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『恋は盲目』
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浮気ぐらい、いいはずだ。男はそうゆうものだ。目に映る女性には片っ端から声をかけたいと思うし、色んな女を抱きたい。イタリア人だってそうだろう?
それなのに、こんなことがあってたまるものか!
あの日、妻と夫婦喧嘩をした。三年以上前の浮気についてであった。入社当時から私のことが好きだという女に言い寄られて一晩だけ、彼女を抱いた。ほんの出来心だ。付き合ってられないと寝室に入り眠った。
何か痛みが走り、気づいたら真っ暗闇の中にいた。変な感じだったが、妻の声が聞こえた。眠っている私に何かをしたのだろう。関わるのもめんどくさいので、私はまた再び眠りについた。
こうなった経緯を説明するとこうである。
三年前だ。妻の実家の会社が倒産した。私も勤めていたから責任の一端を担ってしまった。玉の輿が見事に真っ逆さまに叩き落とされた。それでも私は逃げずに、別の会社に入り、負債を少しでも減らす努力は続けた。その時から妻の様子がおかしかった。悲しんでいるというよりもなぜか楽しそうなのだ。頭がやられたのか、家の呪縛から解放されたのか、真意はわからないが以前よりも私を支えようとしてくれた。それはもう何もかもだ。家事から夜の営みまで、今まで以上に尽くしてくれた。
そんな彼女を裏切った俺は屑だと言われても仕方がないのだが、元を正せば彼女の父親が悪いのだし、むしろ俺はなんとかしようと別のところに働きに行き、金の援助をしてあげているのだ。お礼や労いの言葉をくれてもいいのに、あの嫁の両親は俺に直接、頭を下げにこず、全て妻を通している。そんな話があるか! 心身共に疲れて一つの過ちを犯してもいいじゃないのか、それなのに、今の私以外のそれも過去の私であっても、欲情なんて許せないとか、訳のわからんことを言って発狂された。
「としお!」
妻の上擦った声で私は目覚めた。
「どうして、どうして」
「どうしてって俺が聞きたいよ。痛てて」
目の痛みで、瞼を開けられない。真っ暗だ。
「私を置いて三年間ずっと行方をくらまして、私、私、ごめんなさい」
何を言っているのだ? 三年間、行方をくらましてって、妻の言葉の意味がわからなかった。
「話の脈略がわからない」
「お父さんの会社のことで、私も実家に入り浸る形になって、やっと帰れたと思ったら、私たちの家は、もぬけの殻だったのよ」
「それは君が、今の生活ができないから早急に家を出ないといけないって、もう部屋は用意したって言ったじゃないか。だからわざわざこんな地方まできたんだろ?」
「私はそんなこと言ってないよ」
一体全体どうなっているんだ。噛み合わなさすぎる。
考えを巡らせようとすると、再び強烈な目の痛みに襲われた。
「クソー! なんだこの痛みは、それになんでずっと真っ暗なんだ!」
私の喚き声と共に、また妻が泣き出した。ごめんなさいを繰り返すだけで、なんなのかがわからない。問い詰めても泣くだけだった。すると扉の開く音ともに女性の声がした。彼女は看護師であると述べ、私の現状を告げた。
私の両目はくり抜かれていたのだ。
落ち着くまでに時間がかかった。光の差さないトンネルを歩いているみたいだ。
私は三年間一体誰と暮らしていたのだろう。最後に見た妻の姿。あれは妻ではないのなら誰なんだ。考えれば考えるほど背筋が凍る。
困惑しているところに、妻が私に小包が届いていると言った。開けるよう指示をした。
届いた箱の中には義眼と瓶の中にくり抜かれた目が入ってたそうだ。私以外、その瞳に映すなという意味なのか、小さな紙にこう書かれていた。
LOVE IS BLIND
それなのに、こんなことがあってたまるものか!
あの日、妻と夫婦喧嘩をした。三年以上前の浮気についてであった。入社当時から私のことが好きだという女に言い寄られて一晩だけ、彼女を抱いた。ほんの出来心だ。付き合ってられないと寝室に入り眠った。
何か痛みが走り、気づいたら真っ暗闇の中にいた。変な感じだったが、妻の声が聞こえた。眠っている私に何かをしたのだろう。関わるのもめんどくさいので、私はまた再び眠りについた。
こうなった経緯を説明するとこうである。
三年前だ。妻の実家の会社が倒産した。私も勤めていたから責任の一端を担ってしまった。玉の輿が見事に真っ逆さまに叩き落とされた。それでも私は逃げずに、別の会社に入り、負債を少しでも減らす努力は続けた。その時から妻の様子がおかしかった。悲しんでいるというよりもなぜか楽しそうなのだ。頭がやられたのか、家の呪縛から解放されたのか、真意はわからないが以前よりも私を支えようとしてくれた。それはもう何もかもだ。家事から夜の営みまで、今まで以上に尽くしてくれた。
そんな彼女を裏切った俺は屑だと言われても仕方がないのだが、元を正せば彼女の父親が悪いのだし、むしろ俺はなんとかしようと別のところに働きに行き、金の援助をしてあげているのだ。お礼や労いの言葉をくれてもいいのに、あの嫁の両親は俺に直接、頭を下げにこず、全て妻を通している。そんな話があるか! 心身共に疲れて一つの過ちを犯してもいいじゃないのか、それなのに、今の私以外のそれも過去の私であっても、欲情なんて許せないとか、訳のわからんことを言って発狂された。
「としお!」
妻の上擦った声で私は目覚めた。
「どうして、どうして」
「どうしてって俺が聞きたいよ。痛てて」
目の痛みで、瞼を開けられない。真っ暗だ。
「私を置いて三年間ずっと行方をくらまして、私、私、ごめんなさい」
何を言っているのだ? 三年間、行方をくらましてって、妻の言葉の意味がわからなかった。
「話の脈略がわからない」
「お父さんの会社のことで、私も実家に入り浸る形になって、やっと帰れたと思ったら、私たちの家は、もぬけの殻だったのよ」
「それは君が、今の生活ができないから早急に家を出ないといけないって、もう部屋は用意したって言ったじゃないか。だからわざわざこんな地方まできたんだろ?」
「私はそんなこと言ってないよ」
一体全体どうなっているんだ。噛み合わなさすぎる。
考えを巡らせようとすると、再び強烈な目の痛みに襲われた。
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私の喚き声と共に、また妻が泣き出した。ごめんなさいを繰り返すだけで、なんなのかがわからない。問い詰めても泣くだけだった。すると扉の開く音ともに女性の声がした。彼女は看護師であると述べ、私の現状を告げた。
私の両目はくり抜かれていたのだ。
落ち着くまでに時間がかかった。光の差さないトンネルを歩いているみたいだ。
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困惑しているところに、妻が私に小包が届いていると言った。開けるよう指示をした。
届いた箱の中には義眼と瓶の中にくり抜かれた目が入ってたそうだ。私以外、その瞳に映すなという意味なのか、小さな紙にこう書かれていた。
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