ぶよぶよ人間

クイン

文字の大きさ
上 下
7 / 11

*46 1

しおりを挟む
 叫んだと同時に、辺りは明るくなった。気づけば朝だった。
「夢……?」
 起きると寝汗がひどくパジャマがびちゃびちゃであった。頭をかくと腕に黒い染みが浮き出ていた。
 ぶよぶよ人間がでた……だから学校に行く……。生活習慣みたいだ……。
 学校に登校している最中、前方に、見知った後ろ姿の女の子がいた。思い切って自分から「おはよう」と声をかけた。
 女の子がこちらに振り向いた。怪訝な顔を僕に向けているも、無害だと感じたのか、
「あ、え、おはよう」
 と返された。
 僕は女の子の横に並ぶもそれから一言も話さなかった。黒髪がとてもきれいだった。すごく気まずく感じた。
「そういえば、名前教えてなかったね。私の名前は千春。坂本 千春」
「僕の名前は……シロウ」
「ふーん。なんかしんどそうな名前ね」
 そうなのかもしれない。僕はとてもしんどいのだと思う。今日の学校も行きたくない。
「ねー」
 千春が僕の顔を覗き込んだ。
「顔がすごく青いよ。気分悪いの?」
 確かに……言われて気づいた。僕は体調が優れていないことに。
「帰ろう」
 千春はシロウの手を取り学校とは逆方向へと歩を進めた。ついてきた先はひび割れた建物だった。中に入ると、背の丸まったおじさんが僕たちを迎えてくれた。
「蝉じい、ベット貸して」
 千春は不愛想に言った。
「上のベットを使いなさい」
 といってくれた。千春がベットのある部屋まで案内してくれた。
「ここのみんなは?」
「もういないよ」
「そっか」
 それもそうだ。みんな仕事だったり、学校だったり、行っているのだ。
「ごめんね、僕のせいで学校にいけなくて」
 謝ると、千春は不敵にこう言った。
「私もさぼれたからよかった。私学校嫌いなんだ」
「どうして?」
 僕がそれを聞くには筋違いかもしれないのだが。
「だって、つまらない人間ばかりだもの。男の子はみんな子どもっぽいし乱暴。女の子は何かとかっこいい男の芸能人の話。万有引力や相対性理論。クローン技術の話。SF的な話なんかだれもしない。怪奇話は多少するけど、トイレの花子さんみたいな話でキャーキャーしてる。バカみたい」
「カイキ?」
「『怪奇』・あやしくて不思議なことだったり、姿形が不気味といった意味よ。怪奇現象の怪奇よ」
 僕は怪奇という言葉に心当たりがある。ぶよぶよ人間が頭をよぎる。
「また顔が青くなってる。もう寝た方がいいね」
 僕は反射的に彼女の手を掴んだ。
「こわいんだ……ここにいて」
 千春は困った様子で笑ったが、僕のお願いを聞き入れてくれた。改めて僕の隣に座りなおしてくれた。
「さっきの話の続きなんだけど、僕は千春が望む話ができると思うんだ」
 千春は僕の発言に対し、目を丸くしていた。
「何それ? どんな話?」
「怪奇な話だよ」
 興味をそそられたという顔をする千春に僕は今までのぶよぶよ人間の話をする。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

二つの願い

釧路太郎
ホラー
久々の長期休暇を終えた旦那が仕事に行っている間に息子の様子が徐々におかしくなっていってしまう。 直接旦那に相談することも出来ず、不安は募っていくばかりではあるけれど、愛する息子を守る戦いをやめることは出来ない。 色々な人に相談してみたものの、息子の様子は一向に良くなる気配は見えない 再び出張から戻ってきた旦那と二人で見つけた霊能力者の協力を得ることは出来ず、夫婦の出した結論は……

断崖

ツヨシ
ホラー
断崖に一人の男が現れるという噂を聞いた。

喪失~失われた現実~

星 陽月
ホラー
 あらすじ  ある日、滝沢の務める会社に桐生という男が訪ねてきた。男は都立江東病院の医師だという。  都立江東病院は滝沢のかかりつけの病院であったが、桐生という名の医師に聞き覚えがなかった。  怪訝な面持ちで、男の待つ会議室に滝沢は向かった。 「それで、ご用件はなんでしょう」  挨拶もそこそこに滝沢が訊くと、 「あなたを救済にきました」  男はそう言った。  その男が現れてから以降、滝沢の身に現実離れしたことが起こり始めたのだった。  さとみは、住んでいるマンションから15分ほどの商店街にあるフラワー・ショップで働いていた。  その日も、さとみはいつものように、ベランダの鉢に咲く花たちに霧吹きで水を与えていた。 花びらや葉に水玉がうかぶ。そこまでは、いつもとなにも変わらなかった。  だが、そのとき、さとみは水玉のひとつひとつが無規律に跳ね始めていくのを眼にした。水玉はそしてしだいにひとつとなっていき、自ら明滅をくり返しながらビリヤードほどの大きさになった。そして、ひと際光耀いたと思うと、音もなく消え失せたのだった。  オーナーが外出したフラワー・ショップで、陳列された店内の様々な花たちに鼻を近づけたり指先で触れたりしながら眺めた。  と、そのとき、 「花はいいですね。心が洗われる」  すぐ横合いから声がした。  さとみが顔を向けると、ひとりの男が立っていた。その男がいつ店内入ってきたのか、隣にいたことさえ、さとみは気づかなかった。  そして男は、 「都立江東病院の医師で、桐生と申します」  そう名乗ったのだった。  滝沢とさとみ。まったく面識のないふたり。そのふたりの周りで、現実とは思えない恐ろしい出来事が起きていく。そして、ふたりは出会う。そのふたりの前に現れた桐生とは、いったい何者なのだろうか……。

黄泉小径 -ヨモツコミチ-

小曽根 委論(おぞね いろん)
ホラー
死後の世界に通ずると噂される、村はずれの細道……黄泉小径。立ち入れば帰って来れないとも言われる、その不気味な竹藪の道に、しかしながら足を踏み入れる者が時折現れる。この物語では、そんな者たちを時代ごとに紐解き、露わにしていく。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

瓶詰めの神

東城夜月
ホラー
カルト宗教に翻弄される生徒達による、儀式<デスゲーム>が始まる。 比名川学園。山奥にぽつんと存在する、全寮制の高校。一年生の武村和は「冬季合宿」のメンバーに選ばれる。そこで告げられたのは「神を降ろす儀式」の始まりだった。

野花を憑かせて〜Reverse〜

野花マリオ
ホラー
怪談ミュージカル劇場の始まり。 主人公音野歌郎は愛する彼女に振り向かせるために野花を憑かせる……。 ※以前消した奴のリメイク作品です。

意味も分からないし怖くもない話

ぽいぽい
ホラー
意味も分からないし怖くもない。

処理中です...