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おれの自習の先生
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昔からケンカばっかりしていたから、おれはみんなからヤンキーだって思われてんだけど、つるんでたヤツもそんなのばっかだったし、「強いヤツが偉い世界」で生きているのが気持ちよかったから、べつにそれでいいと思ってた。
でも中二になってすぐの頃、よその中学のヤツらとモメてケンカになって補導になって、警察署に来た母親と、それに生徒指導の小宮先生に泣かれたときに、よく分からんけど心がガーンってなった。
アタマが悪いから、そのときの気持ちをどう言えばいいのか分からんけど、とにかくなんかに気がついたんだと思う。
だから、マジメになろうって決めた。
で、「マジメになる」ってどういうことだろ? ってなって、まあとりあえず「勉強をがんばる」ってことなんじゃないかってなって、勉強をがんばることにした。
で、どうせなら、先生を目指してみようかなってなった。
なんでそんなこと思ったのか自分でもよく分からんけど、コミセンが泣いたのを覚えてたからなんだろうなって思った。これもどうやって言葉にしたらいいのか分からんけど、簡単に言ったら、たぶん感動したんだと思う。
で、夏休みに入って、親に頭を下げて塾へ行くことにした。
とりあえず受けることにした二週間の夏期講習は、クラスに同じ学校のヤツがふたりいて、どっちも今まであまりカラんだことなかったけど、なんだかんだ良いヤツらだったから、二週間はあっという間に過ぎた。
で、そのふたりは夏期講習だけだったけど、おれはもっとがんばろうって思って、また親に頭を下げて、塾を続けることになった。
正直、小三の頃に割り算でつまずいてから勉強をあきらめたせいで授業はぜんぜん意味が分からなかったけど、ちょっとずつ意味が分かるようになっていくのがなんか面白くて、気がついたら、けっこう勉強が好きになっていた。
古典も連立方程式も、まだぜんぜん分からんけど。
◆◆◆
夏休みの最後の日。
二学期から、マジメに生きてるおれを見た他のヤツらがなんかヘンな空気になったりしねえかなとか、どうでもいいけどけっこう大事なこと考えて頭がモヤモヤしてたら寝れなくなって、朝の七時に目が覚めてしまった。
で、しょうがないから起きて、朝飯を食ってから家を出た。
前までなら寝てた時間の通学路は、まだあんまり人がいなくて、ちょっと涼しくもなってきていたから、早起きも悪くねえなとか思ってたら、学校に着いた。
で、廊下を歩きながら、朝練をする野球部を「よくやるよな」って見ているうちに教室に着いて、引き戸を開けたら、おれのひとつ前の席で、学級委員の横川磨智が本を読んでた。
「あ」
思わず声を出しちゃったおれをビックリしながら一瞬だけ見て、横川は慌ててまた小説を読みはじめた。
さすがに前の席のヤツを無視するのもなんかなあって思ったから、横川の席を通るときに「おはよう」って言ってから席についた。横川はちょっとビクッてしただけでなんも言わなかったけど、まあ、しょうがない。
で、おれはカバンから数学の参考書を出して、さっそく自習をはじめた……
……ぜんぜん分からん。
で、頭をかかえてウンウン唸ってたら、急に振り返った横川が、
「お、おはようございます」
って、すげえヘンなタイミングで言ってきた。
「なんでいま?」
って、思わず聞いたら、
「なんかさっき、無視したみたいになっちゃったので……」
って、横川はオドオドしながら黒縁眼鏡を上げて言った。
おれは、こいつマジメだなって思った。
「な、なにしてるんですか?」
横川がおれの机に目を落として言う。
「見りゃ分かるだろ、自習だよ」
「自習? 越野くんが?」
「悪いかよ?」
「ご、ごめんなさい! 悪くないです!」
あわてて前を向く横川。
言い方がちょっと強かったなって思ってから、そういえば横川ってアタマよかったなって思い出した。
「なあ、横川」
「はい!」
もうすっかりビビってる横川が、また振り返った。
「そんなビビんなよ」
「はい!」
「……ここさ、教えてくんない?」
「え……?」
「ここ」
言って、おれは参考書の問題をシャーペンで指した。
「ぜんぜん分かんねえんだよ」
「あー、はい。ここは——」
——言って、横川がその問題をスラスラと解いて、それからおれにも分かるように教えてくれた。
「お前、やっぱアタマいいんだな」
「いやー、そんなそんな」
顔を真っ赤にして、頭を掻きながら横川が言う。
「横川さ、朝いつもはえーの?」
「あ、はい」
「じゃあ、おれの自習の先生やってくれねえか?」
「先生、ですか?」
「うん。分からないときだけでいいからさ」
「あ、はい。自信はないけど分かりました」
なんか無理矢理オッケーもらったような気もするけど、ありがてえなって思った。
で、次の日から早めに行ったら、もう横川は席で小説を読んでいて、あいさつをしたらあいさつをしてくれて、それから毎日おれが分からないところを嫌がらずに教えてくれるようになった。
で、横川はやっぱりマジメなヤツで、朝早くに教室へ来たら、まず窓を開けて換気して、たまにうしろにある花瓶の水の入れ替えもやったりしてるみたいだった。馬鹿正直に学級委員の仕事をしててそれだけでも大変なのにおれの自習の先生までやってくれるなんて、なんて良いヤツだって思って、気がついたらおれは、横川のことを尊敬するようになっていた。
◆◆◆
で、今日もまたおれは横川に勉強を教えてもらってる。
「——というわけで、答えは x=5 y=8 になります」
「あー、なるほど。やっぱ、横川って教え方うまいな」
「いやー、そんなそんな」
「マジで先生になれるんじゃねえか?」
「ほんとの先生かあ。考えたこともなかったです」
腕組みしたまま天井を見上げて、まんざらでもなさそうに横川が言う。
「なんか、他になりたいもんでもあるのか?」
「うーん、なりたいっていうか、まだただの憧れでしかないんですけど、わたし、小説を書いたりしてます。小説には力があるって、わたし思ってるんです」
「力?」
「はい。辛いときや悲しいときには、いつも小説に救われてきました。小説を読んでたら、悩んでるのも苦しんでるのも、それからがんばってるのもわたしだけじゃないって、みんながんばってるんだって思えるんです。だからわたしもいつか、悩んだり苦しんだりしてる誰かのそばに寄り添って、優しく『がんばれ』って言ってあげられる、そんな小説を書きたいんです」
急にいっぱいしゃべりだした横川に圧倒されながら、
「へ、へえ、すげえな。ってことは、小説家になりたいのか?」
って聞いたら、横川は急にかなしそうな顔になって、
「それは、たぶん無理です」
って、言った。
「は?」
「……小説家は、ちゃんと才能のある人がいっぱい努力をして、それでなんとかなれるかどうかのものだと思うんです。わたしには、そんなすごい才能なんてないですから。わたしのは、ただの趣味です」
「そんなの分かんねえだろ?」
「でも——」
「——でもとか言うなよ。アタマの良い横川がそんなこと言ったら、バカなおれは、もっとバカみたいになるじゃねえか」
ちょっとイラついて自分でもよく分からないことを言ったら、横川がキョトンとした目でおれを見つめていた。
「越野くんは、なにか目指してるんですか?」
「……先生になりたいって思ってる」
横川から目を逸らして、おれは言った。
「先生、ですか?」
「バカみたいだろ?」
「……だから、真面目になろうとしてるんですか?」
「そうだよ。横川みたいにマジメで勉強もできて、ほかにもいろいろちゃんとやってるちゃんとしたヤツが『小説家になる夢』を無理だとか言ったら、バカなおれが『先生になる夢』を叶えるのなんて、絶対ムリな夢になっちゃうだろ? だからさ、お前がほんとは小説家になりたいんだったら、無理とか言わねえで、ちゃんと小説家を目指してくれよ。おれバカだからよく分かんねえけど、横川ならたぶん、優しい本が書けると思うし」
自分でも意味の分からないことをいっぱい言って横川を見たら、またキョトンとしていた。
「……意味が分からんよな。ごめん、おれバカだからよ」
「あ……いえ、そうじゃなくて、越野くんがそんなにいっぱいしゃべるの初めて見たから」
横川に言われて、顔が熱くなった。
「でも……でも、とっても感動しました。小説家になれるかどうかは分からないけど、わたし、もっと本気で小説を書いていこうって思いました」
本当に感動してるみたいで、横川が目をキラキラさせて見つめてくる。
おれはなんかもっと恥ずかしくなったからまた目を逸らして、
「まあ……いつか読ませてくれよな。おれも漢字の勉強いっぱいして、横川の本、読めるようになるから」
って、言った。
「はい。分かりました。わたしも、越野くんにいちばん最初に読んでほしいです」
その言葉にハッとして顔を上げたら、横川はさっきよりも目をキラキラさせておれを見ていた。
これ以上、横川を見るの無理だってなって、
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるわ」
って言って、おれは教室を出た。
で、トイレに向かって歩いてたら、向こうからコミセンがやって来た。
「おう、越野。どうした? 顔が赤いが、熱でもあるのか?」
「あるわけねえだろ」
「そうだな。お前、体だけは丈夫だからな」
「うるせえよ」
「まあ、最近はちゃんと学校に来てるし、おれはうれしいよ」
「……あんたのためじゃねえけどな」
「ハハハ。まあとにかく、あまり無理するなよ。じゃあな」
嬉しそうに言って、コミセンは職員室へ歩いていった。
なんか風に当たりたくなったから、おれはトイレじゃなくて屋上へ向かった。
◆◆◆
屋上に出て、朝の風を感じながら金網越しに通学路を見下ろしたら、学校のヤツらがいっぱい歩いてるのが見えた。
横川が言ってたみたいに、みんな一緒で、なんだかんだ悩んだり苦しんだり、いろいろあるんだろうな。
おれは「みんながんばれよ」って勝手に応援して、このなんかいい感じの景色を、こんど横川にも見せてあげてえなって思った。
でも中二になってすぐの頃、よその中学のヤツらとモメてケンカになって補導になって、警察署に来た母親と、それに生徒指導の小宮先生に泣かれたときに、よく分からんけど心がガーンってなった。
アタマが悪いから、そのときの気持ちをどう言えばいいのか分からんけど、とにかくなんかに気がついたんだと思う。
だから、マジメになろうって決めた。
で、「マジメになる」ってどういうことだろ? ってなって、まあとりあえず「勉強をがんばる」ってことなんじゃないかってなって、勉強をがんばることにした。
で、どうせなら、先生を目指してみようかなってなった。
なんでそんなこと思ったのか自分でもよく分からんけど、コミセンが泣いたのを覚えてたからなんだろうなって思った。これもどうやって言葉にしたらいいのか分からんけど、簡単に言ったら、たぶん感動したんだと思う。
で、夏休みに入って、親に頭を下げて塾へ行くことにした。
とりあえず受けることにした二週間の夏期講習は、クラスに同じ学校のヤツがふたりいて、どっちも今まであまりカラんだことなかったけど、なんだかんだ良いヤツらだったから、二週間はあっという間に過ぎた。
で、そのふたりは夏期講習だけだったけど、おれはもっとがんばろうって思って、また親に頭を下げて、塾を続けることになった。
正直、小三の頃に割り算でつまずいてから勉強をあきらめたせいで授業はぜんぜん意味が分からなかったけど、ちょっとずつ意味が分かるようになっていくのがなんか面白くて、気がついたら、けっこう勉強が好きになっていた。
古典も連立方程式も、まだぜんぜん分からんけど。
◆◆◆
夏休みの最後の日。
二学期から、マジメに生きてるおれを見た他のヤツらがなんかヘンな空気になったりしねえかなとか、どうでもいいけどけっこう大事なこと考えて頭がモヤモヤしてたら寝れなくなって、朝の七時に目が覚めてしまった。
で、しょうがないから起きて、朝飯を食ってから家を出た。
前までなら寝てた時間の通学路は、まだあんまり人がいなくて、ちょっと涼しくもなってきていたから、早起きも悪くねえなとか思ってたら、学校に着いた。
で、廊下を歩きながら、朝練をする野球部を「よくやるよな」って見ているうちに教室に着いて、引き戸を開けたら、おれのひとつ前の席で、学級委員の横川磨智が本を読んでた。
「あ」
思わず声を出しちゃったおれをビックリしながら一瞬だけ見て、横川は慌ててまた小説を読みはじめた。
さすがに前の席のヤツを無視するのもなんかなあって思ったから、横川の席を通るときに「おはよう」って言ってから席についた。横川はちょっとビクッてしただけでなんも言わなかったけど、まあ、しょうがない。
で、おれはカバンから数学の参考書を出して、さっそく自習をはじめた……
……ぜんぜん分からん。
で、頭をかかえてウンウン唸ってたら、急に振り返った横川が、
「お、おはようございます」
って、すげえヘンなタイミングで言ってきた。
「なんでいま?」
って、思わず聞いたら、
「なんかさっき、無視したみたいになっちゃったので……」
って、横川はオドオドしながら黒縁眼鏡を上げて言った。
おれは、こいつマジメだなって思った。
「な、なにしてるんですか?」
横川がおれの机に目を落として言う。
「見りゃ分かるだろ、自習だよ」
「自習? 越野くんが?」
「悪いかよ?」
「ご、ごめんなさい! 悪くないです!」
あわてて前を向く横川。
言い方がちょっと強かったなって思ってから、そういえば横川ってアタマよかったなって思い出した。
「なあ、横川」
「はい!」
もうすっかりビビってる横川が、また振り返った。
「そんなビビんなよ」
「はい!」
「……ここさ、教えてくんない?」
「え……?」
「ここ」
言って、おれは参考書の問題をシャーペンで指した。
「ぜんぜん分かんねえんだよ」
「あー、はい。ここは——」
——言って、横川がその問題をスラスラと解いて、それからおれにも分かるように教えてくれた。
「お前、やっぱアタマいいんだな」
「いやー、そんなそんな」
顔を真っ赤にして、頭を掻きながら横川が言う。
「横川さ、朝いつもはえーの?」
「あ、はい」
「じゃあ、おれの自習の先生やってくれねえか?」
「先生、ですか?」
「うん。分からないときだけでいいからさ」
「あ、はい。自信はないけど分かりました」
なんか無理矢理オッケーもらったような気もするけど、ありがてえなって思った。
で、次の日から早めに行ったら、もう横川は席で小説を読んでいて、あいさつをしたらあいさつをしてくれて、それから毎日おれが分からないところを嫌がらずに教えてくれるようになった。
で、横川はやっぱりマジメなヤツで、朝早くに教室へ来たら、まず窓を開けて換気して、たまにうしろにある花瓶の水の入れ替えもやったりしてるみたいだった。馬鹿正直に学級委員の仕事をしててそれだけでも大変なのにおれの自習の先生までやってくれるなんて、なんて良いヤツだって思って、気がついたらおれは、横川のことを尊敬するようになっていた。
◆◆◆
で、今日もまたおれは横川に勉強を教えてもらってる。
「——というわけで、答えは x=5 y=8 になります」
「あー、なるほど。やっぱ、横川って教え方うまいな」
「いやー、そんなそんな」
「マジで先生になれるんじゃねえか?」
「ほんとの先生かあ。考えたこともなかったです」
腕組みしたまま天井を見上げて、まんざらでもなさそうに横川が言う。
「なんか、他になりたいもんでもあるのか?」
「うーん、なりたいっていうか、まだただの憧れでしかないんですけど、わたし、小説を書いたりしてます。小説には力があるって、わたし思ってるんです」
「力?」
「はい。辛いときや悲しいときには、いつも小説に救われてきました。小説を読んでたら、悩んでるのも苦しんでるのも、それからがんばってるのもわたしだけじゃないって、みんながんばってるんだって思えるんです。だからわたしもいつか、悩んだり苦しんだりしてる誰かのそばに寄り添って、優しく『がんばれ』って言ってあげられる、そんな小説を書きたいんです」
急にいっぱいしゃべりだした横川に圧倒されながら、
「へ、へえ、すげえな。ってことは、小説家になりたいのか?」
って聞いたら、横川は急にかなしそうな顔になって、
「それは、たぶん無理です」
って、言った。
「は?」
「……小説家は、ちゃんと才能のある人がいっぱい努力をして、それでなんとかなれるかどうかのものだと思うんです。わたしには、そんなすごい才能なんてないですから。わたしのは、ただの趣味です」
「そんなの分かんねえだろ?」
「でも——」
「——でもとか言うなよ。アタマの良い横川がそんなこと言ったら、バカなおれは、もっとバカみたいになるじゃねえか」
ちょっとイラついて自分でもよく分からないことを言ったら、横川がキョトンとした目でおれを見つめていた。
「越野くんは、なにか目指してるんですか?」
「……先生になりたいって思ってる」
横川から目を逸らして、おれは言った。
「先生、ですか?」
「バカみたいだろ?」
「……だから、真面目になろうとしてるんですか?」
「そうだよ。横川みたいにマジメで勉強もできて、ほかにもいろいろちゃんとやってるちゃんとしたヤツが『小説家になる夢』を無理だとか言ったら、バカなおれが『先生になる夢』を叶えるのなんて、絶対ムリな夢になっちゃうだろ? だからさ、お前がほんとは小説家になりたいんだったら、無理とか言わねえで、ちゃんと小説家を目指してくれよ。おれバカだからよく分かんねえけど、横川ならたぶん、優しい本が書けると思うし」
自分でも意味の分からないことをいっぱい言って横川を見たら、またキョトンとしていた。
「……意味が分からんよな。ごめん、おれバカだからよ」
「あ……いえ、そうじゃなくて、越野くんがそんなにいっぱいしゃべるの初めて見たから」
横川に言われて、顔が熱くなった。
「でも……でも、とっても感動しました。小説家になれるかどうかは分からないけど、わたし、もっと本気で小説を書いていこうって思いました」
本当に感動してるみたいで、横川が目をキラキラさせて見つめてくる。
おれはなんかもっと恥ずかしくなったからまた目を逸らして、
「まあ……いつか読ませてくれよな。おれも漢字の勉強いっぱいして、横川の本、読めるようになるから」
って、言った。
「はい。分かりました。わたしも、越野くんにいちばん最初に読んでほしいです」
その言葉にハッとして顔を上げたら、横川はさっきよりも目をキラキラさせておれを見ていた。
これ以上、横川を見るの無理だってなって、
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるわ」
って言って、おれは教室を出た。
で、トイレに向かって歩いてたら、向こうからコミセンがやって来た。
「おう、越野。どうした? 顔が赤いが、熱でもあるのか?」
「あるわけねえだろ」
「そうだな。お前、体だけは丈夫だからな」
「うるせえよ」
「まあ、最近はちゃんと学校に来てるし、おれはうれしいよ」
「……あんたのためじゃねえけどな」
「ハハハ。まあとにかく、あまり無理するなよ。じゃあな」
嬉しそうに言って、コミセンは職員室へ歩いていった。
なんか風に当たりたくなったから、おれはトイレじゃなくて屋上へ向かった。
◆◆◆
屋上に出て、朝の風を感じながら金網越しに通学路を見下ろしたら、学校のヤツらがいっぱい歩いてるのが見えた。
横川が言ってたみたいに、みんな一緒で、なんだかんだ悩んだり苦しんだり、いろいろあるんだろうな。
おれは「みんながんばれよ」って勝手に応援して、このなんかいい感じの景色を、こんど横川にも見せてあげてえなって思った。
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