屋上でポテチ

ノコギリマン

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ヤミヲカルモノ③

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  第十章 戦いの終わり


「お前だけは絶対にゆるさない!」

 むねに穴のあいたイルゼを抱きしめながら、おれはシニガミ・アキラに怒った。

「安心しろ。すぐにあの世で会わせてやる」

 シニガミ・アキラが笑って、シンノヤミノカタナをかまえた。

「お前のカタナでは、おれに勝てないぞ」
「そんなことは、どうでもいい!」

 おれはイルゼを床に置いてからヤミノカタナをかまえた。

 ちなみに、シンノヤミノカタナとは真のヤミノカタナで、おれが使っているヤミノカタナはコピー品だった。ちなみに、おれのヤミノカタナは師匠が作ったもので、ヤミの力を人間でも使えるように力を弱くした物だった。(第八章でその真実が分かります)

「お前が使っているヤミの力もヤミノカタナも、本当のダークモンスターの半分より下の力しか出せないのだ。なぜか分かるか?」
「なぜだ?」
「お前が人間だからだ」

 悔しいけど、シニガミ・アキラの言うとおりだ。

 人間のままだとシニガミ・アキラには勝てない。

「くそ、一体どうすればいいんだ?」
「ぺー、これを使って!」

 部屋の入口の方まで来ていたライザが何かを投げてきた。(ライザは第七章でイルゼに負けて人間の味方になっています。ちなみに、ライザもかわいいです)

 手で受け取って見てみると、黒い液体が入った注射器だった。

「なんだ、これは?」
「それはダークモンスタードラッグと言って、打った人がダークモンスターになるドラッグよ!」

 そんなの使って大丈夫なのか不安だったので、「使って大丈夫なの?」と、おれはライザに聞いた。

「大丈夫よ!」

 大丈夫みたいなので、おれはダークモンスタードラッグを打った。

「ウオオオオオ!」

 体の中から力がいっぱい出てきておれはダークモンスターになった。さっきの十倍くらいの力になったので、心の中でシニガミ・アキラに勝てると思った。

「フハハ、おろかな人間め。ダークモンスターに無理矢理なった人間は無事ではすまないぞ」

 ダークモンスタードラッグは大丈夫じゃなかったみたいだけど、おれは本当に怒っていたので、命をぜんぶ使ってでもシニガミ・アキラを倒そうと心の中で決めていた。

「行くぞ、クソヤロー!」

 おれは怒ったままシニガミ・アキラに走っていった。

 カキン! カキン! ヒュンヒュン! シュン! ブワ! ドゥン! フワ! バキバキバキ! ドカーン! カキン! カキン!

 おれとシニガミ・アキラは互角の戦いだった。

「もう少しでお前を殺せるぜ、シニガミ・アキラ!」
「フフフ、それはどうかな?」

 シニガミ・アキラが笑って、同時におれはガクンってなった。

「効果が切れてきたようだ。言っただろ、ドラッグは危険だって」
「確かにドラッグは危険だ」

 だけど負けるわけにはいかないので、おれは立ち上がった。

「次で最後だ、シニガミ・アキラ!」
「かかってこい、ぺー!」

 二人でにらみあって最後の戦いになった。

 ヒュン! バッ! ズバッ!

「ぐわあああああああ!」

 おれに切られたシニガミ・アキラが倒れた。

「なんで切られたんだ、おれは?」
「これが人間の力だ!」
「そうか、これが人間の力か」

 と言って、シニガミ・アキラは死んだ。

 やっと全部のダークモンスターをたおしたけど、おれは嬉しくなかった。イルゼのむねに穴が開いているからだ。たぶん死んでいる。

「大丈夫よ!」

 悲しくて泣いていたおれに、ライザが言った。

「どういうことだ?」
「私とイルゼはもともと同じダークモンスターで、色々あって二人になったのよ。だから私と合体したら、イルゼは生き返るのよ」

 本当に大丈夫なのか不安だったので「本当に大丈夫?」と聞いたら、ライザが「本当に大丈夫よ」と言ったので本当に大丈夫だと思った。

 だけど、そうしたらライザは消えてしまう。

「消えちゃうけどいいの?」
「いいのよ。私とイルゼは元に戻るだけだから」
「じゃあ、お願い」
「その前に」

 と言って、ライザが急におれにキスしてきた。

「なんで?」
「ぺーのことが好きだったの。だからキスの順番だけはイルゼに勝ちたかったのよ」

 と、ライザが泣きながら言った。

 おれも泣いた。

「じゃあね」

 と言ってライザはイルゼと合体して、イルゼの体が光った。

「ううう……」

 生き返ったイルゼが目を開けた。

「なんで私は生きているの?」

 元気になったイルゼにおれは説明した。

「ライザはいなくなっちゃったんだね。とっても悲しいわ」
「おれも悲しいよ」

 イルゼが泣いた。

 おれも泣いた。

 ライザにキスされたことはひみつにしておこうと思った。

「とっても悲しいけど、これでみんなを救えたわね」
「ああ、おれたちのおかげだ」
「これで学校に帰れるわね」
「ああ、学校に帰れる」
「よかったわ。私、学校が大好きなのよ」
「そういえば、イルゼに言っておかないといけないことがあるんだ」
「なに?」
「おれ、実はお前のことが」
「フッフッフ、まだ戦いは終わりじゃないぞ」

 部屋の入り口に立っていた謎の男が言った。

「お前は誰だ!」
「ダークモンスターの本当のボスのファイナル・ジョニーだ」
「なんだってえええええ⁉」

 おれは人生でいちばんビックリした。

「シニガミ・アキラみたいなザコを殺したくらいで調子に乗るな」

 おれは調子には乗っていなかったので、「調子には乗ってねえよ!」と言って、怒った。

「お前が怒ってもぜんぜん怖くないぞ。ダークモンスターは人間の心のやみがエサなんだ。暗いことを考えている人間がいる限り、おれたちは強くなり続けるのだ」
「人間がみんなポジティブだったら、お前らはいないってことか?」
「そういうことだ。それがおれたちのひみつだ。じゃあな。明日からもっと大変だぞ」

 と言って、ファイナル・ジョニーは笑いながら帰っていった。

「どうやらまだ終わってないみたいね」
「そうだな」
「ところでさっきは何を言おうとしていたの?」
「忘れろバカ!」

 おれは告白しようとしていたことがバレるのが怖かったので、大声で言った。

「なにそれ!」

 イルゼが怒ってほっぺたをふくらませた。

 おれはダークモンスターをぜんぶ殺してから、イルゼに本当の気持ちを言おうと心の中で思った。

 おれはまっすぐにイルゼを見つめて言った。

「おれたちの戦いはこれからだ!」

 イルゼは笑いながらうなずいて「うん!」と言った。




                                                 END
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