ぶよぶよ人間

クイン

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 ピンポンーー。
 
 インタ―フォンが鳴った。急いで玄関に向かい、扉を開ける。
「お姉さん!」
 や! と黒髪のきれいなお姉さんが立っていた。
 お姉さんとは大きな病院で知り合った。その時のことは今でも鮮明に思い出すことができる。
 
 
『え~と君は……ニシくんかな?』
 身体が悪い僕は気が付けば、大きな病院のベットの上で横になっている生活を送っていた。トイレに行こうと病室からでたところで、お姉さんと出会ったのだ。僕はドアの所にある表札をみた。Nの文字が見えた。あれを見たのだろう。
『は、はい』
『私、近所に住んでるのよろしくね』
 といって僕と仲良くしてくれるようになった。
 そこからちょくちょくと顔をだしてくれるようになり、食事や身の回りのお世話をたまにしてくれた。
 
 
 そして今に至る。
 
「お腹空いてるでしょ? たこ焼き買ってきたよ」
 僕はすぐにお姉さんを迎え入れた。たこ焼きソースのいい匂いがする。
「お母さんは?」
 僕は部屋の隅にいるお母さんを見た。お姉さんは、僕の頭をそっと撫でてくれた。お姉さんからは優しく甘い香りがした。
 テーブルにお姉さんと向かい合いながら、僕はたこ焼きをたべている。
「学校はいかないの?」
「行かない……」
「クラスの子がいじめるの?」
「そうじゃない。そうじゃないんだ」
 たこ焼きを食べる手を止めた。
「ぶよぶよ……ぶよぶよ人間がいるって言ったら、みんなに気味悪がられて……山田に、クラスで体の大きいやつに頭を殴られて……」
「そう」
 お姉さんはもう何も言わなくていいよ――というような笑顔を僕に向けた。そして正座している膝をパンパンと叩いた。ここにおいでという合図だ。僕はお姉さんのひざ元に行き、顔をうずめた。そのままお互いに何もしゃべらず、扇風機の回転音だけが流れた。僕はだんだん眠くなり、そのままお姉さんのひざの上で眠ってしまった。
 起きたら部屋の中は真っ暗だった。お姉さんは帰ったみたいだ。テーブルに食事が用意されている。きっとお姉さんがつくってくれたんだ。蓋を開けるとハンバーグだった。メモガキが横に置いてあり〝あたためて、たべてね!〟と書いていた。お母さんの方をみると横になって寝ている。おそらく、僕が眠っている間に食べたのであろう。僕は電子レンジにハンバーグを入れ、チン、という音が鳴ってそれを取り出し、左手にフォークを持ち食べた。とてもおいしかった。
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