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三冊目
さんじゅうに•たいが
しおりを挟む今朝ムク犬から、
『車で送ってもらうから先に行っててね。お弁当頑張りました(。≧∇≦。)☆』
と言う、可愛いメールが届いた。きっと、早起きして作ってくれたんだろうなと思うと、自然と頬が緩む。
そのムク犬の頑張りが、俺だけの為じゃないのはシャクに障るが、ムク犬からのメールで俺の気分は上々。勿論、メールには保護を掛けた。
ふんふん♪と鼻歌まじりに学校に着き、正門をくぐろうとした時、反対側の道路に立つムク犬の姿を見付けた。
よく見ると足元には、かなりのでかさの弁当が二つもある。あれはどう見ても、ムク犬一人で運ぶのは無理だろう。そう思い道路を渡り、ムク犬に声を掛ける。
「おはよう、河合」
俺の声に振り向いたムク犬が、笑顔を見せて元気に挨拶を返してくれる。
「おはよう!宍倉くん。体育祭日和のいい天気だねっ!」
「うん、今日はお互い頑張ろうね」
「うんっ!」
「メール読んだよ。うんと早起きしたんじゃない?大丈夫?」
「全然大丈夫!色んなお料理作れて楽しかったよ」
本当に嬉しそうに話すムク犬に、俺の気分がまた上がる。
「ずいぶん頑張ってくれたんだね、有り難う」
「えへへ…」
照れたようにはにかむムク犬の愛らしさに、一層満足感が増す俺だが、この弁当の量。
もしかして、3人分作ったんじゃないのか…?
いやいや例えそうでも、あの二人には食わせるどころか、匂いだって嗅がせてやるもんか!
ムク犬の弁当をGET出来るのは勝者のみ。ぜんっぶ俺が食ってやる!
「大きなお弁当だね。重いでしょ?持つの手伝うよ」
「え…と、ありがとう宍倉くん。じゃあお願いします」
少し迷う素振りを見せながらも、素直に甘えてくれたムク犬の手から弁当箱を二つとも受けとろうとすると、ムク犬が一つだけでも持とうとする。
「宍倉くん、僕ひとつ持つよ?」
「だって、俺の為に頑張って作ってくれたお弁当なんだから、このくらいさせてよ。ねっ?」
実際は、九条と熊谷の事まで考えたせいで、こんなでかさになっているのだろうと考えると面白くねえが、ここは俺だけの為の愛情弁当だと思う事にしておく。
そんな事を考えながら、ムク犬から弁当を受け取り掛けたその時、何者かの手が弁当を奪った。
一体何事だ?と、ほっそりとしたその手を辿り、見上げたその先には、綺麗な顔をした男がいた。
…なんだ?この男は…。
いきなり現れて俺とムク犬との間に、割り込んで来た見知らぬ男。思わずそいつにガンを飛ばしかけた俺の隣で、ムク犬がポツリと言う。
「…あ、いっくんの事忘れてた」
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