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最終話
しおりを挟む秋晴れの気持ちの良い日に、父親の葬儀が終わった。
喪服に身を包みながら、喪主を務めてくれた姉がポツリと言った。
「お父さん、お母さんのこと、大好きすぎだよね?最期も似たり寄ったりで、追いかけていったようなものだしさ…。」
父は、母を見送った1週間後に、眠るように息を引き取っていた。
母の葬儀が終わり、さて、父の終の棲家を探そうと話し合っていたところだった。
父は、重度の障害を負ってしまい、自力で生活することは難しかったから、完全看護の施設を探すつもりだったのに。
「本当にね。でも、父さん1人が長く残ってても、寂しがって大変だったと思うよ。」
父は、母を亡くしてから、生きる気力そのものも失ってしまったようだった。
それでいて、見舞いに行くと、とても晴れやかな顔をしていて、いつ行っても幸せそうだった。
「今頃、天国で仲良くしてるかなぁ。」
姉が空を見上げる。
「ったく。そっちは幸せで良いかもしれないけど、こっちは一気に2人とも居なくなっちゃって…寂しいじゃない。」
それが、姉の本音なのだろう。
「うん。寂しいところ、葬儀とかいろいろ、奔走してくれてありがとう。」
俺はペコリと頭を下げた。
「…うん。良いよ。」
姉は少し涙ぐんでいたけれど、俺の御礼を素直に受け入れて、少し笑ってくれた。
「さ!私も大事な伴侶様のところへ戻りますか!!」
姉は元気にそう言うと、旦那さんや娘さん達の元へと、歩いて行ってしまった。
「大事な、伴侶様…ね。」
俺は、ふと幼い頃、母親から聞いた話を思い出していた。
『タケルだけに教えるけど、実はお母さん、お父さんのことが大好き過ぎて、お父さんのお嫁さんになるの、3回目なのよ。もうね、2回目に会えた時は、嬉しすぎて、「顔が好み」とか言っちゃって。すごく不審がられたわぁ。』
母は、嘘なのか本当なのかわからない話を、嬉しそうに話てくれた。
『でね、1回目も2回目も、いつもお母さんのこと、幸せにしてくれるんだけど…。』
そこで一度話を止めた後、それはそれは幸せそうな顔で微笑むと、
『今回が1番幸せね。』
と言い切っていた。
そんな母の顔が印象的で、その話を忘れることはできなかった。
姉は『父さんが母さんを好きだった』と言っていたけれど、『母さんも、父さんが大好きだった』のではないだろうか。
「ま、どちらにしろ、仲良し夫婦だったってことだな。」
俺も空を仰ぐ。
天国で、2人は、4回目の出会い直しでもしているんじゃないかな。
そう思うと、なんだか愉快な気持ちになってきたのだった。
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