機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
上 下
130 / 146
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

婚約指輪

しおりを挟む
「アデル様! こちらは似合いますでしょうか!」

 ピンクサファイアのネックレスをつけたライラ様が、クルリ、と一回転する。

「ええ、すごくお似合いですよ」
「ふふ、本当ですか?」
「もちろん」

 僕がそう答えると、ライラ様はネックレスに触れながら、本当に嬉しそうに微笑みを浮かべた。

「ア、アデル様、その……」

 すると、ハンナさんも恥ずかしそうに僕に声を掛ける。
 その耳にはトパーズのイヤリングをつけて。

「ハンナさん……すごく、似合っています……」
「あ……うふふ……」

 一瞬見惚れてしまった僕は、すぐに気を取り直して褒めると、ハンナさんがはにかんだ。
 うん、僕の二人の婚約者は世界一綺麗だと思います。

「お客様、いかがでしょうか?」

 タイミングを見計らったように店員がやって来た。
 こういうところ、商売上手だなあ……新しい国で商売を始める際は参考にしよう。

「そうですね……」

 ライラ様が僕とハンナさんをチラリ、と見る。
 現実に戻ったハンナさんはトパーズのイヤリングを外し、かぶりを振った。

「ふふ……残念ですが、今日のところは遠慮しておきます。また立ち寄らせていただきますね」
「そうですか……また是非お越しくださいませ」

 ということで、僕達は店員に見送られて店を後にした。

「それで……宝石商の店に立ち寄った目的は何だったのでしょう?」

 ハンナさんがおずおずと尋ねる。

「あはは、そうですね。それじゃ、目的を果たしに行きましょうか」
「「?」」

 大通りに隣接されている公園に来ると、僕はそっと両手を地面につけた。

「さて……多分、上手くいくと思うんだけど……」

 あの地下水路と『天国への階段』で限界を超えたから、僕の[技術者エンジニア]の力はさらに進化した。
 今なら、必要な材料を入手することだってできる筈。

「——【設計デザイン】、【加工キャスト】、【製作クラフト】」

 掌に集中し、必要となる原料を地面から集め、【設計デザイン】を元に【製作クラフト】」で成形して……。

「ふう……できました」
「「ええっ!?」」

 地面から掌を退けると、そこには先程ライラ様とハンナさんが付けていたピンクサファイアのネックレスとトパーズのイヤリング、そして、二つの指輪があった。

「ア、アデル様……これは……?」
「はい。地面を伝って宝石や白金プラチナの素材を集め、装飾品に【加工】したんです」

 元々、宝石も白金プラチナも鉱物だから、必要な分だけ地面伝いに集めてしまえば【製作】することは簡単だ。
 ただ、これだけの量を集めようと思ったら、かなり広範囲からかき集めなきゃいけないけど、それも進化した僕の[技術者エンジニア]の力があれば思いのほか容易かった。

「……という訳で、あとは最近の流行のデザインを確認すれば、いつでもどこでもこのような装飾品が作れるんです」
「「す、すごい……!」」

 装飾品を見ながら、二人が驚きの声を漏らす。

 さて……それじゃ、本当の目的を果たそう。

「ライラ様」
「は、はい!」

 僕はライラ様の白銀の左手を手に取る。

「あなたは、“黄金の旋風”に追放され、カルラに捨てられ、ギルドからも卑下されて、“役立たず”でしかなかった僕を必要としてくださいました。“役立たず”という言葉を否定してくださいました」
「…………………………」
「そして……ライラ様は、僕に生きる意味と、再び誰かを愛する勇気、そして、喜びを与えてくださいました。僕は、そんなあなたと永遠に共にありたい」
「は、はい……」
「ライラ様……愛しております……」

 そう告げると、僕はライラ様の左手に、真紅のルビーの指輪をはめた。

「あ……」

 ライラ様はその白銀の左手をそっと胸に抱き締めると、大粒の涙を零した。

 次に、僕はハンナさんに向き合う。

「ハンナさん」
「はい」
「あなたは、僕が限界を超えて[技術者エンジニア]の力を使うたびに、いつも僕の傍で見守ってくださいました。支えてくださいました」
「…………………………」
「僕が目を覚ます時、いつもハンナさんが傍にいてくれました。身体の一部を壊しても、常に気づいて、気を配って、心を癒してくださって……僕は、あなたにどれ程救われたか分かりません。これからも、永遠に僕の傍で支えて欲しい」
「はい……はい……!」
「ハンナさん……愛しています……」

 涙汲むハンナさんの左手を取り、僕はブルーサファイアの指輪をはめた。

 そして。

「「アデル様……!」」
「はい……!」

 僕達は人目もはばからず抱き合う。
 その幸せを噛み締めながら。

 だけど。

「っ!?」

 そんな僕達の気分を害する存在が視界に入った。

「「? アデル様……っ!」」

 二人も気づいたみたいだ。

 そう……公園から見える大通りを、一台の馬車が通ったんだ。

 その中に、あの・・ソフィアとカルラを乗せて。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...