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10話 ケイという男
しおりを挟む僕は世界を気ままに旅している冒険者だ。僕はある目的の為に旅を続けているのだが、今日は面白い子を見つけてしまった。
その子はどうみても冒険者という格好ではないのに、冒険者ギルドから出てきたのだ。そして、先輩の冒険者に絡まれたかと思うと、まさかの撃退をしてしまった。
そして、その光景は異常だったのだ。
そもそも、一般の冒険者が格上の冒険者に勝つこと自体、異様であるのに、どうみても初心者にしか見えない一人の少年が、実力的には格上の冒険者を魔法で一撃の元に沈めるという、なんとも奇妙な光景だった。
しかも、少年が唱えたのはファイヤーボール、つまり、火属性魔法の中でも最下級の魔法だったのだ。その火の玉は常人が打つものよりも圧倒的に大きく、ましてや初心者が撃てるものでは決してなかった。
僕は、ギルマスが回収していた彼を無理矢理奪って、自分のクランに勧誘した。些か、無理が過ぎたかなとも思ったけど、結果彼が入ってくれたから良いんだ。
他にも色々話した結果、彼には強い意志があることを強く感じさせられた。冒険者として、それがあるかないかで大きく大成するかどうかが変わってくる。彼はやはり素質はあるようだ。うん、僕の目に曇りは無かったね。
そして、人を疑うことも信じることもできる良い子だった。
今までは冒険者ではなかったらしいんだけど、案外、冒険者が天職になりうるだろうね。
でも、実際の所、彼がまだまだひよっこであるという事実は変わらない。
才能も素質もあるけれど、一切磨かれていない、って感じだね。ダイヤの原石、という言葉が嫌と言うほどマッチしている。
だから僕はその原石を磨く為に、学園に入れることにした。僕は誰でもそこの試験を受けさせることができる推薦権を持っているからね。使うのは何年ぶりだろうか。
でも、それでも試験を受ける権利までだ。その学園は徹底的に実力主義で、権力によるねじ込み等は一切無い。まあ、それだけ質が高いってことだ。
その学園は、魔境と呼ばれている。
その学園を乗り越えることができれば圧倒的な力を手に入れることができる反面、脱落者があまりにも多いのだ。そんなわけでいつしか魔境って呼ばれるようになっていた。いつからだっけな、呼ばれ始めたの。まあ、いいか。
最後に、極め付けとして、僕の耳にある一つの単語が聞こえてきたのだ。これは聞き間違えかもしれないが、僕が彼を誘う決め手には十分すぎるものだった。
それは「転生竜様!?」という声だった。
だが、十分に可能性はあるのだ。序盤はやられていた彼が、突如、覚醒し相手を倒すに至った。もし、そこに転生竜が関わっているのならば、僕が彼に近づかない理由がない。
僕の目的は、転生竜を倒すことなんだから。
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