ムク犬の観察日記

ばたかっぷ

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三冊目

にじゅうなな•むく

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「じゃあ、食べ放題って弁当の事なのかぁ…。あ~、びっくりしたぜ」

「…ムク先輩…食べられなくて、良かったね?」


シマくんと三葉くんが僕を見ながら、ホッとしたように言う。


「あ~あ、むっくん食べられないのは、残念~」


も~、だから僕は食べ物じゃないってば。ミツくんのせいで、シマくん達に心配掛けちゃったのに少しは反省してよ。

大体、どうして皆もそんなおかしな噂を、信じたりしちゃうのかなぁ?人間は食べ物じゃないって普通分かるよねえ?


「…この、無自覚おばか犬」


…ん?


「部長、いま何か言った?」


いま部長がため息つきながら、何か呟いた気がしたんだけど。


「…何でもないよ。さあ、とにかく食事を済ませてしまおう。まったく、折角の料理が熊谷のせいですっかり冷めちゃったよ」

「ええっ?りっくん、俺のせいじゃなくない~?」


いやいや、確実にミツくんがヘンな噂話をしちゃったせいだよ。

食事が再開されて、皆それぞれ話しながら食べ進めるなか、ミツくんは相変わらずマイペースに話してる。


「ね~、王子。俺もむっくんのお弁当争奪戦に混ざっていーでしょ~?いーよね~?はーい決定~!」


宍倉くんはミツくんの言葉を華麗にスルー。宍倉くん、ミツくんとは友情を深める気はないみたい…。

なんて考えてたら、真央くんが僕の方を見て聞いてきた。


「でも確かチーム対抗リレーは、毎年体育祭の最後の種目だよね。そしたらお弁当食べれるのは、体育祭が終わってからになっちゃわない?」

「…あっ!」


そうだった…。クラブ対抗リレーが、午前の部の最終競技なのに対し、チーム対抗リレーは、午後の部の最終競技。
それぞれが午前、午後のクライマックスの重要な競技だけど、チーム対抗リレーだとお昼のお弁当を賭けてのレースが成立しない事に気付いた。


あれれ?どうしよう…。


「あは~、じゃあやっぱりクラブ対抗リレーでの勝負でいいじゃん~。九条もサッカー部のエースだし~、王子もバスケ部のホープで、去年も二人とも一年なのにアンカーやったじゃ~ん?」


あ、去年のクラブ対抗での勝負…、アンカーで走ってたのってトーイくんと宍倉くんだったんだ!
陸上部と最後まで、接戦を繰り広げた2チームがサッカー部とバスケ部だったのは覚えてるけど、あのうちの一人は宍倉くんだったんだ…。


「確かあれで宍倉君と九条君の人気が、一気に上がったんだよねえ」


真央くんの言葉に納得する。確かに、あのデットヒートは凄かった。陸上部のエース相手に引けをとらない二人の一年生アンカー。


「わあ…っ!じゃあ今年もあの名勝負が、また見られるかも知れないの?」

「そ~だよ~、むっくん。王子がいいって言ってくれたらね~?」


みっ、見たい!!見たいよう~っ!


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