コドクノオタク

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2話 

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「ん? これはどういうことだ? 僕にはミルク&ティーの2人が待ってるから早くフラゲをしなきゃいけないのに! ここはどこだ?さっさと帰らないと!」

 オタクは基本独り言が多い。まあ音量はそこまで無いので迷惑かと言われれば人によるが…

 そう言ってオタクは出口を探しに向かうが、人混みから外れて、さらに外側の外縁部に向かおうとするとそれ以上体が動かない。試しに戻ってみると、それはすんなりいく。

「な、なんだこれは! これでは家に帰れないじゃないか! ふ、2人が待っているんだぞ! 早く帰らせろ!」

 何度も試すが一向に動かない。オタクに触発された人々が帰りたいと口々に言って脱出を試みるがどれも皆一向に外側には動けない。

 そんななかどこからともなく、

「おーーい! そんなとこで固まってても無駄なんじゃねーの? あの声聞いてたから?無理って言ってただろ! そんなのもわかんねーのかよ! 俺はさっさと全員倒して、一抜けさせていただくぜ! おい! そこのおっちゃん勝負だ!」

 声の主、恐らく男性のそれは固まってる人達にむけて発せられたのだが最後のは近くにいた気弱そうなおじさんに向けられものだった。そこからバトルが始まったようで2人の姿は見えなくなった。

 この場にいる全員が1人を除いて現実が見え始め、ぼちぼちとバトルが始まっていった。みんな、もうなす術もなく、仕方なくという感じだったが。

 そんな中、1人オタクが

「な、なんで帰れないの! 僕にはミルク&ティーの2人が待っててくれてるのに! あの2人を待たせる訳にはいかないんだよ!」

 そんなことを喚いている。実際はただCDのフラゲだけだというのに。

 しかし、オタクにも人より何倍も遅れて現実が見え始める。

「そ、そうですか、帰さないんですね? ぼ、僕怒りますよ?いいんですか?知りませんよ?」

 やっとスイッチが入ったオタクは現状把握を始める。ゲームオタクでもあるためなんだかんだ合理的な行動をとれる。(ゲームにおいてはだが)

「まずはステータス確認ですね! 僕が出来ることは…」



HP 5/5
・弱攻撃 コスト0‥相手のHPを1削る
・強攻撃 コスト1‥相手のHPを3削る
・溜める コスト0‥コストを1溜める
・守る  コスト0‥相手の攻撃を防ぐ 2回まで連続ガード可
・特殊技『看破』コスト0

『看破』‥相手の特殊技を知ることができる。常時発動型



「なるほどです。これを使って相手を倒せばいいんですね。余裕ですね」

「さっさと終わらせて、早く2人の元へいかないといけないのです…! おいっ! そこの君! 早速バトルをするのだ!」

 そうしてオタクは近くにいた、青年へと勝負をしかけた。すると2人は別空間に隔離されたかのように周りの人が見えなくなり、同様に周りの人からと見えなくなった。もっともオタクはそんなことまるで気にしていないのだが、

「この勝負の肝は、ターン制ということ、勝負を決めるにはいかにじぶん攻撃を当てて相手の攻撃を守らないといけないということ、そしていかに特殊技を悟らせないかというとですね」

 オタクは既にゲームの考察を始めている。オタクは集中力だけはすごい。ひとりブツブツと呟くだけで相手を萎縮させるほど真剣にゲームの攻略法を考えている。

「ふむ…なるほど。要はジャンケンの様なものですね。守るは攻撃に、攻撃は溜めるに、溜めるは守るにそれぞれ有効と言える。だがここでミソなのは勝つためには攻撃を与えないといけないということです。守るや溜めるだけでは永遠に勝てない…つまり必然的に攻撃の比重が大きくなると…」

 そうしていよいよバトルが始まる。

 オタクはまだ呟く。

「このバトルただ弱攻撃を5回当てれば勝てるゲームだ、と見せかけて明らかに2ターンで3ダメージ与えられる強攻撃の方が主軸になるし、それを使えるって状況だけでアドバンテージを取れるだからもちろん初手は溜める…ですよねぇ?」

 このオタク、ゲーム、特に対人戦では性格がまるで違う、相手の心を読み徹底的に倒す。いつもは気弱なら感じだか、ことゲームに関しては自信がある。

『戦闘を開始します。』
オタクvs青年
・1ターン目 オタク:弱攻撃 5/5
        青年:溜める 4/5

「うん。ですよねぇれやっぱり溜めたいですよねぇ? 溜めたら強攻撃、撃てますもんねぇ? でも、1ダメージ食らっちゃいましたねぇ。残りHP4ですよ?大丈夫ですか?僕より死に近づいてますよ~?」

 ここで初めて相手にもはっきりと聞こえるように発したその声は煽りだった。
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