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クイン

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一章

作家宣言1-2

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 美晴は眼鏡を取り眉間をマッサージした。
――これはなんだ? 私の息子は何を書いているのだ? 最近の若者はこういった物ばかり読んでいるのか? そもそもこれはどういった話なのだ? 恋愛、青春、ミステリーではないと思う。ファンタジーにしては、現代のような雰囲気だ。それに長ったらしいタイトルの転生? 女騎士? ハーレム? どこにもそんな描写はないじゃないか……一体この作品はなんなんだ、小説に詳しくないが、それでもこの紙に書かれている内容がひどいということだけはわかる。
 健司の顔をちらりと美晴は見る。渾身の力作ができたと言わんばかりの表情である。今年で八十になる美晴はどうゆう言葉をかけるべきか、最善の言葉はどれなのか、悩んだ。
「おい! どうなんだよ」
 無情な催促が美晴の胸を締め付ける。
「健司は小説家を本気で目指すのかい?」
 重々しく発した言葉に健司が求めていた答えではなかったため少し困惑していたが、
「ああ、そのつもりだ」
「そう、だったらはっきりいうわね。この作品、意味が分からない」
「な……」
 健司はまたも顔を真っ赤にした。
「このゆみって女の子、貧乏なの? 胸がこぼれるほどのブラウスなんて小さいから、制服ではまず着ないと思うの。近所の人からサイズの合わないお下がりでももらったの? それに年頃の女の子だし。しかもこんな羞恥をさらして告白なんてまずしないわよ。ここまできたらもう詐欺か何かよ。よくニュースで見るじゃない」
 健司は親指を噛んでいる。怒りを我慢している時の姿だ。
「あーあーあー」
 と息荒く、健司はキッチンから去り、ドシドシとわざとらしい足音を立てて自身の部屋と向かっていった。
 美晴は洗面所に行き、洗面台の鏡に映る自分の顔をみた。皺が一段と濃くなり、髪の毛は真っ白。先行きの不安を無意識に感じ深いため息を漏らした。
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