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Part1

Б.в 王太子殿下 - 07

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•  2月23日、司令塔の執務室で、中尉が兵士の一人と言い合い。援軍要請で、兵士を無駄死にさせる気か、と反対する兵士に対し、中尉は兵士を命令違反で処刑すると脅す。
 それでも、中尉は、やっと、100人近くの兵士を派遣することを同意

•  同日、午前10時半頃、100人近くの兵士達が、南東に向けて出発

•  南東からの応答、援軍なし

•  100人の兵士の帰還なし

•  2月24日、依然、状態は変わらず

•  2月25日、夕食後の報告会で、コロッカルギルド商会から、依頼していた闇商人の捕獲が成功、との報告。今までの悪事、違法行為の証拠と共に、自白書を獲得

•  2月26日深夜2時。伯爵家代行は、現状確認の為、駐屯地を離れ、南東へ続く陸路の調査へ

•  その場では、放置され見殺しにされた兵士達の遺体が山積みなり、周辺は、死臭が呼吸を殺すほどの異臭と化していた、とのこと

•  また、その場で、負傷兵一人を発見。伯爵家代行が、負傷兵を駐屯地に連れ帰り、怪我の手当てを済ます

•  2月27日、依然、状態は変わらず。負傷兵は重傷を負い、死の淵をさまよっている様子。高熱が止まず、長くはもたないかもしれない

•  2月28日、依然、状態は変わらず。司令塔の周囲には、無駄な兵士が立ち並んで、無能な中尉と上級将校兵を守っているらしい

•  3月1日、午前6時4分。負傷兵が目を覚ます。生き残りの負傷兵を助けて欲しいと、伯爵家代行に懇願する模様

•  同日、どうやら、王宮からやって来た王国騎士団が、コロッカル入りをしたとの情報

•  だが、負傷兵は、兵士達が陣を発ち、襲撃されてから、すでに、五日以上経っている事実に気付かない様子で、たぶん、全員がすでに亡くなっていることを、伯爵家代行はお話にならなかった

•  同日、午前8時、負傷兵は中尉に掛け合い、救援を要請したが、予想通り、その要請は完全に却下された。
 中尉の言葉を引用すると、

「国の為に死ねて、本望だろうが。負傷兵など、捨て置け」

とのこと

•  負傷兵は諦める様子もなく、残りの兵士達の捜索を懇願する。伯爵家代行が、命を懸けるのなら援軍要請の書状を書いてもいい、と提案された

•  同日、午前11時、その書状を持ち、負傷兵は、伯爵家代行に提案されたように、一度、ブレッカの商店街に戻り、そこから、裏道で南東に直通する陸路を探したようである

•  3月2日、10時45分、アトレシア大王国王太子殿下と、数百人以上の王国騎士団が、駐屯地にやって来る


「隣国伯爵家に対する数々の侮辱、非礼。立場も弁(わきま)えず、不敬罪もどき、偉そうに伯爵家に怒鳴り散らし、命令し、果てには脅迫」

 無抵抗な伯爵家に対し、武力行使で食糧・物資の強行行為。略奪。

 その数全部を入れて、すでに20回以上。

 契約に反し、戦の強制参戦。

 伯爵家の意思に反しての陣地での強制拘束。

 中尉の不法侵入、2回。
 兵士の不法侵入2回。

 すでに、2年半にも及ぶ陣内での横領、不正。武器の横流し。

 違法者の放置・無罪放免。
 戦況確認・情報収集は皆無。援軍要請の無視、職務怠慢。

 兵士の無益な投下、救援拒否。その結果、負傷兵も含め、兵士の大量殺人にも近い見殺し。

 その間、司令塔での中尉の活動は、優雅に紅茶を飲んで、出された菓子がまずい、足りない、部屋が汚い、その程度のくだらない愚痴を投げつけ、戦のど真ん中、余計な下士官に部屋の掃除の強制。

「伯爵家を脅迫する為に、無駄に兵士を引き連れ、持ち場の放棄、任務の放棄続行。戦勃発より、司令官及び、上級将校兵の作戦会議は、皆無。完全な任務放棄、責任放棄の数々」

 委細漏らすことなく、正確で、(あまりに) 詳細で、その(長過ぎるほどの) 説明が終えていた。

 信じられない報告を聞いて、アトレシア大王国騎士団の全員は、驚愕で唖然とし、完全に言葉を失っていた。

 パタン、とフィロが持っていた本を閉じた。

「これ以上、一体、何を知りたいと言うのです?」

 覆面で半分近く顔は隠されているのに、子供らしからぬその冷たい灰青の瞳には侮蔑だけが浮かんでいる。

 フィロが淡々と自分の日記帳をリュックサックにしまい、次の書類を取り出した。

「マスター」

 書類が何枚か重なった束を、セシルが受け取った。

「この地における伯爵家の立場と責任、それを記した契約書」

 前に出てきたセシルが、最初の一枚目の書類を机の上に置き、トン、と指先だけで机を叩く。

「不法侵入及び、窃盗目的の犯罪証明書、自白書」

 トン、と次の書類が机の上に置かれる。

「陣内での横領、不正、武器の横流しの犯罪証明書、自白書」

 トン、とまたも次の書類が机の上に置かれる。

「闇商人の犯罪自白書」

 トン、とその書類も置かれる。

「コロッカルギルド商会からの取り調べ報告書」

 トン。

「王国騎士団負傷兵より、戦地における指揮官の職務怠慢、無能振り、救援要請の拒絶、その全てを記した証明書」

 トン。

「そして、能無集団にかわり、伯爵家の為に身を危険にさらされ、脅されていながらも、このように全てをまとめたあげた報告書」

 トンっ!

 無能集団にかわり、しっかりと(あまりに)仕事を終わらせたセシルの部下達の報告書だ。

 有難く思え、この無能集団!――とさえも聞こえそうなほどの、静かで暗黙の怒気と、侮蔑が投げ捨てられる。

「さて。一体、どのつら下げて弁明なんて、そんなくだらないことができるのか、聞かせてもらいましょうか」

 王太子殿下の前で――暴露された悪事の数々、無能さのオンパレード。

 それを聞いていた中尉の顔が、赤くなったり、青くなったり、忙しい。
 あまりの恥を暴露されて、怒りで紅潮したかと思うと、自分の無能さがバレてしまい、職務放棄やらなんやらと、軍令違反で罰せられかねない状況に、真っ青になっていく。

 その場の全員が信じられない話を聞いて――無言だった。

 だが、すぐに、沸々ふつふつと、内から吹き荒れる瞋恚しんいの怒気が上がりだし、グッと歯を食いしばりながら、その怒気を抑え込み、王国の恥さらしを前に、全員がものすごい形相をしていた。

「弁明があるのなら、聞こうか」

 お腹の中から絞り出したような声音が、王太子殿下の本気の怒気を乗せている。

 ひっ……と、一瞬、怯んだ中尉はすぐに体勢を直し、バンッ――と、あたかも憤慨している様子で机を叩く。

「こんなっ、ポッと出の、貴族かどうかも分からぬ輩の言うことを、信じるのですかっ?」
「では、貴族の者ではないと、証明できたのか?」

 背筋が凍り付きそうな――あまりに冷酷な口調が鋭く、それを上回るような感情の機微さえも見られない冷たい眼差しが、中尉を容赦なく射りつけていた。

 ひぃぃっ……その迫力に怖気づいて、中尉の顔色が、見る見る間に青ざめていく。

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