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Part1
Б.д もう二度と会わない - 05
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* * *
穴掘りと、塀造りで二日。
それでも、(怒涛の勢いで) 急がせた徒労のおかげか、二日で穴の開いた領壁側には強化された防護設備が完成していた。
これから、捕獲した部族連合の敵兵を餌に、セシルの精鋭部隊と、王国騎士団は闇に身を潜め、奇襲攻めのその時と、機会を待つことになる。
部族連合の捕虜を囮に使っても、部族連合の本体が、その餌に食いついてくるとは限らない。それでも、賭けに出てみる価値はある。
部族連合の敵軍は、今まで、何度もブレッカの砦側に進撃してきては、おちょくり回すだけ回し、アトレシア大王国の王国軍を殲滅しているだけの攻撃方法だった。
まだ、本格的な最終決戦を決める戦は、正確に言えば、始まっていなかったのだ。
だから、無能集団の王国軍の数を減らし、戦意を消失させ、戦闘意欲よりも、戦で殲滅される恐怖だけを植え付けて、王国軍が尻尾を巻いて、ブレッカの地から逃げ去ることを計算に入れているような戦法とも言える。
進撃して来る日数が開いているのは、隣国となる小国ギリトルの国境側の移動の時間がかかる為、と考えていいだろう。
そして、部族連合の軍は、1,000人程の兵士達と報告されているが、わざわざ分散して、砦側で攻撃を仕掛けてくるだけで、深入りしないパターンを見る限りでも、きっと、それ以上の味方の援軍は、期待できないのだろう。
兵士達の数が限られている戦では、無闇矢鱈に攻撃を仕掛けても、リスクが高すぎる。
少数のエリート兵がいたとしても、毎回、続けざまに攻撃を仕掛けていては、味方の兵士達の負傷や、疲弊が、倍増してしまう恐れがある。
アトレシア大王国の王国軍は無能集団でも、さすがに、最後の国境の砦となるブレッカを奪われては、王国の危機。それなら、必ず、更なる王国軍が投入されることは、簡単に予想できる。
無能が揃っていても、数を投入されれば、兵士達の数に限りがある部族連合では、どうあがいても、不利になってしまう。
自分達の兵力を削がず、それでいて、アトレシア大王国側の戦力を削ぎ落し、戦意を完全喪失させて隙を突く。
随分、頭の回る参謀がいるようである。
セシルの状況分析を聞いて、セシルの付き添い全員が、セシルの考えに賛同していた。
それなら、セシル一人だけの思い込み、ではないと言えるでしょう。
パアァっ――と、周囲一面を照らす焚火が、間を開けて、間隔ごとに並んでいる。夜も静まり、真っ黒な暗闇を照らす、煌々とした焚火の数々。
今まで、部族連合が、行く度にも渡り、深夜ばかりに進撃してきたのは、王国軍の無能集団が、暗がりで右往左往に乱れて、指揮も統制も取れないその場を狙って、攻撃する為なのだろう。
だから、今回は、暗がりなど、簡単にくれてやらない。
穴が開いた領壁側は、今夜、騎士達に速攻で作らせた焚火台を等間隔で並べさせ、夜が続く限り照らせるほどの大木を薪(たきぎ)として、周囲一帯を煌々と照らし出させているのだ。
これで、丸馬(うま)出(だし)一帯は明るく、影になる場所もない。その両端の領壁側にも、焚火台をズラリと並ばせている。
丸馬出を超えた領壁内でも、枡形虎口の上からも、そして、それを抜けた先にも、ズラリと焚火台が並べられている。
残念なことに、格好いい鉄製の焚火台を作ることは不可能で、今回は、太い大木を積み重ねたような、所謂、現代版のキャンプファイアーを、地面から高く上げた形の焚火台を使用する。
それでも、1m四方はある大きな焚火台は、大木を燃やし、煌々とした炎を巻き上げ、周囲一帯を照らし出していた。
丸馬出の外側の塀には、捕虜となった部族連合の兵士達が、数人、縄で吊るされている。怪我はしているが、死に至るほどの怪我でもない。
だが、今回は無様に、アトレシア大王国側の敵地から吊るされて、恥さらし状態だ。
それを更にあざけ笑うように、吊るされた捕虜の兵士達は、子供達によって、素っ裸にされた上に、裸の腹の部分には――腹踊りで見られるような大きな顔が、炭で描かれている。
暗闇だろうと、焚火台の煌々とした灯りのおかげで、その小馬鹿にしたひょっとこ(もどき) の顔が、兵士達の腹の上で舌を出している。
完全に、おまけに、わざとに、部族連合を侮辱して煽っている。
お腹に顔を描いて腹踊りをする――も、セシルから教わった昔話だ。
もう、ここまでくると、セシルは子供達に、一体、何を教えているんだ!? ――とも、言えなくはない状況である。
子供教育大丈夫ですか? 全くね、近頃の若いモンは、常識がないんだから――なんて文句には、一切、耳を貸しませんよ。
害為す者には、徹底的に叩き潰す。情け無用――これ、セシルの信条です。
敵兵を素っ裸にして、腹にふざけた顔を描いている子供達は、鼻歌がでてきそうなほどご機嫌だ。今までは、(一度だって) こんなふざけたことをさせてくれる機会がなかった。
許してもらえる機会も、なかった。
それだけに、敵兵の腹で顔を描いている子供達も、容赦がない。
その光景を見ている王国騎士団は――世にも奇妙なものを見た……と、唖然としているが、子供達には、一切、関わりたくないだけに、目を逸らして、見て見ぬ振り。
「ああ、来たぜ」
丸馬出の後ろで隠れていたリアーガ達と、十人程の王国騎士団の騎士達。
丸馬出には、所々に四角い穴が設置されている。もちろん、矢狭間用に開けた穴だ。
丸馬出は丸太を並べて、塀を造っているから、隙間があり、後ろに潜んでいるリアーガ達や、騎士達の気配は、バレバレかもしれない。それでも、敵方がリアーガ達の気配を判っても、それだけだ。
それで、狭間を使い、その穴から、視界の向こうに広がる寂れた国境沿いの平地を、監視していたのだ。
リアーガ達の視界の前で、暗がりでも、段々と形を成してくる塊が見えてくる。
どうやら、捕虜を餌にした作戦は、一応、成功しているようである。
警戒してか、部族連合の兵士達は、まだ、領壁側に近づいてこない。
そして――
ブレッカの領壁側に集まりだしてきている部族連合の兵士達は、つい先日までなかった丸太の塀が出来上がっている様を、しっかりとその目で目撃していた。
領壁に穴を作り、そこで奇襲をかける為に待機していた兵士達からの連絡と報告が途絶え、その確認に行かせたところ――信じられないことに、アトレシア大王国の王国軍は、即興の塀を建て始めている、とうい報告が返って来た。
今更なにを――と、部族連合の指揮官たちは一笑したものだったが、せっかく抜け道用に穴を開けたのに、そこを占領されてしまっては、不憫が生じる。
それで、部族連合の軍側でも、すぐに作戦会議が開かれていた。
小国ギリトル側には、王国軍の兵士達がズラリと並べられていて、その前にも、小さなものだったが、塀が建てられ始めているともいう。
どうやら、今回は部族連合の進撃を、きちんと警戒してきたようである。
穴掘りと、塀造りで二日。
それでも、(怒涛の勢いで) 急がせた徒労のおかげか、二日で穴の開いた領壁側には強化された防護設備が完成していた。
これから、捕獲した部族連合の敵兵を餌に、セシルの精鋭部隊と、王国騎士団は闇に身を潜め、奇襲攻めのその時と、機会を待つことになる。
部族連合の捕虜を囮に使っても、部族連合の本体が、その餌に食いついてくるとは限らない。それでも、賭けに出てみる価値はある。
部族連合の敵軍は、今まで、何度もブレッカの砦側に進撃してきては、おちょくり回すだけ回し、アトレシア大王国の王国軍を殲滅しているだけの攻撃方法だった。
まだ、本格的な最終決戦を決める戦は、正確に言えば、始まっていなかったのだ。
だから、無能集団の王国軍の数を減らし、戦意を消失させ、戦闘意欲よりも、戦で殲滅される恐怖だけを植え付けて、王国軍が尻尾を巻いて、ブレッカの地から逃げ去ることを計算に入れているような戦法とも言える。
進撃して来る日数が開いているのは、隣国となる小国ギリトルの国境側の移動の時間がかかる為、と考えていいだろう。
そして、部族連合の軍は、1,000人程の兵士達と報告されているが、わざわざ分散して、砦側で攻撃を仕掛けてくるだけで、深入りしないパターンを見る限りでも、きっと、それ以上の味方の援軍は、期待できないのだろう。
兵士達の数が限られている戦では、無闇矢鱈に攻撃を仕掛けても、リスクが高すぎる。
少数のエリート兵がいたとしても、毎回、続けざまに攻撃を仕掛けていては、味方の兵士達の負傷や、疲弊が、倍増してしまう恐れがある。
アトレシア大王国の王国軍は無能集団でも、さすがに、最後の国境の砦となるブレッカを奪われては、王国の危機。それなら、必ず、更なる王国軍が投入されることは、簡単に予想できる。
無能が揃っていても、数を投入されれば、兵士達の数に限りがある部族連合では、どうあがいても、不利になってしまう。
自分達の兵力を削がず、それでいて、アトレシア大王国側の戦力を削ぎ落し、戦意を完全喪失させて隙を突く。
随分、頭の回る参謀がいるようである。
セシルの状況分析を聞いて、セシルの付き添い全員が、セシルの考えに賛同していた。
それなら、セシル一人だけの思い込み、ではないと言えるでしょう。
パアァっ――と、周囲一面を照らす焚火が、間を開けて、間隔ごとに並んでいる。夜も静まり、真っ黒な暗闇を照らす、煌々とした焚火の数々。
今まで、部族連合が、行く度にも渡り、深夜ばかりに進撃してきたのは、王国軍の無能集団が、暗がりで右往左往に乱れて、指揮も統制も取れないその場を狙って、攻撃する為なのだろう。
だから、今回は、暗がりなど、簡単にくれてやらない。
穴が開いた領壁側は、今夜、騎士達に速攻で作らせた焚火台を等間隔で並べさせ、夜が続く限り照らせるほどの大木を薪(たきぎ)として、周囲一帯を煌々と照らし出させているのだ。
これで、丸馬(うま)出(だし)一帯は明るく、影になる場所もない。その両端の領壁側にも、焚火台をズラリと並ばせている。
丸馬出を超えた領壁内でも、枡形虎口の上からも、そして、それを抜けた先にも、ズラリと焚火台が並べられている。
残念なことに、格好いい鉄製の焚火台を作ることは不可能で、今回は、太い大木を積み重ねたような、所謂、現代版のキャンプファイアーを、地面から高く上げた形の焚火台を使用する。
それでも、1m四方はある大きな焚火台は、大木を燃やし、煌々とした炎を巻き上げ、周囲一帯を照らし出していた。
丸馬出の外側の塀には、捕虜となった部族連合の兵士達が、数人、縄で吊るされている。怪我はしているが、死に至るほどの怪我でもない。
だが、今回は無様に、アトレシア大王国側の敵地から吊るされて、恥さらし状態だ。
それを更にあざけ笑うように、吊るされた捕虜の兵士達は、子供達によって、素っ裸にされた上に、裸の腹の部分には――腹踊りで見られるような大きな顔が、炭で描かれている。
暗闇だろうと、焚火台の煌々とした灯りのおかげで、その小馬鹿にしたひょっとこ(もどき) の顔が、兵士達の腹の上で舌を出している。
完全に、おまけに、わざとに、部族連合を侮辱して煽っている。
お腹に顔を描いて腹踊りをする――も、セシルから教わった昔話だ。
もう、ここまでくると、セシルは子供達に、一体、何を教えているんだ!? ――とも、言えなくはない状況である。
子供教育大丈夫ですか? 全くね、近頃の若いモンは、常識がないんだから――なんて文句には、一切、耳を貸しませんよ。
害為す者には、徹底的に叩き潰す。情け無用――これ、セシルの信条です。
敵兵を素っ裸にして、腹にふざけた顔を描いている子供達は、鼻歌がでてきそうなほどご機嫌だ。今までは、(一度だって) こんなふざけたことをさせてくれる機会がなかった。
許してもらえる機会も、なかった。
それだけに、敵兵の腹で顔を描いている子供達も、容赦がない。
その光景を見ている王国騎士団は――世にも奇妙なものを見た……と、唖然としているが、子供達には、一切、関わりたくないだけに、目を逸らして、見て見ぬ振り。
「ああ、来たぜ」
丸馬出の後ろで隠れていたリアーガ達と、十人程の王国騎士団の騎士達。
丸馬出には、所々に四角い穴が設置されている。もちろん、矢狭間用に開けた穴だ。
丸馬出は丸太を並べて、塀を造っているから、隙間があり、後ろに潜んでいるリアーガ達や、騎士達の気配は、バレバレかもしれない。それでも、敵方がリアーガ達の気配を判っても、それだけだ。
それで、狭間を使い、その穴から、視界の向こうに広がる寂れた国境沿いの平地を、監視していたのだ。
リアーガ達の視界の前で、暗がりでも、段々と形を成してくる塊が見えてくる。
どうやら、捕虜を餌にした作戦は、一応、成功しているようである。
警戒してか、部族連合の兵士達は、まだ、領壁側に近づいてこない。
そして――
ブレッカの領壁側に集まりだしてきている部族連合の兵士達は、つい先日までなかった丸太の塀が出来上がっている様を、しっかりとその目で目撃していた。
領壁に穴を作り、そこで奇襲をかける為に待機していた兵士達からの連絡と報告が途絶え、その確認に行かせたところ――信じられないことに、アトレシア大王国の王国軍は、即興の塀を建て始めている、とうい報告が返って来た。
今更なにを――と、部族連合の指揮官たちは一笑したものだったが、せっかく抜け道用に穴を開けたのに、そこを占領されてしまっては、不憫が生じる。
それで、部族連合の軍側でも、すぐに作戦会議が開かれていた。
小国ギリトル側には、王国軍の兵士達がズラリと並べられていて、その前にも、小さなものだったが、塀が建てられ始めているともいう。
どうやら、今回は部族連合の進撃を、きちんと警戒してきたようである。
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