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13話 想いの強さ
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「平民の命を奪うなど、この剣が可哀想だろう? それに、平民にはあの世よりもこの世で地に這いつくばっている方がお似合いだ」
僕は今、地面に倒されていた。魔法でも勝てず、その上、圧倒的な剣技に打ちのめされなす術もなかった。
悔しかった。殺す価値もないと言われ、こうやって辱めを受けている。
だけど一つ気づいたことがある。こうやって死にそうになったからこそ分かったことがある。僕は今まで死にたかったがっていたのかもしれない、ということだ。
確かに冒険者に憧れ最強を目指してはいたものの、天星竜様がいなければそんな夢もただの妄想に過ぎなかった。それを分かった上で冒険者になって一攫千金を取るか死ぬか、そういう選択をしたかったのだろう。そういうふうにすら思えるのだ。
ならば、どうせ死ぬなら、もう少し高みを目指してもいいのではないだろうか、一攫千金のチャンスに手を伸ばしてみてもいいのではないだろうか。
それに、今の僕は今までとは明らかに違う。なんてったって、天星竜様がついているんだ。
俺なら、やれる、絶対に最強になるんだ、そう決めたじゃないか!
地面に倒れている状態から、思いっきり拳を地面に打ち付け、そのまま体重をかけてなんとか起き上がった。僕はまだ、死んでいない。
「そ、そんな御託を並べても、ど、どうせ人殺しになるのが怖かっただけだろう? 僕はまだ負けていないっ!」
その時、一瞬、世界が氷ついたかと思った。それほどまでに空気が冷え、雰囲気が一変した。
気づけば周りに人だかりができていて、注目の的になっていたようだ。
「貴様、今、なんと言った? この私が腰抜けだと言いたいのか? ふむ、余程死にたいらしいな。それならば一思いに殺してやろう。貴族には不敬を働いたものを処刑する権利が与えられている。貴様の命がここで終わりだ。その愚かな頭を恨み、今まで生きることができていたことに感謝するのだな」
相手が剣を振りかぶった。あぁ、これを食らえば死ぬのだろう。こんな僕でもそう直観できるほどの、迫力だった。
……だけど、僕も負けられない。どうか天星竜様最後に一度だけ、僕に力をお貸しください。この不条理な世界に、ふざけた貴族に、そして無能な僕に、一矢報いる為の力をください。
返事はなかった。でもやるしかない。そもそも他人に力任せなのもいけない。そんな奴のことを誰が応援してくれるだろうか、それに天星竜様はこんな僕にもすごく良くしてくれた、ならば僕が本気を出す時だ。
そして、いよいよ僕に向かって相手が突進してきた。
「し、死ねぇえええええ!!」
この迫力、殺気は先ほどまでとは比べ物にならないほどだ。だけど気持ちでは負けられない。
「ふぁ、ファイヤーボーールー!!」
「ふんっ、そんな平民の技、何度撃った所で変わらぬ。バカの一つ覚えとはこのことであったかウォーターウォール!」
先ほどと同じように、水の壁を作られた。だけど、僕の火の玉はさっきのものとは違う。どんな逆境にも打ち克つ、僕の希望の光なんだ!
頼む、頼むっ、どうか届いてくれっ!
「な、何っ!?」
そして僕の炎は水の壁を消し去った。
「え、な、なんで?」
確かにありったけの魔力を込めて強くなるように念じた、念じたんだけど、正直、水の壁を打ち破れるとは思っていなかった。
『ふんっ、お主の声は聞こえておると言っておるじゃろう、五月蝿くてゆっくり寝ることもできぬではないか』
『て、天星竜様っ……!!』
僕は今、地面に倒されていた。魔法でも勝てず、その上、圧倒的な剣技に打ちのめされなす術もなかった。
悔しかった。殺す価値もないと言われ、こうやって辱めを受けている。
だけど一つ気づいたことがある。こうやって死にそうになったからこそ分かったことがある。僕は今まで死にたかったがっていたのかもしれない、ということだ。
確かに冒険者に憧れ最強を目指してはいたものの、天星竜様がいなければそんな夢もただの妄想に過ぎなかった。それを分かった上で冒険者になって一攫千金を取るか死ぬか、そういう選択をしたかったのだろう。そういうふうにすら思えるのだ。
ならば、どうせ死ぬなら、もう少し高みを目指してもいいのではないだろうか、一攫千金のチャンスに手を伸ばしてみてもいいのではないだろうか。
それに、今の僕は今までとは明らかに違う。なんてったって、天星竜様がついているんだ。
俺なら、やれる、絶対に最強になるんだ、そう決めたじゃないか!
地面に倒れている状態から、思いっきり拳を地面に打ち付け、そのまま体重をかけてなんとか起き上がった。僕はまだ、死んでいない。
「そ、そんな御託を並べても、ど、どうせ人殺しになるのが怖かっただけだろう? 僕はまだ負けていないっ!」
その時、一瞬、世界が氷ついたかと思った。それほどまでに空気が冷え、雰囲気が一変した。
気づけば周りに人だかりができていて、注目の的になっていたようだ。
「貴様、今、なんと言った? この私が腰抜けだと言いたいのか? ふむ、余程死にたいらしいな。それならば一思いに殺してやろう。貴族には不敬を働いたものを処刑する権利が与えられている。貴様の命がここで終わりだ。その愚かな頭を恨み、今まで生きることができていたことに感謝するのだな」
相手が剣を振りかぶった。あぁ、これを食らえば死ぬのだろう。こんな僕でもそう直観できるほどの、迫力だった。
……だけど、僕も負けられない。どうか天星竜様最後に一度だけ、僕に力をお貸しください。この不条理な世界に、ふざけた貴族に、そして無能な僕に、一矢報いる為の力をください。
返事はなかった。でもやるしかない。そもそも他人に力任せなのもいけない。そんな奴のことを誰が応援してくれるだろうか、それに天星竜様はこんな僕にもすごく良くしてくれた、ならば僕が本気を出す時だ。
そして、いよいよ僕に向かって相手が突進してきた。
「し、死ねぇえええええ!!」
この迫力、殺気は先ほどまでとは比べ物にならないほどだ。だけど気持ちでは負けられない。
「ふぁ、ファイヤーボーールー!!」
「ふんっ、そんな平民の技、何度撃った所で変わらぬ。バカの一つ覚えとはこのことであったかウォーターウォール!」
先ほどと同じように、水の壁を作られた。だけど、僕の火の玉はさっきのものとは違う。どんな逆境にも打ち克つ、僕の希望の光なんだ!
頼む、頼むっ、どうか届いてくれっ!
「な、何っ!?」
そして僕の炎は水の壁を消し去った。
「え、な、なんで?」
確かにありったけの魔力を込めて強くなるように念じた、念じたんだけど、正直、水の壁を打ち破れるとは思っていなかった。
『ふんっ、お主の声は聞こえておると言っておるじゃろう、五月蝿くてゆっくり寝ることもできぬではないか』
『て、天星竜様っ……!!』
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