ドジな天使のせいで異世界転生したのでこの天使に仕返ししようとしたら幼馴染まで追いかけてきてこの世界で生き抜こうと思った件について

tai-bo

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第42話 転生者という名の天使の操り人形

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『驚いてくれたかな?』

 突然響いた声と同時に魔法陣の輝きが治まると誰もいなかったはずの椅子に一人の見た目が十五、六歳の少年が座っていた。

「・・・・・・魔王様!?」
「何だと」

 シエラがその少年を見て魔王と言った。こいつが魔王か。服装は学ランに革靴、ホックを外してるところから白いワイシャツが見える。顔にはメガネがかかっている。どこにもいる普通の学生にしか見えない。
 魔王は椅子から立ち上がり歩いてくると粉々になった骸骨を見下ろした。

「あ~あ、こんなにしちゃって」
「こんな悪戯するからだろうが」
「ま、しょうがないか」

 魔王が何もない空間に手を突っ込むと掃除機を取り出し骸骨の破片を綺麗に掃除すると空間に戻して消えた。

「今のはスキルか?」
「そうだよ。異空間はアイテムボックスだ。これは便利だよ。どんなものでも仕舞ったり自由に取り出せたりするし、荷物で手がかさぼることもない。そして掃除機はここに来たなら見ただろうけど、そこの工房で僕が作ったんだ。――さて、何から話そうか・・・・・・」

 思案顔になっている魔王に対して、

「魔王様、会いたかった」

 シエラが魔王の体に飛びついたが魔王の体をすり抜けてしまった。

「何で?」

「ごめん、僕の実態はここにないんだ」
「いわゆる立体映像みたいなものか」
「正解だ。ここには僕の精神を定着させたんだけど効力はあまり長くなさそうだ。直ぐに本題に入ろう」

 話し始めた魔王の名は皇《すめらぎ》颯斗《はやと》。琢磨と同じ日本人の転生者で驚くべきことに琢磨がこの世界に飛ばされる数か月前に来たってことだ。だが、颯斗はこの世界に来てからは数百年は経っているらしい。何でも元の世界とこの世界では時間の流れが違うらしい。例えば、俺が来た時より後に死んで異世界転生したとしても俺が来た時間よりだいぶ前からこの世界に召還されることもざららしい。逆に俺より前に死んでもこの世界には先の未来で来るときもあるということだ。ちなみに何百年も前にこの異世界に来たなら颯斗はもうすでにこの世界では死んでるから立体映像を残したのかを聞いたところ今も健在らしい。それも天使にお願いして不老長寿の恩恵をさずかったらしい。これで年を取らなくなったため見た目が高校一年で止まってるのだ。でも、年を取らないだけで致命傷なダメージを負うと死ぬけどねと笑いながら言っていた。ならどうして、実態じゃなくて立体映像なのかというとこの後の話に関係あるようだ。

「まず、僕は天使のラファエルによってこの世界に転生するとアイシスの街に向かったんだ。その頃は今みたいに冒険者ギルドがなくてね。そしておなかがすいて食べ物を買うにも金がなくてね。いや~あの時はいきなり餓死で死ぬのかと焦ったね。その時思ったよ。この世界に持っていくのは強力な武器やスキルじゃねくてお金だってね。だってさ~、普通最低限のお金ぐらい渡すでしょ」
「わかる、俺もそう思った。一緒に来た天使は使い物にならなかったし」
「そうか分かってくれるか。――今、天使が一緒って言った・・・・・・?」
「ああ、だがだいぶ前にはぐれたきりだから俺のことなんて忘れて今頃好き勝手にしてるかもな」

 颯斗は何かを考えている。立体映像のはずなのに実態がそこにあるような感じですごいクオリティーだ。

「それは返って好都合かもしれない。なにがしらの連絡がないということはおそらく琢磨、君は死んだことになっているのかもしれない」
「・・・・・・だろうな。未だに誰も来ないからな。でもそれが何だというんだ?」
「ああ、そのことについて語るにもさっきの続きから語るよ」

 颯斗は話を続ける。

「とりあえず、金がないと始まらないから村人の農作物の採取の手伝いや畑を荒らしに来るスライムやウルフを狩ったりして生計を立ててたんだ。レベル上げにもなるし一石二鳥だったからね。そんなある時、ポケットから何かが震える感じがしてね。携帯電話のバイブレーション機能みたいなものかな。取り出すと、白いカードのようなもので僕のステータスがびっしり書かれていた。その時思いだしたんだ。ラファエルに渡されたのをね。その時まで金を稼ぐことに精いっぱいですっかり存在を忘れててね。いきなり震えた時はびっくりしたよ」
「俺は、そんなの貰った覚えはないぞ」

 琢磨は天界でのより取りを思い出していた。

(ま、ガブリエルならうっかり渡すのを忘れたとしても納得だけどな)

「あ~、それはもんだいないよ。冒険者カード持ってるでしょ。機能は全く同じものだから。実はそのカード、天界との通信機にもなっててね。ラファエルからときどき討伐の指令が下ってたんだ」
「それはどんな内容なんだ?」

 琢磨は疑問をぶつける。それに対して颯斗はシエラを指差す。差されたシエラは私? という顔で話にもついていけないようだ。

「シエラがどうかしたのか?」
「あ~、ごめん。シエラがどうのこうのというより他種族のことを言いたかったんだ。知ってるかどうかわからないけどこの世界には人間以外にもエルフ族、ドワーフ族、妖精、そして、シエラみたいな吸血鬼など様々な種族が生活している。だけど、君はシエラに会うまでに他種族にあったことがあるかい?」
「・・・・・・そういえば、見てないな。冒険者ギルドにもいなかったし、パーティーメンバーにも・・・・・・まさか!?」
「察しがいいね。指令内容は人間以外の種族、抹殺だったんだよ。天界が言うには他の種族が団結して人間を虐殺して天使の見せしめにしようと企ててるって言ったんだ。当時の僕はどこか別の世界のゲーム感覚で何の疑いもなくその指令に従った。中には命乞いする人もいたよ。それでも僕は躊躇《ちゅうちょ》しなかった。全てはこの世界の人々を守るという正義感からだった。だけど、これがすべての間違いだった。実はあのカードには相手の心を洗脳して思うままにする仕掛けがあった。この思い込みで平和的に暮らしてた者たちを虐殺してたんだ。このことに築いたのはある森の奥でエルフと戦っていた時だ。突然地面が崩れてね。気づいたら相当深く落ちたのか、周りが真っ暗でね。その時覚えたてだった暗闇を照らす魔法で辺りを照らしたんだ。すると、見覚えあるカードが落ちていた。それも真っ二つに折れていてね。それを見た僕はショックだったけど同時に心がクリアになっていく感じがしたんだ。とりあえず脱出するために奥に進んでいたら、明かりが漏れてきて、その場所に向かったらエルフが野営していたんだ。しかもよく見ると人間も数人いた。しかも聞いたところみんな、転生者だったんだ。ラファエルから聞いてた情報と全く違い、戸惑っていると他の転生者から話を聞いて騙されていることに気付いた。カードが折れたことも幸いして。そして、僕は何の罪もない者を殺してきたことに罪悪感を覚えてその場から逃げ出したい気持ちになった。でもそんなときにさっきまで戦ってたエルフが僕の前に現れたんだ。どうやら僕をその場所に導くために落としたらしい。しかも、カードも真っ二つにすることも忘れないで。エルフは風魔法が得意でね、戦いながらどうやればカードを真っ二つにするか考えてったて言うんだよ。もしその気だったら僕は瞬殺されて今頃生きてないよ。でもそのおかげで天界からの呪縛から逃れて罪の意識から天界に狙われる他種族を助けまわってるうちに気付いたら魔王と呼ばれて人間たちから恐れられてるんだよ。・・・・・・そういえば琢磨は精神を支配されてないようだけど冒険者カード失くしたのかい?」
「冒険者カードならあるぞ」

 琢磨はポケットから冒険者カードを取り出すと颯斗に見せた。颯斗は覗き込むように見ているとある項目で目が留まった。

「なるほど。スキルに状態異常無効という項目があるね。しかも熟練度がMAXになっている」

 颯斗にいわれてスキルの項目を見ると確かに書いてある。琢磨は今気づいたような顔をする。

「スキルはこまめに確認していた方がいいよ。知ってると知らないじゃ全然違うからね。だけど念には念で冒険所カードを作り替えるね。この場所は僕の結界で天界には察知されないと思うけどここから出たらおそらく再検知されて万が一にもなにがしらのアプローチがある可能性がある。今なら君は死んだってことでいけるはずだ。どうせなら自由にこの世界満喫したいでしょ?」
「確かにな。だが向こうから接触してきた場合は容赦しない。シエラの故郷を滅ぼしたことを後悔させてやる!」

 颯斗は驚いたように目を大きくすると指で眼鏡の位置をクイッと直して、どこか安心したような顔で言った。

「君みたいな人がシエラを封印から解いてくれてよかった。――――早速始めよう。冒険者カードをそこの台座においてくれ」

 颯斗に言われ左隅にある機械の台座に長方形の窪《くぼ》みがありそこに冒険者カードをセットすると上から透明なドーム型のカバーが降りてくると颯斗がキーボードのようなものを操作している。

「作業が終わるまで少し時間がかかるから今の内に聞きたいことがないかい?」

 颯斗がキーボードを操作しながら聞いて来る。

「なら、一つ聞かせてくれ。何でシエラをあんな階層深くに封印したんだ?」

 シエラは突然の琢磨の質問に答えを魔王から聞くのが怖いのか琢磨の服の袖を握っている。

「大丈夫だ。お前には俺がいる」

 琢磨は袖に捕まっているシエラの手を取り安心させるように言うと、シエラはいくらか緊張が緩まったのか「・・・・・・うん」と頷いて少し表情も落ち着いた。 

「・・・・・・そういえば言ってなかったね。なぜシエラを封印しなければならなかったか言うよ」
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