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三冊目
さんじゅう•たいが
しおりを挟む調理室での一件のせいで、ムク犬の弁当を賭けた勝負は結局、俺と九条それに熊谷を交えた3人でやることになった。
…ちっ、まったくもともとムク犬の手作り弁当は、俺だけの為にあるはずだってのに、なんでこんな面倒くさい事になったんだか…。
色々と面白くねぇ気持ちはあるが、クラブ対抗リレーは特別部費が掛かった大事なレースだ。
どの部も練習から気合いが入ってる。公正を保つために陸上部の参加選手は、他の部の平均タイムと大体同じになるように、選出することが義務付けられている。
ただし、アンカーだけはエースの起用が認められる。
陸上部のアンカーはエースの熊谷。そしてサッカー部のアンカーは九条、バスケ部のアンカーは俺が務める。熊谷が言ったとおり、俺達3人での勝負が実現した。
九条の野郎には勿論、陸上部のエーススプリンターである熊谷にも、負ける気は更々ねぇ。
まあ、アクシデントで前の選手が大きく遅れれば、勝負どころじゃないけどな。
だが部活対抗リレーは、各運動部が面子をかけたレースなので、毎年必ずアンカー勝負になる。だからこその盛り上がりを見せる、花形競技なんだ。
俺は部活対抗リレーに加えチーム対抗リレーもアンカーで走ることになっているから、そっちでもぶっちぎりで勝って、ムク犬に格好良いところを見せてやるぜ!
一通りバトンパスの練習を終えて一休みしていると、俺と同じくリレーメンバーに選出されている鷹取に肩を叩かれた。
「よお、気合い入ってんじゃねえか。やっぱり例のご褒美が懸かってるからか?」
あの噂はどうやら卯月が手を回したらしく、それ以上の広がりを見せなかったが、コイツの耳に届いていないはずはなく、勘のいいコイツには、俺のムク犬への気持ちもバレちまってた。
今まで散々遊び倒した俺が、同級生のちびっ子にマジになっていることが楽しくて仕方ないらしく、こうして面白半分に話を振ってきやがる。
「今日も一緒に登校して来たんだろ?」
そう、あの日からムク犬は俺の時間に合わせた電車で通学することになったんだが…。
「残念ながら、今日も二人っきりじゃあなかったみたいだな?」
…くっそう!鷹取のニヤつく顔が憎たらしい。
だがコイツの言うとおり、せっかくムク犬と二人っきりでの登校を狙った作戦も、九条の野郎まで時間を早めやがったせいで、3人での仲良し登校が続いている。
こうなったらレースに勝って、なんとしても九条の野郎に手を引かせてやる!
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