ぶよぶよ人間

クイン

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 ぶよぶよ人間は定期的に現れる。その姿は人間に似ているが、顔がゴムのような素材で目や口、鼻、耳がなく、皮膚がぶよぶよしてそうなのだ。そしてそいつらは僕の家のドアを叩くのだ。怖くてたまらない。
「なな……ななななななな――」
 発する言葉が呪文みたいで何を言っているのかわからない。
 お母さん、早く帰ってきて! と切実に願っている。
「いるのだろ? あけなさい」
 この言葉だけはわかる。ぶよぶよ人間がきた時はもの音を立てず、一言も発さないでいるのがいい。そうするとすぐにどこかに行く。
「……」
「……」
 外でなにかしゃべって、そのまま足音が遠のいていく。僕はここでようやく立ち上がることができた。テレビをつけるのはまだ早いかな? ぶよぶよ人間は帰ったと見せかけて、ドアの前にいることが多い。
 そっと、ドアの覗き穴をみる。団地の壁しか見えない……安堵した。僕は台にした椅子から降りた瞬間――ドアのノブの激しく回転する音が耳を打った。その次にドアを叩く音。恐る恐る覗き穴を見ると、お母さんが立っていた。僕は再び安堵してドアを開けた。お母さんは僕のことを気にも止めず、部屋の奥にいって眠った。
 僕は日課のお薬を飲み、無造作に置かれた布団をかぶって眠りについた。
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