専業ネカマの生態

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8話 二度目のログイン

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 ふぅ、遂にこの時が来てしまったようだ。そう、俺が再びあの世界へと舞い戻る時が。

 今頃俺のキャラを削除した奴は、俺の復讐に恐れ慄き毎日夜も眠れぬ日々を過ごしていることだろうよ。

 だが、それも今日で終わりだ。何故ならこの俺様が直々に手を下してやるからだ。待ってろよ、名もなき悪人よ、そしてヘヴィちゃん!

 ❇︎

 目を開けるとそこには俺が、いなかった。

「あれ?」

 前回は確かこの時点で目の前にそっくりそのまま俺がいたはずなんだが。俺の記憶違いか? いや、そんなはずは……まあいい、取り敢えず進めよう。直ぐに出てくる筈だ。

「キャラクリエイトを行なって下さい」

「んっ!?」

 きゃ、キャラクリエイトだと? 前回そんな設定は確実に無かったぞ? これは断言できる。それに、目の前には見知らぬ男性が無表情で突っ立っている。

 その男には特にこれといった特徴がなく、これから好きなだけいじって下さいと言わんばかりだ。そう、今まで俺が散々行なってきたゲームのように。

「え、コレって外見を好きに選べるってことか?」

 何か反応があると思い声を出して気持ち大きな声を出してみたが、返答は何もない。まあ、期待していなかったが。

 こうなったらとことん俺の好きなようにカスタマイズしてやろう。そう意気込んだ時だった。俺はある項目を目にしてしまった。

「せ、性別!?」

 ちょちょちょ、ちょっと待て。これはどういうことだ。性別を変更できるなんて聞いていないぞ? それに俺が調べた中にはそんな記事はおろか投稿は一つも無かった筈だ。

 コレは……バグか?

 そもそもキャラクリエイトの時点でおかしいのだ。このゲームは生体認証が無ければ行えず、基本的に性別どころか顔すらいじれない。

 いじれるところといえば身長、体重、髪型くらいなものだったはずだが、身長は俺が身を持って体験したようにそれ相応のペナルティがある。恐らく体重も同じだろう。

 何が言いたいかと言うと、今のこの俺の状況は明らかに異常だということだ。

 もしかしたらキャラ削除した人の救済措置として用意されている仕様かのかもしれないが、それにしても性別を変えるのはやりすぎじゃないか?

 そりゃ俺がやっていたゲームではネカマと呼ばれる人は一定数いたし、RPGゲームで男が女を選択してプレイすることは良くあることだった。

 しかし、これはそれとは訳が違う。俺が今から向かう世界はもう一つの現実世界なんだぞ? そんな所で自分を偽るようなことがあっては……

 ん、待てよ。ヘヴィちゃんってアバターだよな? 

 案件を受けていたから特別措置が取られているんだろうが、それでもこのゲームにはアバターの人間が存在はするってことだ。

 それにそれがヘヴィちゃんだけとは考えづらい。運営の人とか他にもインフルエンサーなんかがアバターを使っていてもなんら不思議なことじゃない。

 なら、俺がアバターでもいいよな?

 これで運営にBANされたら普通に訴えよう。こっちは仕様だって思ってやったのに何の補償もなくキャラ削除はないだろう?

 それにこっちに訴える時間だけはたっぷりあるぞ? ニート万歳だり

 という訳で、ガチるとしますか! オタクヒキニートのキャラクリを舐めるでないぞ? どれだけの時間を費やしてでも必ず絶世の美女、いや傾国の美女を完成させてやるっ!

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