機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

ア=ズライグ④

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■ライラ=カートレット視点

「あはははははははははははは! ホラホラどうしたんですか?」

 ブラムスの街の上空で、私はア=ズライグとの戦いを繰り広げる。

 ア=ズライグは小さく素早い私を捉えることができず、苛立っている様子だ。

 一方。

 ——ザシュ、ザク、グリュ。

『ゴアアアアアアアアアアアア!?』

 私はその山のような巨体を、死神の鎌で容赦なく切り裂き、突き刺し、抉る。

「あは♪ 痛いですか? 痛いですよね?」

 轟音に似た悲鳴を聞き、私は口の端を吊り上げた。

 ですが、“ア=ズライグ”の巨体もあって、私の攻撃なんてかすり傷程度でしかない筈。
 それに、私のほうは“ア=ズライグ”のそのあぎとや爪がかするだけで、致命傷になってしまいます。

 ……このままでは、らちが明かないですね。

『ゴアッ!』

 “ア=ズライグ”が私に向けてその大きなあぎとを開いた。
 私は“ア=ズライグ”よりも上へと飛ぶと、急旋回を繰り返す。

「あはははは! どうです! 狙いが定まらなければ、【竜の息吹ドラゴンブレス】も撃てないでしょう!」

 挑発するようにそう叫ぶけど、それはこちらも同じ・・・・・・

 何とか“ア=ズライグ”を海へと引きずり出し、その動きが止まった瞬間を狙う。
 その好機が来るまで、耐えるしかない。

「あはははははははははははは!」

 私は高らかにわらいながら、海へ向かって飛ぶ。
 “ア=ズライグ”を、できる限りアデル様とハンナから引き離さないと……!

 だけど。

「……あは、挑発に乗りませんか」

 “ア=ズライグ”は、海の上へと出た私を追いかけようとせず、港の上空で静止ながら私を見据えていた。

 つまり……“ア=ズライグ”の目的が、このブラムスの街にあるということ。
 それは、街を破壊することなのか、それとも……。

 ——カアッ!

「っ!?」

 “ア=ズライグ”がその大きなあぎとを開き、閃光が走る。
 私は上下左右へと旋回し、的を絞らせないようにしながら【竜の息吹ドラゴンブレス】から逃げた。

「あは♪ こうなったら、無理やりでもひきずりだして見せますよ!」

 頬を一筋の汗が伝う。

 アデル様……私に、力をお貸しくださいっ!

 ——キイイイイイイイイイイイン……!
 ——キイイイイイイイイイイイン……!

『ッ!?』

 背中の“翼”とクロウ=システムをフル稼働させ、超高速で“ア=ズライグ”へと迫った。

「あああああああああああああああああっ!」

 叫び声を轟かせ、死神の鎌を振り上げる。

 そして。

 ——ギャキイッッッ!

 聞いたこともないような激しい接触音と共に、私の白銀の両腕を伝って衝撃が走った。
 だけど……絶対に……っ!

『ゴギャアアアアアアアアアッ!?』

 そのまま上空を駆け抜けた私の背後で、“ア=ズライグ”の絶叫がこだまする。
 振り返ると……“ア=ズライグ”の顎から生えていた一本の牙が、折れていた。

「あは♪ 一本だけではバランスが悪いですので、残りの牙も全て折って差し上げますよ♬」

 距離を取り、鎌を振り上げながら“翼”とクロウ=システムの出力を上げる。

 ……私の白銀の腕と脚、それに“死神の鎌”。
 お願いですから、最後までってくださいよ……。

『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!』

 首を上下左右に激しく振り、“ア=ズライグ”が怒りを露わにする。
 どうやら、完全に血が昇っているみたいだ。

「あは♪ これなら……!」

 ……あの“ア=ズライグ”を、おびき出せるかもしれない。

 ならっ!

 ——キイイイイイイイイイイイン……!
 ——キイイイイイイイイイイイン……!

 私は再び“翼”とクロウ=システムを全開にし、また“ア=ズライグ”へと瞬時に肉薄する。

 ——ベギャアッッッ!

『ゴギュオオオオオオアアアア!?』

 今度は反対側の牙をへし折ると、私は海の上空へと飛び抜けた。

「あはははははははははははは! 悔しいですか? 悔しいでしょう! またこんなに距離が開いてしまっては、同じことの繰り返しになりますね!」

 そう……たとえ蜥蜴とかげでも、二回も立て続けに同じ目に遭えば学習するでしょう。
 この私との距離が、“ア=ズライグ”にとって危険なものであると。

『ゴウウウアアアアアアアアアアッ!』

 ほらほら、焦った蜥蜴とかげが、慌ててこちらへとやって来ました。

 あとは……捉えるだけ。

 ですが。

『ゴギュオオオアアアッ!』
「っ!?」

 肉薄した“ア=ズライグ”が、なりふり構わずにあぎと、爪、尻尾を振るう。
 蜥蜴とかげも、私にかするだけで容易く倒せると踏んだんだろう。その判断は正しい。

「あは♪ とはいえ、それは自分の身体も危険にさらすということですよ?

 ——ザシュ、ギュチ。

『ギャオアアアアアオオオオ!?』
「あはははははははははははは!」

 私は嗤いながら“ア=ズライグ”に傷を負わせると、逃げるように“ア=ズライグ”の頭上の遥か上空へと上昇した。

『ゴアアアアアアアアアアアアアッッッ!』

 そんな私を、“ア=ズライグ”は必死に私を追いかけてきた。

 その時……私はクルリ、と反転すると。

「あは♪ さあ……これで終わりですっ!」

 そう叫び、ニタア、とわらった。
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