2 / 11
*24
しおりを挟む
ピンポンーー。
インタ―フォンが鳴った。急いで玄関に向かい、扉を開ける。
「お姉さん!」
や! と黒髪のきれいなお姉さんが立っていた。
お姉さんとは大きな病院で知り合った。その時のことは今でも鮮明に思い出すことができる。
『え~と君は……ニシくんかな?』
身体が悪い僕は気が付けば、大きな病院のベットの上で横になっている生活を送っていた。トイレに行こうと病室からでたところで、お姉さんと出会ったのだ。僕はドアの所にある表札をみた。Nの文字が見えた。あれを見たのだろう。
『は、はい』
『私、近所に住んでるのよろしくね』
といって僕と仲良くしてくれるようになった。
そこからちょくちょくと顔をだしてくれるようになり、食事や身の回りのお世話をたまにしてくれた。
そして今に至る。
「お腹空いてるでしょ? たこ焼き買ってきたよ」
僕はすぐにお姉さんを迎え入れた。たこ焼きソースのいい匂いがする。
「お母さんは?」
僕は部屋の隅にいるお母さんを見た。お姉さんは、僕の頭をそっと撫でてくれた。お姉さんからは優しく甘い香りがした。
テーブルにお姉さんと向かい合いながら、僕はたこ焼きをたべている。
「学校はいかないの?」
「行かない……」
「クラスの子がいじめるの?」
「そうじゃない。そうじゃないんだ」
たこ焼きを食べる手を止めた。
「ぶよぶよ……ぶよぶよ人間がいるって言ったら、みんなに気味悪がられて……山田に、クラスで体の大きいやつに頭を殴られて……」
「そう」
お姉さんはもう何も言わなくていいよ――というような笑顔を僕に向けた。そして正座している膝をパンパンと叩いた。ここにおいでという合図だ。僕はお姉さんのひざ元に行き、顔をうずめた。そのままお互いに何もしゃべらず、扇風機の回転音だけが流れた。僕はだんだん眠くなり、そのままお姉さんのひざの上で眠ってしまった。
起きたら部屋の中は真っ暗だった。お姉さんは帰ったみたいだ。テーブルに食事が用意されている。きっとお姉さんがつくってくれたんだ。蓋を開けるとハンバーグだった。メモガキが横に置いてあり〝あたためて、たべてね!〟と書いていた。お母さんの方をみると横になって寝ている。おそらく、僕が眠っている間に食べたのであろう。僕は電子レンジにハンバーグを入れ、チン、という音が鳴ってそれを取り出し、左手にフォークを持ち食べた。とてもおいしかった。
インタ―フォンが鳴った。急いで玄関に向かい、扉を開ける。
「お姉さん!」
や! と黒髪のきれいなお姉さんが立っていた。
お姉さんとは大きな病院で知り合った。その時のことは今でも鮮明に思い出すことができる。
『え~と君は……ニシくんかな?』
身体が悪い僕は気が付けば、大きな病院のベットの上で横になっている生活を送っていた。トイレに行こうと病室からでたところで、お姉さんと出会ったのだ。僕はドアの所にある表札をみた。Nの文字が見えた。あれを見たのだろう。
『は、はい』
『私、近所に住んでるのよろしくね』
といって僕と仲良くしてくれるようになった。
そこからちょくちょくと顔をだしてくれるようになり、食事や身の回りのお世話をたまにしてくれた。
そして今に至る。
「お腹空いてるでしょ? たこ焼き買ってきたよ」
僕はすぐにお姉さんを迎え入れた。たこ焼きソースのいい匂いがする。
「お母さんは?」
僕は部屋の隅にいるお母さんを見た。お姉さんは、僕の頭をそっと撫でてくれた。お姉さんからは優しく甘い香りがした。
テーブルにお姉さんと向かい合いながら、僕はたこ焼きをたべている。
「学校はいかないの?」
「行かない……」
「クラスの子がいじめるの?」
「そうじゃない。そうじゃないんだ」
たこ焼きを食べる手を止めた。
「ぶよぶよ……ぶよぶよ人間がいるって言ったら、みんなに気味悪がられて……山田に、クラスで体の大きいやつに頭を殴られて……」
「そう」
お姉さんはもう何も言わなくていいよ――というような笑顔を僕に向けた。そして正座している膝をパンパンと叩いた。ここにおいでという合図だ。僕はお姉さんのひざ元に行き、顔をうずめた。そのままお互いに何もしゃべらず、扇風機の回転音だけが流れた。僕はだんだん眠くなり、そのままお姉さんのひざの上で眠ってしまった。
起きたら部屋の中は真っ暗だった。お姉さんは帰ったみたいだ。テーブルに食事が用意されている。きっとお姉さんがつくってくれたんだ。蓋を開けるとハンバーグだった。メモガキが横に置いてあり〝あたためて、たべてね!〟と書いていた。お母さんの方をみると横になって寝ている。おそらく、僕が眠っている間に食べたのであろう。僕は電子レンジにハンバーグを入れ、チン、という音が鳴ってそれを取り出し、左手にフォークを持ち食べた。とてもおいしかった。
10
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
虫喰いの愛
ちづ
ホラー
邪気を食べる祟り神と、式神の器にされた娘の話。
ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。
三万字程度の短編伝奇ホラーなのでよろしければお付き合いください。
テーマは蛆虫とメンヘラ(?)
蛆虫などの虫の表現、若干の残酷描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
『まぼろしの恋』終章で登場する蝕神さまの話です。『まぼろしの恋』を読まなくても全然問題ないです。
また、pixivスキイチ企画『神々の伴侶』https://dic.pixiv.net/a/%E7%A5%9E%E3%80%85%E3%81%AE%E4%BC%B4%E4%BE%B6(募集終了済み)の十月の神様の設定を使わせて頂いております。
表紙はかんたん表紙メーカーさんより使わせて頂いております。
何かを喪失するAI話
月歌(ツキウタ)
ホラー
何かを喪失するAI話。AIが作ったので、喪失の意図は分かりませんw
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
怪異相談所の店主は今日も語る
くろぬか
ホラー
怪異相談所 ”語り部 結”。
人に言えない“怪異”のお悩み解決します、まずはご相談を。相談コース3000円~。除霊、その他オプションは状況によりお値段が変動いたします。
なんて、やけにポップな看板を掲げたおかしなお店。
普通の人なら入らない、入らない筈なのだが。
何故か今日もお客様は訪れる。
まるで導かれるかの様にして。
※※※
この物語はフィクションです。
実際に語られている”怖い話”なども登場致します。
その中には所謂”聞いたら出る”系のお話もございますが、そういうお話はかなり省略し内容までは描かない様にしております。
とはいえさわり程度は書いてありますので、自己責任でお読みいただければと思います。
#彼女を探して・・・
杉 孝子
ホラー
佳苗はある日、SNSで不気味なハッシュタグ『#彼女を探して』という投稿を偶然見かける。それは、特定の人物を探していると思われたが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。日が経つにつれて、そのタグの投稿が急増しSNS上では都市伝説の話も出始めていた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる