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第3章 ワイラ編
第64話「情報屋」
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道場の稽古を終えたある日、修と千祝は修の部屋に上がり話し合いをしていた。
まだ、大人の部に参加するべき門下生達は、怪我から復帰できていないため、少年の部の稽古だけで終了し、夕飯の準備も終了しているため、今の時間はフリーなのだ。
議題は、いかに外つ者の情報を集めるかである。
過去、修の夢に登場した外つ者関連の事象は、その後ヤトノカミやダイダラボッチの復活といったように、実現している。なので、また夢に外つ者と思しきものが出てきたのなら、準備を整えておきたいのだ。
「大久保さんや中条さんの返事はどうだったの?」
「んー。あんまりかんばしくないな」
「やっぱり、オピポーじゃ手掛かりにならないわね」
今回夢に出てきたのは、外つ者と戦う縄文人の勇者オピポーの姿であり、外つ者の姿形は目にしていない。
これまでの事例では、夢に見た巨大な剣から、約三メートルの直刀である布津御霊剣を探り出し、これの祀られている香島神宮に調査に行くことにより、その地に封じられていたヤトノカミと戦った。また、夢に出てきた巨大な外つ者という手掛かりから、かつてこの国の武芸者達がダイダラボッチという巨人と戦ったという記録から、その決戦の地である富士山麓に赴き、復活したての巨人を再度討滅した。
しかし、今回は外つ者に関する直接の情報は無いし、縄文人の名前を手掛かりにすることは出来ない。これは、警察の大久保や防衛隊の中条にとっても同じだったようで、情報を得ることは出来なかった。
「じゃあどうするの? 事前に調査するのは諦めて、復活したところを倒すってこともありだと思うけど? これまでだって、復活自体は防ぐことは出来なかったし」
「いや、確かにこれまでヤトノカミやダイダラボッチの復活を防ぐことは出来なかったかもしれない。だけど、調査のために傍にいたからこそすぐに倒すことが出来たんだ。対応が遅れれば、周囲に犠牲が出たりしたかもしれない。だから、出来る限りの事はしておきたい。これを見てくれ」
そういいながら修は、一通の便箋を封筒から取り出し、千祝に広げて見せた。
「これは?」
「鞍馬さんから貰った手紙だよ。今回の件を相談したら、情報屋を紹介してくれた」
鞍馬とは以前外つ者を復活させたことにより、それを妨害する修達と戦うことになった武芸者である。
悪行を行った彼ではあるが、一応事情があり、また、武の世界の先達ということもあって、修達は悪印象を抱いてはいない。
「そういえば、あの人の組織は、銃器で武装していたりと、裏の世界との繋がりがあるみたいね。その情報屋っていうのもその関連かしら」
「ああ、そういうことだ。ただ、俺達はまだ学生だから、今回紹介してくれる中には暴力団とかのそっち系の情報屋は入ってないってさ」
「ふ~ん。そういえば、鞍馬さんは裁判とかどうなってるのかしら?」
鞍馬は、五年前に官房長官等の政府要人を殺害したり、香島神宮の神主に重傷を負わせ将級の外つ者であるヤトノカミを復活させたりと、多くの罪を犯している。
「それが、裁判にならないかもしれないらしいんだ。外つ者に関しては法律が無いし、殺人や傷害に関しても外つ者関連の事件だから、裁判で色々証言されるとまずいんだってさ。本人は大人しく罪に服するもりらしいんだけど」
「は~、何か闇が深いわね」
「だから報酬も高いんだろうさ」
修は、外つ者関連の事件を解決に導いたとして、高校生が持つには不相応な金額の報酬を貰っている。過去、外つ者と対峙してきた武芸者達は、この様に高額の報酬を貰うのが慣例になっていたらしいが、口封じという意味もあったのだろう。
「じゃあ、夕飯が済んだら、紹介されている情報屋に行ってみましょう」
「そうだな。いくつかあるけど、一ヵ所位行けそうだな。丁度、夜しか行けないところもあるみたいだし」
修達は、夕飯の麻婆豆腐を食べ、食器を片付けると夜の街へと向かった。
修達が訪れたのは、繁華街の雑居ビルで営業しているバーであった。
修も千祝も高校生であるため、バーなど行った経験は無い。もちろん飲酒の経験もない。
不慣れな場所ではあるが、情報を得るためにはやむを得ないことである。
入り口のドアを開くと、取り付けられていたベルが小さな音を立てた。
音に反応して、店の中に入って来た酒を提供する場には不似合いな二人を、店の中にいた店員や客が顔を向ける。
店の中には、いかにもバーテンダーといった風体の中年男性が一人、カウンター席にこれから夏だというのにコートを着込んだ男が一人、テーブル席には三組ほどの男女がいた。いずれも修達を値踏みするような視線を向けている。
その視線には当初若い二人を侮るような色があったが、二人の体格と鍛え抜かれた雰囲気を感じたのか、すぐに単なる好奇の視線に変わった。
店内は禁煙ではないようで、紫煙が漂っていた。落ち着いた内装であり、それなりの店であることが伺えた。
修達はカウンター席に腰を掛け、バーテンダーに注文をする。
「ミルクを一つお願いします」
「あ、私も同じので」
注文を終えた修と千祝は、店内、特に客達の方を見まわした。
「お客さん。どうなさいましたか」
バーテンダーがミルクをグラスに注ぎながら尋ねた。
「いえ、ほら。こういう場合は、周りの客が、「おい、あいつ、みるくだってよ! ガキはお家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな!」とか挑発して、それを殴り倒すイベントが発生するものかと……」
「そうそう。映画で見たよね」
「あ~え~と、この店は、確かに普通ではないお客様が集まりますが、そういう映画とかで出て来る場末の店とは違いますので、そういう事にはなりませんよ」
バーテンダーは変な返答をしてしまった。本来なら、この店に裏の世界の人間が集まるのは秘密である。これも、いきなり物騒な事を、まだ学生で真面目そうな雰囲気の二人に言われたためであろう。
なお、二人はバーテンダーの問いに答える時に、うっかり闘気を発してしまっている。一般人には感じ取れないものだが、店内の人間は皆、敏感に感じ取れたようだ。そして、二人はいつでも不測の事態に対応できるように、スツールには半分だけ尻を乗せており、臨戦態勢であった。
そして、テーブル席の客達は、この二人が場合によっては自分達を殴り倒すつもりであったと知って、恐怖心を抱いた。なにせ、最初に侮った視線を向けたのは事実なのだ。
また、今店に来ている客達は一般人ではないが、修達とは違い戦闘のプロという訳でない。もし仮に、修達と戦ったなら一分とかからずに皆殺しにされてしまうだろう。
「あと、マ……店員さん。あちらの方に、コンクラーベを」
気取ってマスターと言おうとした修であるが、やはり何か恥ずかしくなって言い直した。
コンクラーベはオレンジジュース、牛乳、木苺のシロップを合わせたノンアルコールカクテルであり、これを奢ることが情報屋へのサインである。そして、鞍馬に教わった情報屋は、こんな季節でも、しかも室内であっても、コートをしっかりと着込んでいる人であるとしていた。つまりは、カウンター席にいた男である。
「へえ、俺の事を知っているとはね。誰の紹介だい?」
コートの男は、興味深げに訪ねてきた。彼は修が店内の人間を恐怖に陥れている最中にも悠然とグラスをあおっていた。
「鞍馬さんですよ。キャソックさん。俺は……」
「待て、自己紹介の必要はない。当てて見せよう。あんたは、抜刀隊の鬼越鷹正の縁者、そっちの嬢ちゃんは、太刀花家の人間だろ?」
情報屋のキャソックに出自を言い当てられ、修達は驚いた。身分の分かるような物は表立って身につけていないはずなのだ。
「ふふっ。驚いたかい? あの二人は昔からこの世界じゃ有名だったし、あんたらはその面影があるからね。一目瞭然だよ。ああ、でもそうかい。鞍馬さんは捕まったって聞いたけど、その分だと何とかなりそうだね」
「まあそんなところです。それでは、話に入りますが、情報を教えてください。報酬ならこれで足りると思います」
修は、懐から札束の入った封筒を取り出しながら言った。外つ者を退治したことにより、かなりの金銭的な余裕がある。
「待った。今回はサービスでこの一杯だけで構わんよ」
キャソックは、バーテンダーから修が注文したカクテルを受け取りながらそう言った。
「良いんですか?」
「ああ、構わんよ。なんせ五年前の戦い以来、武芸者はとんと減っちまってね。そっちの方面からの客は太刀花則武さんを含めて数える程だからね。これからご贔屓にってところさ」
「それに、俺達のこと自体も情報となるって訳ですね?」
「勘がいいな。鬼越さんもそんなところがあったな。ああ、そうだ。ほとんど死に絶えて、外つ者との戦いは一旦壊滅して復活した警察と、新参者の防衛隊が担うしかなかったところに、期待の新人が現れたんだ。これは色んな業界に高く売れるぜ」
悪びれずもせずに、キャソックはそう言った。この発言だけでは、金のためなら何でもする人間の様にも感じ取れるが、信用のおける人間であるということを鞍馬から教わっていた修は、あまり気にせず、本題に入ることにした。
「まあいいです。本題に入りましょう。突拍子もない話なので、答えられる範囲で、ヒントだけでも分かれば教えてください」
「ああ、いいよ。言ってみな」
キャソックに促された修は、夢の中での外つ者との戦いについて話した。
「う~ん。これだけだとな~。いや、あんたの血筋から、その夢には信憑性があるとは思うんだが……」
修の話を聞いたキャソックは考え込んだ。夢の話だからといって馬鹿にした様子はなく、その表情は真剣である。
「そうだ。鞍馬さんからの紹介の中に、囲碁会所は無かったか?」
「え~と、無いですね」
修は鞍馬からの手紙を取り出して確認したが、囲碁会所は記されていなかった。
「じゃあいい所を紹介するよ。そこなら、こういう手掛かりの少ない案件にはもってこいだ。そこで、ヒントを掴んだらまた来ると良い」
キャソックから手掛かりを掴めるという場所について紹介を受けた修達は、礼を言ってミルクを飲み干すと、店を後にした。
まだ、大人の部に参加するべき門下生達は、怪我から復帰できていないため、少年の部の稽古だけで終了し、夕飯の準備も終了しているため、今の時間はフリーなのだ。
議題は、いかに外つ者の情報を集めるかである。
過去、修の夢に登場した外つ者関連の事象は、その後ヤトノカミやダイダラボッチの復活といったように、実現している。なので、また夢に外つ者と思しきものが出てきたのなら、準備を整えておきたいのだ。
「大久保さんや中条さんの返事はどうだったの?」
「んー。あんまりかんばしくないな」
「やっぱり、オピポーじゃ手掛かりにならないわね」
今回夢に出てきたのは、外つ者と戦う縄文人の勇者オピポーの姿であり、外つ者の姿形は目にしていない。
これまでの事例では、夢に見た巨大な剣から、約三メートルの直刀である布津御霊剣を探り出し、これの祀られている香島神宮に調査に行くことにより、その地に封じられていたヤトノカミと戦った。また、夢に出てきた巨大な外つ者という手掛かりから、かつてこの国の武芸者達がダイダラボッチという巨人と戦ったという記録から、その決戦の地である富士山麓に赴き、復活したての巨人を再度討滅した。
しかし、今回は外つ者に関する直接の情報は無いし、縄文人の名前を手掛かりにすることは出来ない。これは、警察の大久保や防衛隊の中条にとっても同じだったようで、情報を得ることは出来なかった。
「じゃあどうするの? 事前に調査するのは諦めて、復活したところを倒すってこともありだと思うけど? これまでだって、復活自体は防ぐことは出来なかったし」
「いや、確かにこれまでヤトノカミやダイダラボッチの復活を防ぐことは出来なかったかもしれない。だけど、調査のために傍にいたからこそすぐに倒すことが出来たんだ。対応が遅れれば、周囲に犠牲が出たりしたかもしれない。だから、出来る限りの事はしておきたい。これを見てくれ」
そういいながら修は、一通の便箋を封筒から取り出し、千祝に広げて見せた。
「これは?」
「鞍馬さんから貰った手紙だよ。今回の件を相談したら、情報屋を紹介してくれた」
鞍馬とは以前外つ者を復活させたことにより、それを妨害する修達と戦うことになった武芸者である。
悪行を行った彼ではあるが、一応事情があり、また、武の世界の先達ということもあって、修達は悪印象を抱いてはいない。
「そういえば、あの人の組織は、銃器で武装していたりと、裏の世界との繋がりがあるみたいね。その情報屋っていうのもその関連かしら」
「ああ、そういうことだ。ただ、俺達はまだ学生だから、今回紹介してくれる中には暴力団とかのそっち系の情報屋は入ってないってさ」
「ふ~ん。そういえば、鞍馬さんは裁判とかどうなってるのかしら?」
鞍馬は、五年前に官房長官等の政府要人を殺害したり、香島神宮の神主に重傷を負わせ将級の外つ者であるヤトノカミを復活させたりと、多くの罪を犯している。
「それが、裁判にならないかもしれないらしいんだ。外つ者に関しては法律が無いし、殺人や傷害に関しても外つ者関連の事件だから、裁判で色々証言されるとまずいんだってさ。本人は大人しく罪に服するもりらしいんだけど」
「は~、何か闇が深いわね」
「だから報酬も高いんだろうさ」
修は、外つ者関連の事件を解決に導いたとして、高校生が持つには不相応な金額の報酬を貰っている。過去、外つ者と対峙してきた武芸者達は、この様に高額の報酬を貰うのが慣例になっていたらしいが、口封じという意味もあったのだろう。
「じゃあ、夕飯が済んだら、紹介されている情報屋に行ってみましょう」
「そうだな。いくつかあるけど、一ヵ所位行けそうだな。丁度、夜しか行けないところもあるみたいだし」
修達は、夕飯の麻婆豆腐を食べ、食器を片付けると夜の街へと向かった。
修達が訪れたのは、繁華街の雑居ビルで営業しているバーであった。
修も千祝も高校生であるため、バーなど行った経験は無い。もちろん飲酒の経験もない。
不慣れな場所ではあるが、情報を得るためにはやむを得ないことである。
入り口のドアを開くと、取り付けられていたベルが小さな音を立てた。
音に反応して、店の中に入って来た酒を提供する場には不似合いな二人を、店の中にいた店員や客が顔を向ける。
店の中には、いかにもバーテンダーといった風体の中年男性が一人、カウンター席にこれから夏だというのにコートを着込んだ男が一人、テーブル席には三組ほどの男女がいた。いずれも修達を値踏みするような視線を向けている。
その視線には当初若い二人を侮るような色があったが、二人の体格と鍛え抜かれた雰囲気を感じたのか、すぐに単なる好奇の視線に変わった。
店内は禁煙ではないようで、紫煙が漂っていた。落ち着いた内装であり、それなりの店であることが伺えた。
修達はカウンター席に腰を掛け、バーテンダーに注文をする。
「ミルクを一つお願いします」
「あ、私も同じので」
注文を終えた修と千祝は、店内、特に客達の方を見まわした。
「お客さん。どうなさいましたか」
バーテンダーがミルクをグラスに注ぎながら尋ねた。
「いえ、ほら。こういう場合は、周りの客が、「おい、あいつ、みるくだってよ! ガキはお家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな!」とか挑発して、それを殴り倒すイベントが発生するものかと……」
「そうそう。映画で見たよね」
「あ~え~と、この店は、確かに普通ではないお客様が集まりますが、そういう映画とかで出て来る場末の店とは違いますので、そういう事にはなりませんよ」
バーテンダーは変な返答をしてしまった。本来なら、この店に裏の世界の人間が集まるのは秘密である。これも、いきなり物騒な事を、まだ学生で真面目そうな雰囲気の二人に言われたためであろう。
なお、二人はバーテンダーの問いに答える時に、うっかり闘気を発してしまっている。一般人には感じ取れないものだが、店内の人間は皆、敏感に感じ取れたようだ。そして、二人はいつでも不測の事態に対応できるように、スツールには半分だけ尻を乗せており、臨戦態勢であった。
そして、テーブル席の客達は、この二人が場合によっては自分達を殴り倒すつもりであったと知って、恐怖心を抱いた。なにせ、最初に侮った視線を向けたのは事実なのだ。
また、今店に来ている客達は一般人ではないが、修達とは違い戦闘のプロという訳でない。もし仮に、修達と戦ったなら一分とかからずに皆殺しにされてしまうだろう。
「あと、マ……店員さん。あちらの方に、コンクラーベを」
気取ってマスターと言おうとした修であるが、やはり何か恥ずかしくなって言い直した。
コンクラーベはオレンジジュース、牛乳、木苺のシロップを合わせたノンアルコールカクテルであり、これを奢ることが情報屋へのサインである。そして、鞍馬に教わった情報屋は、こんな季節でも、しかも室内であっても、コートをしっかりと着込んでいる人であるとしていた。つまりは、カウンター席にいた男である。
「へえ、俺の事を知っているとはね。誰の紹介だい?」
コートの男は、興味深げに訪ねてきた。彼は修が店内の人間を恐怖に陥れている最中にも悠然とグラスをあおっていた。
「鞍馬さんですよ。キャソックさん。俺は……」
「待て、自己紹介の必要はない。当てて見せよう。あんたは、抜刀隊の鬼越鷹正の縁者、そっちの嬢ちゃんは、太刀花家の人間だろ?」
情報屋のキャソックに出自を言い当てられ、修達は驚いた。身分の分かるような物は表立って身につけていないはずなのだ。
「ふふっ。驚いたかい? あの二人は昔からこの世界じゃ有名だったし、あんたらはその面影があるからね。一目瞭然だよ。ああ、でもそうかい。鞍馬さんは捕まったって聞いたけど、その分だと何とかなりそうだね」
「まあそんなところです。それでは、話に入りますが、情報を教えてください。報酬ならこれで足りると思います」
修は、懐から札束の入った封筒を取り出しながら言った。外つ者を退治したことにより、かなりの金銭的な余裕がある。
「待った。今回はサービスでこの一杯だけで構わんよ」
キャソックは、バーテンダーから修が注文したカクテルを受け取りながらそう言った。
「良いんですか?」
「ああ、構わんよ。なんせ五年前の戦い以来、武芸者はとんと減っちまってね。そっちの方面からの客は太刀花則武さんを含めて数える程だからね。これからご贔屓にってところさ」
「それに、俺達のこと自体も情報となるって訳ですね?」
「勘がいいな。鬼越さんもそんなところがあったな。ああ、そうだ。ほとんど死に絶えて、外つ者との戦いは一旦壊滅して復活した警察と、新参者の防衛隊が担うしかなかったところに、期待の新人が現れたんだ。これは色んな業界に高く売れるぜ」
悪びれずもせずに、キャソックはそう言った。この発言だけでは、金のためなら何でもする人間の様にも感じ取れるが、信用のおける人間であるということを鞍馬から教わっていた修は、あまり気にせず、本題に入ることにした。
「まあいいです。本題に入りましょう。突拍子もない話なので、答えられる範囲で、ヒントだけでも分かれば教えてください」
「ああ、いいよ。言ってみな」
キャソックに促された修は、夢の中での外つ者との戦いについて話した。
「う~ん。これだけだとな~。いや、あんたの血筋から、その夢には信憑性があるとは思うんだが……」
修の話を聞いたキャソックは考え込んだ。夢の話だからといって馬鹿にした様子はなく、その表情は真剣である。
「そうだ。鞍馬さんからの紹介の中に、囲碁会所は無かったか?」
「え~と、無いですね」
修は鞍馬からの手紙を取り出して確認したが、囲碁会所は記されていなかった。
「じゃあいい所を紹介するよ。そこなら、こういう手掛かりの少ない案件にはもってこいだ。そこで、ヒントを掴んだらまた来ると良い」
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