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二冊目
じゅうろく•たいが
しおりを挟むレストランの入り口に差し掛かった辺りで、ムク犬が立ち止まったので手招いて呼んでみる。
ムク犬は暫くその場で逡巡するような様子を見せた後、意を決したような顔をしてこっちに来た。…なんか、嫌々してる犬のリードを引っ張ってるみたいな気分だな。
日曜の昼時だけあってそれなりの客入りだが、混雑していると云う程じゃない。ここはスタッフのサービスも行き届いているから、ゆっくりと食事が楽しめるだろう。
「河合は好き嫌いとかある?」
プレートを渡しながら声を掛けると、ムク犬は恍惚とした表情で並べられた料理に魅入っていた。
猫にまたたび?ムク犬にご馳走?なんか目がいっちまってるぞ…。
「…、宍倉くんっ!僕こんな綺麗で美味しそうなお料理見たの初めてだよう…っ」
俺の方を振り返り感極まったように言うムク犬。…くっ!かっ、可愛いじゃねえかっっ。
「そう、それなら良かった。じゃあ、目だけじゃなくてちゃんと舌でも堪能しようか」
「うんっ!」
元気な返事を返して、ムク犬は尻尾をフルスロットルで振り回し料理に突進して行った。
料理を口に運ぶたびに、両手で頬を押さえて「ほっぺが落ちちゃう~」なんて言いながら、見ているこっちまで幸せになるような顔で食べるムク犬。
こんなに美味そうにメシを食う奴もそういないよな。周りの客達も、時折ムク犬の幸せそうな顔を見て笑みを溢している。
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