

 軽やかな音楽と共に、中央では、新国王陛下と王妃陛下が、ファーストダンスをお披露目している。

 背が高く威厳のある国王陛下と、細身の王妃陛下。

 こうして見ると、アトレシア大王国の王子殿下達は(国王陛下も含め)、皆、黒髪に近い髪色をしていた。

 遠巻きから見れば、国王陛下の髪は黒髪に見えがちだが、戦場で会った時は、ダーク・アッシュブラウン(Dark Ash Brown) だった。

 第二王子殿下は、国王陛下即位と共に、現宰相に任命されたと聞いている。
 壇上の側で控えていた若い男性が、きっと、第二王子殿下だったのだろう。

 以前の夜会でも、顔を見た覚えはある。

 大した注意して見ていないから、はっきりとは判らないが、第二王子殿下も黒髪に近い。

 そして、すぐ隣にいるギルバートは、焦げ茶に見える色からも、ダーク・チョコレートブラウン(Dark Chocolate Brown) の髪色をしていた。

 なんだか、小説・漫画やゲームに出てくるような、キンキラ王子ではなくて、セシルには、ギルバートのような髪色の方が、親近感が沸くものだ。

 前世(なのか現世) でも、金髪の男性も女性もたくさん会った。一緒に、仕事もした。
 違和感は、全くない。

 だが、物語やゲームに出てくる王子サマは、眩しいほどのキンキラの金髪に、透き通るほどの綺麗なブルーアイ。そして白い肌。

 全身がキラキラ、キラキラと、光り輝いているイメージが出てくるのが多すぎ。

 これって、強烈な羨望感と、日本人の典型的な西洋人に対する、劣等感の混ざったようなものでしょう?

 薄い色は一生持てないだけに、こう、全体が、全身が、顔立ちが、白っぽくきらきらとした金髪や、青い瞳だけでも、その姿が綺麗に見えたり、格好よく見えたりしてしまう、というやつ。

 でも、セシルは、前世で外人に囲まれて生活してきたから、西洋人特有の容姿や容貌、または髪などには、特別な羨望や憧れなんて全くない。

 それでも、すぐ隣に立っているギルバートは、掘りの深い顔立ちで、瞳の色は、Teal  がかった青と緑の混ざった色だ。

 済んだ青空を思わせるようなブルーではなく、晴れた日に、空から深い海を覗くような、緑のかかった透き通った青緑のような瞳だった。

 その顔立ちや瞳を見ていると、現代で言う、東洋系には見られない、西洋系の血が混ざっていると言ってもいいだろう。

 そういう要素が――“異世界”には、ピッタリなんだろうな、とはセシルもちょっと考えたことだ。

 ぼんやりと、物思いにふけっているセシルの前で、国王陛下と王妃陛下のファーストダンスが終わっていた。

 次に、騎士団の団長や副団長達が、自分達の夫人を連れて、ダンスをするようだった。

 前回も、確か、こんな順番だったはず。

 ということは、アトレシア大王国では、騎士用に開かれた夜会では、騎士が他の貴族よりも優遇されるみたいですね。

 貴族の爵位よりも騎士団が上、と言うのでもないだろうが、騎士団の団長クラスは、まあ、国王陛下直属の軍人と言っても過言ではないだろうから、アトレシア大王国の貴族社会でも、かなりの地位にいるらしい。

 なるほど、なんて呑気に考えているセシルは、ハッと、そこで、ある重大な事実に気が付いてしまっていた。

 貴族の爵位とかの問題じゃなくて、ファーストダンスの次のセカンドダンスは、騎士団の団長クラスで占められている。

 セシルのすぐ隣には、真っ白な見目麗みめうるわしい副団長用の正礼装をしているギルバートが。

 ギルバートには、今夜、一応、他国の貴族令嬢であっても、セシルがギルバートのエスコートしている令嬢となる。

 所謂いわゆる、今夜の夜会のパートナー、である。

 これって……一歩間違えたら、最早もはや、取り返しのつかない――最悪の状態になっていたのではないかしら……?

 今夜のアトレシア大王国の夜会のマナーで言ったら、騎士団の団長クラスは、全員、パートナー同伴で、ダンスをお披露目しなくてはならないようだ。

 今夜の夜会では、騎士団の団長クラスは、国王陛下の次に偉い立場ということになる。

 そんな団長クラスに交じって、マナーを守ったギルバートが、セシルと一緒にダンスを踊っていたのなら――ああ……そんな恐ろしい場面も、光景も、状況も、セシルは想像したくない……。

 もう、絶対に、間違いなく、決定的に、セシルは、公式にギルバートの――、などと決定づけられてしまう!

 それが分かっていて、ギルバートは、団長クラスのダンスに参加していないのだろうか?

 参加してくれなくて、本当に、ラッキーである。

 団長クラスのダンスが終わると、壮年の団長らしき一人が夫人を連れて、セシル達の方に近寄って来る。

「ギルバート」
「ヘインズ団長」

 一緒に近寄って来た夫人が、ギルバートの前で、丁寧に、お辞儀をした。

 ギルバートが少しだけセシルの方を向き、
「こちらは、アトレシア大王国、第三騎士団団長のヘインズ団長です」
「初めまして。お会いできて光栄です」

 セシルもドレスを少し摘まみ、丁寧なお辞儀を済ます。

 互いに顔は知っている。

 だが、今は、完全に赤の他人、の状態。
 振りをする。

「遠方より、ようこそいらっしゃいました。今宵は、楽しんでいってください」

 そして、至極ありきたりな社交辞令を済ます団長。

 夫人の方はにこやかに――そして、興味津々で、セシルの方を見ている。

 だが、アトレシア大王国の騎士団の夫人だろうと、貴族の貴婦人だろうと、掴まって尋問攻めなどには、(絶対に) 遭いたくないセシルだ。

「初めまして。ようこそアトレシア大王国へ」
「ありがとうございます」

「隣国から来られて、お疲れではありませんか?」
「いいえ、十分に、休ませていただきましたので」

「そうですか。それは、よろしゅうございましたわ」

 張り付いたような笑顔が……ああ、なんて恐ろしいのかしらぁ……。

 もう、セシルに尋問したくて、うずうずしている気配も雰囲気も、ビシビシと伝わってきていますのよ……。

「それでは、今宵は楽しんでください」

 ここでの救世主は――どうやら、ギルバートの上官の団長サマらしい。

 お互いに、を決め込んでいるが、夫人を連れて、さっさとこの場を離れてくれるなんて、なんてグッドジョブ!

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