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第8話 新しい仲間は残念美女

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「話がまとまったようで何よりです。それはそうとあなた方が戦ったスライムの特徴を伺ってもいいですか? あなた方のレベルでは苦戦するはずないんですが」

 行商人は俺たちに新しいコーヒーを入れると気になってることを聞いた。
 俺はスライムにまだら模様があったこと。どんな攻撃もよけられてしまう事。(彩の魔法がノーコンだった気もするが) そして、粘液攻撃でダメージはないがあらゆる装備を溶かしてしまうことを説明した。
 行商人は話が聞き終わると、手を顎に当てしばらく考えたのち、

「それは、もしかすると突然変異で現れたユニークモンスターかもしれませんね」

行商人が言うには、数年ほど前から突然現れたモンスターで同族より数段強いらしい。経験値を多くもらえることから見た目でなめてかかった冒険者が返り討ちにあって死ぬことが多発しているらしい。中でも俺たちが遭遇したまだら模様のスライムは女に弱いらしい。女と見ると粘液攻撃で装備を溶かし、その光景を見て楽しんでるようだ。その間隙だらけなので他のパーティーメンバーがいれば簡単に倒せるらしい。ただ、男しかいない場合は見た目がスライムなので油断するとあっという間にあの世行きだしい。ちなみに強さはゴブリンキング並みだしい。
 どうやら、レベルが低いのに勝てたのはガブリエルと彩がいたおかげらしい。お陰でレベルもずいぶん上がったらしいしな。今度遭遇したらガブリエルか彩をおとりにしようと二人を見てると何か察したのか、俺から距離を取り二人で抱き着いてこの世の終わりみたいな顔をしている。
 ちなみに通常なスライムは冒険者じゃなくてもたいていの人ならどうにかなるぐらいの強さしかないらしい。それを聞いて、安心した。

 俺は冒険者カードを出すとレベルが十五になってるのを確認すると、

「・・・・・・しかし、本当にモンスターを倒すだけで、強くなるなんて本当に異世界に転生したんだなぁ・・・・・・」

 俺が思わずつぶやくと、行商人に「異世界?」みたいな顔をされた。

 俺は話題を変えるように、行商人に次の街の行き方を聞いた。

「俺たちはこの先の街に行こうと思うのですけど、何か情報ってありますかね?」

行商人は指を五本出して、

「情報量としてこんだけもらうのですが・・・・・・まあいいでしょう。今回は特別サービスでタダでお教えしましょう。あなた方とは好意にしてた方がよろしいようです」

 行商人は「これでも人を見る目はあるのですよ」と笑いながら言っていた。

「さて、街の情報ですね。この先は商業都市≪ガモス≫と言います。そこは、名前の通り、商業が盛んな街で、外からも私のような商人が買い付けに行ったり、商売をしに行くのでいろんな商品が手に入るのが魅力です。ですが、中でもレア物のアイテムは価値が非常に高くて、並の冒険者では手が出ないでしょう。そこで、定期的に開催されてる大会がありましね。例えば力を試す武術の大会があれば、知恵を絞るクイズ大会、料理対決などあります。それに優勝するとジャンルによって多少違いますが一千万Gはくだらないでしょう。もし興味が御有りならば出てみるのもいいでしょう」
「それは面白そうだな」

 俺は、次の街に行くのが楽しみで仕方なかった。まるで、地球にいた時の遠足前で夜も寝れない時みたいな気分だ。

「・・・・・・ですが、ちょっと問題がおきましてね」
「問題って何なの?」

 今まで黙ってたガブリエルが口をもぐもぐさせながら聞いてきた。
 おい、口に物を入れたまま喋るのをやめろ。仮には天使様だろ。
 こいつの見た目で騙されてきた男たちが目に浮かびそうだ。
 俺は、こいつを連れてきたことにちょっと後悔しそうだ。

 行商人が神妙な面持ちで語りだす。

「みなさん、冒険者ならダンジョンの存在は知ってますね?」
「ああ、最近そこらじゅうで発生しているモンスターの住処のことだろ」
「そうです。それが最近ガモスに繋がる街道脇で発生したという情報を掴みましてね。ギルドに依頼を出しているらしいのですが、B級以上がこの近辺にいないらしいのです。本来はこの近辺は冒険者になりたての初心者が安心してモンスターを狩れる場所だったのですが、ユニークモンスターの出現で最近は手に負えなくなってきたようですね。困ったものです」

 さらに話を聞くと、回り道をすると一週間ほどかかり、ダンジョンはうまくいけば一日で行けるらしいが、下手をすれば何か月もかかる可能性があるらしい。これは、ダンジョンの中は複雑でいってみないと何とも言えないらしい。
 俺たちは話し合った結果、レベル上げを兼ねてダンジョンを抜けることにした。しかも、ダンジョンの最深部にあるクリスタルの形をしたコアをギルドに提出したら金が貰えるらしい。中でも透明度がすごいと高くつくらしい。コアは、加工して武器や防具に生まれ変わるという。
 俺たちは、明日に備えて寝ることにした。


 次の日の早朝、
 俺は朝の鍛錬としてこの世界に来てから日課にしている剣の素振りをしていると声をかけられた。

「・・・・・・すまない、ちょっといいだろうか・・・・・・?」

 俺は、剣を地面に刺し、肩にかけてたタオルで汗をぬぐうと声が聞こえた方を振り向いた。

「なんでしょ・・・・・・うか・・・・・・」

 俺は声の主を見て絶句した。
 そこにいたのは女騎士だった。
 それも、とびきり美人の。この異世界、美人がやたら多くないだろうか。俺は心の中で感謝しつつ、一夫多妻制だったらいいなあと思い、新たな目標をハーレムを作ることを決めた。

 もう一度女騎士を見るとやはり美人だ。
 パット見た感じ、クールな印象を受けるその美女は、なにか気まずそうにこちらを見ていた。俺、何かやっただろうか?
 よく観察してると、身長は俺より若干高い。
 俺の身長が百六十八センチ。
 それより少し高いだろうか。
 頑丈そうな金属の鎧に身を包んだ、金髪を後ろでまとめてポニーテールにしてる美女だった。
 俺よりも二歳ぐらい年上だろうか。
 鎧のせいで体型は分からないが、身長が長身とあって、モデル並みにスタイルがよさそうだ。
 クールな顔立ちから想像できないほどのプレッシャーを感じる。俺とこの人は初対面のはずだ。

「あ、えーっと、何でしょうか?」

 ガブリエルたちと違って見知らない美女が話しかけてきたことで緊張し、若干声が上ずってしまう。

「うむ・・・・・・。この募集は、貴方のパーティーの募集だろう? もう人の募集はしてないのだろうか」

 その女騎士が見せてきたのは一枚の紙。
 そう言えば、いろいろありすぎてギルドに貼った紙をはがしてなかった。

「あー、仲間になってくれるならありがたいですけど、あまりお勧めはしないですいけど・・・・・・」
「ぜひ私を! 私をパーティーに入れてくれ!」

 やんわり断ろうとした俺の手を、突然 女騎士ががッと掴んだ。その拍子で肩にかけてたタオルがハラっと地面に落ちた。
・・・・・・えっ、何この状況。

「い、いやいや、ちょっ、待って待てって、いろいろと問題あるパーティーなんですよ、仲間二人はポンコツで上級職の魔法剣士なのに何回も二人のしりぬぐいで死にそうになるし、いだだだだだっ!」

 上級職を言ったあたりで一瞬女騎士の雰囲気が変わったと思ったら握る俺の手に力を込めた。何か、癇に障ることでも言ってしまっただろうか。

「それを聞いて安心した。他の二人は戦力にならないってことは私の目的の遂行に・・・・・・」
「えっ!?」

 今このお姉さんはなんつった? それに目的の遂行って聞こえたような・・・・・・

「いや違う。あんな年端もいかない二人の少女が役に立たなくてもあなたたちがパーティーを組んで冒険者をしているのは何か事情があるのだろう。だが、安心してほしい! これからは私がみんなを守ってやろう。特にあの二人には私みたいなのが必要だろう」
 
成り行きですとは言いにくい雰囲気だ。それに、なんだろう、この女騎士、目がやばい。落ち着いた感じだと思ってたのに、今までに人を殺めたことがありそうな雰囲気が出ている。
 そして、俺の危機感知センサーが反応している。
 こいつはガブリエルや彩と違う危なさを感じる。何だか心臓を掴まれてるみたいな息苦しさも感じる。
・・・・・・美人だが仕方ない。

「いやー、先ほど言いましたがお勧めはしないですよ。仲間の一人は自称天使って言い張ってる頭のおかしい奴ですし、もう一人は、アークウィザードっていう職業に恵まれてるのに攻撃魔法のどれもが全く敵に当たらないやつです。これでは、命がいくらあっても足りませんよ。ですから他をお勧めし・・・・・・っ!?」

 さらに女騎士の手に力が込められる。何かミシミシ言い出してるんですけどいい加減離してくれないだろうか・・・・・・

「なら尚更都合がいい! いや実は、ちょっと言いづらかったのだが、私は力も耐久力もあるのだが、この見た目からなのか今までソロで活動してたのだが私はずっとパーティーというものを組んで仲間を守って戦ってみたかったのだ。私は物語に出てくるような英雄にあこがれている!」

 なんか彩みたいな感じだな。それに、どうしても俺のセンサーが危ういと言っているようだ。『きれいなバラには棘がある』ということだろうか。

「という訳で、私はこれでも上級職だ。私にあの二人を守る役目をくれないだろうか。危ないときは私が盾代わりになろう。だから私を仲間にしてくれ!」

 女騎士が、俺に端正な顔をズイッと近づけてくる。
 顔が近い!
 俺は普通の男なのだ。女騎士の顔が近づいてきただけでドキドキする。しかも何かいい香りが・・・・・・
 いや、落ち着け、色香に惑わされるな!

「いや、女性が盾代わりだなんて想像以上に大変ですよ。あの二人を侮りすぎです。それにあの二人にはこれからスキルアップをしてもらうのでこれから大変ですよ。それに、知らないかもしれませんが最近のスライムは女の人だけ装備を溶かす奴がいまして想像以上に大変というか」
「望むところだ」
「いや、アレですよ。昨日なんて仲間二人がまだら模様のスライムに粘液攻撃を浴びて装備が溶けるは粘液でべとべとになったりして大変だったんですよ!? 予想外の出来事がこの先あるかも」
「むしろそれがいいっ!」

 ・・・・・・ああ、分かった。俺のセンサーは別の意味で危険だと思ってたらしい。
 頬を紅潮《こうちょう》させて俺の手を握る女騎士。
 それを見て、俺は悟った。
 ・・・・・・こいつは、見た目がいいのに中身はただの変態だと。

 女騎士が仲間に加わった。
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