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『食材の名前』
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友達の家に泊まりに行った八歳の息子と妻を迎えに、その友達の家に来た私は、玄関先で衝撃の一言を告げられた。
――昨日お子さんを食べましたの。
「食べたって……」
私は戸惑い苦笑した。息子の友人の母親はとても美人であった。髪や肌の艶は十代そこらの女の子と変わらない。扉を開けて開口一番の言葉がそれであった。黒のワンピースに胸元が肌けている。男なら無意識にでもそそられてしまう。
妖艶に笑う彼女に誘われるまま、家に上がらせていただいた。
「浜崎さん、食事はされましたか?」
私は首を横に振った。
「では、奥さん持ってきますね」
まだ悪いジョーダンは続いている。芸人でもなんでもないが、ここまでこのネタを引っ張られてもおもしろくないし、反応もしづらい。その上、美人なだけに始末が悪い。
それから一向に息子と妻の様子が見当たらない。先に帰ったのか? そんなことはないはずだ。考えていると、客間に誰かが入ってきた。それは私の息子よりも少し幼い五歳くらいの子どもだった。
私はあいさつすると、
「昨日はおじさんを食べたんだ!」
唐突にそんなことを言われ面食らった。急に血生臭いのが鼻につく。私はなんだか胸騒ぎがした。
私は客間から台所の方に向かう。すると、手が血だらけの奥さんが包丁を持っていた。
「あら? 浜崎さん? すいませんね。手間取ってしまって」
切先についている血が地面に落ちる。私は唾を飲み込んだ。
「いや~本当に美味しいですね」
私の隣にいる奥さんに食事の感想を述べた。
「あら、嬉しいです」
「最初は、なんなのかわからなかったんですが、ハマサキノオクサンって魚の名前だったんですね」
私は器に盛られた焼き魚を見て笑った。ネットで調べたらなんとオジサンという魚もあるのだ。
「ええ、新鮮な浜崎の奥さんが獲れたので、捌いてましたの」
私はその魚を食べながら、小鉢に盛られた赤い肉を食べる。コリコリして美味しい。
「これは一体」
「舌ですの」
「へー! タンですか。でも一体何の肉だろう?」
ふと、疑問が浮かんだ。お子さんという魚はなかったということを……あれは子持ちの魚という意味であったのだろうか?
すると急に視界ぼやけ、私はそのまま床に倒れた。――何が起こったのだ? 意識が朦朧とする中、担がれ、そのまま地下室の階段を降りていく。階段に着いた赤黒い足跡が、私のその後を暗示していた。
――昨日お子さんを食べましたの。
「食べたって……」
私は戸惑い苦笑した。息子の友人の母親はとても美人であった。髪や肌の艶は十代そこらの女の子と変わらない。扉を開けて開口一番の言葉がそれであった。黒のワンピースに胸元が肌けている。男なら無意識にでもそそられてしまう。
妖艶に笑う彼女に誘われるまま、家に上がらせていただいた。
「浜崎さん、食事はされましたか?」
私は首を横に振った。
「では、奥さん持ってきますね」
まだ悪いジョーダンは続いている。芸人でもなんでもないが、ここまでこのネタを引っ張られてもおもしろくないし、反応もしづらい。その上、美人なだけに始末が悪い。
それから一向に息子と妻の様子が見当たらない。先に帰ったのか? そんなことはないはずだ。考えていると、客間に誰かが入ってきた。それは私の息子よりも少し幼い五歳くらいの子どもだった。
私はあいさつすると、
「昨日はおじさんを食べたんだ!」
唐突にそんなことを言われ面食らった。急に血生臭いのが鼻につく。私はなんだか胸騒ぎがした。
私は客間から台所の方に向かう。すると、手が血だらけの奥さんが包丁を持っていた。
「あら? 浜崎さん? すいませんね。手間取ってしまって」
切先についている血が地面に落ちる。私は唾を飲み込んだ。
「いや~本当に美味しいですね」
私の隣にいる奥さんに食事の感想を述べた。
「あら、嬉しいです」
「最初は、なんなのかわからなかったんですが、ハマサキノオクサンって魚の名前だったんですね」
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「ええ、新鮮な浜崎の奥さんが獲れたので、捌いてましたの」
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「これは一体」
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ふと、疑問が浮かんだ。お子さんという魚はなかったということを……あれは子持ちの魚という意味であったのだろうか?
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