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Part2
А.б またアトレシア大王国にて - 02
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セシルはギルバートの行動が判らず、不思議そうな顔をしている。
「いえ――不都合がおありでないのでしたら、よろしゅうございました」
それで、すぐに、ピンときたセシルだった。
「あの――」
「はい。なんでございましょう?」
「私は、本当に問題ありませんの。移動に慣れておりますので」
微かにだけ、ギルバートの瞳が上がっていた。すぐに、困ったような、そんな微苦笑を浮かべてみせる。
「いえ……、そのようなことではございませんので……」
「ふふ。大きな声で言えないことは、言わないことにしておきましょう?」
セシルには、ギルバートの懸念もバレバレである。
まあ、このセシルなら、すぐに、言葉の端端や、行動の端端で、簡単に、その場の状況や雰囲気を察してしまうのだから、隠し事など無理な話なのだが。
ギルバートは微苦笑を浮かべたまま、
「ですから、どうか、気兼ねなく申し付けてください」
「はい。私は気にしておりませんので、そのことも、覚えておいてくださいませ」
「はい、ありがとうございます……」
深く説明しないギルバートの様子を、セシルの瞳がクリクリとして観察している。
「なんでしょう?」
「例えば――朝食は七時で、出発は八時など?」
「いえ。そのように、時間を詰めなくても大丈夫ですので」
「ええ。ただ、騎士団の皆様が問題なければ、のお話なのですけれど?」
「我々は、問題ではありません」
セシルの邸に来ていた時だって、ギルバート達の朝食は七時だった。
もしかしたら、普段は仕事の関係で、もう少し早い時間に朝食を済ませていたのかもしれないが、それでも、ギルバート達の朝は早かった。
今はセシル達の移動中だからかもしれないが、セシル達の朝食は八時である。それで、出発が九時を過ぎて。それでも、九時になったからと言って、急かされることは全くない。
「例えば――出発が八時? 移動中は休憩時間を取ってくださいますから、二時間ほどでしたら、丁度、お昼ごろの時間も合うのでは? 道端や、街に入っていなくても、休憩はどこでも構いませんの。ただ、足を伸ばす程度ですもの。お昼時間に、街に到着していない場合は、通りすがりで購入できるものなど? パンとチーズがあれば、問題はありませんし」
「ですが――」
「夜は、このように宿を取っていただいていますもの。その時に、きちんとした食事ができますわ。――皆様に問題がなければ、のお話ですけれど?」
「……………………」
セシルは、例えを上げているかのような話し方で、無理矢理、それを押し付けているのではない。
もし、の話をしているだけだ。
だが、セシルがギルバート達に気遣ってくれているのは、あまりに明瞭だった。
「我々には、問題はございませんが……」
「では?」
ギルバートがちょっと息をついて、
「ご令嬢が、それでよろしければ?」
ギルバートもセシルの真似をしてみる。
ふふ、とセシルが笑んだ。
「ええ、問題ではございませんわ」
「ありがとうございます」
「もしかして――少し早く到着してしまいましたら、問題になど?」
「いいえ、問題ではございません。一応、パーティーの前日、夕方頃に、王都の到着を予定しておりますので。もしかしたら、少し早めに到着できた場合、少し休憩なされるお時間が持てるのではないでしょうか」
「そうですか。それなら良かったですわ」
本当に……、気を遣わなくていいご令嬢なんて、セシルが初めてだ。
「ありがとうございます」
「あら、私の方こそ、皆様に、大変お世話になっておりますもの」
「いえ、そのようなことはございません」
それは、ギルバート達の仕事で任務だ。
だが、明日からは、セシルの好意に甘えることにしたギルバートだった。
「本当に、手のかからないご令嬢ですよねえ」
「そうなんだ……。なんだか、申し訳ないことをしてしまった」
「いえ、まあ、そうなんですけれどもねえ。ご令嬢がよろしいとおっしゃって下さったんですから、馬の足を速めましょう」
「本当に、申し訳ないことをしてしまった……」
セシルに挨拶を済ませ、ギルバートは宿にある談話室に向かっていた。
今夜は、外で護衛させている騎士が四人。騎士団の馬も馬車も、厩で管理させている。
これだけの大人数となると、泊まれる宿と言うのは、大体、相場が決まってくる。おまけに、騎士団が泊まれる、貴族が泊まれる宿ともなれば、数は多くない。
それで、大抵は、いつも使用する貴族用の宿屋までの街の移動になってしまう。
ギルバートが談話室に入っていくと、残りの騎士達が、スッと、立ち上がった。
「明日から、少し予定の変更になった。朝食は、今まで通り六時には済ませおくように。ご令嬢の朝食は七時に、その後、八時に出発する。いつでも出発できるように準備を済ませておくように。移動中の休憩は二時間毎で、道が安定している場所なら、外でも休憩をすることになった」
ほんの一瞬だけ、ざわっと、騎士達の間から、困惑めいた気配が上がっていた。
「昼食は、街に入らずとも、時間を合わせ、近隣から、そのまま買い付けた方が早いだろう。たぶん、昼食時間も、それほど休憩しない」
だから、セシルはパンなど、馬車の中でも、簡単に食べられそうなものを提案してきたのだ。
本当に、自分達、騎士隊に気を遣わせてしまって、申し訳ないほどだ……。
互いに困惑を見せた騎士達が見合い、
「――――よろしいのですか?」
さすがに、心配になってきて、経験組の騎士の一人が、一応、確認してみた。
「ああ。ご令嬢から、その許可を頂いた」
だが、全員は、その言葉を信用してよいのか、迷っているようだった。
もちろん、普通の貴族令嬢やら貴婦人なら、信用できずに迷ってしまうのは、ギルバートもクリストフも、重々に、理解していた。
「いや、心配はいらない」
「そうそ。君達ねえ、かのご令嬢に感謝しないさいよ。かのご令嬢は、本当に、常識が当てはまらないご令嬢でしてね。ですから、明日からは、馬の足を速めますよ」
その口調だと……、セシルがあまりに変わり者のように聞こえて、褒めている口調には聞こえないだろう。
「いえ――不都合がおありでないのでしたら、よろしゅうございました」
それで、すぐに、ピンときたセシルだった。
「あの――」
「はい。なんでございましょう?」
「私は、本当に問題ありませんの。移動に慣れておりますので」
微かにだけ、ギルバートの瞳が上がっていた。すぐに、困ったような、そんな微苦笑を浮かべてみせる。
「いえ……、そのようなことではございませんので……」
「ふふ。大きな声で言えないことは、言わないことにしておきましょう?」
セシルには、ギルバートの懸念もバレバレである。
まあ、このセシルなら、すぐに、言葉の端端や、行動の端端で、簡単に、その場の状況や雰囲気を察してしまうのだから、隠し事など無理な話なのだが。
ギルバートは微苦笑を浮かべたまま、
「ですから、どうか、気兼ねなく申し付けてください」
「はい。私は気にしておりませんので、そのことも、覚えておいてくださいませ」
「はい、ありがとうございます……」
深く説明しないギルバートの様子を、セシルの瞳がクリクリとして観察している。
「なんでしょう?」
「例えば――朝食は七時で、出発は八時など?」
「いえ。そのように、時間を詰めなくても大丈夫ですので」
「ええ。ただ、騎士団の皆様が問題なければ、のお話なのですけれど?」
「我々は、問題ではありません」
セシルの邸に来ていた時だって、ギルバート達の朝食は七時だった。
もしかしたら、普段は仕事の関係で、もう少し早い時間に朝食を済ませていたのかもしれないが、それでも、ギルバート達の朝は早かった。
今はセシル達の移動中だからかもしれないが、セシル達の朝食は八時である。それで、出発が九時を過ぎて。それでも、九時になったからと言って、急かされることは全くない。
「例えば――出発が八時? 移動中は休憩時間を取ってくださいますから、二時間ほどでしたら、丁度、お昼ごろの時間も合うのでは? 道端や、街に入っていなくても、休憩はどこでも構いませんの。ただ、足を伸ばす程度ですもの。お昼時間に、街に到着していない場合は、通りすがりで購入できるものなど? パンとチーズがあれば、問題はありませんし」
「ですが――」
「夜は、このように宿を取っていただいていますもの。その時に、きちんとした食事ができますわ。――皆様に問題がなければ、のお話ですけれど?」
「……………………」
セシルは、例えを上げているかのような話し方で、無理矢理、それを押し付けているのではない。
もし、の話をしているだけだ。
だが、セシルがギルバート達に気遣ってくれているのは、あまりに明瞭だった。
「我々には、問題はございませんが……」
「では?」
ギルバートがちょっと息をついて、
「ご令嬢が、それでよろしければ?」
ギルバートもセシルの真似をしてみる。
ふふ、とセシルが笑んだ。
「ええ、問題ではございませんわ」
「ありがとうございます」
「もしかして――少し早く到着してしまいましたら、問題になど?」
「いいえ、問題ではございません。一応、パーティーの前日、夕方頃に、王都の到着を予定しておりますので。もしかしたら、少し早めに到着できた場合、少し休憩なされるお時間が持てるのではないでしょうか」
「そうですか。それなら良かったですわ」
本当に……、気を遣わなくていいご令嬢なんて、セシルが初めてだ。
「ありがとうございます」
「あら、私の方こそ、皆様に、大変お世話になっておりますもの」
「いえ、そのようなことはございません」
それは、ギルバート達の仕事で任務だ。
だが、明日からは、セシルの好意に甘えることにしたギルバートだった。
「本当に、手のかからないご令嬢ですよねえ」
「そうなんだ……。なんだか、申し訳ないことをしてしまった」
「いえ、まあ、そうなんですけれどもねえ。ご令嬢がよろしいとおっしゃって下さったんですから、馬の足を速めましょう」
「本当に、申し訳ないことをしてしまった……」
セシルに挨拶を済ませ、ギルバートは宿にある談話室に向かっていた。
今夜は、外で護衛させている騎士が四人。騎士団の馬も馬車も、厩で管理させている。
これだけの大人数となると、泊まれる宿と言うのは、大体、相場が決まってくる。おまけに、騎士団が泊まれる、貴族が泊まれる宿ともなれば、数は多くない。
それで、大抵は、いつも使用する貴族用の宿屋までの街の移動になってしまう。
ギルバートが談話室に入っていくと、残りの騎士達が、スッと、立ち上がった。
「明日から、少し予定の変更になった。朝食は、今まで通り六時には済ませおくように。ご令嬢の朝食は七時に、その後、八時に出発する。いつでも出発できるように準備を済ませておくように。移動中の休憩は二時間毎で、道が安定している場所なら、外でも休憩をすることになった」
ほんの一瞬だけ、ざわっと、騎士達の間から、困惑めいた気配が上がっていた。
「昼食は、街に入らずとも、時間を合わせ、近隣から、そのまま買い付けた方が早いだろう。たぶん、昼食時間も、それほど休憩しない」
だから、セシルはパンなど、馬車の中でも、簡単に食べられそうなものを提案してきたのだ。
本当に、自分達、騎士隊に気を遣わせてしまって、申し訳ないほどだ……。
互いに困惑を見せた騎士達が見合い、
「――――よろしいのですか?」
さすがに、心配になってきて、経験組の騎士の一人が、一応、確認してみた。
「ああ。ご令嬢から、その許可を頂いた」
だが、全員は、その言葉を信用してよいのか、迷っているようだった。
もちろん、普通の貴族令嬢やら貴婦人なら、信用できずに迷ってしまうのは、ギルバートもクリストフも、重々に、理解していた。
「いや、心配はいらない」
「そうそ。君達ねえ、かのご令嬢に感謝しないさいよ。かのご令嬢は、本当に、常識が当てはまらないご令嬢でしてね。ですから、明日からは、馬の足を速めますよ」
その口調だと……、セシルがあまりに変わり者のように聞こえて、褒めている口調には聞こえないだろう。
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