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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
婚約指輪
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「アデル様! こちらは似合いますでしょうか!」
ピンクサファイアのネックレスをつけたライラ様が、クルリ、と一回転する。
「ええ、すごくお似合いですよ」
「ふふ、本当ですか?」
「もちろん」
僕がそう答えると、ライラ様はネックレスに触れながら、本当に嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ア、アデル様、その……」
すると、ハンナさんも恥ずかしそうに僕に声を掛ける。
その耳にはトパーズのイヤリングをつけて。
「ハンナさん……すごく、似合っています……」
「あ……うふふ……」
一瞬見惚れてしまった僕は、すぐに気を取り直して褒めると、ハンナさんがはにかんだ。
うん、僕の二人の婚約者は世界一綺麗だと思います。
「お客様、いかがでしょうか?」
タイミングを見計らったように店員がやって来た。
こういうところ、商売上手だなあ……新しい国で商売を始める際は参考にしよう。
「そうですね……」
ライラ様が僕とハンナさんをチラリ、と見る。
現実に戻ったハンナさんはトパーズのイヤリングを外し、かぶりを振った。
「ふふ……残念ですが、今日のところは遠慮しておきます。また立ち寄らせていただきますね」
「そうですか……また是非お越しくださいませ」
ということで、僕達は店員に見送られて店を後にした。
「それで……宝石商の店に立ち寄った目的は何だったのでしょう?」
ハンナさんがおずおずと尋ねる。
「あはは、そうですね。それじゃ、目的を果たしに行きましょうか」
「「?」」
大通りに隣接されている公園に来ると、僕はそっと両手を地面につけた。
「さて……多分、上手くいくと思うんだけど……」
あの地下水路と『天国への階段』で限界を超えたから、僕の[技術者]の力はさらに進化した。
今なら、必要な材料を入手することだってできる筈。
「——【設計】、【加工】、【製作】」
掌に集中し、必要となる原料を地面から集め、【設計】を元に【製作】」で成形して……。
「ふう……できました」
「「ええっ!?」」
地面から掌を退けると、そこには先程ライラ様とハンナさんが付けていたピンクサファイアのネックレスとトパーズのイヤリング、そして、二つの指輪があった。
「ア、アデル様……これは……?」
「はい。地面を伝って宝石や白金の素材を集め、装飾品に【加工】したんです」
元々、宝石も白金も鉱物だから、必要な分だけ地面伝いに集めてしまえば【製作】することは簡単だ。
ただ、これだけの量を集めようと思ったら、かなり広範囲からかき集めなきゃいけないけど、それも進化した僕の[技術者]の力があれば思いのほか容易かった。
「……という訳で、あとは最近の流行のデザインを確認すれば、いつでもどこでもこのような装飾品が作れるんです」
「「す、すごい……!」」
装飾品を見ながら、二人が驚きの声を漏らす。
さて……それじゃ、本当の目的を果たそう。
「ライラ様」
「は、はい!」
僕はライラ様の白銀の左手を手に取る。
「あなたは、“黄金の旋風”に追放され、カルラに捨てられ、ギルドからも卑下されて、“役立たず”でしかなかった僕を必要としてくださいました。“役立たず”という言葉を否定してくださいました」
「…………………………」
「そして……ライラ様は、僕に生きる意味と、再び誰かを愛する勇気、そして、喜びを与えてくださいました。僕は、そんなあなたと永遠に共にありたい」
「は、はい……」
「ライラ様……愛しております……」
そう告げると、僕はライラ様の左手に、真紅のルビーの指輪をはめた。
「あ……」
ライラ様はその白銀の左手をそっと胸に抱き締めると、大粒の涙を零した。
次に、僕はハンナさんに向き合う。
「ハンナさん」
「はい」
「あなたは、僕が限界を超えて[技術者]の力を使うたびに、いつも僕の傍で見守ってくださいました。支えてくださいました」
「…………………………」
「僕が目を覚ます時、いつもハンナさんが傍にいてくれました。身体の一部を壊しても、常に気づいて、気を配って、心を癒してくださって……僕は、あなたにどれ程救われたか分かりません。これからも、永遠に僕の傍で支えて欲しい」
「はい……はい……!」
「ハンナさん……愛しています……」
涙汲むハンナさんの左手を取り、僕はブルーサファイアの指輪をはめた。
そして。
「「アデル様……!」」
「はい……!」
僕達は人目もはばからず抱き合う。
その幸せを噛み締めながら。
だけど。
「っ!?」
そんな僕達の気分を害する存在が視界に入った。
「「? アデル様……っ!」」
二人も気づいたみたいだ。
そう……公園から見える大通りを、一台の馬車が通ったんだ。
その中に、あのソフィアとカルラを乗せて。
ピンクサファイアのネックレスをつけたライラ様が、クルリ、と一回転する。
「ええ、すごくお似合いですよ」
「ふふ、本当ですか?」
「もちろん」
僕がそう答えると、ライラ様はネックレスに触れながら、本当に嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ア、アデル様、その……」
すると、ハンナさんも恥ずかしそうに僕に声を掛ける。
その耳にはトパーズのイヤリングをつけて。
「ハンナさん……すごく、似合っています……」
「あ……うふふ……」
一瞬見惚れてしまった僕は、すぐに気を取り直して褒めると、ハンナさんがはにかんだ。
うん、僕の二人の婚約者は世界一綺麗だと思います。
「お客様、いかがでしょうか?」
タイミングを見計らったように店員がやって来た。
こういうところ、商売上手だなあ……新しい国で商売を始める際は参考にしよう。
「そうですね……」
ライラ様が僕とハンナさんをチラリ、と見る。
現実に戻ったハンナさんはトパーズのイヤリングを外し、かぶりを振った。
「ふふ……残念ですが、今日のところは遠慮しておきます。また立ち寄らせていただきますね」
「そうですか……また是非お越しくださいませ」
ということで、僕達は店員に見送られて店を後にした。
「それで……宝石商の店に立ち寄った目的は何だったのでしょう?」
ハンナさんがおずおずと尋ねる。
「あはは、そうですね。それじゃ、目的を果たしに行きましょうか」
「「?」」
大通りに隣接されている公園に来ると、僕はそっと両手を地面につけた。
「さて……多分、上手くいくと思うんだけど……」
あの地下水路と『天国への階段』で限界を超えたから、僕の[技術者]の力はさらに進化した。
今なら、必要な材料を入手することだってできる筈。
「——【設計】、【加工】、【製作】」
掌に集中し、必要となる原料を地面から集め、【設計】を元に【製作】」で成形して……。
「ふう……できました」
「「ええっ!?」」
地面から掌を退けると、そこには先程ライラ様とハンナさんが付けていたピンクサファイアのネックレスとトパーズのイヤリング、そして、二つの指輪があった。
「ア、アデル様……これは……?」
「はい。地面を伝って宝石や白金の素材を集め、装飾品に【加工】したんです」
元々、宝石も白金も鉱物だから、必要な分だけ地面伝いに集めてしまえば【製作】することは簡単だ。
ただ、これだけの量を集めようと思ったら、かなり広範囲からかき集めなきゃいけないけど、それも進化した僕の[技術者]の力があれば思いのほか容易かった。
「……という訳で、あとは最近の流行のデザインを確認すれば、いつでもどこでもこのような装飾品が作れるんです」
「「す、すごい……!」」
装飾品を見ながら、二人が驚きの声を漏らす。
さて……それじゃ、本当の目的を果たそう。
「ライラ様」
「は、はい!」
僕はライラ様の白銀の左手を手に取る。
「あなたは、“黄金の旋風”に追放され、カルラに捨てられ、ギルドからも卑下されて、“役立たず”でしかなかった僕を必要としてくださいました。“役立たず”という言葉を否定してくださいました」
「…………………………」
「そして……ライラ様は、僕に生きる意味と、再び誰かを愛する勇気、そして、喜びを与えてくださいました。僕は、そんなあなたと永遠に共にありたい」
「は、はい……」
「ライラ様……愛しております……」
そう告げると、僕はライラ様の左手に、真紅のルビーの指輪をはめた。
「あ……」
ライラ様はその白銀の左手をそっと胸に抱き締めると、大粒の涙を零した。
次に、僕はハンナさんに向き合う。
「ハンナさん」
「はい」
「あなたは、僕が限界を超えて[技術者]の力を使うたびに、いつも僕の傍で見守ってくださいました。支えてくださいました」
「…………………………」
「僕が目を覚ます時、いつもハンナさんが傍にいてくれました。身体の一部を壊しても、常に気づいて、気を配って、心を癒してくださって……僕は、あなたにどれ程救われたか分かりません。これからも、永遠に僕の傍で支えて欲しい」
「はい……はい……!」
「ハンナさん……愛しています……」
涙汲むハンナさんの左手を取り、僕はブルーサファイアの指輪をはめた。
そして。
「「アデル様……!」」
「はい……!」
僕達は人目もはばからず抱き合う。
その幸せを噛み締めながら。
だけど。
「っ!?」
そんな僕達の気分を害する存在が視界に入った。
「「? アデル様……っ!」」
二人も気づいたみたいだ。
そう……公園から見える大通りを、一台の馬車が通ったんだ。
その中に、あのソフィアとカルラを乗せて。
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